2016/10/16 のログ
ご案内:「常世公園」にルチアさんが現れました。
ルチア > 先週頭に学園への入学手続きを取り、金曜日に入学許可が降りた。
晴れてこれで常世学園の生徒となり、借り物である仮初の塒から女子寮へと生活拠点を移したのが昨日。
異邦人用の支度金の貸付制度を使い、取り敢えずの金銭を得て、
生活環境を整えるべく夕方からずっと動き回っていた。

荷物は全部明日寮の方へと送ってもらえるように手続きを取ったので、
荷物らしい荷物は携帯端末の契約のあれこれが入っている手提げ袋のみだ。
ホットの缶コーヒーを自販機で買い求めて、適当なベンチに腰掛けて一口飲んだ。
半日近く動き回っていたせいで、少々疲れがある。
小さく息を吐き出した。

吐息が白く解けて宙へと消えていく。
相変わらずここが異世界だと信じられないほどだが、
信じられないほど意固地でもない。

受け入れは済んだ。
ここは、自分のいた世界ではないと。


「まあ……何とかなるだろう」

楽観視とも言える言葉を吐き出しながら、またコーヒーを飲んだ。

ルチア > 「取り敢えずは仕事だな……。
全く、まともな労働をする機会が待ってるなんて思っても見なかったよ」

衣食住を支えるためには金銭が当然必要であり、
それを得るためには何かしらの仕事を探すべきであり――
そんな理由で缶コーヒーを脇において、手提げ袋に突っ込んでいた求人情報誌(0円)を開いた。
それなりに厚さはあるから、職種やらを問わなければ何かしらの働き口は見つかるだろうか。
携帯端末を契約したのもそれが理由で、仕事をするとなると真っ先に必要になるものだと思ったからだ。
懐具合を考えるに、少々痛い出費ではあったのだが

ぺらりぺらりと、ゆっくりとページを捲っていく。
街灯の明かりがあるし、夜目は良く利く方だから問題はない。
選べなければ、とは思うが矢張り最初は選り好みをしたいもので、
とは言え労働の経験は無いのだから、どういう職種が向いているのかも解らない。
日雇いや短期のものを探して、自分にあったものを探すか、とも考えるが。

ルチア > 「経歴を活かすなら、警備あたりが良いのかな……。
加工場とかは絶対に向かない自信もあるしな……」

島なので当然、海産物の加工場の求人もある。
自分が白衣やらマスクをして魚を捌いている光景なんて考えただけでも寒気がした。
ぶるりと身体を震わせると、脇においた缶コーヒーを飲み干す。

後は体質的な問題で、昼間屋外がメインの仕事は殆ど全滅、という所だろうか。
そういう意味では研究所やら何やらの夜間警備の仕事はとても魅力的に思えた。
元々体質は夜型なのだ。
睡眠時間もそれほど必要はない。

取り敢えず、そこらのページの端を折って印をつける。

ルチア > 「後は多いのは接客業か……」

飲食店が目立つ気がするが、コンビニ、書店やらスーパー、ショッピングセンターの販売員も決して少なくはない。
アルバイト、と言われて真っ先に思い浮かぶ業種がそれなのだから多いのは当たり前か。
ただし大体のものは『長期で働ける方歓迎!』と書かれている。
臨時や短期だとオープンスタッフや期間限定の店舗の募集がいくつかある程度だ。

ただ、こう、愛想をふりまくのはあまり得意ではない、と思う。
やったことがないのでなんとも言えないことではあるが)

ルチア > 「…………もしかしなくてもだが。
案外吸血鬼相手に切った張ったしてたほうが楽なんじゃないか……?」

そんな疑問がふと口をでて出た。
確かに危険な仕事ではあったが、自分は組織に所属していたのもあってそこそこ収入は安定してたし、
実際に吸血鬼を灰にした時の支給金も中々の金額を貰えていた。
吸血鬼を狩る以外は自由に過ごせていたので、余暇もそれなりにあった。

――今にして思えば案外ホワイトな仕事であった。
勿論ある程度違法行為は行っていたのは事実であるが。

とは言え、現状を嘆いていても仕方がないだろう。
ふと缶コーヒーの缶を手繰り寄せて、それは先程空にしたことを思い出して思わず舌打ちした。

ご案内:「常世公園」にシング・ダングルベールさんが現れました。
シング・ダングルベール > 「お……おお、就活してる人はじめて見た。」

思わず零れてしまった本音。
学生の本文は勉学にありとは言うけれど、この島じゃ頼るべき親がいるなんて方が少ない。
生活の基盤を自分でつくらなきゃいけないなんてのは、当たり前のことだものな。
俺だってそうだ。手伝いとはいえ、おやっさんの店で働いている。
賃金が貰えるってわけじゃなく……その、小遣い制で。

「ええと、最近島に来た人かい……? 俺はシング。魔法使いだ。
 君さえ良ければ話がしたい。」

手土産のひとつもあれば話しやすいかと思ったけど、あいにくそんな気の利いたものは持ってなかった。
ああでも、疲れてそうなところに甘いものはいいよな。
そう思って俺は、飴の包みを差し出した。りんごフレーバーの。
「苦手じゃなければ。」ってね。

ルチア > 聞こえてきた声にちらりと顔を上げて、軽く目礼する。
就活している生徒は案外少ないのだろうかと思うが、そこまでこの島に詳しいわけでもない。

彼の想像通り自分は頼れる、と呼べる人はいないのだし、
生活するためには金銭が必要なわけで――、

と思っていた所で話しかけられた。
人懐っこい、とは言えないが緩やかな笑みを浮かべた)

「ああ、丁度二週間と少し前に、ね。
ルチアだ。吸血鬼狩りをしていたんだが、開店休業中でね。
喜んで。丁度就活にも疲れてきていたところだ」

差し出された飴には、ありがとう、と礼を言って受け取った。
代わりにというわけでもないが、空の缶コーヒーを避けて、彼が座るスペースを作ろう。
立ち話もなんだろう? と緩やかな笑みのまま。

シング・ダングルベール > お言葉に甘えて腰を落ち着ける男。俺だ。
フードをバサりと外し、髪を振り乱す。
……夜風が心地よい。が、なんか犬みたいだなと自分で少し笑ってしまう。

「俺は3週間……いや、一か月だったっけ。君とあまり変わらないか、少しだけ先かなぁ。
 一足先に学生をさせてもらってる。

 けど、吸血鬼狩りはしたことないね……遭遇はもっぱら映像か書籍の中だけで。
 実際、この島にもいるものなのかい? 君のようなヴァンパイアハンターでないと、そも見えないと?」

そこまで言ってから、よく考えたらこの島だ、なんでもアリだものなと一人納得してしまう。
俺だって、この島じゃ昔はフィクション扱いの魔法使いだしな。

ルチア > 手にした空き缶はすぐ側のゴミ箱へと適当に放っておいて。
頭を振る様子に思い浮かべたのは同じことで、懐っこい犬のようだなぁ、と思ったが当然ながら口には出ない。

「へぇ、じゃあ先輩か。
学生になったのはつい一昨日何だけどね。
それで、まあ公的には身分も決まったことだし仕事でも、と思ったわけだけど。

必要がなければするような仕事でもないよ。まあ、吸血鬼狩り、と言っても元いた世界での話だしだけどね。
奴らにも今のところは遭遇したことはないなぁ、見えるかどうかはもうその個体に寄るとしか。

この世界の吸血鬼が、どういうものになるのかもよく分からないしなぁ、まだ。

魔法使い、と言ってたいけれど。
吸血鬼狩りなんかよりよっぽどロマンがある仕事――仕事なのかな、だと思うけどね。
悲しげなお姫様の願い事を叶えたりとか?」

魔術師、では無く魔法使い。
その呼称は何処かロマンティックだ。
人々を幸せにするような雰囲気がある。
からかうというよりは言葉遊びのような口調で。

貰ったキャンディーを口の中に放り込む。
りんごの味は、甘い。

シング・ダングルベール > 「ハハ……ありがとう。そう面と向かって言われると、なかなか心がくすぐったいね。
 うぶ毛で輪郭をなぞられているような、そういった不思議な感じがするよ。
 俺はいつだってそうありたいと思うし、今後もそうあるべきだと思ってる。
 けど実のところ、日銭を稼ぐのは喫茶店の店員業なんだよ。変な話だろ?」

「宮廷魔術師なんて職業がこの島にあれば、いくらか優雅に過ごせるとは思うけどねぇ。」なんて、自嘲しながら目を細める。
そしてワンテンポ遅れでそう言えば、と膝を叩く。

「うちの店で良かったら、とりあえずの働き口としてでもどう?
 今はおやっさんと俺の二人でさ、おやっさんていうのは店主のおじさんなんだけど……。
 昔、女房と娘さんに逃げられたらしくて、もう完全に華がなし。エスニックでよい雰囲気の店なんだけどさ。
 どうかなあ……いきなりだから即答は難しいと思うけれども!」

ルチア > 「君の表現は詩的だなぁ。
いいじゃないか、喫茶店の店員業。
君の言葉と、店のコーヒーで人を幸せにして上げることが出来る」

違うかい?
と、少しばかり首をかしげるようにしながら。
「お城の代わりにあるのは巨大な学校だけだからねぇ」なんて、自嘲する彼には気の利いた言葉もかけてあげられなかったけれど。

そうして、告げられた言葉に傾げたままの首が止まった。

「それはありがたい申し出だけれども。
だけれど正直を言えば仕事らしい仕事をしたことはなくて、
当然ながら接客業の経験も皆無でね。

勿論諸々必要な事柄についてはそれ相応の努力は惜しまないけれど。
それでもいいのならになってしまうけれど」

ありがたい話だ。
正直仕事についてはどうしていいか解らない状態だったし、
この状況で断る理由はない。
この青年を見るに彼も、彼の言う“おやっさん”も悪い人間では無さそうだし――。
と思えば、取り敢えず自分の現状を伝えた上での、“いいのかい?”である。