2016/07/26 のログ
ご案内:「常世公園」に霧依さんが現れました。
■霧依 > 公園の広場には、様々な人が集う。
露天を営む者もいれば、男女で愛を囁くこともあり。
クレープ屋が車で乗り付けたかと思えば、男性グループが踊りに興じることもある。
そんな公園に響くタンゴのリズムとメロディー。
ベンチに座り、膝を立て。その膝の上で楽器を鳴らす女が一人。
アコーディオンのようなその蛇腹を動かしながら、指を踊らせ。
人のいない夕暮れの公園の中で、ただ弾く。
■霧依 > 誰ぞがやってきて足を止め、その人が立ち去っても掻き鳴らし。
教えてもらった曲を、一通り鳴らすまで動かない。
「……ああ、おしまい。
弾けなくなっていたらどうしようと思った。」
覚えた曲を思い出す。
頭の中にどんどん詰め込んで、物は余り持ち歩かない彼女だからこその作業。
思い出すって大変です。
ご案内:「常世公園」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
ぱたぱたと服をはたきながら、公園にやってきて。
おや、と首を向ける。
静かなはずの公園で、楽器の奏でられる音。
その音の発信源に近付いていく。
ストリートミュージシャンとはあまり縁のない場所に住んでいた男は、それが物珍しかった。
■霧依 > ………流れる音色。
その発生源は、ラフな格好の女。
短髪を揺らして弾き鳴らし、見られても気にした素振りも無く、おや、と視線を向けて微笑みかける。
「………練習なんだ。 自信のある曲の方が人に聴かせるには都合がいいかな?」
一曲の切りがつけば、穏やかに微笑みながら声をかける。
しっとりとした声と、力の抜けた瞳。女性らしい身体のラインをした……ふわりと浮いた雲のような女。
■寄月 秋輝 >
「いえ。練習を続けていただいて構いませんよ」
表情を変えずに首を横に振り、少し離れたベンチに腰掛ける。
目線は女性にまっすぐ向けたままだ。
腰の刀をするりと外し、抱くようにして持ちながら。
楽しんでいるというよりは、興味を持っている。
■霧依 > 「そうかい? ……じゃあ、遠慮無く。」
次に響くは、大海原の勇壮な軍歌。軍というよりは……海賊の歌。
広がる海と膨らむ帆。
豪快で、それでいて希望と呼ぶにはえげつない欲望に塗れた、強い節を交える曲。
「………僕は武器は使わないけれど。
結局、体の一部のように使えなくてはいけないよね。 武器も、楽器も。」
また一曲を弾き終われば、ゆったりとした声を。
汗がぽたりと落ちて、軽く拭い。
■寄月 秋輝 >
目を閉じて、まるで眠っているかのように静かに聞き入っていたが。
弾き終えて女性が声を上げたら、目をうっすらと開けた。
「そう思います。
けれど、それもまた熟練と、日々の信頼の積み重ねですよ。
僕はこれを体の一部にするのに、何年もかかりましたから」
その姿を見つめる。
さわやかな汗が一滴、女性を艶やかに見せている気がする。
■霧依 > 「素晴らしいことだね。 僕はまだ、一部にはなってくれないみたい。
……興味を持ったことを、あれやこれややってしまうからよろしくないんだけどさ。
久々なんだ、演奏は。
昔の知り合いから譲り受けたのだけれど、これ一つでやっていくには腕が足りないらしい。」
相手の目線を受け取りながら、微笑で答えて。
薄着の女は何も気にせずに楽器をようやく横に置いて。
「何か飲むかい。日が高い内からやっていたら、流石に疲れてしまったよ。」
ゆるり、と立ち上がって自販機に向かう。
■寄月 秋輝 >
「興味を持って、多くのことに触れられるのもまた才能ですよ。
何か一つに絞るとなると、また別の才能が必要だと思いますけれどね」
すい、と自分も立ち上がる。
そして自販機に向かい、小銭を出す。
「おしるこコーラで」
邪悪なワードを発しながら、小銭をちゃりちゃりと入れ、ボタンを押した。
■霧依 > 「才は縦横にまっすぐに伸びたそれに、斜めからの視点を加えて出来ているから。
そういう人に、僕は才があると口にしたいんだ。
僕の才は、そうだな。
男性でも女性でも、素敵だったり可愛らしいと思うものは、何の区別もせずに愛することができることかな。」
なんて、片目でウィンクをして、しっとりと笑う。
汗ばんだ身体で小銭をこちらも取り出し。
…………
「世の中は広いね。」
静かに一言をつぶやき、自分は何にしようか悩む。 流石にそれは危険なものではないか、なんて。
■寄月 秋輝 >
「その才能は大切なものですね。
どうしても男女どちらかは、多少の差別が出てしまうものですから」
おしるこコーラをぷしゅ、と開ける。
まるでコーラだ。
「……知り合いが、これをどうも好きらしくて……
正直疑問だったのですが、一度飲めと強く言われていたので……」
迷わず口にして、ぐびりと飲んでみる。
もう一口ぐびっと飲んでみる。
「……意外とイケました」
一応差し出してみる。
清涼感あるコーラの味だ。
■霧依 > 「ふふ、この話を聞いて動揺しない人はなかなかいないんだけどな。
そういう人の方が、僕は好みだよ。」
さらりと笑い、そのコーラを少しだけ首を傾げて見る。
さあて、そんなものを見せられたら。
好奇心の虫が疼く。
「じゃあ、一口頂くよ。」
ぱち、っとウィンクをして、そのコーラを口につけ、傾けて。
自分のことを好奇心で殺される猫と常に言い放つ女は、堂々と踏み込んで。
「………変わった味だね。 ……そうだな、一月くらいすると、妙に気になってしまう。
どうしようもない駄目なのに放って置けない男のような。 そんな味がする。」
■寄月 秋輝 >
「珍しいかもしれませんが、個性でしかないというのはありますからね。
僕は根っからの異性愛者ですので、同じ気持ちを共有してさしあげられないのが残念ですが」
相手がおしるこコーラを飲んだのを見て、うむ、と頷く。
「……すっごい感想ですね。
申し訳ないですけれど、全く伝わってきませんでした」
正直に述べた。
とはいえ、自分もまた上手く感想は述べられない。
それくらいに微妙な味わいではあった。
■霧依 > 「なるほど、じゃあ、僕と君とには障害は何一つ無い、っていうわけだね。
同じ気持ちになる必要は無いさ。
僕は変わっているって自覚がある。
言葉で伝えるのは難しい、ってものがあるさ。
人間の言葉は無力だよ。
経験をしたことの無いものや、想像を超えたものに出会うと、何も口に出せない。
ただ、有り難いことに、人間は共感という不思議な力があるからね。
明確に言い表せないことも、同じ感覚を抱く二人がいれば、何故か通じ合うものさ。」
……でも、これはもういいや、と返すことにした。
■寄月 秋輝 >
「確かに、障害は無いでしょうね。
最低限の価値観は一致しているわけですから」
おしるこコーラを受け取り、再び口を付ける。
意外といける。
ただ何本も進んで飲むほどの味とは思えなかった。
あの人に怒られる気がする。
「……同じ体験をしましたからね、おそらく共感はしてるでしょう。
筆舌に尽くしがたい味であるという共通認識は持っていますからね」
最後までぐびぐび飲み干して、ぐしゃりと缶を握り潰した。
それをゴミ箱に放り込んだ。
■霧依 > 「ふふ、とはいえ、………どうにも、僕に興味は無さそうだ。」
くすくすと笑って、ウィンクを一つ。
「そうだね。 好きとか嫌いとか、そういう次元は飛び越えている気がするよ。
ほら、普通のお茶だけど、いいかな。」
こちらの小銭で買った普通のお茶を、どうぞ、と差し出す。
■寄月 秋輝 >
「興味が無さそう……そう見えますか?
僕からは、あなたは魅力的な女性に見えますけれど」
感情表現が薄い、というのが正しい。
女性らしい体を少しだけ見つめた。
「……これが好きな子も居るから驚きですね……」
小さくため息をつき、そのお茶を受け取る。
ありがとうございます、と一言断り、開けて一口。
「……とても安心する味です……」
■霧依 > 「そうかい? それは良かった。
僕が手を伸ばすと、嫌な人は嫌な顔をするからね。
僕だって流石に嫌がる人に手を出すような性癖は持ちあわせていないから。」
そっと手を伸ばせば、頭をよしよし、と撫でていく。
距離感は比較的近いもの。
「なに、その人はきっと刺激を求めているのさ。
もしくは………味覚にそれこそ「才」があるのかもしれない。
ゆっくりお茶でも飲むといい。
僕と同じ感覚であるなら、そのお茶が一番落ち着くと思うから。」
■寄月 秋輝 >
「嫌な人は嫌、それはそうでしょう……
……あと多分、僕はあなたと歳が同じくらいなんですが……」
頭を撫でられて、特に不愉快な顔はしていない。
それでも、そんなことをする対象だろうか、という疑問はあるようだ。
「なるほど、そんな感じは確かにあるかもしれませんね……
僕はお茶やコーヒーで十分です」
もう一口だけ口に含み、こくんと飲み下した。
それを相手に差し出し、返す。
■霧依 > 「気にすることはないよ。こういう時は積極的な方が動くものさ。
何なら、年上だって僕は構いやしない。
その相手が素敵であるならば、ね。
何より、一つの道具を己の物にするように努力をする人に、僕は憧れがあるんだ。
移ろいやすい性格をしているから。」
返されたお茶をそのまま傾けながら、ベンチにぎしり、っと腰掛けて。
■寄月 秋輝 >
「頭を撫でるって、よほど年下の相手にするものだと思っていたので。
……まぁ褒められたと思って、いいことにしておいましょう」
刀を抱きながら、再びベンチに腰掛ける。
今度は女性の隣。
「僕はそんなに憧れられるような人間ではないと思いますが……
刀を振るう他に、生き方を知らないだけですからね」
■霧依 > 「そうかい? 僕はよくしてしまう。
じゃあ、同じくらいの年齢の相手に親愛の情を表す場合は、何をすればよいのかな?」
なんて、軽く笑い。
「いいじゃない。
道があるようで無い人の方が多いんだ。
それはきっと僕のようなふわふわとした人間が口にすることではないと思うけれどね。
それに。………まあ、僕は変わり者だから。」
お茶を置いて、さらりと笑う。
ねっとりと近寄りもせず、逃げもせず。
言葉は悪戯のように揺れ動く。
■寄月 秋輝 >
何をするか。確かにそう考えると、どうだろうか。
「頭ではなく、肩を叩いてみるというのは?」
こんな風に、と相手の肩をぽんぽんと叩いて見せる。
「どちらにせよ、隣の芝は青い、ということでしょうかね。
僕はあなたのように、いくつものことに手出し出来る器用さが羨ましいですよ」
相も変わらず、表情を変えない。
一定の距離を保ちながら、静かに佇んでいる。
けれど、少しだけ雰囲気は柔らかくなった、かもしれない。
■霧依 > 「ふふ、可愛らしい親愛の情だね。
どうやら僕は汚れているらしいよ。」
言いながら、くすくすと笑って肩を叩かれる。
何を考えたかは口にせぬまま、ぺろりと己の唇を舐めて。
「……そういうものかもしれないね。
だから、人は一人で生きるのに、他の人間が必要なんだろうね。
僕は霧依と言う。
旅の途中に、ちょっとこの場所に寄ったんだ。
しばらくいるけどね。」
■寄月 秋輝 >
「可愛らしいくらいのほうが、万人受けするでしょう。
慣れてから頭を撫でるなり、ベッドに誘うなりしたほうが順序としてはいいのではないでしょうか?」
すっと立ち上がる。
見下ろし気味に顔を向けると、うっすら笑みを浮かべていた。
汚れた相手に、同類に対する笑みだろうか。
「僕は秋輝。寄月 秋輝と申します。
ちょっと寄る、みたいな場所ではないと思いますが……
何か見つけたいものでもあるなら、応援しますよ。霧依さん」
■霧依 > 「旅をしていると、そういう順序がどうしても抜け落ちる。
素敵な人には、素敵と口にしたくなる。
言葉をかわすだけではなく、体の温度も交わしたくなるのさ。」
気にした様子もなく、あっさりと言葉を返して、ぺろりと舌を出す。
「秋輝、ね。 覚えておくよ。
………不思議なものが見たいんだ。
見たことがないようなものを見たい。 驚かされたい。
僕の今までを否定するようなことに、たくさん出会いたい。
そう思って、………歩いている。
もしも、そういうものを見つけたら、僕の手を引いてくれるかい。」
■寄月 秋輝 >
「多少意識した方がいいかもしれませんね。
素敵だと告げる前に離れられることほど、つまらないものもないでしょう。
……肌を重ねたいなら、なおさらに」
す、と自分の両手を重ね。
その手を開くと、青と緑に光る小さな玉が生み出されていた。
物理的な質量は一切ない、文字通り光の玉だ。
それがふわりふわりと舞い、霧依の胸の前に飛ぶ。
「……これは不思議ですか?」
くすっと笑い、一歩二歩とその場を離れる。
「あなたが望むならば、そうすればいい。
この島には、きっと不思議なものが目白押しだ。
そしてそれを僕と共有したいと願うならば、呼んでください。
……僕もまた、霧依さんの知らない世界をいくつか知っていますからね」
■霧依 > 「どうも僕には無理らしい。
でも、こういう出会いも刺激的で、忘れないとは思うよ。
ああ、たしかに不思議なものだね。
………そう。
この場所であれば、きっともっと不思議なものを感じることが出来る。
共有できるなら、これ以上のものは無い。
その時には………僕が手を引くか、手を引いてもらうか。
どちらでも構わないけれど、共に見ようじゃないか。」
言いながら、こちらもふいと立ち上がって、楽器を揺らし。
「いつでも。
僕はいつだって衝動的だし、いつだって感情の赴くままに生きてしまっているから。
朝起きたら、唐突に海に行きたがるかもしれないし、山を歩きたがるかもしれない。
こんないきもので良ければ、また是非に。」
ひらり、と手を振って歩きだす。
■寄月 秋輝 >
「ええ。きっとあなたが不思議なものを見るとき、共有したいと願った時。
僕もあなたの傍に駆けつけてみましょうか」
ぱちん、と指を鳴らすと光が花火のように散って消えた。
ふわりと足を地面から浮かせ、自身を宙に舞わせる。
「流れに身を任せて生きることもまた素敵だと思いますよ。
……少しだけ、あなたが羨ましい」
さようなら、と手を振り返し。
風を切り、まっすぐ空へと落ちて行った。
ご案内:「常世公園」から寄月 秋輝さんが去りました。
■霧依 > 「そういう、ものかな。
僕では感じられない、良さがあるのかもしれないね。」
空へと消えていく相手を見やる。
嗚呼。きっとお互い、同じように感じられないものもあるんだろうな。
地に沈む業を背負った旅人は、ふと寂しくもなった。
この島は、多様に過ぎる。
だから、共感は薄く薄く広がっていて、きっと確かなものとして感じられる回数が、少ないのだろう。
「………そういう場所だから、愛せるのだろうけどね。」
笑う。
この女は、その場にいるようでその場にいない。
のんびり、ゆるうりゆるり歩いて。 楽器はふらりふらりと肩で揺れる。
ご案内:「常世公園」から霧依さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に世永明晴さんが現れました。
■世永明晴 > 肩を落としている。
それは気落ちを示すサインではなく、疲れによるものだ。
と、いっても。なにをしたわけでもない。ただ歩いて、歩いた。
暑さの中ただ歩いただけである。
ベンチを見つけた。猫背のそれは、ひどく丸まっている。
「……も……無理……………っス」
崩れ落ちるように、そのベンチに座り込み。目元に腕を当てて視界を落とした。
何があったわけでもない。ただ、先日の演習場でのことで。
……自覚はあったものの。自らの体力のなさに、情けなさを感じただけなのだ。だから、余分に。長くに、歩いた。
息が上がっている。こんなにも体力がなかったものか。
■世永明晴 > ひんやりとしたベンチに疲労が吸われる。
心地よい疲労感。いや、心地よさはそこまでないが……。
瞼は閉じている。……休もう。
そう決めると、どうしてだか。今回は、この眠気に身を任せてもいいなと思ってしまった。
そうして、世永明晴は視界を暗闇に閉ざしながら。自然と眠りへ落ちていく。
■世永明晴 > 「お?」
目を覚ました。……正確に言えば、眠りに落ちた。
だから、自分はいる。
眠りに落ちた際の利点の一つ目。
元の運動能力に関わらず、ある程度の活動が出来る。
これは、睡眠していることにより、ある種のリミッターが外れてしまっているのではないか、と自らは推測している。
疲労への感覚の麻痺。どちらかというと、鈍くなる。
だから、この体勢からすぐ立ち上がった。
「お?」
だが、すぐに元の体勢に崩れ落ちる。
「はれ」
幾ら、鈍くなると言っても……元の体力が空に近ければ、動かせるものも動かせない。利点のようで……それはある種の負担にも近かった。
情けないなぁ。そううそぶきながら、カラカラと普段には似つかない笑いを浮かべた。……動けないならば、考えよう。
■世永明晴 > “自分”はあの残した意味に気付いてはいなかった。
考えている。思考能力も、どういったわけか。こちらの方が頭が回る。
手助けではない。どちらかというと、宣告だ。
自分にとっては、都合のいい宣告。
眠りに落ちた際の利点の二つ目。
ある程度、自らの感情に素直になる。
「…………いやだなぁ」
それは……異能を制御することに向けられていた。
起きてる側で言えば、自分は夢の中の人物のような物。
だが……こちらからは、自分が見ている物が現実でしかないのだ。
それが制御によって失われるのならば、それは現実の消失。いや、塗り替わる、浸食。自分はただの夢の中の住人になる。
記憶は連続している。自分は世永明晴である。
……記憶が連続しても、そこには差があるのだ。カラカラと笑う。
■世永明晴 > そして、自分が世永明晴であるからこそ……自分というものが歪であり、世永明晴を保つためには消えるべきであることも認識していた。
眠りに落ちた際の利点の三つ目。
瞼を閉じているから、気づかれにくい。
白衣で乱雑に少し濡れた目元をこすった。
自分が世永明晴である限り、この葛藤は続くだろう。
だが、もし。この前提が崩れるとしたら……ソレは自分の方だろう。
そうするならば、自分は一体どうするのか。
少し休んでいこう。ひんやりした金属製のベンチにもたれかかり乍ら、バテたように、その身を預けていた。
ご案内:「常世公園」に阿曇留以さんが現れました。
■阿曇留以 > 学校の帰り道。
夏休みといっても図書室にいって本を漁ったり誰も居ない学校を回ったりと、夏休み特有の楽しさを満喫していたりしていた。
そう、そんな帰り道。
「あの、大丈夫ですか?」
ベンチにもたれかかっている男性をみつけ、なんとなく声をかける。
ちょっとだけ、具合が悪そうに見えたためだ。
■世永明晴 > のそりとした動き。
確かに、この状態では具合が悪いととられてもしょうがない。
目を閉じたまま、声の方へ顔を向けた。
「だいじょうぶー。ちょっと……バテてただけ」
カラカラと笑う。その証拠とばかりに立ち上がって――。
「お、おぉ?」
ふらついて、またもとの位置に座り込んだ。まだ、ダメらしい。
■阿曇留以 > 「あら、だめよ無理しちゃ。
ちょっと待ってて」
座り込んだ彼を見て、慌ててその場を離れる。
逃げた……わけではない。
近くの自販機に行くと、ペットボトルを4本ほど買うと、両手に持ちながら帰ってくる。
「はい、冷たいお茶。
これ、脇に挟んで体を冷やして。
で、これはスポーツ飲料。
冷たいからゆっくり飲んで、ね?」
二本のお茶を渡して脇に挟むよう指示し、一本のスポーツ飲料を渡して飲むように言う。
熱中症と思っているらしい。
■世永明晴 > 「あらー」
気の抜けた声だ。いや、それは元からか。
慌てた姿に小首を傾げる。忙しない人だ。……そうさせているのは自分という事は、あまり頭にない。
戻ってきた姿を見るに口を呆けた様に開けた。
「おぉー。これはこれはご丁寧にー」
どこか子供らしい仕草だ。少しばかり楽しそうに受け取ると、指示通りに両脇に挟み、もう一つの飲料も受け取る。
熱中症ではない。ないが……その場にいるのだ。
「冷たい冷たい」
おや。と一つ思う。この忙しない人、どこかであったか、と。
■阿曇留以 > 「だめよ~、こんな暑い日にあまり外にいちゃ。
せめて体を冷やすものとか、お茶とか持たないと」
そして最後のお茶を彼の首に押し当てる。
ニコニコした顔にからかっている様子もなく。
そっと隣に座る。
■世永明晴 > 「夏、夏だからー」
だからしょうがないとばかりに笑った。
こうして話すだけで、自分の現実であると否応なく伝わってくる。
ヒィン。首筋にあてられたそれに、まぬけな悲鳴。
本当に驚いているのかすら微妙な声。
「冷たいのよさー」
抗議の様な声を上げ乍ら、その後に瞳は当然のように閉じたまま小首を傾げた。
違うか。覚えていない。記憶にあるような気がするが……。
「巫女、巫女さんでーすか?」
■阿曇留以 > 巫女、といわれれば確かに姿は巫女だし職業も巫女だけれど。
「はぁい、巫女ですよ~。
職業は巫女兼任の退魔師です~。
最近は退魔師らしいことはしてませんけれどねぇ」
うふふ、なんて笑いながら彼の問いを肯定。
■世永明晴 > 「ほほ、ほほぉ」
物珍しい。いや、どうかな。少なくとも、自分の認識上それは物珍しい。
不躾と捉えられてもおかしくない程、ゆらりとその姿を眺めた。
と、言っても。相変わらず瞳は閉じたままだったが。
「退魔師、退魔師かー」
■阿曇留以 > 「そうそう、退魔師なのよ~。
妖怪とか、そういうの類の専門家なのよ~」
目を閉じたまま語りかけてくる彼に笑いかけ。
というより、彼はこちらのこと見えているのだろうか。
「……えーと、目を閉じたままなのは、どこか調子が悪いのかしら?」
なんて、直球で聞く。
■世永明晴 > 「退魔……退魔」
知識の狭さに少しだけ悪態をつきたくなる。
知識が自分を作るなら、まだまだ足りない。現実感を味わっていたい。
そっかー。等と気の抜けた声を上げ乍ら、いつか調べてみようなどと考えた。
「調子?」
調子は悪くない。ただ、眠っているだけだ。
……眠っている? 痛いほどに何かが引っ掛かったが。
「寝てるの。寝てるからー」
眠っているから、瞳は閉じている。ひどく自明の理だ。
当たり前のことを言うかのように、少しだけ硬くなった声でそう返答した。
ご案内:「常世公園」に水月エニィさんが現れました。
ご案内:「常世公園」から水月エニィさんが去りました。
■阿曇留以 > 「あら、寝てたのね。
もしかして、眠いのかしら……。
眠いのならここで寝るよりも、帰ったほうがいいわよ~?」
目を閉じたままの彼をみている留以。
このまま寝ていたらほんとに危ないかもしれない。
一応、注意だけしておき、帰るようには促す。
■世永明晴 > 「いつだって寝てるのさ」
眠りは現実で、起きれば夢。
アベコベの世界を生きてるから、なにも心配することはない。
それを、態々いう事もないが。
「そう、そうだね。でも大丈夫」
ついでとばかりに、一つ尋ねる。
「巫女、巫女さんこそ暑くないー?」
気になる。暑そう。
■阿曇留以 > 「あら、わたし?
私は~……」
素直に言えば、暑い。
海に入って体を冷やしながら海のそこへ潜っていきたいぐらいだ。
けれど、なんとなくそういってしまうといけない気がして。
「私は大丈夫よぉ。
巫女だもの~」
せいいっぱいの笑顔だった。
■世永明晴 > 「あはは」
カラカラ。カラカラ。
笑う。
「そっか、そっかー。巫女だからか」
理由にもなってない。だからこそ笑った。
その位の機微は読み取れる。先程受け取った飲料を一口飲んで、彼女の首筋に、やられたように押し当てた。
まだ、冷たいだろう。
■阿曇留以 > 「そうそう、巫女だから――ひゃっ!?」
不意打ちを喰らった巫女。
一瞬の冷たさにびくりと体を震わせ胸を弾ませる。
物理的に。
「び、びっくりした~。
結構冷たいのねぇ、首に当てると」
■世永明晴 > 「そう、そうねー。暑いの紛れたー?」
ケラケラ。ケラケラと笑いながらそう言う。
わお。見向きもしないなどという事は生憎できません。
お年頃ですから。おぉー、等の声を漏らしながら、割と見る。
どちらかというとこれは小学生の反応ではないかと思ったが、今更だ。
■阿曇留以 > 笑う彼に同調するよう、留以も小さく笑う。
してやられたとはこのことだろうか。
「そうね~、ちょっとだけ冷えたわぁ~」
くすくす笑って、しばらくして立ち上がる。
どうやら彼は大丈夫そうだ。
眠い、といっていたのが気になるが
「それじゃあ、私はそろそろ行くから。
ここであまり寝ちゃだめよ~?
熱中症でたおれちゃうからね」
■世永明晴 > 「でしょ、そうでしょ」
うんうんと頷きながら、まぁ、先程の事はとりあえず置いといて。
目を閉じたまま、立ち上がるその姿を見上げた。
しかし、投げかけられたその注意には、頷くことはなく。
曖昧に笑う。
既に眠っているのだから。
「またねー。また」
■阿曇留以 > 軽く手を振り、その場を立ち去る。
独特な喋り方をする子だったなぁ、なんて思いつつ。
ペットボトル四本分の所持金が消えた。
ご案内:「常世公園」から阿曇留以さんが去りました。
■世永明晴 > その姿が見えなくなると、一つ息を吐いた。
脇に挟みっぱなしだったペットボトルを取り出して、横に置く。
……。現実との区別なんてつくわけがない。此処が現実で。
「……いやだなぁ」
先程と同じ言葉。同じ感情。
むしろ、人と会話して強まったのかもしれない。
不意に立ち上がる。もう、ふらつきはなくなっていた。
考えてもしょうがないのだ。どちらにしろ、まだその根本たる制御法は見つかっていない。
そもそも、見つからないのかもしれない。
それは期待なのか、それともある種の諦めなのか。
喜んでるのか、悲しんでるのか、分からない心境を傍受した。
「なんか、なんか食べて帰ろう」
自分には悪いけどね。そう付け加えて、そのぐらいはさせてもらう。
自分は世永明晴なのだから。
受け取ったペットボトルを小脇に抱えて、歩き出した。
ご案内:「常世公園」から世永明晴さんが去りました。