2016/12/10 のログ
伊都波 悠薇 >  
「――烏丸さんのアドバイスはわかりずらいんですから」

あぁ、なんとなく想像がついたのでなるほどと納得しておく。
ただ、その規模や。されたことの想像はできないけれど。
でも――なんとなくらしいと思った

「――お姉ちゃんとのこと。それはもういいんです。担当が決まっただけですし――」

そう、世界が違う。そんなのは初めからわかっていたこと。
でも隣にいろと姉は言った。
だから、隣にいる。
いようとする、そこはいつもと変わらない。
でも――

「――烏丸さん。天秤って、なんだと思います?」

烏丸秀 > 「え、そうかなぁ?」

いやまぁ、回りくどいというか、悪意があるというか。
自分のアドバイスにそういう面があるのは否定しないけど。

「――天秤?」

ふむ、と烏丸は考える。
天秤。彼女が言うからには、ただの秤ではない。
おそらくは、あの能力の――

「うん、残酷だよね、天秤って」

伊都波 悠薇 >  
「――はい、わかりずらいです。だって素直に受け取らせてくれないんですもん」

ふわり、笑いながら――

「…………」

思考する。そう彼は、考えてくれる。
かみ砕いて、把握して。彼独特の世界で――……
そして――

言葉―ひょうげん―する

「残酷、ですか?」

耳を傾ける。なぜ、残酷なのか

烏丸秀 > 「キミの持つ『天秤』は、才能と幸運を秤り、それを均等にしようとするよね」

そう、天秤は秤る。
本来、誰もが秤れないはずのものを。

「天秤は常に、片方が沈むように出来ている。
だってそうだろう、才能や幸運なんてモノの重さ、本来は誰にも秤れないし、釣り合いが取れるはずが無い」

そう、はずがないのだ。
人間の才能や幸運なんてものを、どう釣り合いを取るというのだ。

「本来は、他人と比較する事自体が馬鹿らしいんだよ。
才能とか幸運とか。それを比較し、『どちらが重い』『どちらが軽い』なんて、決められない筈なんだよ」

才能も、幸運も。
結局は、自分自身で切り開き、自分自身で価値をつけるしかないものなのに。

「それを秤った挙句に優劣をつけ、あまつさえそれを再配分する。
まぁ、残酷で、おこがましい異能だよね」

伊都波 悠薇 >  
「――……」

なるほど。確かにそうだ。
気づく。誰が幸福と決めているのか、誰が不幸と決めているのか。
馬鹿らしいことだと彼は言う。
うん。自分もそう思う。
だって、自分は不幸ではなかったのだから――

では……――

考えながら耳を傾ける。
そして。

「……じゃあ、この天秤は。誰のものなんでしょう? 私が持つと、烏丸さんは言うけれど。誰が、”測っているんでしょう”?」

聞いてみる。
彼は、なにか、分かるのだろうか

烏丸秀 > 「キミだと思うよ」

断言する。
他に考えられない。

姉妹の事は、姉妹にしか分からない。
他の誰にそのような事が可能だろうか。

「キミ自身の能力だもの。キミ自身が、おそらく無意識に秤っているんじゃないかな」

もちろん、予測でしかないが。

けれども。凜霞が秤っているとは、とても思えないのだ。

伊都波 悠薇 >  
「――……私、ですか?」

考える。本当に自分だろうかと思考する。

「でも、私。不幸だって思ってないですよ」

あの時も、今も。
そう、不幸だとは感じたことがない。

「――無意識に、不幸だって思ってたってことですか?」

そうなのだろうか。
自分は心の底では別の気持ちが、あったのだろうか。

「そう、見えますか?」

烏丸秀 > 彼女の不思議そうな顔。
そう、そこだ。

「うん、見えない。
でもね、はるかちゃん。ちょっと考えてみて欲しい」

よっと立ち上がると、烏丸はその場に立ち、両手を広げて見せる。

「ね、ボクの両手を天秤だと考えてみて。
今、ボクの両手は丁度釣り合ってるし、ハタから見ても同じ高さにあるよね」

そう言うと、今度は烏丸は滑り台へ向かう。
その斜面に、なんとか立つと、再び両手を広げる。

「ね、今ボクはさっきと同じポーズをしてる。
でもさ、これ、釣り合って見えるかい?」

そう、そうなのだ。
天秤がいくら公正に、冷酷に釣り合っていたとしても。

土台が歪んでいれば、天秤は、決して公正ではない。

伊都波 悠薇 >  
「――……?」

考えろと言われれば。考える。
襟を正し、寒さをよりしのぐようにしながら。
息をこもらせ、熱を返しつつ――

「……見え方の違いってことですか?」

言わんとしてることはそういうこと、なのだろうか。

「――持ち主が、傾いているから釣り合っているように見える、とか。傾いているから釣り合っていない。持ち方がヘント、いうことですか?」

烏丸秀 > 「見え方の違い、というよりもさ。
目的の違い、かな」

よっと滑り台から降りる。

「キミの持ち方が変なのか、それともバランスがおかしいのか……そこらへんが、分からないんだよねぇ」

でも、と続ける。
悠薇の瞳を覗き込む。
あぁ、久しぶりだ。だが……

「でもさ、キミから聞いた、能力発現のきっかけ……
そのきっかけで発現したのが『平等』っていうのが、どうしても分からない」

何でその切欠で、その異能が発現するのか?

伊都波 悠薇 >  
「――目的の違い」

ゴールが違う。
たどり着く場所が違う。
だから、今のような状態になっているのだと彼は言う。

「――わからない? どういうところが、疑問ですか?」

自分には見えていないところがやっぱり彼にも見えている。
だから素直に聞いてみる。

一緒に考えてくれる、久々の友人へ。
耳を傾ける

烏丸秀 > 「キミは願ったと言ったよね。"置いていかないで"」

うん、置いていかないで。
それが、能力発現の切欠。

「置いていかないで、という願いで、『天秤』なんていう異能が発現するものかな?」

ある意味、後ろ向きな異能。
そんなものが発現するものだろうか。
どちらかといえば、嫉妬などといった感情で……

「……ん?」

嫉妬や恨みではない、純粋な願い。
『置いていかないで』
それで発現する天秤――

「――天秤の目的が違う。これはバランスを取る能力。だけど、『誰かの不幸で誰かを幸福にする能力』ではない……」

そう、思考の迷路。
答えは。

「――『姉に追いつく為の能力』?」

まるで、独り言のように

伊都波 悠薇 > ピースを、パズルを解くような。
そんな、彼の思考は参考になる。
知識とはこういうものをいうのだと、見ててどこかうれしい気分になる。

「――そうかも、しれないですね」

姉に追いつくため。
追いつくのは確かにそう。
自分は姉に追いつきたかった。
だから――

「対等がほしかったのかもしれないです。違ってもいいから」

それもある意味で納得できる回答だった。

「――でも、どうなんでしょう。本当に、追いついているんでしょうか」

烏丸秀 > 「――ま、ボクに予想できるのはここまで、だね。
後は、キミが進むべき道だよ」

少しは参考になればいいのだが。
所詮は欠けたピースを必死にかき集めた結果にしかならない。
それでも。

「それはすばらしい発想だなぁ。違っていても対等でいたい。うん、ボクは好きだよ、そういうの」

対等な立場になってもすぐ壊してしまうのがこの男であるのだが。

「んー、どうだろう。でも、そうだなぁ」

そして彼女を見て言う。

「悠薇ちゃんは魅力的になったよ。前よりもずっと――それは、ボクの好きだったはるかちゃんじゃあないみたいだけど、ね」

少しだけ、寂しそうに

伊都波 悠薇 >  
「――そうですか」

アドバイスはここまでということらしい。
やはり彼は、自分にとって良い友人だ。

「ふふ、その好きは。ごめんなさいって言わなくてよさそうでよかったです」

なんていいながら。

「――面白み、なくなっちゃいました?」

なんて、言いながら。ゆっくりと立ち上がる

烏丸秀 > 「そうそう、likeだからね。これ以上振られるのも勘弁だし」

肩を竦めながら言う。
彼女にも、姉にも、振られるのはもうこりごりだ。

「――ううん。強くなったよ。もう、キミは一人でも壊れたりせず、歩いていけそうだから」

そう言って、彼女を見送り。

伊都波 悠薇 >  
「――ふふ」

なんとなく、彼らしい言いぐさのような気がして笑みがこぼれた。

「強く、なってるといいですけどね」

なんて言いながら髪をかき上げて――

「――烏丸さんが言う、私の強さって……」

……誰のものなんでしょうね?

疑心暗鬼とはまた違う――
そんな言葉を笑いながら。

「――私の異能は、私のものだけじゃないのかもしれないですね」

遠くを見つめて。

「ではまた、烏丸さん。またメール、してくださいね?」

もう、かっこつける必要ないんだし。
なんて――

ゆっくりと公園を黄昏の境界に向かって歩きながら出て行った

ご案内:「常世公園」から伊都波 悠薇さんが去りました。
烏丸秀 > 「…………」

そっと見送りながら考える。
あの最後の一瞬に見せた危うさは――

「――うん、鍋。豚肉と白菜のミルフィーユ鍋にしようかな」

そんな事を言いつつ、帰路につく

ご案内:「常世公園」から烏丸秀さんが去りました。