2017/04/14 のログ
龍宮 鋼 >  
もう辞めちまえよそんな仕事。
オマエにオマエの家族を殺させたヤツに復讐出来りゃそれで良いだろうがよ。

(彼女が異端を狩る理由はそれなのだから、それで良いじゃないかと。
 むやみやたらに殺して回るのは、なんと言うか色々無駄な気がする。)

おーおー良く喋るじゃねーか。
わかったわかった、先に見付けたヤツを後から掻っ攫われんのがイヤなんだろ。
照れんな照れんな。

(バシバシと背中を叩く。
 口調や態度はからかっているそれだが、一方でその気持ちは分からなくも無い。
 自身の妹と暮らせるとなったら自分だってそうなるに違いないのだから。)

東瀬 夏希 > 「……そういうわけにもいかん。私がこの学園にいられるのは異端審問教会のおかげでもあるし、何より安直に『抜け』てしまってはどうなるかわからん。
自分の信念に反しないレベルで異端狩りを続ける方が現状は無難だ。
あの吸血鬼の情報も、入ってくるかもしれんしな」

とは言え、将来的には抜けることも考えていなくはない。
それを仕掛けるのは今ではない、と言うだけだ。

「ちがっ、そういうわけでは……ええい背中を叩くな!家族を欲して何が悪い!」

恐らく、既に鋼にはある程度気を許しているのだろう。
警戒心が緩んでしまい、ぽろっと本音を滑らせる。

龍宮 鋼 >  
そう言うもんかね。
ま、抜けたくなったらいつでも言えや。

(異端審問教会とやらがどれほどの戦力を持っているか分からないが。
 少なくとも戦力で負けているから手を貸さないような筋の通らない自分ではないと自負している。
 来るものは拒まず、だ。)

――悪いもんかよ。
俺だって似たようなモンだ。
妹にゃ忘れられて、電話は出来ても気付いちゃ居ねェし、何の冗談かクソみてェなヒーローに熱上げてて――クソあのヤロウ、やっぱボコボコにしときゃよかった。

(その言葉を聞いて楽しそうな表情のまま、残りのコーヒーを一口で飲み干す。
 家族を求めるなんて普通の事だ。
 彼女がそんな普通の事を口にしたのがなんだか嬉しかった。
 しかしあのヘラヘラ笑ったヒーローの顔を思い出し、不機嫌な顔でスチールの空き缶をグシャリと握りつぶす。)

東瀬 夏希 > 「……そうだな。その時は貴様を頼りにさせてもらう」

ふ、と笑う。これだけで随分変わったと言えるだろう。以前ならば、間違いなく「異端の手など借りる物か」だっただろうから。

「ヒーロー……ならまあ、いいのではないか?それともなにか?ヒーロー気取りの軽薄なだけの輩なのか?」

家族を心配する気持ちは強くわかる。自分には、もうできないことであるが。
だから、鋼の歯がゆさも少しは分かるつもりだ。

龍宮 鋼 >  
(頼らせてもらう、との言葉には満足そうな表情。
 だが。)

は?
おいオマエふざけてんのか。
ヒーローなんてロクでもねェに決まってんだろうが。
あんなモン頭ん中お花畑の馬鹿かどうしようもねェほど自信過剰のアホのどっちかだぞ。
どっちにしろロクでもねェだろうが。

(ヒーローなら良い、と聞いて途端に機嫌が悪くなる。
 正確には自身が勝手にヒーローと呼んでいるだけで、彼自身はヒーローではないと言っているのだが、同じ事だ。
 ひしゃげた空き缶を地面にスコーンと叩き付け、この場に居ないものの事をクソミソのボロカスにこき下ろす。)

東瀬 夏希 > 「英雄気取りのバカならいざ知らず、ヒーローと呼ばれる以上は一応善行に励んでいるのではないのか?
ヒーロー、と言う称号自体には陳腐なものを感じなくもないが、そこからそこまでネガティブなイメージは出てこないが……」

英雄気取りと英雄は別物であり、鋼の言っているのは英雄気取りの方なのでは?と首を傾げる。
何というか、内実以上にヘイトが高まっているような気がしてきた。そして、その気持ちもわからなくもなかったりする。

「(大事な家族が、自分にとって認めがたい相手に入れ揚げているというのは、不快ではあろうな…)」

龍宮 鋼 >  
気取りだろうがなんだろうが同じ事だろうが。
じゃあ仮に、仮にだ。
オマエか俺かどっちかが確実に死ななきゃ二人とも助からねェような状況になったとしてだ。
ヒーローは二人とも助けてくれんのかよ。
出来るわけねェだろうが。
現実ってなァそう言うモンだろうが。
なのにそいつァ両方助けるとか抜かしやがるんだろうよ。
出来もしねェことやろうとするヤツなんざろくなモンじゃねェだろうに。

(何を言っているんだ、と言う様な呆れた表情でまくし立てる。
 とにかく、ヒーローは嫌いなのだ。
 ヒーローを自称しているヤツも、自称していなくともそのような行いをしているヤツも、馬鹿みたいに人を助けようとしているヤツは嫌いなのだ。
 だから気に入らないと言ってのける。)

東瀬 夏希 > 「そう、だな。そういう輩はもっと的確な表現がある。夢想家だ。
最悪の中の最善を呑むことの出来ない奴は戦場では足手まといだ。そうやって足掻く姿勢自体を否定はしないが、時と場合に寄るだろうな」

夏希は、そうやって足掻く人の姿は嫌いではない。
だが、一方で現実も知っている。
ヒーローは間に合わない。そもそも存在もしない。弱者は当然のように搾取され、いくら手早く行動しても救い切れないものは出てきてしまう。
自分が、物語の中の英雄のような存在であればどれだけよかったか。
家族も、異端に泣く子羊たちも、全て全て救える『ヒーロー』だったらどれだけよかったか。
―――現実は甘くない。例えヒーローが日輪の如く人々を照らしても、その陰で照らされぬ夜は確実にある。
月明りのような淡い光すら眩しく見えるような暗く醜い現実を、幾度となく目にしてきた。故に、その現実のあり様は、否定する余地のないものとして夏希の中に存在してしまっている。

龍宮 鋼 >  
大抵のヤツァどっちも選べずどっちも逃す。
中には仕方ねェって割り切ってどっちかを選ぶやつも居るんだろう。
だがそいつらはヒーローじゃねェんだ。
ピンチに現れて厄介毎全部片付けて最後は皆で笑ってハッピーエンドなんてヒーロー、居るわけねェんだよ。

(拳を握る。
 その拳をもう一方の手で更に握り、目一杯に力を込めて。
 居るわけがないと言う言葉は、まるで自分に言い聞かせているような。
 サンタクロースに会おうと夜遅くまで起きていた子供が自分の親を見てしまい、サンタクロースなんて居ないんだと知ってしまった子供のように。
 ――居て欲しかったと言うように。)

東瀬 夏希 > 「二兎を追う者は一兎をも得ず。そして、割り切ることの出来るリアリストはヒーローにはなれない。
成程確かに、ヒーローは空想の産物でしかない。そんな夢物語は愚かでしかないだろう。
……だけど、な。
―――私は、その愚かな願いを愚かと笑い飛ばすことも出来ん。
最悪の中の最善を呑むことは必須だ。幾度となく呑んできた。だが……最初から切り捨てるつもりで任務に挑んだことも、無いのだからな」

ぎゅう、とこぶしを握る。
いつも間に合わなかった。誰かが失われ、誰かが泣いていた。
それでも……誰も失わないように戦いたかったのだ。
だって、失うというのは、とてもとても悲しいことだから。

龍宮 鋼 >  
――馬鹿じゃねェのか。
見てきたんだろう。
散々味わってきたんだろう。
だったら知ってるだろうが。
人生ってのはそう言うもんだ。
愚かな願いだって笑い飛ばせよ。
笑い飛ばすモンなんだよ。
だって出来るわけねェんだろうがそんなこと。

(頑なに否定する。
 そんなものは目指すだけ無駄だと。
 そんなものはさっさと斬り捨てるべきだと。
 その癖ヒーローそのものは否定しない。
 空想の産物の夢物語を愚かだとは口にしない。
 頑なに、口にしない。)

東瀬 夏希 > 「無理だ」

その言葉を、一言で切り捨てる。

「私には無理だ。最初から失われてしまうことを認めるのが、どうしても無理だ。
だって……切り捨てられた者は、泣くのだろう?救われなかった者は、地獄を見るのだろう?
それは嫌だ。例え仕方ない現実だとしても、可能性を考慮するまではやらないと気が済まない。
そうしないと……私の心が、耐えられない」

珍しく、自分の弱さを口にする。
そもそも、夏希は「救われなかった」人間である。
差し伸べられた救いの手は明らかに手遅れで、しかも歪んでいた。
だからこそ、救われなかった痛みを何より強く知っている。
救われなかった者がどうなるのかを知っている。
知っているからこそ……救いたいと、願ってしまうのだ。
こんな地獄が増えるのは御免だ、と。

龍宮 鋼 >  
それこそ、無理だ。

(こちらも同じように。)

何度もやってりゃ助けられるヤツも出るだろうよ。
たまたま間に合って、たまたまなんとかなることもあるだろうよ。
だけどそれはたまたまだ。
毎回助けられるって保証なんかねェよ。
助かったヤツは運が良くて、地獄を見たヤツは運が悪かった。
それだけだよ。

(救われなかったのはこちらも同じだ。
 だからこそどうにもならないものはどうにもならないと分かっている。
 だからこそヒーローなんてものは存在しないと分かっている。
 分かっているから、ヒーローのような行動が嫌いなのだ。
 徹底的に、嫌うのだ。
 ――彼女の言葉も気持ちもわかるくせに。)

東瀬 夏希 > 「ああ、それが現実だ。だから、私も幾度となく切り捨ててきた。だが、願いだけは捨てたくない。
……それを捨てたら、きっと『見捨てる前提』で作戦を考えてしまうだろうからな」

沈痛な面持ちで。
『どうせ無理だ』。
この考えは、可能性を著しく狭めてしまう。思考の幅を狭め、安易に流れてしまう。
東瀬夏希はそれを厭う。どうせあきらめるにせよ、最初は強欲に。それくらいでないと、要らぬ取り落としをしてしまうから。



―――ゆえに、余計に苦しんでいるのだというのに。

龍宮 鋼 >  
(この少女と自分はやはり似ている。
 無理だと思いながらもそれを捨てきれない彼女と。
 無理だと諦めながらもそれを捨てられない自分。)

――やめだやめ。
こんな辛気くせェ話やめだ。
んなことよりオマエの男の話だっつーの。
オイどこだよ、どこがそんな気に入ったんだ。

(変な空気になってしまった。
 その空気を振り払うように腕を振り話題を変える。
 そんな話をしに来た訳ではないのだ。
 偶然会っただけだけど。)

東瀬 夏希 > 「はぁ!?いや、だからなんでそうな……そもそもそういう関係ではない!」

顔を赤くして反論。家族、あくまで家族である。うん。きっと。

「気に入るも何も、それ以前の問題だ!保護対象だったのは事実なのだからな!」

龍宮 鋼 >  
は?
気に入ったから自分で保護しようってなったんだろ?

(そうじゃなけりゃ生活委員会に引き渡していると思う。
 気に入らないヤツに構うなんて物好きはそうそう居るものじゃないし、彼女がそんな物好きとも思えない。)

こっちの常識に疎いっつってたな。
なら異邦人か?
歳は?
どこで拾ってきたんだ。

(次から次へと質問を投げかける。
 こう言う事は相手に考える暇を与えない事が大事だ。
 ポンポンポンと質問を投げかける事で、反射的に答えさせようと言う腹である。)

東瀬 夏希 > 「う、まあ、不思議な奴だが穏やかなのは好印象だったが……」

狙い通り、ついつい答えてしまう。根が正直なのである、夏希は。

「いや、そもそも魔法生命のようで、年齢はよくわからん。見た目は私と同年代のようだが……拾ってきたというより、施設で実験体になっていたのを保護したのだ」

そもそも、気持が警戒していない相手である。普段なら『答える義理はないな』で一蹴するはずが、ぽろぽろと答えてしまっている。
ちょっと心配になるレベルである。

龍宮 鋼 >  
ほー、オマエそう言うのが好みなのか。

(とは言え意外というほどではない。
 こうして普通に話していれば普通の女の子だ、オラオラ系よりそっちの方がイメージに合っている気がする。)

魔法生命体……で、実験体?
こう言う街だから驚きゃしねェが……そっちの方にも手ェ拡げた方がいいのか?
――つーことはなんだ、名前なんてありゃしねェだろ。
オマエが付けたのか、名前。

(実験体と言う事は研究施設群の方だろうか。
 今までは落第街を中心に不良を拾い上げてきたが、組も少しずつ大きくなってきた。
 そちらにも手を伸ばす事も考える。
 ともかく今は彼女の事だ。
 実験体に名前を与える奇特な研究者もそう居るまい。)

東瀬 夏希 > 「いや、ちが、そういうわけでは…!」

全然違わない。
夏希はあまり自覚はないが、彼女の好みは『穏やかで誠実な人』であり、そばにいて安心できる人である。
引っ張ってくれる人より、もたれかからせてくれる人を望んでいるのである。

「……どうだろうな。1つは私が壊滅させたが、その手の施設が他にもないとは限らん。異端審問教会も、そこら辺は重点的に調べているようだ。
―――ああ、名前は私がつけた。私にもし弟がいたら……その名前に、なるはずだったんだ」

夏希の妹の名前は「真冬」である。
が、両親は、もし男の子だった場合は「冬夜」という名前にするつもりだったと、生前ちょくちょく口にしていたのだ。

龍宮 鋼 >  
違う、そうか。
オマエはグイグイ来る方が好みか。

(ニヤニヤ。
 完全に遊んでいる。)

まぁ腐るほどあるだろうな。
そう言うのに詳しいのが一人居る、適当に調べさせとくよ。
――あー、妹いたっつってたな。

(以前にそんな事を聞いていた。
 なるほど、夏と冬。
 家族が欲しくて、とも言っていたし、合点がいく。)

東瀬 夏希 > 「い、いや、そういうのは苦手だ……人間関係と言うのは、性急すぎてもいけない」

首を振る。この否定で先程の否定が嘘だと言ってしまっているも同然であることに気付いていない。

「そうだな……アタリがあったら教えてくれ。私も手を貸そう。
―――素直ないい子だったんだ。甘いものが大好きでな。私も好きなんだが、私以上だった。だというのに、半端に余ったらまず私に譲ってくれるような、優しい子だったんだ……」

妹を思い出し俯いてしまう。
どうしてもフラッシュバックしてしまう、惨劇の夜の記憶。
そして―――家族を手にかけた、最悪の感触。

「そうだ。優しくて、私をいっつも信じてくれていて……だというのに、私は、この手でっ……!」

強すぎるほどに強く拳を握り、目からは涙が零れ落ちる。
『トラウマは克服して前を向かないといけない』と言う人も世の中にはたくさんいるだろう。成程、それが出来れば理想である。
―――だが、それは所詮、痛みを知らない子供の戯言。
本当に心に刻まれた傷は、癒えることは決してない。何かの形で一生残り続ける。
それと死ぬまで向き合っていかなければならないのだ。

龍宮 鋼 >  
なら優男の方が好みってこったろ。
性急で良いじゃねェか。
兵は拙速を尊ぶっつーだろ。

(使い方が違う気もするが、細かい事は気にしない。
 それにある意味であっている場合もあるのだから。)

おー了解。
――どこも同じだなァ、妹っつーのは。

(二年前より更に前。
 まだ平和に暮らしていた頃。
 そう言う記憶はおぼろげにだが覚えている。
 ポケットから煙草を取り出して咥え、火を付けて。)

言ったろうがよ。
過ぎたことなんざどうだって良いってよ。
自分のせいにすんな、他人のせいにしちまえ。

(腕を彼女の首に回し、半ば無理矢理に引き寄せて。
 そのまま引き寄せた手でわしわしと頭を撫でる。)

真面目過ぎんだよオマエはよ。
背負い込み過ぎだ。

(彼女は自分に似ているが、同時に自身の妹にも似ている気がした。
 乱暴に、だけど優しくわしわしと頭を撫で続ける。)

東瀬 夏希 > 「そうなる……のか?」

首を傾げつつ、でもやはり冬夜の性格は嫌いではないなと思うので、そうなのかもしれない。

「それでもっ…!私は殺した!この手で!アイツが悪いのは分かってる!それでも、消えてくれないんだ…家族を刺した感覚が、消えてくれないんだっ…!」

自分の手を見ながら涙をこぼす。
引き寄せて頭を撫でられるのも、普段は抵抗するのだろうが、今はそうはせず。
ただただ弱い自分のままで涙をこぼす。

「私は、弱い…!捨てる強さを持てない、この手から零れてしまうものが怖いんだ…!うう、うああ…!」

冷酷にして苛烈、無慈悲にして狂暴。
それが、異端狩りとしての夏希の評価である。
それは間違っていない。異端に対しては、そういう一面をよく見せる。
だが……その奥には、臆病で寂しがりやな少女がいるだけであることを、知る者は殆どいない。
全て、全てその裏返しなのだというのに。

龍宮 鋼 >  
――俺ァ人殺したことはねェし、ましてや家族を殺した事もねェけどよ。

(ケンカっ早い乱暴者で知られる自身だが、人の命を奪ったことは無い。
 別になんらかの信念があるわけではないが、単純に殺すことは無いだろうと思っている。)

ただ妹に刺されたことァあるんだわ。
幸いこうして生きてっけどよ。
その事ずっと引き摺ってるアイツの事考えっと、どうにかしてやりてェって思うんだわ。

(腕の中で泣く彼女の頭をガシガシと撫でながら。
 今も腹に残る傷痕はその時のもの。
 自分を刺して、その事を悔やんで壊れてしまったたった一人の妹。
 その妹が今も苦しんでいると思うと、なんともやるせない気持ちになる。)

だから、まぁ、なんだ。
オマエの家族もそう思ってんじゃねェのか。
気にすんな、って言われてハイわかりましたってもんでもねェだろうけどよ。

(なんとも言いづらそうに。
 そりゃそうだ。
 人を殺した事、ましてや自分の家族を殺した事など気にしない事の方が難しい。)

それにアレだ、そう言う弱さ知ってるヤツの方が、そう言うヤツの事分かってやれんだろ。
――だから、あー、なんだ、ほら、泣き止め。
こう言う事ァ苦手なんだよ俺ァ。

(気まずさを隠すように、照れ隠しのように彼女の頭をワシワシと勢い良く撫で回す。
 人を泣かせることは得意なのだが、泣いているヤツを慰める経験など殆ど無い。
 どうすれば良いのか、何を言えば良いのかわからないのだ。)

東瀬 夏希 > 「わかってるだろうが、そう、簡単でもない……自分で自分を許せないのだからな」

声を絞り出す。
自分を責める、という行為は泥沼である。
下手をすれば、本来傷つけた相手がとうに許しているのに、無限に自分を苛んでしまう。
だがそれでも、人は自分を責めてしまう。『あの時失敗していなければ、もっといい未来があったはずなのに』と言う益体もない後悔から、抜け出すことは非常に難しいのだ。

「前に進む足を止める気はない。だが……どうしても、振り返ってしまうんだ」

現在とは、過去の集合体である。
現在を語る上で、また未来を語る上で、過去を切り捨てることは決してできはしない。
それでも、切り捨てたことにして話をしないと人は前に進めなくなってしまう。だから切り捨てたことにするのだが……結局、夏希は不器用なのである。
切り捨てる器用さもないが、前に進まねばならないからといって過去を引きずったまま無理矢理足を進めてきたのだ。

「……なんだ貴様。こういう時は、泣かせてくれるものではないのか」

だが、それでも鋼の言葉は助けにはなったようで。
少し拗ねたような顔でじぃっと鋼を見る。少なくとも、涙は止まったようである。

龍宮 鋼 >  
(言われて考え方を変えられるなら苦労はしない。
 分かっている。
 それでも言わずにはいられないのも、わかるだろうと思う。)

振り返る事は悪くねェ、つーか、忘れちゃいけねェ事だとは思うぜ。
ただまァ、重いんなら無理矢理進む必要もねェよ。
止まれっつーんじゃなくて、なんだ。
そう言う選択肢もあるっつーこと知ってるだけでも違うっつーか。
――まァそう言うことだ。

(自分が何を言っているのか分からなくなってきた。
 がしがしと自分の頭を掻いて誤魔化しておく。)

そう言う顔は男に見せろ。
そんで泣くなら男の前で泣け。

(ぺしんと頭を叩く。
 甘えた顔をされてもどうすれば良いのか分からない。)

――それとな。
オマエが拾ったヤツはオマエの妹じゃねェ。
重ねるな、ってことじゃねェが、ちゃんとそいつはそいつとして見てやれよ。

(でないとあまり良い結果にはならないと思う。
 分かっているだろうけれど、一応。)

東瀬 夏希 > 「ふん、言っていることにまとまりがなさすぎるな」

などと言ってみるが、大体言いたい事は分かっている。
たまには、楽な道を選んでもいいのだと。それだって間違ってはいないのだと。
そういう事を言いたいのであろう。

「み、見せられるかこんな顔!恥ずかしいにも程がある!」

ブンブンと顔を振って。なんだかんだまだ距離感が掴み切れておらず、冬夜の前で弱い姿を見せるのは抵抗がある様子。

「……分かっているさ。冬夜は真冬ではない。あくまであの名前も、未練に過ぎない。分別はつけているつもりだ」

龍宮 鋼 >  
うっせェな、なれてねェっつったろ。

(もう一度頭を叩く。
 今度は先ほどより強めに。)

見せりゃ良いじゃねェか。
ついでにその無駄にでけェ胸の一つでも押し当ててやりゃイチコロだろうが。
――つーかマジででけェなクソ。

(からかうように言ったあと、改めて彼女の胸のデカさに悔しそうな顔。
 自身は別に小さいと言うわけではないが、彼女のそれと比べると見劣りする。
 と言うか彼女と並んで見劣りしないモノの持ち主はそうそういないだろう。
 抱いていた腕を軽いヘッドロックへと移行させ、その胸に軽くパンチを。)

東瀬 夏希 > 「いたっ!この、何度も叩くな!」

不満げに文句を言う……が、次の言葉にまた表情が変わる。

「だから恥ずかしいと……ええい胸のことは言うな!私だって好きで大きいわけじゃない!
肩は凝るわ剣は構え辛いわ、正直邪魔なだけだ!」

ぎゃあぎゃあと言葉を返す。若干顔が赤い辺り、セクシャルな方でも色々言われたりしてきたのが伺える。
夏希の胸は、本当に大きい。こればっかりは先天性のものなのだが、夏希にとっては厄介な代物だった。

「いた、痛い!やめろ、胸は流石に鍛えられんのだ!痛いではないか!」

胸に軽くパンチをされ、胸をかばうようにガード。割と本気で痛そうである。

龍宮 鋼 >  
あっテメェ言ったな!?
クッソがコレだから胸のでけェヤツは、クソ!

(自分の胸は小さいわけではないが、特別大きいと言うわけでもない。
 それに一応女であるからにはそう言うことを言われるとやはり腹が立つ。
 ヘッドロックしている腕にちょっとだけ力を込めて、空いた方の腕はシュッシュッと胸を殴るようなモーションでフェイントをかけつつ逃げの抑制。)

テメェ寄越せ!
その無駄に溜め込んだ脂肪を一部でもこっちに寄越せ!!

(しかし本気で暴れているわけではない。
 外から見れば仲良くじゃれあっているような風に見えるかもしれない。
 だってこっちの顔は楽しそうに笑っているのだし。)

東瀬 夏希 > 「ええいこら止めろ、痛い、頭が地味に痛い!」

ぎゃあぎゃあと言い返す。その間の胸のガードは忘れない。そのおかげで身動きは取れないのだが。

「渡せるものならくれてやるが、そういうわけにもいかんだろうが。どいつもこいつも胸胸と…重いんだぞこれ!この、頭にのせてやろうか!」

ぎゃあぎゃあ。
だが、夏希も本気で争ってるわけでは無い。
本人に自覚はないが……表情は、笑顔なのである。

龍宮 鋼 >  
ッハ!
痛いのイヤなら止めさせてみろよ!

(もう完全に悪ガキのノリである。
 本気で痛くは無い程度に頭を締め付けつつ、腕の自由を奪うように拳を動かす。)

その体勢からどうやって乗せるっつーんだ!
オラオラどうしたどうした、乗せてみろよアーン!?

(完全に調子に乗っている。
 笑顔で楽しそうにじゃれ合って。
 そんなじゃれあいは彼女が逃げ出すか、こちらが飽きて解放するまで続いたとか何とか――)

ご案内:「常世公園」から龍宮 鋼さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から東瀬 夏希さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に黒龍さんが現れました。
黒龍 > 深夜、という時間帯はまだ少し早く――…だが、すっかりと夜の帳が下りた時間帯。
常世公園の一角、幾つか点在するベンチの一つを占領しながら何やらプリントらしき物を眺めている黒スーツにサングラスの男が一人。

「……異能判定はやっぱ陽性…と。ただ相変わらずどんな能力かは未知数、か。手掛かりすらねぇのか」

溜息混じりに呟きつつ、もう一度最初から文面を確認する。
飛び込んでくる文字は『異能判定:陽性』や『系統不明』、『詳細不明』の文字ばかり。
つまり、異能が目覚めたのは矢張り確定のようだが…肝心の内容は全然分からない。

最近愛用している黒パッケのアメスピの箱を片手で懐から取り出しつつ、中身を一本取り出して口に咥える。

「…まぁ、内容どころか発動条件すらわかんねーしな…異能初心者には辛いトコだぜ」

もっと専門的か精密な検査を受けなければいけないかもしれないが…正直抵抗がある。
異能の検査のついでに、これ幸いと身体検査などをされかねないからだ。…どう見てもマッドな研究者もあそこには多そうだし。

前途多難だぜ、とボヤきながら右手の人差し指に火を点して煙草の先端を近付ける。
そのまま、煙草を口に咥えながらプリントを乱雑に折り畳んで懐に仕舞い込んだ。

「…まぁ、異能は一先ず置いておくか。問題はそうなると義手に入り込んだ魔導書の方なんだが…」

チラリ、と左手の黒い義手を一瞥する。そちらもそちらで、未だに中身というか力の詳細は不明だ。
まぁ、元々があの胡散臭い禁書庫にあったものだ。ロクな中身では無いだろうが。

(…つーか、喰われ掛けた時点でそりゃロクでもねーのは当然だわな)

ご案内:「常世公園」に黒龍さんが現れました。
ご案内:「常世公園」に黒龍さんが現れました。
黒龍 > 「――世界が変わっても細々としたトラブルには事欠かねぇってか。…全く退屈しなくて涙が出そうだ」

異能の覚醒や魔導書の力を丸ごと義手に内包してしまうなど、細々とは言い切れないものはあるが。
どのみち、トラブルに繋がりかねない危険性を孕んでいるのは間違いない。
特に、どちらも能力の詳細が現時点で全く分かっていないのだから。

煙草を蒸かしつつ、私怨を燻らせていたがフと携帯の振動を感じて懐から取り出す。スマホ?いいえガラケーです。
とある男から偽造学生証と共に渡された物だ。

「……俺だ。ああ――…あン?そういうのは八百万に聞けって…アイツは忙しい?
ってか、何でそれで俺に連絡が回ってくんだよ面倒くせぇな…人員が足りない?
もっと頭の回るメンバーとかに報告しろよ。俺は責任者じゃねーんだぞ…」

仕方なく所属する事になってしまった『八百万情報商会』。そのメンバーからの電話だった。
代表でもある男が多忙との事で。何故かこちらにお鉢が回ってきたようだ。

(……そもそも、情報収集とか俺の性格的に向いてねーんだがなぁ)

心の中で呟きながら、メンバーからの電話内容は適当に受け流しておく。
結局、他の手の空いてて頭が回るメンバーに判断を仰げ、と念押しして通話を切った。

「……あーー…ったく。ガラじゃねーわ情報屋なんてのは」

煙草を蒸かしつつ、ガラケーはまた懐へと戻しておく。

ご案内:「常世公園」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 「おーいぇー、ふんふんたらふんふん♪」

間の抜けたメロディーを口ずさみながら、ブンブンと右手のレジ袋を振る月香。
…しかし、その目にはかなりの疲れが溜まっていた。

(コンビニまじぶらっく…)

先日、あまりの仕送りの少なさにとうとう甘味が足りないと行動を起こしたそこそこ甘党である月香。

バイトへの決意を固め、常世島のコンビニのバイトに就職。
朝昼晩、レジやらで眠気と戦う日々を2週間ほどぶっ通しで行ってきた。
金はある程度貯まったため、もう少し安定したバイトを探すつもりだ。

「おーいぇージュースだぜジュースー」

レジ袋を揺らし、口ずさみながら公園に入る月香。
自動販売機で飲み物を買うつもりらしい。
公園内に誰かの気配を感じない事も無いが、眠気で少しばかり頭が働かなかった。

黒龍 > 「………あン?」

左腕の義手が一瞬カタカタと振動した気がする。義手の誤作動?はまず無いだろう。
そうなると『中身』が何かに反応したと見るべきだが…。

と、サングラス越しの男の視線が一人の女子を捉える。やや童顔だが制服姿からして同じ常世の生徒だろうか。

(……何か目が死んでやがるが大丈夫か?あの小娘…)

口には出さず、声も掛けないが自然と他に人気が無いのもあり、彼女の行動をベンチでダラけながら自然と目線で追っているだろう。

で、どうやらこちらに気付いていないらしい。男は自販機のまん前のベンチに腰掛けている。
普通なら視界の端くらいには入りそうなものだが、あちらの様子からしてどうも気付かれてないようだ。

(……そんだけ疲弊してるって事なんだろうが…大方、バイトか何かか?)

和元月香 > 近くにいる者の思考など知るよしも無く、「ヒャッハー!」と叫びながら自販機のボタンを押す。 
所謂深夜テンション、完全に病院を勧められるそれであった。

…しかし。

「、ん?」

デジャウ"と言うか、なんと言おうか。
感じた事のある嫌な感覚に、月香の薄茶色の瞳に理性が戻る。

(………黒い、本?
いや置いてきたぞ私は。厳重に金庫に入れて鍵締めたし…封印したぞ…魔術で)

そう一瞬の内に思考が巡りながら、気配の方へ顔を向ければ。
ベンチに相手が座っていて、恐らく目が合うだろう。

「………………え、こんばんはー…」
(…あれれ?)

そして思った相手と違う事に、挨拶をしながらも不思議そうに首をかしげてしまうだろうか。

黒龍 > (……疲労でイカレてんのか?)

そして、気付かれていないのをいい事に、堂々とベンチに居座りながら「ヒャッハー!」しながら自販機のボタンを押している女生徒の一部始終を眺めている男である。

「………ん?」

まただ、丁度少女がこちらに気付いて振り返り、目線が合った瞬間にピリリ、と左腕の義手が痺れる感覚。
痛覚とかそういうのは確か無い筈なので、原因があるとしたら矢張り義手に取り込んでしまった魔導書しかない。

「……おぅ、何かお疲れみてーだな…ヒャッハー叫びながら飲み物買うヤツは初めて見たぞ」

と、余計な事まで淡々と口にしつつ、咥え煙草のままで右手を気だるそうにユラリと振ってみせる。
そうしながらも、その女生徒を観察していたのだが……ああ、気のせいではない。

(…魔力、つぅか魔導書の残り香みてーなのがあるな…今は手元に無いみてーだが…ある意味で『同類』、か?)

そう思案する男。あちらも、こちら…特に男の左腕、黒い金属の義手っぽいそちらから嫌な気配を如実に感じ取れるかもしれない。