2016/01/29 のログ
ご案内:「常世公園」に黒兎さんが現れました。
■黒兎 >
―――深夜の公園に、小さく『バチチッ』という音が響く。
■黒兎 > 私、黒兎は、美少女女子高生吸血鬼である。
吸血鬼である以上、私は、どうあれ血を吸わなければならない。
薬、輸血用の血液、あらゆる手を尽くしても、
数週間に1度は、こうして人間を襲うという凶行に出なければならないのだ。
―――ここは公園の木の陰である。
先に魔法で静かに気絶させ、ここまで苦労して引き摺って来た
女子生徒の首に牙を立て、少しだけ血を頂戴する。
■黒兎 > 当然、殺したりはしない、
そんな事をすればすぐにでも異能者達に追われるになる。
然しながら、何故、ここまでリスクを恐れる私が、
無法地帯である落第街でなく、この、法によって強固に守られた、
学生街で事を起こすのかと云えば―――。
口元を拭うと、ふぅ、と息をつく。
抗いえぬ衝動は、もはや身を潜めていた。
……本当に、少しばかりでいいのだ。
■黒兎 > ―――こと、落第街には、様々な噂がある。
暗躍する黒く、大型の獣、
それ以外の部分が喰われたかのように、僅かに残された肉片。
その他、法や秩序に守れていないが故に、未だ大量に残る怪異の数々。
繰り返そう、私、黒兎は美少女女子高生吸血鬼である。
重要な点だけを繰り返すとすれば、吸血鬼である。
―――多少怪我をするぐらいならば、すぐに直る。
然しながら、獣に喰われたとあってはそうはいかない。
喰われてしまえば再生は出来ない。
……故に、そのような化け物が存在しない。
この学生街を選んで事を起こすのだ。
秩序は、弱い悪を、より強力な悪から守ってくれる。
当然、見つかれば私もただでは済まなかろうが。
■黒兎 > 私は、女子生徒を抱え―――る事を試みたが、
どうやらお洒落な絵に描いたような吸血鬼宜しく、
お姫様抱っこ等は出来はしないようである。
仕方ないので、背中に抱え、ゆっくりと公園を歩き出す。
こんな場所で寝かせては風邪を引いてしまう。
そうなれば、勉学にも差障ろう。
■黒兎 > ぐったりとしている女子生徒の首筋、
私が噛み跡をつけたそこを指先でなぞる。
こうして幾ら言い訳をしても、私は人間の敵である。
吸血鬼という種は、地球上でも認知され、
そして、あらゆる対策が講じられている種でもある。
つまるところを言えば、
『多少の金銭と引き換えに血を差し出している者』も居るのだ。
どうしても人を傷つけたくないと云うのであれば、
そういった、合法的に血が吸える人間から血を吸えば良い。
それを拒否し、こうして人を襲っている以上、
私に何れ、裁きというものが下る事は疑いようがない。
それが分かっていても、私は、こうして人間を襲い、血を奪う。
■黒兎 >
―――それが、吸血鬼という種の、私の、在り方であると信じるが故に。
■黒兎 > 被害者の女子生徒には明らかに失礼な物言いであるが、
―――申し訳ないが、重い。
仕方ないと手ごろなベンチを見繕うと、そこに女子生徒を座らせ、
近くで買った暖かいミルクティーを二本持って、その隣に腰掛ける。
多少乱れた着衣を正しながら、私はミルクティーを一口飲んだ。
ご案内:「常世公園」に濱崎 忠信さんが現れました。
■濱崎 忠信 > 「何してんの、アンタ」
誘蛾灯の灯りを受けながら、通りすがりの少年は呟いた。
片手にはコンビニの袋。もう片手には炭酸飲料の入ったペットボトル。
深夜の公園で、ベンチに座っている女子が二人。しかも、片方には明らかに意識がない。
妙と思うには自然な状況が整っていた。
■黒兎 > ほう、と息を吐くと、
吐いた息が白い靄になって空気中に溶けて行く。
それを眼で追ったのが先か、
相手から声がかけられたのが先か、
兎に角私はその赤い双眸をその少年に向けた。
黒髪に黒い瞳、手にはコンビニ袋、そしてペットボトル。
買い物帰りだろう。
「さっ―――!!
こほん、先ほどこの少女が倒れて居てな、そこに寝かせたままではと運んで居たのだ。
然しながら、見ての通りの細腕、いくら女子とはいえ、運ぶのは骨でな、
―――こうして、少しばかり休憩して居た。」
明らかな疑いの眼差しに、多少声が上ずったか。
―――然し、清楚な美少女女子高生が深夜にいきなり男子に話しかけられれば、
そのような事にも成ろうと云うもの、大丈夫だ、ばれてない、ばれてない。
■濱崎 忠信 > 少年は暫く押し黙ったまま、言い訳染みた台詞を口走る、美少女を自称しそうな女子高生を見ていた。
少女の上擦る声を丸きり無視して、ペットボトルの中身を少年は一口嚥下する。
「へぇ、そう。アンタ優しいんだな。俺だったら確実にほっとくわ」
そして何の遠慮もなく同じベンチ、それも美少女を自称しそうな女子高生の隣に腰掛ける。
「その子、怪我してんの?」
■黒兎 > 「ほ、ほうっておいたら危なかろう、同じ女子として見過ごせん。」
ふん、と鼻を鳴らして、少年の喉仏が上下するのを眺める。
どうやら、心の冷やかな奴のようである。
「―――ひっ!!」
観察していたら、行き成りベンチに腰掛ける。
美少女女子高生の隣に何の躊躇もなく腰掛けるとは、
最近の男子高校生ときたら破廉恥な。実に乱れている、恥を知れ。
「い、いや、分からぬ。
私は医者でもなんでもない、
ごくごく普通の美少女女子高生だ。
怪我をして倒れていたのか、病気で倒れていたか、はたまた、
何かしらあってそこに倒れていたのか、それを判断する術を持たぬ。」
―――首には噛跡もあるし、
手首には最初に雷魔法で気絶させた時に出来た、
焦げ跡のようなものが残っている。
つぶさに観察されれば、少なくとも吸血鬼に襲われたとか、
スタンガンで襲われたとか、そういった、最低限度の情報は知られよう。
然し、私が吸血鬼である事がばれなければ問題無い。
■濱崎 忠信 > 「くっ……ふふふふ……」
少女の台詞が途切れる前に、少年は含み笑いを漏らし始める。
肩を揺らしながら小さな笑声を響かせ、笑う。
そして、一通り落ち着いてから、またペットボトルの中身を一口。
「自分で美少女っていうのかよ。アンタすげぇな。どんだけ自分に自信あるんだよ」
忌憚も遠慮もあったものではない感想を口にして、少年は自称美少女女子高生越しにぐったりしている少女をチラリと見る。
「多分、怪我してるよ、その子。血の匂いするから。アンタからもするけど」
■黒兎 > 「うおっ!?」
行き成り目の前の少年が悪人感全開の笑い方をすれば、驚くだろう。
ペットボトルの飲み物を口に含んでいなくて良かった。
含んでいれば、今頃私はそのペットボトルの中身でビショビショだ。
私はビショー女だが。そういう意味でのビショー女ではない。
「………ん、美少女ではないか?
紛れもなく美少女だと思うのだが。」
この姿は幻術で作り出した美少女である。
故に、間違いなく美少女であるはずだ、若しかして、
幻術が上手く使えていないのだろうか。私は鏡を取り出して、首を傾げる。
―――美少女である。
「ふむ?……怪我だと!?それは大変だ、早く運ばなければ!!
ほら、何をしている、手伝うの………ん、私からも血の匂い、だと?」
そんな匂いがするものなのだろうか、
いや、確かに歯磨きは帰ってからだが……。
「わ、わわわわわ、私がこの少女を運んで居たからであろう。
―――妙な事を言う前に、この少女を病人に運ぶのを手伝え!!!」
多少オーバーにリアクションしながら、慌ててベンチから立ち上がる。
………血の匂いなんて分る人間がろくな人間であるはずがない。
今日は運が悪かったと思って、最悪全力で逃げなくては。
■濱崎 忠信 > 「くっ……はははははは」
またしても、先ほどと同じ調子……いや、先ほどよりも少し大きな声で少年は笑う。
今度は肩どころか、声も愉快気に震わせて。
「アンタ、やっぱすげぇな。面白いわ」
自称美少女が鏡をみて語る一部始終に対してそうまた感想を漏らして、ペットボトルの中身を一口。
丁度、空になる。
そのまま屑箱にペットボトルを放ったところで、声を掛けられ、向き直る。
「え? 手伝う? 俺が? ……なんで?」
■黒兎 > はて、混乱していて妙な事を口走りでもしたのだろうか。
それにしても、この少年、実によく笑う。
「ふむ、よく笑う少年であるな。
先に言っていた冷たい言葉とは裏腹に、実に感情豊かで素晴らしい。」
心で思った感想を口に出しつつ、
ぐったりとした女子生徒を指差す。
と、同時に、少年が放ったペットボトルがカランと音を立てて屑籠に入った。
なかなかのコントロールである。何か運動でもやっているのだろうか。
「先に言ったであろう、私ではその女子生徒を運ぶのは骨が折れる。
少年、お前ならば、この少女を抱えて病院まで行くくらい、造作もあるまい。
困っている美少女女子高生と怪我をしている女子高生が居るのだ、
まぁ、ここは、誰しも当然のように助けるであろう。」
■濱崎 忠信 > 問われ、少年は首をかしげる。
それはもう怪訝な顔をして、眉を顰め、腕組みをし、口をへの字に曲げながら、一度不可思議そうに唸り。
「……だから、なんで?」
そう、問い返す。
その後に、「ああ」といって顔をあげてから、自称美少女女子高生の顔を見て。
「もしかして、何度も笑わせてくれたのってそういう『対価』を見越してってこと?」
■黒兎 > 「なんでと言われてもな……。」
冷静に考えれば、何故だろうか。
見ず知らずの通行人が、たまたま倒れている人間を運ぶというメリットは何も無い。
金銭が絡むわけでもなければ、精々お礼を言われるくらいであろう。
私がこの少女を運んで居たのは、この少女を私が害したからであり、
その害した事によって発生する二次被害をせめて食い止め、罪悪感を薄れさせるための行為だ。
―――見ず知らずの人間に甘えて良い道理はない。
其処まで考えたあたりで目頭が熱くなるのを感じて、袖で軽く拭った。
「そうだな、悪かった。時間は限りあるモノだ、
無駄に使っている暇は無いのは当然の事よな。」
その考えに至れなかったのは、
私に時間という概念が存在しないからだ。
やる事に対するデメリット、あるいはコストが存在しない。
「すまなかった。よく笑う少年。」
私は改めて女子生徒を抱えようと歩み寄る。
手伝いが無くとも、時間をかければ運べるだろう。
「所で、こんな時間にこんな場所で何をしていたのだ?
ジョギング、という風でもあるまい。」
■濱崎 忠信 > 「いや、まぁ、謝られるようなことでもないけど。今仕事帰りで暇だし」
何故謝られたのかという点で再び首を傾げ、何故か袖で顔を拭っている自称美少女女子高生を見て三度首をかしげる。
そして、また笑みを浮かべ。
「アンタやっぱり面白いな」
そのまま、まるで物を担ぐようにぐったりしている女子高生を担ぎ上げ、自称美少女女子高生を見下ろす。
「その理屈でいくと、俺と喋るなんて無駄な時間を過ごさせたわけだし、『対価』は支払えってことかな?
まぁ、笑かして貰った分も合わせると……これで丁度かな?」
■黒兎 > 「今帰りとは、随分と過酷な労働環境と見える。」
血の匂いがどうこうとか言っていたあたり、
吐血するほど働くような環境なのだろうか。
………なんだか、無暗に心配になる。
「別に面白い事をしているつもりは無いが、
過酷な労働の合間の一瞬の清涼剤と成れたのなら幸いだ。
身体には十分に気を付けるのだぞ。うむ。」
抱えようと近寄ると、目の前で女子生徒が宙に浮く。
雑ではあるが軽々と持ち上げる男子生徒を見て、また目頭が熱くなり、慌てて両手で拭った。
「お前……。」
かがんでいた身体を起こし、
少しだけ皺になったスカートをパンパンと叩いて伸ばした。
「………そうだな、対価の分、しっかりと働いて貰うとしよう。」
なんともはや、案外といい人らしい。
よく笑う人間に、悪い奴は居ない、という事だろうか。
■濱崎 忠信 > 起き上がった自称美少女女子高生の様子を見てから、また雑に気を失った女子を担ぎ直す。
完全に物を持つような扱いではあるが、幸いにも相手の意識がないので特に問題になってはいない。
「まぁ、いつも神様に祈る仕事よりは幾分か楽だし。対価の分は働くよ。
ところで、病院って何処かわかんねぇから案内して。
普段いかないから」
一方的にそう告げて、つかつかと公園の出入り口に向かって歩いていく。
特に自称美少女女子高生を気遣うわけでもなく。
ご案内:「常世公園」から濱崎 忠信さんが去りました。
■黒兎 > 「病院は……って、おい、待て!!」
飲み終わったミルクティーの缶を慌てて屑籠に入れて、
女子生徒と自分の荷物を持つと、慌てて少年の背を追いかける。
「―――少しは気遣え、私は美少女女子高生なのだぞ!!」
大股の少年の足に合わせて駆け足で、私も深夜の公園を後にした。
ご案内:「常世公園」から黒兎さんが去りました。