2016/10/17 のログ
シング・ダングルベール > 「その点はきっと大丈夫。
 君の言葉選びは人を喜ばせるものがあるし、十分に魅力的だよ。
 いや、いやらしい意味合いではなく! 純粋に、人として。本当だよ。本当。」

詩的なのは彼女の方だとも。
ちょっと特殊な、以前雑誌で見たなんだったか……そう! 執事喫茶。
ああいうのも似合う人だ。この簡単なやり取りだけで、わりとドギマギしている俺がいる。
これ常連のおじさんたち、一撃だな……と思うと、他人事だもの、愉快な気持ちになるもんだ。

「異邦人街……はわかるよね。あの辺りにある、異国情緒溢れる喫茶店さ。
 もし道がわからなければ連絡をくれれば……って、ごめん! 一度によくないな。」

そういえば、とローブの下、ズボンのポケット、その内を漁る。
指先に掛かるのは店の鍵やら携帯端末やら。それと薄いカードケース。
中身は店の連絡先やら簡易的な地図やらが書いてある、レジ前によく置いてあるやつだ。

「ここを訪ねるか、連絡してくれるといい。もしべらんめえ口調のおじさんが出たら、それがうちのおやっさんだ。」

ルチア > 「ふふ、ありがとう。
そう言われて嬉しくない女性はいないからね。
いやらしい意味合いがあってもなくても、そう言われるのは嬉しいものさ。
いや、わかっているから大丈夫だよ、言葉のあやだと思ってくれて構わない」

くつくつと何処か意地悪気に喉が鳴る。
慌てる彼が少しばかり、失礼ながらも可笑しくて。
褒められて嬉しくない女性はいないし、特に褒められた内容、それを否定もしなかった。

「ああ、場所は解るよ。まだ行ったことはないんだけど――。
その感じだと見たら解るのかな。
いや、大丈夫だよ、話が早く進むのは嫌いじゃないしね」

幸運とは、思いもかけず――しかも、準備の隙を与えずやってくるものなのだ。
だから、準備が出来ていなくともそのまま乗っかってしまうしか無いのだ。
だから、彼が――いや、“おやっさん”も含めて彼らが良しとしてくれるのであれば、そのまま乗っかってしまうつもりにはなっていた。

そして、差し出されたショップカード。それを受けっとって、目を通す。
行くのは迷わず行けるだろう。

「ありがとう。近いうちに連絡させてもらうよ。
べらんめぇ……江戸っ子というやつなのかな。
ああ、此方の連絡先も一応渡したほうがいいかな」

彼が必要なら、自分の携帯番号と、メールアドレスを書いて渡そう。

シング・ダングルベール > 意外そうな顔を晒しながらアドレスを受け取った。
別に彼女を下に見たわけじゃあない。

「はー……驚いた。 もう携帯端末を使いこなしているんだ。
 俺は通話は兎も角として、メールのやり取りだけは慣れるまで苦労したよ。
 指先で文字を紡いでいると魔術の印を刻んでいるみたいで妙な感覚がするしで。」

そう、経験の上。
実際のところ、未だにうまく使える自信がない。
普通に喋った方が早くない? そうでもない? ないか。
んー……難しい。

「さて、そろそろ夜風も冷たくなってきたし、お先に失礼するよ。
 無茶な提案でごめん。けれど、良い出会いであったと思いたいな。
 
 それじゃ。」

ご案内:「常世公園」からシング・ダングルベールさんが去りました。
ルチア > 「いや、元々こちらの世界と似た世界にいたものだから。
だから携帯端末は普及してたし、メールも通話も出来るんだ。
生まれた頃からこういうものがあるようなものだから。
もう筆記するよりも、携帯端末だったりパソコンで打ち込むほうが早いし楽なくらいで。
――指先で文字を紡ぐ、か」

矢張り、彼の表現は詩的である。

自分はちょっと大掛かりな機種変更くらいの気持ちで携帯端末を弄っているので、
そこまで苦労はしていないのだ。
むしろ、生活必需品だ。

「そうだな。最近の風は身体に堪えるよ。
いや、正直に助かったよ。ありがとう。
私もそうであることを祈っているよ。

じゃあ、また」

そう、挨拶を続けて、彼を見送った。
それから、ショップカードを財布に丁寧に仕舞って。
買ったばかりの携帯端末に視線を向けて。

「やっぱり捨てたものじゃない。
世界は案外幸運に満ちているものだ」

そう呟いて夜空を見上げて、目を閉じた。

ご案内:「常世公園」からルチアさんが去りました。