2018/07/27 のログ
ご案内:「常世公園」に楊柳一見さんが現れました。
■楊柳一見 > 空までも暑気に喘ぐような、朱い夕焼けの片隅。
塗りの褪せかかったベンチにだらんと腰掛け、麦茶入りのペットボトルを呷る。
ぬるくなったせいで口当たりが悪いのを吹っ切るように、
「――んで、その後どうよ調子は?」
気怠げに投げた相手は、やや空けた隣に座る女子生徒。
座り方からして大人しく地味な印象だが、顔は悪くない。
――だからこそ、たちの悪い憑き物の的にされたんだろうが。
『…うん、もう、大丈夫。金縛りとかも、なくなったし――』
「アザは? ちゃんと消えたん?」
たどたどしい訥々とした語り口の相手に対し、被せるような言葉。
別に威圧してるんじゃない。素だ。
だから肩震わせんといて傷つくから。
■楊柳一見 > 少し間が空いたが、確かにこくんと頷く相手。
まあ、嘘はついちゃおらんだろう。その意味もないし。
事ここに至って隠し立てするぐらいなら、最初から己のような胡乱な人間に頼りゃすまい。
「そっか。なら、任務完了ってヤツね」
相談を受けた時に見せられた、手足のアザ――御丁寧に鱗模様だった――も消えたとなれば、
もはや何の障りも残るまい。
そも憑き物をけしかけた呪者は、憑き物もろとも火屑になって消し飛んだのだし。
これで何の憂いもなく――
「んじゃあ、ハイ」
報酬を貰えるというモンだ、とにこやかに手を差し出した。
■楊柳一見 > 『う、うん』
不可解にも恐る恐ると言った風に差し出された茶封筒。
別に友達料とかせびってるんじゃないからな。
依頼をされ、それを果たした、正当な報酬だ。
…まあ、校内で出来るやりとりじゃあないってのは認めるがね。
「ひい、ふう……ほい、3万円確かに」
中身確かめ終えたそれを、スカートのポケットに押し込み、もう一口麦茶を呷る。
「ま、御贔屓筋にならん事を祈ってるよ」
そう言って立ち上がり、振り向きもせずその場を離れようと。
『あの……ありがとう……』
した背に、虫のすだく音に負けそうながらも、確かにその声が届いた。
「ほいほい。アンタも達者でやれー」
止まりそうになる足を無理繰り進めつつ、片手上げてゆるうい声を返した。
ややもすれば、彼女もその場から去って行く足音。
「――――」
血色の夕陽に咽ぶような虫どものおらびが、耳に痛い。
■楊柳一見 > 帰るには未だ西日照りつく道を往かなきゃならない。
もう少し暗くなってからでよかろう。帰りを心配する輩もいるでなし。
人気の失せた園内を、木蔭物陰に紛れつつ、所在無げな足取りでうろつく。
「……ありがとう、ねえ――」
呪いの元に関して、彼女には『ちゃんと対処したから、再発の恐れはない』とだけ話しておいた。
まあ、鉄風雷火ありったけブチ込んで殺りました、とかなんてのは愉快な話じゃあない。
ブチ込んだのは自分じゃないけども。
それを抜きにしても、『仕事』で感謝されるのは、何だ。
どうにも据わりが悪い。悪いんだが。
「――ま、イヤじゃあないね。うん」
かつて本業に身を入れていた時分には、感じられなかった反応だ。
これが俗に言う『良い事した後は気持ちがいい』と言う感覚か。
■楊柳一見 > 「気が向いたらまたやるかねえ、人助け」
もちろん報酬は貰うがね。
誰に向けるでもない、人を食ったような笑みを夕闇に忍ばせ、
陽炎冷めやらぬ臙脂に霞む景色の向こうへ溶けて行く――。
ご案内:「常世公園」から楊柳一見さんが去りました。