2016/11/08 のログ
ご案内:「常世公園」に東瀬 夏希さんが現れました。
東瀬 夏希 > 「……ふう」

コキコキ、と首を鳴らしつつ、ベンチに座っている異端狩りの少女。
ある程度のリハビリまで済ませ、晴れて今日退院となったのだ。

「リハビリはしたが……鈍っていないか不安だな」

コキコキ。ブンブン。体を軽く動かすも、まだそこまで違和感はない。
ただ、実際に戦闘となると、長く休んだツケと言うのは目に見えてくる。
慢心は出来ない。

ご案内:「常世公園」にカイムさんが現れました。
カイム > 「ふむ、それなら誰かと手合わせをするのも悪くないんじゃないかな。
 カンを取り戻すにはうってつけだと思うんだ私。」

背後から声がする。
日も落ち、人気の無くなった公園で、その声は凛と、しかし飄々と響いた。

「……というわけで、久しぶりだね夏希。」

じゃり、じゃり、と足音が響く。
一歩、また一歩。歩む音が近づいてくる。そしてそれがふっと消えて。


「私だよ。」

耳元で、声がした。

東瀬 夏希 > 「…………」

自分に投げかけられた、ともすれば親しげな声。
その声には覚えがある。忘れ得ぬ響きだ。
その声を聞いた瞬間、立ち上がって飛び退る。
そして、先程まで普通だった表情を憎悪に歪ませ……

「……カイム・ブラッディア・ヴァーミリオン―――!!!」

その名を呼ぶ。
己の人生を全て根っこから滅茶苦茶にした、憎い憎い仇の名を。

「ヘルシングッ!!!」

そして、即座にゲート魔法を起動、対異端法化兵装強襲型「ヘルシング」を呼び出し、右手に構える。

「貴様……!何のつもりでここに現れた……!」

今にもとびかからんくらいの殺気を放ちながら、相手を睨み付ける。

カイム > 「いやあ本当にひさしぶ…」

その姿は、少年だった。
銀の髪に青い瞳、端正な容姿ながらも妖艶さと威風を漂わせる少年だった。
そしてそれは間違いなく、夏希の心に杭のようにねじ込まれた笑顔だった。

「 り、だね。
 でも、そんなことを聞いてる暇があったら頭を打ち抜くくらいの気概を見せてほしいよ。」

ははは、と笑いながら手をぱちぱちと鳴らす。
その姿は、まるで演劇を見て喜ぶ貴族の御曹司のような雰囲気だった。

「『何のつもりでここに現れた』 だって?
 そんなこと君には 『どうでもいい』 じゃないか。
 
 『病気の妹を助けるために…』 『家族を人質に取られて…』 『もうすぐ死ぬから最期の思い出に…』
 ……そんな事情で許せるほど、君の中に燃えてる怨念は弱火じゃないはずなんだからね?」

そう言って、大きく腕を広げてみせた。

「君の目の前に憎い仇が居て。 私の目の前に愛しい女性が居る。
 それで十分じゃないか、踊る理由は。」

東瀬 夏希 > 「……ああ、『そう』だな。
貴様が『そう』した。貴様のせいで『そう』なった。『そう』ならざるを得なくなった」

ギリリ、と歯を食いしばる。
目は暗く輝き、表情は憎悪に染まる。
―――忘れ得ぬあの日。
東瀬夏希が全てを失い……憎しみに一生を捧げることとなった日。
その日の出来事が、走馬灯の如く甦り……

「パパとママと、真冬の仇……!『異端逆十字火刑(ツァゴーシュ・ノスフェラトゥ)』……!」

突撃。
ヘルシングに炎を纏わせ、不死殺しの能力以上に威力を強化する夏希の奥義『異端逆十字火刑』。
それに加え、自分の体全体も炎で覆うことで、視界をある程度犠牲としつつ攻防を強化。
そのまま、目の前の怨敵を刺し貫かんと突貫する―――!

カイム > 「その通り。君にやらせたんだ、この『眼』で『そう』させたんだ。
 いやぁ……すごかったよ。
 私の想像通り、そして想像以上だった。血糊と憎悪と絶望と憤怒にまみれた君は、この世の物とは思えないほど美しかった。」

にっ、と歯を見せて笑う。
それは無垢にも、獰猛にも見えた。
―――忘れ得ぬあの日。
カイム・B・ヴァーミリオンが初めて、『眷属にしたくない』女性と出会った日。
太陽のように美しく、月のように美しく、星のように美しい彼女に、心奪われた日。そして彼は、こう思った。

『彼女が修羅の道で血に塗れ憎悪に蝕まれる姿は、果たしてどれほどに美しいのか』と。
「それ」が気になり、「それ」を知るため、「それ」をした。
『魔眼』による魅了。
魅了を受けた彼女の手によって家族は死に、家は焼け落ちた。それを自覚させた。

そしてその憎悪の炎は、今夏希の体を包み、自らとともに怨敵を焼き滅ぼさんと燃え盛っている。

「っはは、良いじゃないか。ゾクゾクしちゃうね♪」

ぶるりと身を震わせる。その瞬間、身に付けたマントが蠢く。まるで、独立した一匹の生き物のように。

「閃光 (ブリッツ)。」

バシンッ、と破裂音が鳴り響き、辺りを強烈な光が覆う。
その光量は凄まじく、炎の光すら貫いて目を眩ませるほどに。

「虚影 (シャッテン)。」

白銀に包まれた世界の中で、カイムはそう呟いた。

東瀬 夏希 > 今でも覚えている。
毎晩夢に見る。
『自分が』、父を、母を、妹を、殺した日。
殺さされた日。
目の前の吸血鬼に『魅了』の魔眼を使われ、命ぜられるがままに抵抗する家族を鏖殺した日。
東瀬夏希が……全てを、自分の手で失った日。

「目晦まし如きでぇぇぇぇぇ!!!!!」

怒りのままに真っ直ぐ『ヘルシング』を突き立てんと突貫する。
目は今は殆ど見えていない。だが、そもそも魔眼対策を含んだ炎のベールで、最初から殆ど見えていない。
敵がそこにいる。それだけあれば十分だ。
逃げる間もなく、最速でその命を絶つ……!

カイム > 「目眩まし如き、そうそう。その程度で止まらないのは偉いよ夏希。」

その声は、前ではない。背後から響いた。
背後の、案内看板の裏。

その突き出した憎悪は、間違いなく何かを捉えた。皮を突き破り、骨を砕き、炎が肉を焼き焦がした。
しかしそれは決して死ぬこともなく、生きることなく……その場で、黒々く融け、消えた。

「その炎の視界抑制は魔眼の対策と、私の能力の防御策か。良い戦術だ。
 ……私が『光を操れる』だけならね。」

公園の、案内看板。その裏には、先程の閃光は通らない。
『影』が出来る。そしてその影は、この吸血貴には格好の移動通路なのだ。

「……強くなったじゃないか、夏希。あの日からどのくらい経ったっけ?」

東瀬 夏希 > 「10年近くだ……貴様に全てを奪われて、それだけの時が経過した!」

変わり身か、と直感し、即座に目の前の敵を『偽者』と断定。
直後、声に反応し後ろにぶぅん、とヘルシングを横薙ぎにする。
ヘルシングは突きでなければ『不死殺し』の特性である『異端には死の裁きを(エグゼクターレ・ノスフェラトゥ)』は機能しないが、それでも対異端の浄化特性は発揮される。
それで動きが止まればしめたもの、もう一度念入りに突きさしてやるまでだ。

カイム > 「ふむ、10年かぁ……結構『最近』だねぇ。
 君が熟すまで後何年かかるかな。
 えーと、あの時君のパパを殺してママを殺して妹ちゃんを殺したのが……んー、まあ5歳とか6歳……おっと。」

ぶおんっ、と横を薙ぎ払う巨大な剣を跳ねて躱す。そしてそのまま空中に立つ。

「いやはや、怖いねぇ。そんな大きな剣で斬られちゃいくら私でもたまったものじゃないよ。
 痛いものは痛いし……浄化までされたら困る。」

そう言うと空中を跳ね、ジャングルジムの上に着地した。

「でもまぁ、君の殺意は心地いい。やはり何より素晴らしい。
 その殺意をへし折り、踏み躙って、陵辱して、眷属にする…も、よし。
 その殺意に殺され、踏み躙られて、貫かれて、死する…も、よし。

 ふふふ、すっごぉ~~~…く、楽しみだよ夏希ィ♪」

ぎちっ、と歯を剥き出して笑う。
背筋が凍るほど獰猛な、端正な顔を崩した笑顔。まごうことなき化物の笑顔。

東瀬 夏希 > 「穢れた化物め……!もう何年も待たせるものか。今貴様を葬ってやる……!」

憎悪に顔をゆがめたまま、左手を横に突き出す。
そして……

「『ペルセウス』!」

呼び出すは一本の槍。
その柄には『Anti Heresy Holy Weapon Series General-purpose type「Perseus」』(対異端法化兵装汎用型「ペルセウス」)と刻印されている。
ペルセウスは、今までの対異端法化兵装群の「固有性能が最大二つまでで、状況を選ぶ」と言う弱点を克服するために生み出された武器だ。
その固有性能は、何と4つ。
その内の一つ……

「『我が足は空を駆ける(サンダル・オブ・ヘルメス)』!」

我が足は空を駆ける(サンダル・オブ・ヘルメス)を発動。
これは、10秒間だけ自在に空中を歩くことの出来る空中歩行能力である。
それを使い、空を駆けながらジャングルジムの上にいるカイムに右手のヘルシングを突き立てんと接近する……!

カイム > 「いいや、私は待ちたい。
 君の美しい肢体を味わって、君の体を流れる血を吸い尽くしたいんだ。君はまだ若すぎる。
 今が多分15か16だとして、あと3年くらいかな~?」

すたん、すたん、と宙を駆ける夏希を見て、少しだけ目を見開く。
空中を歩けるとは、結構驚きだ。

「ま、だから何だってわけじゃないけど。夏希、そろそろ体を労ったほうが良いと思うんだよね。
 ほんとに人類?って感じの動きだよ。」

へらり、と笑いながら手を翳す。
その手から、黒が、闇が、暗黒が流れ、溢れ出す。

「輝剣(リヒト・シュヴェーアト)。」

その闇の中から、ちらりと白がこぼれたかと思うと……

「かけることの、雨(レーゲン)。」

無数の光の剣が、まるで濁流のように夏希に殺到する。
その刃は容赦も慈悲もなく、殺意も篭っている。それは、カイムの本心でもあった。

東瀬 夏希 > 「ふざけるな、ならば猶更急いでやる!
貴様を満足などさせるものか……!」

いざ、カイムの元へ駆け上がり、ヘルシングを突き立てんとするが……

「く……!」

術式の発動を見て、これを現状ではどうしようもないと悟る。
実は、夏希はカイムの事をそこまで詳しくは知っていない。
あくまで幼少期、魔眼によって洗脳された事しかないのだ。
故に、ここまで広範囲の攻撃を持っていることを知らなかった。
だが……対応手はある。

「ち……『サンティアゴ』!」

両手に持っている武器……「ヘルシング」と「ペルセウス」を手放し、送り返す。
そして、それと同時に二丁拳銃を両手で手に取る。
銃身には『Anti Heresy Holy Weapon Series Extermination type「Santiago」』(対異端法化兵装殲滅型「サンティアゴ」)と刻印されており、それを手に取ると共に空中飛行能力を喪失した夏希は地面に落下していく。
が、落下しながら両手の拳銃の引き金を引き……

「ホタテ貝は邪悪を弾く(コキーユ・サンジャック)!!!」

叫ぶ。すると、銃身から銃弾ではなく、貝の形をした盾が出現した。
本来、「サンティアゴ」は対多数用の兵装であり、カイム単体を相手にするのには向かない。
だが、対異端法化兵装の中では珍しい「防御能力を持つ」武器なのだ。
その防御性能によって光の剣をガードしつつ、そのまま地面に着地する。

カイム > 「あっはっは、怖い怖い。でもそれでこそだ。
 それでこそ、それでこそ……君という存在は完成する。」

弾かれた光の剣は宙を舞い、地面に刺さり、霧散する。
しかし射出速度が衰えることはない。暴風雨のように横殴りの光の雨は、盾を殴り続ける。

あくまで『魔眼』は、この力の副産物でしかない。
光を通し、網膜を通し、脳に自らの魔力を流し込むことで洗脳し、魅了するのだ。
カイムはスマートではないゆえにこの力は使いたがらないが。

辺りに霧散した光が散らばる、散らばる。辺りが真昼のように明るくなっていく。
……その光は、温かい。

「んー、と。そろそろこの島の自警団とかに見つかってもおかしくない…かな。
 ほら、私弱いから。多人数相手にするのは骨が折れるし嫌なんだよね。
 だから、ね?」

ふっ、と周囲が暗くなった。
辺りを温めていた光は消え、全てが元通りに闇に消える。
……否、消えてはいない。

「そろそろお開きにしようか。」

盾の向こうで、声がする。

東瀬 夏希 > 「く、う……!」

『ホタテ貝は邪悪を弾く(コキーユ・サンジャック)』の防御力はそこまで高くない。
シールドが途切れそうになるのに合わせて引き金を引き直し、シールドを補強している状態だ。
これでは、攻撃に移ることが出来ない。
……暖かな光が、冷めた心と対比するようで余計に腹立たしい。
自分の心はこんなになってしまったのに、それを産み出した相手が何故暖かい光を産んでしまうのか。

「黙れ……!弱いなら大人しく死んでいろ……!」

盾を補強しつつ、何とか隙を見つけようとしながら呻く。

カイム > 盾を叩く剣の音が途切れる。
辺りに静寂が戻った。闇と、静寂だけが夜を支配する。
……その夜を支配するものの下、以外は。

「虫眼鏡、あるじゃない?あれで光を集めて、葉っぱとか紙とか焼いたことない?
 光って、実は結構熱量あるんだよね。あったかーい小春日和程度でも、小さい虫眼鏡程度でも、集めれば紙を焼くわけだ。
 じゃあ、さ。」

その手には、小さな小さな、ビー玉程度の白い玉があった。
宙に浮くそれは、キラキラと美しい光を産んでいた。

「この晩秋の公園をまるまる1つ、あったかーく温める程の光を…
 ぜ~~~~んぶ集めたら、どうなるんだろうね。」

それを、ぽい、と無造作に投げた。
そして、ジャングルジムの下に降り……どぽん、と影の中へ沈む。
そして、どこからともなく声が1つ。


「『10%』……
 『至煌の黙示録(アポカリュプセ・シュトラール)』。」


その瞬間、周囲は地獄と化した。
辺りに吹き散らばる、爆熱。熱線。開放された光と熱の奔流は、爆弾のような苛烈さで周囲を灼いていく。
盾で防げば、致命傷にはならずとも…それでも、人の身を苛む熱風は、完全に防げるものではないはずだ。
公園以外に被害を広げるつもりはないのか、その光はドーム状になってジャングルジム周辺を覆う。

……終わる頃には、辺りの草木は燃え、ジャングルジム「だったもの」が焼け爛れ、倒れている地獄が広がっていることだろう。

東瀬 夏希 > 「貴様、一体何を……」

剣の音が途切れた瞬間、サンティアゴを攻撃に回そうとして……話の内容に首を傾げる。
そんなものは、学問の基礎レベルだ。効率よく陽光を集約すれば、それだけで火を起こせる。
……と共に、背筋に悪寒が走る。

「(コイツ……『この公園全て』でそれをやる気か……!)」

それほどの熱量、サンティアゴでは防げない。
これをしっかりと防げる対異端法化兵装は一つしかない。

「(だが、あれは……)」

一瞬躊躇う。
それは異端の力。異端を狩るために異端の力を借りる矛盾。
だが……脳裏に『司祭様』との約束が駆け巡る。
決意を固め、サンティアゴを送還。
そして……

「来い、『ジークフリード』!!!」

呼び出されるはツーハンデッドソード。刀身には『Anti Heresy Holy Weapon Series Heresy type「Siegfried」』(対異端法化兵装異端型「ジークフリード」)の刻印。
それを手に取り、咄嗟に背中を隠すように構え……



――――――その地獄を、耐えきった。

カイム > 辺りは地獄。
爆風に木々は薙ぎ倒され、紅葉は燃え盛り、草は灰へと帰り、遊具は燃え、溶ける。
その中央に立つ女の姿を見て、カイムは目を細めた。

「………っはァ~~~~~~~~~~~♥♥♥♥♥♥
 いやぁ、いいねいいねいいねいいね!素晴らしい!!それだよそれ、その姿だ……それでこそだよ!

 地獄の中に立つ君は美しい!
 炎に苛まれ、血の沼に嵌り、泥に塗れ、それでも君は立ち続ける!
 だからこそ君は素晴らしい、だからこそ君は美しい!絶望を憎悪と憤怒に転化できた、君の強靭な心!
 誰でも持ってるもんじゃない、だから私は君のことが大好きなんだ、夏希!!
 誰でも出来ることじゃない、だから私は君のことを愛してるんだ、夏希ィ!!」

狂ったように笑い、壊れたように叫び、病んだかのように体を掻き抱く。
ぞくぞくと体を震わせ、うっとりと潤み、熱のこもった目を向ける。
その姿は、まるで恋をする人間のような姿だった。

「……はぁ、はぁ~……げふんげふん。いや、失礼。ちょっと取り乱しちゃったね。
 それで、どうする?もうちょっとやる?」

にこにこと笑いつつ、宙に腰掛けるように浮かびながら、光の剣を生み出してくるくると回す。

東瀬 夏希 > 「くっ……!」


ぜぇぜぇと肩で息をする。
ジークフリードの固有性能『穢れたる血は全てを阻む(ファフニール)』は、自分の背中以外を竜血の呪いで無敵の硬さにするものだ。
竜だけあって、耐熱性に優れる……にもかかわらず『熱さ』を感じた。
これが10%と言うのだから、もし全力なら。
……だが。
東瀬夏希に停止はない。最早その足は前に進む事しか知らない。

「黙れ!貴様の愛など反吐が出る!貴様の愛ごときのせいで、私の家族は……!
喰らえ……『黄昏の極光(バルムンク)』!」

ジークフリードの二つ目の固有性能……浄化の力を斬撃の形で飛ばす『黄昏の極光(バルムンク)』による攻撃でもって、カイムの問い掛けへの返答とした。

カイム > 「あ、そんなこと言っちゃう?んもー、カイムくん傷付いちゃう!
 ……なんてね。愛っていうのはだいたい一方通行なんだよ。」

そう言うと、ニカッと笑って。

「っと危ないっ。」

斬撃を、自らの持つ光の剣で弾き飛ばす。
……正確には、弾き飛ばすことは出来ずに逸らすだけに留まった。光の剣はその一撃で砕け、弾け飛ぶ。

「……これ、そんじょそこらのナマクラよりよっぽど斬れるんだけど……それを一撃でたたっ壊しちゃうか。
 いやー怖い怖い、どんな威力してるのさその攻撃。手がしびれちゃった。」

ぷらぷらと手を振ってみせる。
そしてその手をマントで包み、その体をバサリと覆った。

「……君が私の愛に何を思おうと勝手だよ?だって、それでも私は君を愛してるんだから。
 いやぁ、私の想像以上だった。ここまで苛烈に美しくなってるとは嬉しい誤算だったね。ぶっちゃけ城に持ち帰りたい。
 ……でもまぁ、それは早い。うん、我慢の子だ。」

そう言うと、ぽいっと何かを地面に放る。
……マントだ。普通のマント。

「君は施しを受けないだろうけど、それは貰っておきなさい。
 自分の格好見てみなよ。やったの私だけどさ。」

東瀬 夏希 > 「その一方通行の愛で、私の家族は……!」

ギリリ、と歯を食いしばってジークフリードを振りかぶる。
もう一度『黄昏の極光(バルムンク)』を当てようとしたところで……投げられるマント。

「貴様、何を……?」

思わず言われた通り、自分の格好を見ると。
―――服がほとんど燃えていた。
そりゃそうだ。『穢れたる血は全てを阻む(ファフニール)』は、本人の肉体にのみ作用する。
衣服は対象外。よって、燃える。

「な、なーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

余りの自分の醜態に、思わず叫んでしゃがみ込んでしまう。
まさか、まさか『ジークフリード』の防御にこんな欠陥があるとは……!

カイム > 「なっはっは、眼福眼福。写真とっとこ。」

どこからかカメラを取り出し、かしかしとシャッターを切る。

「……ま、君はとりあえずもう帰りな?素っ裸で乳振り乱して戦う趣味はないでしょ。
 私はそれしてくれるとすっごく嬉しいけど。」

にっこにこ笑っている。発言と行動が容姿と釣り合っていない。
それはそう。この吸血貴は、冷酷で、残虐で、しかしそれ以上にスケベなのだった。

「……で、もう一回聞くけど…どうする?
 オリンピックよろしく全裸で復讐を果たすかい?私は止めといたほうが良いと思うな、汚点しか残らないよ。
 あと鼻血出そう。」

東瀬 夏希 > 「っ~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!」

殺したい。
今すぐ目の前の敵をブチ殺したい。
だというのに……流石に、この姿では戦えるはずもなかった。

「ぺ、ペルセウス!!」

慌てて先程の槍、「ペルセウス」を呼び出し……

「『誰も見てはならぬ(ヘルム・オブ・ハーデース)』!!」

二つ目の固有性能を発動。
これは、10秒間の間誰の目にも見えなくなる固有性能である。
忽然とその場から姿を消した夏希。
そのまま、インターバルを計算して物陰に隠れたりしつつ、這う這うの体で逃げ帰ったのであった……

ご案内:「常世公園」から東瀬 夏希さんが去りました。
カイム > 「……………。
 ン、よし。帰ったかな。」

ふぅ、とその場で顔を振る。
……鼻血が出た。

「おっと、いけないいけない。
 …………いやぁ……いい体だったなぁ…」

ふぅー、とため息をつく。おっさん臭い。
そうして、そのマントで身を包み……ふと呟く。

「夏希が彼氏なんか手に入れようと思ったら……ま、彼氏ぶっ殺そうかな。
 私より先に処女貰うとか許さないからね、絶対に。処女の血を飲んで眷属にしたいんだから。」

そして、その場から消え失せた。
後には、何も残らない。荒れ果てた公園と、未だ燻る小さな炎が点々とするだけであった。

ご案内:「常世公園」からカイムさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に濡鼠さんが現れました。
濡鼠 >  
「そら、これはどうしたことか」
 
 荒れ果てきった公園を見て、その首傾げるせむしが一人。
 おっかなびっくり、焦土を歩む。
 その相貌はフードに隠され、窺い知るは難しい。
 

濡鼠 >  
 異形の業にて燃え落つ公園。
 その様、しきりに眺めてみては、せむしは唯々小さく笑みを零す。
 
「さあ、これはどうしたことか。
 噺の種がまた一つ。ひとりでそこらに転がり落ちた。
 やあ、これは実に奇遇」
 
 コートを引きずるそのせむし。
 戯言一人で零して笑う。
 

濡鼠 >  
「噺の種が尽きぬは幸い。
 故この島は、実にありがたい。
 噺が零れば茶請けも良い。
 当方自慢の舶来品。届ける甲斐もあるというもの」
 
 くすりくすりとせむしは笑う。
 笑みを零して、ずるずると、コートを引きずり消えていく。
 常世の祭も宴も酣。
 それ紛れるもまた易い。
 

ご案内:「常世公園」から濡鼠さんが去りました。