2017/01/11 のログ
ご案内:「常世公園」に谷蜂檻葉さんが現れました。
谷蜂檻葉 > 公園に足を踏み入れると、出迎えるように寒風が通り抜けていく。

「……寒。」

陽気に照らされて暖かった日中も、こうして日が落ちてしまえば手がかじかみそうなほどに寒さを強調する。
重ね着は2重どころか、3重4重に寒さを遮断するようにしているが、それでもどうしたって肌が出る。

この時期にまで、おしゃれに気を使うような女子力は檻葉は持っていなかった。
洒落で風邪を引けるほど、かぶいても居なかったから。

谷蜂檻葉 > 少しだけ猫背気味に身体を丸めれば、傍にはモコモコとした「ナニカ」にしか見えないだろう。
コートのポケットに手を突っ込みながら、橋のベンチにテコテコと小走りに走り寄っていく。

そのまま、ムニャムニャと言葉にならない言葉を噛み締めて腰を掛けて、

「―――んっくぅ!」

ビクンっ、と腰が跳ねる。
木陰の下の日除けベンチは、暗く僅かに湿気った冬の風で氷のように冷たくなっていたのだ。

ガクガクと震えて離れたがる膝を抑えて、改めてゆっくりと腰掛ける。
じんわりとお尻から伝わってくる寒気に奇妙な刺激を受けて、背筋が震えた。

谷蜂檻葉 > 自然と、貧乏ゆすりをしてしまう足の上でガサガサと包みが揺れる。

「ああ、寒い寒い……。」

言葉にするだけ寒くなる魔法の呪文を唱えながら、期待に笑みを深くして彼女は包みに手を突っ込んだ。
そう、わざわざ寒い中こうしてで歩いたのはこの為なのだから。

どれにしようかと悩む彼女の顔は、ワクワクとした子供っぽい笑みに満ちていた。
そうして何度も何度も袋の中を右往左往していた手が抜き出されると―――。


「んーっ♪ やっぱりこういう日は、肉まんに限るっ♪」


真っ白い湯気の華が、無風の冬に咲いた。

ご案内:「常世公園」に谷蜂檻葉さんが現れました。
ご案内:「常世公園」から谷蜂檻葉さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に谷蜂檻葉さんが現れました。
ご案内:「常世公園」から谷蜂檻葉さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に谷蜂檻葉さんが現れました。
谷蜂檻葉 > まずは皮の端を噛み切るようにして穴を開ける。
コロコロと口の中で転がせば、ほんのりと甘く、僅かに味の染みたその味が「この先」を幻視させる。

急くな、と心のなかで呟いてみても最早止まらない。

これは、魔性だ。

ふぅ、ふぅと冷ますために開けた「空気穴」に息を吹き込むのも忙しなく。
噴き出す芳しい香気は頭がクラクラしそうなほどに多彩な味で満ちている。

「いただきます。」

まだ熱いと解っていても、呟く声は抑えられなかった。

谷蜂檻葉 > 両端を押さえて、かぶりつく。

瞬間、じゅわっと肉汁が押し出してきて強い熱さを感じて舌が引っ込む。
引っ込んだ舌に、次々と肉汁が注がれていく。

「~~~っv」

口の中いっぱいに広がる『味』

そう、『味』としか呼べない。
「何の味?」だなんて悠長に疑問を抱く暇なんてない。

味という味が口の中に雪崩込んでくるのだ。

そのまま、もう一口。 更に、もう一口。

谷蜂檻葉 > 『寒い冬に、肉まんを頬張る。』

嗚呼、これ以上素晴らしい冬の過ごし方があるのだろうか。
行列ができると評判の歓楽街の有名店に並び、待ちに待った肉まんであればもう格別だ。

ブラボー。
全私が喝采する。


昨日の夜にも、ゆったりとこたつで食べるアイスに対して同様の評価をしたばかりな気がするが。


それはそれ、これはこれである。
下落したアイス株を追い上げて抜き出てトップに躍り出た肉まんが今、食欲のバトンを掲げているのだ。

はふはふと白い息をあげて食べ進めれば手の平大の肉まんはそう時間もかからずに無くなってしまった。

谷蜂檻葉 > 「ふぅー……。」

肉まん香る嘆息を一つ。
身も心も充実、かつ温まった最高の状態。

寒さすら今の彼女には追い風、昂ぶらせるだけでしかないのだ。

「よしっ」

つまり

「餡饅も期待大ね……!」

デザートを食べるに、うってつけなのだ。

谷蜂檻葉 > ―――これは、夕飯を食べた後に「冬の醍醐味」という番組を見てしまった一人の少女の物語。
ご案内:「常世公園」から谷蜂檻葉さんが去りました。