2017/10/06 のログ
■飛鷹与一 > 「取り敢えず、年末年始は帰省か…お土産どうしようかな」
これといったものは特に考えてなかった。体術の師匠の方はまぁ酒でいいだろう。むしろそれしか選択肢が無い。
世話になった施設の院長、そして弟分妹分達には何をお土産にしたらいいやら。
ペットボトルのお茶を半分程度まで減らしつつ、うーんと唸るが直ぐには浮かんでこない。
それに、無駄遣いは殆どしないとはいえ金銭面とも相談しなければならない。
「……まぁ、でも。帰る場所があるのは有難い事なんだよな…」
実の家族は―――で、既に死んでいる。もう顔すら思い出せない。そんなに昔の事でもないのに。
死神のケタケタ笑うような声が聞こえた気がした。長い付き合いだがコレも含めて自分なのだ、と。
最近、少しくらいは割り切れるようにはなった気がする。少しだけ、だが。
「……結果的にこの島に来たのは正解だったのかな」
フと夜空をぼんやりと仰ぎ見ながらそう呟く。
ご案内:「常世公園」に宵町 彼岸さんが現れました。
■宵町 彼岸 >
月に酔うという表現はまるっきり比喩と言い切れるものではないらしい。
その美しさに誘われるように魔と人が交差するお話は
西洋問わず非常に広い地域で共通してみられる。
その始まりはだいたい月見の途中に何かがやってくるというもので……
「どなどなどーなーどーなー……」
子ウサギのーせーて……?あれ?」
文字通りまるで月に誘われたかのように
いつかどこかで見たような容姿の人影が
正解よりもかなりサイズが小さくなった積み荷の歌を歌いながら公園の角に現れた。
ふらふらとした様子でジャングルジムへと歩いていく。
相変わらず服装はまるで寝起きに適当な服を選んだの如く
サイズも着用も適当な上に、半分寝ているかのように
不安定に歩くその姿はさながら夢遊病患者。
きちんと着ればそれなりに様になるチョイスだというのに
ある意味此処までちぐはぐに見えるのも才能かもしれない。
周囲の誰かが見れば不安になるような動きを当の本人は全く気にかけることなく
背負った荷物を目当ての場所にゆっくりと下す。
それなりに重い音がしたが中身は無事だろう多分。
「……あれ?何かすーすーする気がするぅ。まぁいっかぁ」
実際結構大事なものを忘れているのだけれど本人の記憶には残念ながら
全く思い出される事は無かった。
■飛鷹与一 > 「……んん?」
ボンヤリと月と夜空を見上げていれば、フと聞き覚えのある声…いや、これは鼻歌だろうか?
自然と視線が空から地上へと戻る。覇気にちょっと乏しい黒瞳が声の主を探して視線を彷徨わせ…見つけた。
「あれは…確か…えーと…あれ?」
覚えている。たぶん記憶違いではない。…が、肝心の名前を確かまだ聞いてなかった気がしないでもない。
…もしかしたら、聞いてたかもしれないが度忘れしている可能性も否定できないが。
(…と、いうか足取りも危なっかしい気がするし何か服装が…うーん?)
ともあれ、纏めて結論を述べるならば流石に見てみぬフリは難しい類の人影だった。
その辺りは、少年はたぶん人間として至極全うな感覚の持ち主なのだろう、多分。
さて、元々、夜目が利くのもあり公園の街灯、月明かりでも十分に人影の服装や動きは分かる。
何やら荷物を置いているようだが、結構無造作に置いたぽいが中身は大丈夫なのだろうか?と思わないでもなく。
(…え?すーすーする?……まさか…)
彼女の独り言はギリギリ聞こえたらしい。少年的に推測は出来たが口にするのは流石に憚られた。
しかし、声を掛けるタイミングを逃してしまった気がする。結果的にこちらはベンチに座ったまま、少し離れたジャングルジムで足を止めた彼女が何をするのか見守る形になるかもしれない。
■宵町 彼岸 >
「……んしょ、っと」
地面に降ろした荷物の紐をほどいて
中から身長の半分ほどの円筒を取り出す。
つま先立ちしてそれを頭上に掲げるも……
「んぅ?」
そうでなくとも普通よりも低めの身長の上に
目標はそこそこ高めのジャングルジム。
これはもう清々しい程届いていなかった。
と言うか届く筈もない。普通に考えて。
届いたら宇宙人か巨人か異界人。あ、意外と沢山いそう。
「投げたらだめだしなぁ……。
頑張って持ってあがろっとぉ」
少し小首を傾げて固まった後、ちょっとプルプルしていた腕と
踵をそっとおろすと円筒と固定具を小脇に抱えた。
そのまま危なっかしい様子でジャングルジムを上り始める。
外側を登るより中にもぐって上がっていった方が良いような気もするけれど……。
因みに近くに人が居る事には気が付いてもいない。
今日も程よく意識が現実に無かった。
■飛鷹与一 > (…何だろうアレ?円筒形の形をした…うん、全然分からん。むしろ掲げてる感じからして結構軽い?)
声を掛けるタイミングを逸してしまったからか、取り敢えず彼女の行動を観察する流れになっている少年。
…と、いうかどう考えても高さが足りない気がする。流石に、そろそろ見ているだけは何か駄目だな、と思いベンチから立ち上がる。
「…って、登り始めちゃったよ。…内側からのルートの方がいい気がするんだけどなぁ」
そんな事より、動作がいちいち危なっかしい。酔っ払いか夢遊病者じみた印象だ。
いきなり声を掛けるのもアレかと思い、取り敢えずスタスタとジャングルジムへと少年も移動する。
(…もし落ちそうになったらフォローはしよう)
既に魔術の発動準備は出来ている。まぁ、彼女が転げ落ちる可能性がゼロではない以上備えあれば何とやら。
程なくして、ジャングルジムの元へと辿り着けば自然と上り始めた彼女を見上げる形になるだろう。
■宵町 彼岸 >
まずは片手で格子を握り、足をかけ体を持ち上げる。
誰もがやった事があるであろう基本中の基本の動作。
ジムクライムはこの最初の一歩から始まる。
「……あれいまのゆ―……ふぁ!?」
だというのによそ見をしてそれはもう見事に手を滑らせた。
幾ら運動神経が残念でも其処から落ちるのはないだろうと誰もが思うであろう第1~2歩目で。
格子を握っているはずの手は空を掴み、風にあおられ長い髪の毛が宙にふわりと広がる。
傾いでいく体に弧を描くように宙に流れる視線。見上げた瞳に映る月。
いつもより眩しく見えるまん丸い天体はいつも通り綺麗で……
少しだけ浮かぶ雲と流れていく景色の対比が美しく、
何だか全てがスローモーションに見えた。
「……っ!」
一瞬見惚れた後に我に返り、落ちていきながら
咄嗟に円筒……天体望遠鏡を胸に抱え丸くなる。
普通であれば体を守ろうと身を捻ったり、地面に手をつこうとするところだけれど
一切自分の身を守る動きは見せず、望遠鏡の守りに全振りの姿勢。
■飛鷹与一 > 「…って、そこでかい!!」
思わず大声でツッコミを入れてしまったのは条件反射に近い。まさか最初の1、2歩目で足を踏み外すとは思わなかったようで。とはいえ魔術を発動する。
熱量操作の応用と己の魔力の操作に組み合わせ。両足から小規模の爆風を発生させ、それにより一気に舞い上がり彼女…と、円筒形もとい望遠鏡もキャッチ。
まぁ、望遠鏡は彼女がしっかりわが身を省みず抱え込んでいるから無事なのだが。
「…よいしょ…っと!」
少し掛け声が情けないのはご愛嬌だ。そのまま彼女を両手でしっかり抱きとめるようにキャッチ。
ついでに、爆風の勢いで軽く空へと舞い上がり…自由落下。しかし器用にジャングルジムの天辺に着地する。
「危なかったー…あの、大丈夫ですか?」
と、一応声を掛けておこう。彼女は人の顔を記憶は確か出来なかった覚えがあるが、名前とか記録はしている筈だ。
なら、彼女が記録消去してなければこちらに覚えがある…とは思いたい。無ければしょうがないけれど。
ともあれ、彼女が無事ならばジャングルジムの一角に座らせるようにして下ろそうとするだろう。
(…と、いうか今更気づいたけど望遠鏡、なんだなぁ。天体観測か…)
少し懐かしい気がした。だがそれは振り払い、取り敢えず相手の様子を確認しておこう。
■宵町 彼岸 >
「ふぉぉ……吃驚したぁ……色んな意味で」
登ろうと思ったらゆーふぉーらしきものを見た上に滑った挙句
大きな声の突っ込みを貰っておまけに抱き留められて
目を開けばジャングルジムの上にいた。
「落ちたと思ったら上がってた?重力迷子ぉ?」
少し微笑んだ表情で小首を傾げるも
口から飛び出したのは若干ずれた内容。
にこやかな表情に反して若干混乱気味だったりする。
とりあえず誰かの腕の中に居る事だけはわかる。
天体望遠鏡もおかげさまで無事の様子。とりあえずそれは一安心。
治せるとは言ってもできるだけ治したくはない。こんな月の奇麗な夜は特に。
「ぁ、わ、えと、ごめんねぇ?」
望遠鏡を抱きしめた姿勢のまま身を寄せるような姿勢で瞬いた。
何かと密着する形になってしまったが不愉快ではないだろうか。
とりあえずそっと降ろされた一角に座り、少しだけ足を揺らす。
少しだけ動悸がしたのを誤魔化す様に胸に手を当て一息ついて
「ん、へーきだよぉ。
お陰様で怪我は、ないみたいだし。
助けて貰っちゃって……ごめんねぇ?」
少しだけ身を捩り、顔をじっと見上げる。
基本人の顔は見分けがつかない。
だから何かしら情報を見つけるためにいつも相手の顔を見つめすぎてしまう。
相手みてやりなよとよく言われるものの、相手がわからないのだから判別のしようがない。
そんな事をするから余計隙だらけに見えると言われるのだけれど。
「えーっと、君も空、見に来たのぉ?」
こんなにも月の奇麗な夜だから、それに誘われてきたのかと
ゆっくりと問いかけてみる。
もしそうならこうして助けてもらえたのは運が良かったのかもしれない。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「いえ、むしろ驚いたのは俺の方なんですけどねウン…」
吐息を一つ。生憎と重力に干渉する異能や魔術やアイテムは持ち合わせが無い…まぁ、それはさて置き。
彼女の若干ズレた発言は以前遭遇した時に何となく分かっている。
勿論、それが不快だとかそういうのは一切無い。そもそもこの島は個性的な連中ばかりなのだ。
何というか、自然と突拍子も無い事態とか言動にも慣れが生じてしまう。
チラリ、と彼女と天体望遠鏡を交互に眺める。どちらも怪我とか無いようで良き哉。
「え?ああ。いえ全然大丈夫ですよ。抱き心地もいいですし」
と、謝る彼女に笑顔でそう返すが、余計な一言を追加してしまったかもしれない。
が、それが事実だから仕方ないのだ。実際抱き心地は良かったのである。
彼女が腰を落ち着ければ、何となく自分もお隣にお邪魔する形で腰を下ろしておこう。
「ええ、怪我が無くて何よりです。望遠鏡も無事みたいで良かったですね」
小さく笑って望遠鏡を軽く指差す。とっさに彼女が望遠鏡をまず庇ったのは記憶している。
彼女からジッと見つめられても自然とこちらも見返す。人の顔の判別が付かない、という事は知っているからだ。
「ええ、今日は仕事も休みなんで気分転換にも…あ、ちなみに前にお会いしてますよ俺達。
えーと、『飛鷹与一』の名前で主な特徴とか貴女の記録に残ってる…と、思うんですが」
最後は自信無さそうに。記録も記憶も削除は簡単に出来るもの。そのまま残されているかは少年には分からないのだし。
そして、肝心な事だが「あと、出来ればお名前を伺っても?もしかしたら前回お名前聞いてなかった可能性が」と、補足の形で尋ねておこう。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■宵町 彼岸 >
「あはは、それもそーだよねぇ……
自分でもちょっとびっくりするほどお間抜けさんだったしぃ」
少しへにゃっとしながらため息に同調する。
まさかそこで踏み外すとは自分でも思わなかった怖い。
普段からこんなことにばかり巻き込まれている周りからすれば平常運転らしいけれど
出来れば改善したいなとは少し思うお年頃。
天然とは別名ちょっと抜けてるダメな子です。
「んふー。抱き心地良いとはよく言われるぅ
ほぼ毎日ハグされてるしぃ
お望みならいつでもどーぞぉ?」
ニコニコ笑顔のままと両手を広げ小首を傾げる。
そういう風に出来てるからね。と続く言葉はひっそりと胸にしまって。
元々かなり柔らかい体だし、それに今は……うん、痴女と思われる前に
色々ちゃんとつける習慣をつけようと都合何千回目の誓いを胸中でしつつ
相手の男女問わず腕を広げる辺り、色々と悩ましい性格。
「ふふー。何時でも良ーよぉ?ボクはぁ。
それにしても……きれーだねぇ」
隣に腰を下ろす少年を横目に空を見上げる。
今日は月が明るいから、あまり星は見えないけれど
空にぽっかりと空いた穴のような月が彼女は嫌いではなかった。
「怪我ね―……すると痛いっていうもんねぇ
ここから落ちたらイタイで済まないかもしれないけどねぇ
ボクはこっちが傷ついちゃうほうが嫌だけど……」
抱えた望遠鏡を愛おしげに撫でる。
それ自体変哲もない、そんなに倍率も高くないようなもの。
月を眺めれば表面程度は見えるだろうといったような
どちらかと言えば子供向けサイズ。
大人用の天体望遠鏡は彼女の身長くらいの大きさがある。
「あ―……ごめんねぇ。ボク、顔の見分け付かないんだぁ……
えーっと、屋上であった人?あと―……あの人の大事な人ぉ?だっけぇ?
ん、記録はしてるよぉ。お久しぶり、かなぁ?元気だったぁ?」
ああ、あの快適な気温にしてくれた人だとのんびり記憶を探り笑顔を向ける。
今日は幾分か柔らかい気分なので三割増しに緩い雰囲気が漂っていた。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「間抜け、とは思いませんが足元不注意、ですかねぇ」
足を踏み外す、転げ落ちるのは自分だって経験があるからそこは馬鹿に出来ないし何も言えない。
…が、まさか初っ端の段階で落ちるのは流石に想定外だった訳で。そこまで予測しておくべきだったのだろうけど。
ともあれ、何とかキャッチは成功したのだし結果オーライである。
果たして、彼女のそれが改善されるか否かは多分神様でも分からない気がする。
「…そう言われると逆に躊躇いが生まれるんですけどね…あと、ぶっちゃけますけど下着は付けた方が」
先ほど、抱きとめた時に自然と確認してしまった事実。何か服越しにダイレクトに触れた感触があった気がしないでもなく。
――ちなみに、小柄なのにナイスバディだと思う。そこは口にはしないけれども。
ともあれ、お隣にお邪魔しつつ一度夜空へと視線を向ける。遠く、そして高い。当たり前のことを再確認する。月には手が届きそうで届かない。
「あー…少なくとも、今俺が居るので転げ落ちそうになったら助けますよちゃんと。勿論ソレも」
と、望遠鏡も指差してみせる。実際の望遠鏡はもっとデカいサイズのそれなのは勿論知っている。
ただ、子供用だとして裸眼よりは全然マシだろうから。
「あ、ハイ以前お会いした時に顔の判別が付かないというか記憶できないのは聞いてます。
屋上でお会いしたのは間違いないですけど、あの人って…?」
はて、誰の事だろうか?と首を傾げるのだった。元気だったか?という問いかけに「えぇ、まぁ」と曖昧に笑って。
幾つか変化はあると言えばあったし。まぁ、少なくともまだ人間ではある。
今回はこちらもプライベート。私服姿で仕事も無いのもあってノンビリとした空気になりつつあった。
お互いのそれで妙にまったりとした空気がジャングルジムに漂っている感じだ。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■宵町 彼岸 >
「まぁボクの人生自体が不注意の塊だからねぇ……
今更感あるかも…?」
階段から落ちる。エレベーターに挟まれる。
エスカレーターに逆に乗ろうとするは序の口で
服を着るのを忘れたり寮内自分の改装で迷子になるわ
果ては自分の部屋じゃない所で力尽きてるわと言ったことは
実は週に1,2の頻度で起こっており日常と化している。
最早うっかりの領域を超えているのは言わないお約束。
「……キミはなんというか、ベクトルがおかしいよねぇ
躊躇うべきは普通前半より広範じゃないのかい?」
目を細めて声に出さずにえっちぃと口を動かすも
その目は笑ったままで。
「そう毎回思ってるんだけどねぇ……
気が付くと忘れちゃうんだよねぇ……不思議ぃ」
うんうんと頷きながら体重を少し預ける。
これならぐらついても支えて貰えるだろうし
支えてくれるというのだから遠慮なく頼ってしまおう。
「遠いねぇ。あんなに近く大きく見えるのにぃ」
ぽつりと小さく言葉が零れた。
それは何処か不安げにか細く震えていて
「ん、把握してもらえると助かるよぉ。こればっかりはどーにもならないからぁ。
あの人が……誰か?あ―……そっか。
まぁテキトーに考えておくといいんじゃないかなぁ?多分正解だからぁ」
それはほんの一瞬後に明るいかつ適当な調子にかき消されるように霧散する。
それ程浅い仲でもないだろうしその内思い至るだろうというぶん投げスタイル。
口にしながら指を鳴らすと袋が2m程の人型の布にほどけ
その中身にくるまれていたものの一部をジャングルジムのてっぺんへと持ち上げる。
形自体は良くある式神の人の型であることからそういった類であることは伝わるかもしれない。
その手にくるまれたものは……月見団子と魔法瓶に入ったお茶と甘酒。
「ここで会ったのも何かの縁だしぃ。どーぞぉ?
……コップ割れちゃってるから水筒の蓋回し飲みだけどぉ」
……最初からそれに持ち上げて貰えば良かったのではとは一切思いついていなかった。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「それはまた…うん、退屈し無そうですね色んな意味で…」
主に貴女の周りの人が、とは口にせずに心の中で。彼女の交友関係はよく知らないが、多分色々とその『不注意』に遭遇したりしてるのだろうなぁ、とか勝手に思いつつ。
流石に、それが日常化しているとまでは思い当たっていない。もしそれを知ったら何かの異能か魔術ですか!?と、ツッコミでも入ったかもしれない。
「……何かそういう感想初めて言われましたよ俺。いや、まぁそっち方面は免疫が付いてきたので」
苦笑気味に答えつつ肩を竦める。ただ、ベクトルがおかしいというのは意外な切り返しだ。
別に自分を凄い全うな人間だとは思ってないが…まぁ、実際ベクトルがおかしい部分はある少年だ。
あと、彼女が声に出さずとも口の動きで把握した。「まぁ年頃ですしねぇ」と、笑み混じりに答える程度の余裕はある。
「…流石に無いと思いますが、うっかり全裸で表出るとか通報モノは駄目ですよえぇ」
と、一応真顔で言っておきつつ、少し寄り掛かられるような重みを感じた。勿論しっかり受け止めておく。
支えると言った以上は出来る範囲できっちり守る。まぁそういう少年だ。
「……ああ…ですねぇ。届かないモノほど手を伸ばしたくなるんでしょうかね。
なまじ、届きそうに見えるから尚更に…なんていうのは変かもしれませんが」
声の震えを何となく感じ取ったのか、軽く右手を伸ばしてぽふっと彼女の頭を撫でようと。
そういえば、施設の妹分とかこんな感じで慰めたり安心させたりしてたなぁ、と思いつつ暫くそうしているかもしれない。
「………あー…ハイ、何となく分かりました。そちらも『師匠』と面識あったんですね。
あ、師匠ってのは俺がナイフ術とか習ってるからなんですけどね?」
と、補足しつつ。多分彼女が言っているあの人、というのは彼女の事だろう。
ともあれ、彼女が指を鳴らすと袋が人型になった。そして、その中身に包まれてたモノをこちらへと持ち上げてくる。
「…最初からそれ使って自分ごと持ち上げれば良かったのでは…?」
と、思わず指摘しつつも、それが式神の類だろう、というのは何となく分かった。
そして、その包まれていたモノは…月見団子とお茶、そして甘酒。
「ん、いいですね。縁って言葉で言うと単純ですけど馬鹿に出来ないモノがありますから…」
回し飲みに関してはまぁ気にしない。間接キスで恥ずかしがる年齢でもないからだ。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■宵町 彼岸 >
「人生退屈くらいが丁度良いんだけどなぁ……
ドラマチックな人生って例外なく死ぬほど不幸な目に合うものだしぃ」
幸福とは相対的な物なのだから。
まぁある意味退屈しないというのは間違っていない。
色々な意味で退屈している暇はないだろう。
「そう?随分変人奇人に囲まれてたんだねぇ……」
その一が言うには随分とあんまりな言葉をしみじみと口にする。
まぁこの島の普通は普通とは程遠い。
最近は何処か壊れた異能者の方が多い位だし……若干末法めいて来ている。
「……まぁボクが口にして形にするまでもないよねぇ。
キミはキミの形があるんだろーし。ベクトルはおかしーとは思うけどぉ」
それを受け取る姿勢が特にねとは口には出さない。
それこそ彼の人生にとっては余計なお世話だろう。
それを指摘するほど深い仲でもなし。
しかし、なんというか免疫が付いたというより……
「……セクハラ魔人っていわれたりしなーぃ?」
若干のジト目でさり気なく抗議する。
深読みのきらいがある事は否めないがそう取られかねない発言をしていると思う。
……最も彼女の場合”知っている”からこそだけれど。
「知らなければ欲しいとは思わなかったはずなのにねぇ
うん。世界っていう物は中々罪作りだよねぇ。こんなに綺麗なんだもん。」
しかし続く言葉に一転、頭を撫でられながら
けらけらと軽薄に笑うような声を響かせながらも
何処かとても優し気な声色で月を愛でる言葉を吐く。
きっと……いや、おそらく、私はこれを眺める事がとても楽しいのだろうと思う。
「ししょー?あ―……ししょーね?
確かにししょーなのかな……うーん」
本人の与り知らぬところで少し悩む。
悩むとは言えそろそろ夜間は体が冷える。
本当は甘くない方のお酒でもよかったのだけれどこの国では法令上許されていない。
其処は少し残念だと思う。もっともすぐ酔うのだけれど。
「……あ」
そう、持ち上げて貰えば良かったと今更ながら指摘され
全く気が付いてなかったという声を響かせる。
「それは思っても言わないお約束だよ明智君」
そのまま少しだけ膨れながら抗議して見せた
■飛鷹与一 > 「まぁ、自分の人生自分で決める、とか言っても案外周りに人生左右される事も多いですからねぇ。
…本人望んで無くてもドラマチックな人生!なんて割とよくあるんじゃないでしょうか」
退屈が悪いとは思わない。時間の潰し方を模索するのも楽しみと捉えようと思えば案外苦でもないかもしれない。
奇人変人、という言葉に苦笑いを返そう。貴女も含まれてるんですけどね、と言いたげである。
ちなみに、壊れた異能者というのは多分少年も片足くらいは突っ込んでいるに違いない。
「形というか何と言うか……ハイ?いえ、別に言われませんけど。
と、いうか貴女が無防備なだけで普通の女子はもっとその辺りガードはしっかりしてるかな、と」
別にナンパでもなければセクハラにすぐ走る少年でもない。むしろ基本真面目君だ。
単に今はリラックスしてるのとこの場の雰囲気でこういう会話の流れになっているだけだ。
――と、いうか付けてない履いてない状態のこの人が主な原因なのだけども。
なので、ジト目をされても笑顔で軽く流してしまうだろう。
「世の中清濁交じり合ってますからね。汚い醜いもの数あらば、同じく綺麗なものもあると。
――貴女は、そういう『綺麗なもの』を愛してるんですね」
最後の一言は、何となくそう思って口にしただけだ。的外れかもしれないがまぁ、こういうセリフを口にしても偶にはいいだろうさ、と。
そして、師匠の事で歯切れが悪くなった相手にはて?と首を傾げるがまぁいいかと深追いはしない。
ちなみに、未成年ではあるが普通にもうお酒はイケる口だ。本土の方の師匠にさんざん晩酌に付き合わされたからだ。
「それは失礼を。膨れっ面も可愛いですよ『先生』」
と、楽しげにそう切り返す。そう言いつつ、取り敢えず月見団子をお一つ頂いてパクリ。うん美味い。
■宵町 彼岸 >
「自分で選んでるって思ってる人の何割が本当に自分で選んでるんだろぉねぇ
一割に満たないとおもうけど本人的にはハッピーならそれで良いよねうん。
逆も……だけどぉ」
良くも悪くもよく見える目を持てば
それだけ高潔に生きる事が出来る可能性はあれど
その分だけ目の前の幸せからは遠ざかる。
それはある意味この月に似ている。
手を伸ばさなければ届かないと知る事は無い。
ならきっと気が付かないという事も幸福には大事なこと。
……そんな事を考えている時点で世間では変人と言うらしい。解せぬ。
「……いちお言っておくけどね?
ボクそういう趣味な訳じゃないからね?
ただ単純に忘れちゃっただけだからね……」
一応露出趣味はない……はず。多分、きっと。
無い事にしたい。何だか頭痛がする気もするがこの際無視する事にする。
彼女の中ではその程度は些細なこと。
「……世界はきれーだからね。
きっと、ボクが知らないだけで、もっとずっと綺麗なはずだから」
言われてみると多分そうなのだろうなぁと思う。
けれど、決して愛しているとは言わない。
それを口にしたが最後、汚してしまわなければいけなくなる。
だからこそ、やんわりとした肯定に留めた。
「あはは……ボクが可愛いのは仕様書通りらしいよぉ?
人の好みはそれぞれだけどねぇ」
ともすれば自信ありげな一言に聞こえる裏に潜む理由は
それこそ汚泥のような何かに裏打ちされたもの。
自信と言うより、諦念に近い何かが僅かに声の端に混ざる事に
もしかしたら気が付けたかもしれない。
気が付いたところで何も変わらないけれど。
「…ふふ。まぁのんびり食べるといいよぉ。月は逃げるけど
ゆっくりさんだからねぇ」
そう告げながら細い指で団子を摘み上げる。
黄色い月と白いお団子……中々綺麗な対比と思いながらゆっくりと口元に運んで。
その口元には穏やかな笑みが浮かんでいた。
■飛鷹与一 > 「…んーーまぁ、幸も不幸も鏡合わせみたいなものですしねぇ」
誰しもが些細な事から大きな事まで味わっているかもしれないそれ。
ただ、その大きさを論じても意味の無い事だ。と、いうか論じる程に頭が回るとは少年は思っていない。
気が付かないほうが幸せな事が世の中幾らでも転がっている、と本土の師匠は言っていた。
それは、あちらもそしてこの島も何処もかしこも同じなのだろう。一種の法則みたいなものだ。
「いや、別にそこまでは思ってませんけど…と、いうか貴女スタイル良いですから露出したら周りが大変でしょう」
と、苦笑い気味に。もっとも周りが騒ぐだけで彼女は多分このように緩い調子なのだろうなぁ、とも思う訳で。
むしろ、本当に露出趣味だとしたら結構上級者な変態さんになってしまうが。
「まぁ、世界といっても異世界含めれば無数にそれこそある訳で。勿論この世界限定でも綺麗なモノはそれこそまだまだあるでしょうね」
やんわりとした肯定に、何となく察したのかそう返すに留める。深く突っ込んではいけない部分、というのもが誰しもあるものだ。
「仕様書通りですか。成る程……まぁ、それはそれでいいんじゃないですか?
仕様書通りでも丸っきり全てが『その通り』だとは限らないわけで。砂粒程度の誤差くらいはもしかしたら生じてるかもしれませんしねぇ」
諦観を察しても少年はそこを指摘しない。何も変わらないのだとしたら、それはそれで少年は思った事を口にするだけの事である。
…うん、それはそれとして月見団子は美味しい。多分、お茶とか甘酒もチビチビと頂いているかもしれず。
「ま、月は逃げてもまた時間が経てば顔を出してくれますしね。今度は表情を変えて」
月の満ち欠けをそう例えて笑う。曇りとかだと月は見えないけれど、それは天気の都合とお月様の気分だから自分たちにはどうしようもない事だ。
そんな調子で、多分しばらくは彼女と二人で月見と洒落込んでいたかもしれない――。
■宵町 彼岸 >
「鏡合わせ……ね。
この島は良い所だよねぇ……
ある意味深遠に最も近くて、まるでいくつもの世界が絡み合う蜘蛛の巣みたい。
研究者としてはきっとこれ以上ない舞台なんだろうねぇ」
一見脈略の無い会話の飛び具合。
彼女的にはちゃんと繋がっているのだけれど、どうにもそれが理解される事は少ない。
それ故に余計にふわふわしていると思われているようだ。
とは言えこの島に憧れる異能研究者は数多い事は確か。
この島は世界の最前線ともいえる。
研究者としても、被験者としても……材料という観点からも。
目の前の彼もまた、そうであるように。
「んー……それは褒められてるのかなぁ
素直に喜んでも良いのか正直判断しかねるねぇ」
そんな昏い思考など微塵も漂わせず
くすくすと笑いながら視線は月から外さない。
きっと目の前で今脱いでも慌てはすれどそこまで困りはしないんだろうなぁなんて
若干駄目な人の思考を無意識にしてみたり。
どちらかと言うと別の方向の方がこの人は好きそうだ。
……元々見られる事には慣れている。色々な意味で。
その事自体は思い出せないけれど、結果としては些細なこと。
「見る人に 物のあはれを知らすれば 月やこの世の鏡なるらむ……
なぁんてねぇ」
蕩ける様に甘い甘い、けれど何処か底知れぬぞっとするような響きを纏う声で
けれど笑うかのように謳うようにとある一節を詠む。
ある意味この場にふさわしい一句。この国は中々面白い感性を受け継がれている。
「ふふー。お団子美味しい。
やっぱり秋の夜長の御伴はお団子だよねぇ
どれも形が整ってて、まぁるくてあまぁぃ」
……”それ”に映し出されるものが美しくあれと願う事はきっと罪なのだろう。
少なくともそんな安寧が許されるのはきっと罪人ではない誰かだけ。
けれど、猛り狂う獣とてその眼を閉じ、休む時があるもの。
だから、今この瞬間だけは
「……ふふ、綺麗」
この月を楽しんで居たい。
その願いを託すかのように胸元の望遠鏡を抱きしめる。
それを覗かなくとも、そこに在る事を思うように。
それはきっと、ありふれた、そして届くことのない願い。
……そうして何処か歪な、けれど表面上は穏やかな二人を包むように
ただただ静かに夜は更けていった。
ご案内:「常世公園」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から宵町 彼岸さんが去りました。