2016/09/28 のログ
羽切 東華 > 「と、そろそろ帰らないと鈍も心配してるかもだし」

一応、魔力パスも繋がってるので、それ経由で念話を展開。
相棒に「今から帰るよ」と、伝言じみたそれを送ってから一息。
最後に一度、革手袋で覆った右手を一瞥してから公園をゆっくりとした足取りで立ち去ろうか。

ご案内:「常世公園」から羽切 東華さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
雨の降りしきる公園、傘もささずにベンチに座る。
魔術結界が体を覆っているため、一切濡れることはない。
着物の裾が泥で汚れることも無い。
目を閉じ、まるで眠るかのように。

集中、しつづける。

「……展開、収縮……維持。
 保護、転送……始動」

公園を覆う程度の大きさの結界を展開する。
存在位相ごとズラすことで、内部と外部を隔絶し、また内部で起きた破壊を現実にフィードバックさせない、
秋輝の知る限りで最強かつ最も汎用性の高い結界術だ。

展開して三秒、即座に収縮させ、結界を崩壊させる。

三秒分、この公園内に届かなかった雨がザン、と音を立てて降り注いだ。

寄月 秋輝 >  
かれこれ一時間ほど、こんな結界の展開と解除を繰り返している。
雨には濡れていないが、魔力消費が激しすぎて若干めまいがする。

こんな無茶苦茶な練習をしているのは、先日病院で露呈した自分の結界術の稚拙さ、
結界展開時の並列思考の弱さを矯正するためだ。
結界術の使い手が少ないこの世界で、自分が結界師をやらねばならない瞬間は必ずある。
その時、結界を展開して他がおろそかになりました、で全滅の憂き目にあったのでは意味が無い。

「……ふー……ぅぅぅ……」

それでも、結界の展開と解除を短いスパンで連続し続けるのは負担がかかる。
慣れていないだけに特に。

(でも慣れてないから、が言い訳になるほど……)

戦場は甘くない、と思う。

寄月 秋輝 >  
頭の中では、その並列思考の訓練ということで、退魔術も展開準備をしている。
隣に悪霊や妖怪でも居れば、即座に浄化させられる程度に。

とにかく苦手の克服だ。
地上及び空中での高速機動戦、接近戦も遠距離での魔術による射撃・砲撃戦も十二分にこなせる。
だが退魔戦で自分の能力を完全に出し切れるようにするには、少々時間がかかる。
詠唱破棄、短縮が出来る程度には自分を追い込んでいきたい。

雨に濡れないはずのに、額に浮かんでいた水滴を親指で拭う。
ぺろりと舌を這わせると、汗の味がした。

「……そんなにやってたのか……」

予想以上の疲労が体を襲う。
一度結界と退魔術の術式を全て破棄し、ベンチにもたれかかって大きく息を吐いた。

寄月 秋輝 >  
休むが、頭の中は思考が駆け巡る。
自分の能力の適性、現状可能な技術。
そして自分の知る人達の技術。
天秤にかけて、自身がどうしてもできるようになるべきことは何か、と考える。

他人に任せ、自分が自分のやるべきことに専心することで、被害を最小限に、成果を最大限に出来るようには。

「……全部オレがやるべきでは……?」

非情によろしくない結果に至る。

先日の学校、そして直後の病院で思い知った。
やはりというべきか、生徒の戦闘力はアテにしてはいけない。
彼らを少しでも信じた結果、けが人が増えたのは完全に自分の誤算だ。

そりゃ『八雲亜輝』ほど尋常ならざる実戦経験を積んだ生徒が居たら確かに怖いが、
そのレベル以前に経験が足りない子供に背中を任せられるとは思えない。
つまるところ、今は牽引しながら実践経験を積ませる、のが正解なのではないだろうか。
自分も実戦に出た時、一人で戦ったわけではないのだ。
先輩や隊長の背中を見て、彼女らに守られ、いつしか自分が皆のために戦う立場になっていた。

戦うことを選んでしまった生徒には、そうして経験を積ませるべき、なのかもしれない。

寄月 秋輝 >  
「……結婚する前に死んでそう」

ぽつりと漏れる。
最近割と結婚願望が表に出てきた分、生存欲求も増えたものだ。
なのに、状況は悪くなるばかり。

「もう少し平和がいいな……」

家で茶を飲んで、適度に運動して、魔術を研究して、一日を終える。
そんな普通の一日が欲しいものだ。

だが、そんな理想は遠く果てない。
もっと静かに暮らしたいのだが。

寄月 秋輝 >  
ただ先日、風紀委員会では例の悪意の討伐を大掛かりに組んでいた。
こうなる前に自分の手でなんとかしたかったのに、ままならないものだ。
概ね、腹に空いた穴が縫っても縫っても開いたのが悪い。

「……平和って難しいな……」

大きなため息をぶっ放した。
平和とはなんだ。
自分が動かなくていい程度のことだろうか。

つまり周囲の人たちに任せて、怪我無く終われる程度の……

「……甘いんだよなぁ……」

頭を抱えた。
そんな案件しか無ければ苦労はしない。

寄月 秋輝 >  
静かに思いを馳せる。
そう、平和とは先達が用意したものだ。
子供だった自分たちのために、大人だった人たちが戦ってくれていたからだ。
そして今日の自分が居るのは、『八雲亜輝』のために命を捨ててくれた人が居たからだ。
ならば、きっと順番なのだ。
力を、命を費やして、子供たちを守る役目は。

そして今、ようやく自分の側に来たのだろう。

命とは、生命に限らない。
剣士としての命、魔術師としての命、命の形はあらゆるものだ。
でもそれで守れる、次の世代があるならば、この命には価値があると言えるのだろう。

「……そうですよね……?」

心の中に居る、かつての上司に問いかける。
初めて斬ってしまった人の姿。
捜査に関して教えてくれ、命をもって自分たちを守ってくれた人の姿。

寄月 秋輝 >  
雨脚が強くなってきた。
体を跳ねる雨水の感覚は伝わるが、体が濡れることは無い。

極限まで練り上げ、日常レベルに落とし込んだ魔術。
それはもはや、この身を日常からかけ離れた存在にしてしまった。

「……今日はここまでにするか……」

ふら、と立ち上がる。
酷使した精神力は体まで影響を及ぼす。

帰ったら飲酒と炭水化物だな、と思いながら。

ぱしゃ、ぱしゃ。

草履で水を跳ねながら、帰路についた。

ご案内:「常世公園」から寄月 秋輝さんが去りました。