2017/04/27 のログ
ご案内:「常世公園」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > ――さて。
新学期のはじめからそろそろ一か月が経とうとしている。
前髪をピン止めで止めて、素顔を見えるようにして。
新しい日々を始めて、失恋をしてもう一月。

「――さて。どうしようかな」

胸には空虚感が。”どの前とも”違う、空いたものを感じる。
といっても、この空虚感が本当に”悠薇”のものであるかというのも怪しいのだけれど。

「できない、不可能、非常識、非日常」

負を担う天秤。
それが、”今”の天秤の性質。
天秤の持ち主は、天秤という形を変えることはできないが
その性質というものは使用者によって変わってくる。

結局のところ、道具なのだ。
だから、持ち主である”自分”が出てくれば、元の性質に戻るはずであったのに。

――彼女の性質は今だ、健在

「――困ったなぁ」

伊都波悠薇、という少女は少しずつ学園に認識されつつある今。

”はるかだった少女”が今もなお、こうしてあるのはとても困ることであった

伊都波 悠薇 >  
なにが一番困るかといえば。
その性質があり続ける限り、自分は”伊都波悠薇”として着地しきれないということ。

なにせ、前の少女が持ち主を主張しているのだ。
あれだけ、”誰のもの”と戸惑って、嘆いて。悲しんで。
助けてともがいて、なお持ち主として根を張れなかった少女が。

この期に及んで負けを認めていない。

これは姉には伝えていないことだが――
この天秤があり続ける限りは。この性質を内包している限りは。

”自分―いとわはるかになったもの―”という外装(せいかく/せいしつ)が

”彼女―いとわはるかであったもの―”を、包み込んで隠しているだけに過ぎないのを。

十二分にわかっていた。

でも、それでも。そんなにたやすく、湧き出てくるほど。

”ウィルス”は甘いものではないけれど。
当然――

「――今の私も、そんなにたやすく渡すつもりもないけれど」

ぐぅっと伸びをして、一つ。
ブランコに腰を掛ける。

ブランコ。なんでか、青春のにおいがする遊具の一つ。
たまになぜか、乗りたくなる……

伊都波 悠薇 > ぎぃ、ぎぃっとゆらゆらと揺らす。
振り子のように揺らして、行ったり来たり。

そう、行ったり来たり――……

「~~~♪」

鼻歌を歌いながら、少しずつ足のふりを強くしていく。
たたんで、伸ばして。
たたんで、伸ばして。

勢いがよくなるブランコ。あんまり強くしてはケガをしてしまうから慎重に。
さらにふり幅が大きくなれば、ばさばさとスカートが揺れる。

そんな当然のことも忘れて。

ブランコをこいでいく。

風を切る心地が、胸の空いたところを通って行っている気がして。

とても、心地よかった。

あいているのも、悪くないなんて思う程度には

ご案内:「常世公園」にルギウスさんが現れました。
ルギウス > 「いやいや、絶景ですねこれは。
 目の保養にぴったりです」

雲で少し日が翳ったか。
それも一瞬。再び太陽が舞台を照らせば……一瞬の暗転のうちに白い司祭がブランコの正面にしゃがみ込んでいたりする。

「どうも、お久しぶりです。
 お元気でしたぁ?」

サングラス越しの視線は、一部を見据えて動かない。

伊都波 悠薇 >  
「……ん?」

ぎぃ、こぉ――……
揺らして、勢いを止めずに。
声だけに耳を傾ける。
聞き覚えのある声だった。

間違いなく、どこかで聞いたことがある。
思い出しつつ。
そのままの状態で話しかける。

風音が、耳を通り抜けながら――耳朶に響く、久しぶりの言葉に。

「――久しぶりです、先生。新学期もよろしくお願いしますね?」

ルギウス > 「ええ、よろしく。
 なんなら生涯よろしくしていただいてもいいんですがね?
 さて……貴方の事はなんとお呼びすればよろしいでしょう?
 いえねぇ?人様を乗っ取るとかとてもとても親近感がありましてねぇ」

ブランコの正面。
どこからともなく割と豪勢な椅子を用意して腰掛けた。

伊都波 悠薇 >  
「……しょ、生涯とか困ります……というか、そんなにじっくりみないでくだ――……」

漕ぐのをやめれば、ゆっくりゆっくり勢いが消えていく。

――さて。なんでわかったのだろうか。
ちょっと、とりつくろわなかったのは確かだし。
あまりに心地よくて、それなりの解放感に身を任せていたことは反省する。

反省するが――何かあって、そんな風になったり、口調の変化。
態度の変化なんて、女子高生には多々あることに違いない。
なにせ長期休み後の久々の出会い。
三日見ぬなんとやら、というように、だ。

なのに――

「……やだなぁ、いつも通りでいいですよ?」

名前くらい知ってるでしょう? なんて言いながら。
いつも通りにふるまう。

ルギウス > 「一つ。彼女であれば“見られている”事がわかった時点で赤面しています。生涯よろしくなんて言えばその場で妄想劇場開催ですよ。
 二つ。そもそも自信なんて欠片ももってない彼女が前髪で顔を隠していないなんておかしい。
 三つ。彼女はああ見えて礼儀はきちんとしていましてね。仮にも教師の前であれば、ソレから降りて挨拶してますよ。
 四つ。私は視覚以外でも人間を見る事ができましてねぇ……私を騙すならもうちょっと乗れるような演技をしていただきませんと」

丁寧に指を立てて説明していく。
まるで出来の悪い子供に教えていくように。

「幸いなのは彼女の交友関係がさほど広くも深くも無かった事でしょうか。
 知られていないなら、成り代わるのは実に簡単です。
 私もよくやりましたからねぇ、それ」

伊都波 悠薇 >  
――心の中を読むのもお手の物って?

あぁ、ここの島はそういうものだったか。
でもまぁ、だとしても。

”嘘は何一つついていない”

「そんなこと言われても。成り代わるとか、そういうのとはちがうんですよ?」

そう、これはそういったものじゃない。

「自信を持ったとか、ちょっと成長したとかそういうのと似たようなもの。私が何かしたわけでもないし、彼女がどうしたというわけでもない。時間がそうした、環境がそうした」

説明を受けたって、どこ一つ、そうする必要性を感じない。
だって現時点で伊都波悠薇は自分しかいないのだから。

「――といっても、納得しなさそうですけど」

ルギウス > 「ええ、変化と言ってしまえばそうともとれるでしょう。
 そしてそれは大多数にとっては どうでもいい 事でもある」

世知辛い世の中ですよねぇ なんて付け加えて。
とても白々しい。

「別の人格を作った とか 何かで上書きした というのも変化ですからねぇ。
 ああ、勘違いしないでくださいね?
 私は別に貴女を責めているわけじゃありませんし、ましてや無理矢理にでも元に戻そうなんてちっとも考えてませんから」

敵対する意思がないですよ、と言いたげに両手を挙げる。
表情は笑顔から一切動かないが。

「ただ、以前の約束がまだだったな なんて思い出したものですからねぇ。
 ほら宙ぶらりんだと気持ち悪いじゃないですか、なんとなく」

伊都波 悠薇 >  
「――そんなものでしょ。何も知らない、付加価値もないものにとって”都合がよかったら”それは、だれしもいいように解釈するものだもの」

きぃきぃっと、足を地につけたまま少しだけブランコを揺らす。

「――勘違いなんてしてませんよ? だって、指摘したのは、指摘することに寄っての反応を楽しみたいからでしょう?」

敵対とか、そういうのも”どうでもいい”
そういった話でもないのだ。話ではないと、今しがた、この男はそういったから。

「――馬の約束ですか?」

ルギウス > 「ええ、そんなものです。
 その上で……反応を楽しみたいのと、見定めたいのと。
 もしも、分かれる気があるのでしたら そのうちに連絡でもくださいねぇ。
 貴女の希望する肉体を用意するお手伝いをして差し上げましょう」

大きなお世話でしょうけれどね と肩を竦めて。

「ええ、その馬の約束です。
 貴女のパーソナリティがどれだけ彼女と同じかは推測でしかありませんが……喜ぶふりだけ、というのも寂しいものですからねぇ?」

伊都波 悠薇 >  
「分かれる? 何を言ってるんですか?」

首をかしげて、”知らぬふり”。
言っている意味が理解できないといったように――

「……――」

何がしたいんだろう、この男は。
思えば、そう。過去もそうだった。
何がしたいのか、さっぱり理解できない。

ただいえることは。自分にとって、仲の良いお友達
それくらいだ。

「友人との約束を守りたいことはありますけど、今はごめんなさい。失恋したばっかりで、そんな気分になれません。また、誘ってくれますか?」

ルギウス >   いま
「“現在”は幾らでも変化しますとも。私と話をしているこの瞬間ですらね。
 頭の片隅にでもあってどうしようもなくなったあたりで思い出してくだされば幸いです」

くっくっと笑いを堪えるような動きをした後に。

「ええ、ではまた後日 ということで」

あっさりと引いた。
理解してますよ、とでも言いたげなその表情が人によっては苛立ちを誘うだろう。

「では、私はそろそろお暇しましょうか。


 ……ああ、そうそう。良いものを見せていただいたお礼に一つだけ。
 『隠していた期間が長いほど拗れ』ますよ。
 経験則ですがねぇ」

それだけ伝えて、舞台上の役者のような大袈裟な一礼をする。
空から幕が落ちてきて――――

次の瞬間には、幕と椅子だけ残して姿が消え失せた。

ご案内:「常世公園」からルギウスさんが去りました。
伊都波 悠薇 >  
「――空気の読める人」

いつも、そう。
だからあの人は、今も友人なんだと思った。
いらだち? そんなものはない。
感じる必要性もない。なにせ”そんな関係なんかじゃない”

「……いいもの、ね……」

言っている意味の半分も理解できない。
いつもいつも、難しい課題をおいていくものだなんて思いながら。

ぎぃぎぃっと、ブランコを漕ぐ――

伊都波 悠薇 > 隠していた期間。
そんなこと言われても、すぐに理解ができない。

こじれる? なにが、だれと?

「――先生なんだよね」

そう、どこまで行っても。
彼は自分にとっての先生で、友人だ。
今もそうあると、疑っていない。
疑う必要も感じない。
でも、考える――

「――先輩は……」

そう、先輩は、どうあっても悠薇だといった。

結局彼女は、どんな自分であろうと受け入れると。

姉は、元に戻ってといった。
今のあなたは悠薇ではないと。

でも、あなたも妹として、扱うと。

「――誰に、何を隠してるんだろう?」

疑問に疑問を重ねていく

伊都波 悠薇 >  
「――まぁ、考えても仕方のないことなんだろうけれど」

今考えることは、この胸を埋めること。
しかし、これは半ば今の悠薇はあきらめていることでもある。
なにせ、悠薇には”何かをなせる”という価値観がない。
人生がない、生がない。

”英雄”に憧れるだけの、村人。
その存在は、今でもなお崩れることはない。

なにせ、”そういうものだと”伊都波悠薇という魂が
染まってしまっている。抜けることなど不可能で、主人公になるなんて不可能で。

そして、”お姫様―ひろいん―”になるのも無理なのだと、理解している。


 ・・・・
”それでも”

「――そんなんだから、こんな天秤になっちゃうんだろうね」

だから伊都波悠薇は――

「だからこんなにすぐ消えてしまうんだろうね」

――今に至るのだ

伊都波 悠薇 >  
自分の存在を、他人に肯定してもらえることで存在する。
他人がいなければ、自己を保てないか弱い精神。

誰かに助けてほしくて、だれかにだれかにだれかに――

そしてそのうち。

”自分が”

漸く出てくる”己”
だれかが、もっと悠薇を悠薇として受け入れていれば。
悠薇と一緒にいてくれれば。

「……そんなIF、存在するわけないのにね」

結局、姉に縋るしかなかった妹は。
姉しかいなかった妹は――

「――お姉ちゃんだからこそ……」

なんて人間は。

       むずかしい

そう呟いて。

「~~~♪」

また鼻歌を口ずさむ

伊都波 悠薇 >  
「あぁ、なるほど……?」

理解する。そして――

「今思えば――」

――私たちって、隠し事、ばかりだね? お姉ちゃん?

行きついたのは。

「……くすっ」

おかしくて。
”ショウジョ”は嗤った

ご案内:「常世公園」から伊都波 悠薇さんが去りました。