2016/09/26 のログ
ご案内:「常世公園」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 盛大に壊した訓練施設の壁の修繕作業。
学校から罰則として与えられたそれを済ませた帰り、七生は公園に立ち寄った。

「はひぃ……疲れたぁ~」

戦闘行為そのものより、修繕作業が大変だった。
大半は施設備え付けの修復機能が働いてくれたのだが、中にはその機能ごと壊してしまった部分もあったらしい。

それらを教員の指導の下修復し、その後『大規模な戦闘行為は演習施設で』との旨を小一時間に亘って説教された。
じっとさせられているのが苦手な七生にとって、まさしく地獄の様な一時間であった。

東雲七生 > 自動販売機で果物のフレーバーが付けられた水を買い、
そのペットボトルを持ったままベンチへと這うように向かう。
肉体的な疲れもあったが、それ以上に精神的な疲れが大き過ぎた。

「あんな長い説教受けたのいつ以来だろ……?」

多分、去年の夏休み前に大半の強化で赤を貰った時以来だろう。
そう考えると、自分もだいぶ成長したものだと感じる。
何しろそれ以降赤点の数は減ったし、今年は補習無しで夏休みを過ごしたのだから。

「やればできるんだよなあ、俺もなあ。」

ふふへへ、と締まりのない笑顔を浮かべながらベンチに腰を下ろす。
そしてそのまま流れる様な動作でペットボトルの中身を呷った。

ご案内:「常世公園」に化野千尋さんが現れました。
化野千尋 > 「なにかおもしろいものでもありましたか?」

ベンチに座る少年に、通りがかったセーラー服が声を掛けた。
一人でいるのに笑顔でいる人というのは、あまり多くはない。
大抵、あったとしても携帯端末の画面を見ているときくらいだろう。

「もしよかったら、あだしのにも教えてはもらえませんかっ。」

セーラー服の裾を握りしめる。
実に不審な声掛けであったが、化野千尋にとっては精一杯のコミュニケーションであった。

東雲七生 > 「へぁぃ!?」

ゆるゆると自分の成長を誇っているところに声を掛けられ、上ずった悲鳴のような声が上がる。
疲れていたとはいえ人の接近に気付かなかった程度には、
心底緩んでいたらしいことを自覚して息を吐くと同時に緩んでいた気持ちをちょっと締める。

「び、びっくりした……
 え、えっと。大した事じゃないんだけどさ、
 1学期、去年より成績良かったから。今学期も頑張ろ、って思った……だけ」

言葉にすれば案外面白みも何も無いな、と反省しつつ。
ベンチに腰掛けたまま、セーラー服の少女に、ぱやっとした笑みを向ける。

化野千尋 > 「ふあいっ!!」

半ば悲鳴のような声に、思わず彼女も声が漏れた。
傍から見れば、実に間抜けな光景である。
続いた言葉には、いくらか落ち着いた調子で「そうだったんですねえ」、と返す。
ふう、と小さく息を吐いて、抜けてしまった気合を入れ直す。

「えへへ、驚かせてしまってすみません。お隣、よろしーでしょうか。
 成績……あ、そうですよねえ。そういえばみんなそんな話をしてたような気もします。
 えーっと……、」

そうだ、と思い出したように小さく手を打つ。

「あだしのです。化野の、ちひろ、と申します。
 秋からの転入生、です。ええと、学年は一年生。えっと……」

じいっ、と、伺うように彼の姿を見る。

「せんぱい、で、だいじょーぶでしょうか。」

東雲七生 > 「いやいや、俺の方が勝手に驚いたわけだし……。」

大声出してごめん、と軽く頭を下げながら。
隣良いかと訊ねられれば、快く頷いて少しだけ横に退く。

「化野の、ちひろ……そっか、転入生かあ。
 うん、俺は東雲七生。二年だから先輩で合ってるよ。」

見た目は同い年かそれ以下に見えるかもしれない。
それでも立派に高校二年なのだ。少しだけ自慢げに胸を張る姿もちょっとあどけないが。

化野千尋 > 「しののめさん、ですねえ。
 それではおたがいさま、ということにいたしましょう。」

それでは、と軽くベンチを手で払ってから腰を下ろす。
顎に人差し指を当てながら、そうだ、と彼を覗き込むようにして視線を向ける。

「しののめさんは、どんな授業を受けてらっしゃるんでしょーか。
 ええと、答えにくかったら全然構いませんので。
 先輩方のおすすめの授業とか、教えてもらえたらな、なんて思いまして。」

ごそごそと、小さなメモ帳とペンを引っ張り出す。
答えにくかったら、などと言いつつ、聞く気満々の姿勢であった。

東雲七生 > 「そ、そうだな。お互い様、だなっ」

にへへ、とはにかむ様に笑いながら大きく足を前へと投げ出す。
まだ少し夏の名残を日差しに感じながら目を細めていたが、質問を投げられれば振り返って。

「……ん、俺の受けてる授業?
 ええと、基本的には異世界の生物を相手にした戦闘術、とかかな。
 座学はどーも苦手でさ、生物くらいしか取ってないんだ。」

魔法や魔術の類とはどうにも相性の悪い身体だから、
それらの授業も取って無い事を付け足す。それくらいかなあ、と少し考える様に首を傾げて、

「あんま参考になんねーかな?
 見た感じ、化野、あんまり動き回るの得意って感じじゃ無さそうだしさ。」

化野千尋 > 「えへへ、バレバレですねえ。
 あだしのは、本島のほうでも体育の成績は2でしたから。
 異世界の生物を相手にした戦闘術……ですかあ。」

ふうむ、とひとつ声を落とす。
聞いていいものか、よくないものか。
人との距離感の取り方がこれでいいものかと悩みながらもゆっくりと口を開く。

「しののめさんは、異世界のいきものを相手にした戦闘のご予定があったりするのでしょーか。
 すみません。あだしの、あまりここに来て長くないもので。
 みんなそういう授業を選んでるのかな、って思ったんです。
 それこそ、何か揉め事が起きたときのために、じゃないですけれど。」

そして、続いた言葉にははて、と首を傾げた。

「異能も魔術も相性が悪いのに、この学園にいらっしゃるんですか……?
 あ、えっと。そんなに深い意味はないんですが。
 てっきりあだしのは、みんな魔術や異能のせいでここにいると思ってましたから。
 珍しいな、って、思ったんです。」

失礼なことをすみません、とぶんぶん頭を下げる。
それでも疑問は晴れない。そんな表情を浮かべていた。

東雲七生 > 「ま、実際体育の成績ってアテになんねーけどさ。」

当たってた、と笑ってから肩を竦める。
そしてどうにも躊躇いがちな、言葉を選ぶような様子の少女を見て
ひとまず、応えられるなら出来る限りそうしよう、と身構える。

「ええと、……まあ予定を立ててるって訳じゃねーけどさ。
 何が起きるか分かんないから、この学校ってか島さ。
 もし万が一の事があって、その時に後悔しないように、ってだけさ。
 
 ああ、もちろん必ず皆受けてるって訳じゃねーよ?」

そもそも、そこまで座席数の多い授業でも無い。
今でこそそれっぽい理由はつけてはいるものの、七生が当初選んだ理由も、
自分を追いつめられるから、という大変にスパルタな理由に過ぎない。

「あいや、異能の所為で此処に来てるよ、俺も。
 結構最近まで嫌ってて、出来るだけ無い物として扱おうとしてた。
 魔術は本当にからっきしでさー、初歩の初歩すら出来なくて早々に諦めたんだ。」

気にすんな気にすんな、と笑いながら手を振る。
珍しいという自覚はそれなりに持ち合わせているから、彼女の疑問も尤もだと思う。

化野千尋 > ぱち、と瞬きを重ねる。
彼の言葉ひとつひとつを咀嚼するように何度か頭の中で繰り返して、
そうしてようやっと選んだ言葉が溢れる。

「過去形……なんですね。
 あだしのには、みんな自分の異能――自分の武器を大事にしているように見えるんです。
 けど、しののめさんはそうじゃなかったんですよね。

 くるしくは、なかったのでしょーか。
 過去形になるまえ。
 自分が持って生まれてしまったものを、嫌うのはくるしくはなかったですか?
 ……あだしのなら、ムリかなあ、って思うので。
 これも、参考までに聞かせてもらえたらなって、おもいます。」

やや落ちたトーンに自分で気づけば、なんでもないように顔を上げる。

「興味があるんですっ。あだしのはっ。
 ないものとして扱ってたものを、どうしたら大事にできるようになるんだろう、って!」

東雲七生 > 「うん、過去形──でも、ホントのホントに割と最近のことだけど。」

今でも疎む心はある。
もし違うものと換えられるのであれば、少し悩むくらいには。

でも、

「ははっ、授業のことの次は俺個人のこと?
 ……ってわけでもない、か。

 ないものとして扱ってたものを、どうしたら大事に──ねえ。」

うーん、と顎に手を当て首を傾ぐ。
どう話せば伝わるか、そもそも伝える必要はあるのか。
それらを考えて、考えようとして、上手く考えられなかった。
ただ、あまりにも真剣に求められたので──

「くるしい、と言えばくるしかったかな。
 でもそんな苦しさなんて何とも思わないくらいには、嫌になる理由があったんだよ。
 話すとしたら、まずはそこからだなー」

格好悪い話になるけど、聞きたい?と苦笑を浮かべて頬を掻く。

化野千尋 > 「あ、ええと、すみません。
 その、はい。ちょっと、知りたいなって、思ってしまいまして。」

申し訳なさそうに、顔を真っ赤にして視線を手元に落とす。
喋り始めるのには時間がかかる割に、一度興味を持って喋り始めたら
止まらなくなってしまうのは彼女の明確な悪癖だった。
自覚していたが故に、思わず目を伏せた。

「――……、」

はぐらかされるかおかしな人だ、と思われるに違いない、と思った矢先だった。
返った返答は、心底真剣で、真っ直ぐなものだった。

「きかせてもらえるのでしたら、ぜひ。
 どうか、あだしのに教えてもらえますでしょーか。」

僅かに視線を持ち上げる。
伸ばしっぱなしの前髪の間から、赤色の双眸がちらと覗いた。