2018/08/29 のログ
ご案内:「常世公園」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 古来より洋の東西を問わず、月には不思議な力があると考えられていた。
神秘、魔力と言い換えてもいい。
時に見るものを魅了し、時に狂わせ、あるいは怪物を生むことさえ。
その落とし子である自分にとって、月の光は力の源とも言える。
すなわち月光を浴びるという行為は、力の回復を意味する。

とは言え、それだけでは足らない。月光から得られる力はほんの僅かなものでしかない。
しかしここ最近、狩場である落第街が些か騒がしい。釣るにしても狩るにしても、だ。

「まったく、煩わしいこと。」

ベンチに腰を下ろして天を見上げ、誰に聞かせるでもない呟きをぽつりと漏らす。

鈴ヶ森 綾 > 「………ん?」

ふと気配を感じて隣に視線を向けると、そこには一匹の猫が居座っていた。
はて。自分は動物、特に小動物には好かれぬ質のはず。
猫の警戒心の高さを差し引いても、ここまで近づいてきた事などとんと記憶にない。
試しに手を差し出してみるとやはり逃げるでもなく、むしろ向こうも顔を近づけて匂いを嗅いできた。

「……なんなのお前。私が何か食べ物でも持っているように見えるの?」

生憎猫と会話する技能はない。戯れに声をかけてみたが意に介した様子はない。あ、指を舐められた。

鈴ヶ森 綾 > 鬱陶しいのでそのままグイグイと手を押し付けてベンチから追い出そうとしたが
猫はするりと躱して腕にじゃれついてくる。
なんなのだいったい。猫に懐かれるような事をした覚えは…。

「…気のせいかしらね…お前どこかで。」

そう言えばと、昨年の暮に子猫を助けた事があったのを思い出す。
あれは確か眼の前のそれと同じ黒猫だったが、それ以外の特徴はもう記憶に留めてない。
サイズは一回り小さかったように思うが、成長したのだろう。

「……お前、あの時は慌てて逃げ出したんじゃなかったかしらね?」

助けた直後、腕の中で暴れて逃げていった記憶も蘇った。

ご案内:「常世公園」に國宏一実さんが現れました。
國宏一実 > やはりこの時間に来て正解だった。
自分の目論見通り人影は見えず、居候と話ながら散歩するには絶好の場所だ。
直径10㎝程の赤黒いスライムのようなそれが左肩に姿を現せば、珍しく鼻歌なんて歌っている。
綺麗な月に悪くない景色、そして耳元で聴こえる鼻歌。こいつのせいでぶち壊しだ。
そんなことを思いながら相変わらず不機嫌そうな顔で公園内を散歩しているとベンチに座っている人影に気づいた。

「こんな時間にか?オイ居候、少し身を...」

『何カ妙ナ雰囲気ヲ感ジル、勘ナンダケドナ...』

これがこんなことを言うなんて珍しい。
肩に乗っている異形を首もとから背中に潜り込ませれば、ベンチに座っている彼女のもとへ歩いていく。
家出?そんなことを考えながら人相が悪いながらも穏やかな表情を作り。

「おい、こんなところでなにしてんだ?家出か何かか?」

穏やかな表情を作っても口調は穏やかではなかった。台無しである。

鈴ヶ森 綾 > 「今頃お礼を言いに来たのだとしたら、どういう心境の変化…ん?」

はてさて、心境が変わったのはこの猫なのか、あるいは自分の方か。
…どちらでも良いか。猫は遊んでもらっているつもりでいるのか、身体を押し付けたり前脚で突いたりしてくる。
追い出すのは諦めてしたいようにさせていたが、そこへ近づいてくる気配に億劫そうに顔を向けた。

「…どちら様かしら。うるさがたの風紀委員には見えないけれど。」

好意的とは言い難い反応を返す。少しピリリとした空気が周囲に発散されたように感じられたが
その間にも猫が構ってほしそうに腕にまとわりつくので中和されてしまう。
邪魔なので抱えあげるとニー、などと一声鳴いた。

「あら、お前オスだったの。」

どこかを見て確認したようだ。

國宏一実 > 『ソウイウトコロダゾ』と異形が頭のなかで呆れたような口調でそういってくる。
若干不機嫌そうな表情を浮かべるが、すぐに元に戻す。
当然だが相手はあまり好意的な態度は見せてくれなかった。
それよりもこの威圧感、豊富な経験を積んできた自分だが、直感で感じる。異形の言っていた違和感が。

「どちら様...ねぇ。俺は國宏ってもんだ。温い風紀委員の連中と一緒にされなかったことだけは好印象だな、アンタ
。」

首筋を掻きながら赤黒い左目を細め、こちらも相手に威圧されまいと睨みつける。
一触即発、そんな雰囲気だろうか。足元に力を入れ、いつでも交戦できるように備えるが。
そんな雰囲気は猫の鳴き声と共に消え失せる。

「あー、まぁなんだ?はぁ、アンタ何もんだ?俺のつれがなんか変な感触がするとかいうから見に来たってのが俺の用件だ。」

彼女の猫とのやり取りを見れば気が抜けてしまった。
全身に入れた力を抜き、先程までの威圧的な態度とくらべてかなり砕けた態度でそう問いかけた。

鈴ヶ森 綾 > 「別に褒めたつもりはないけど、それはどうも。私は…夜の散歩中に猫に絡まれて困っているただの女学生よ。」

どうも毒気が抜かれてしまった。第一声よりは随分と柔らかくなった声音で受け答えしながら
隠す事もせずに男のことを上から下へと視線を這わせて観察する。

「つれ?つれねぇ…貴方、私よりよっぽど変なものに絡まれているみたいね。」

周囲を確かめるまでもなく、ここには自分と、國宏と名乗った男と、この雄猫しかいない。
小人か幽霊か分からないが、彼の言うつれとは尋常のものではないようだ。

「言った通りのものよ。なんなら学生証でも確認する?それこそ風紀の領分だと思うわよ。
 …もう少し気の利いた台詞が聞かせてくれたら、教えてあげるのも吝かでないけれど。」

膝の上に乗せた猫の腹や喉を撫で付けながらそんな事をうそぶくが、そもそも学生証は携帯していない。

國宏一実 > 「散歩ねぇ...。」

自分と同じような奴か、それに理由まで聞くのは野暮だろうと。
どうやら相手もこちらに対して敵意はないようだと一息。
つけると思っていた。相手はこちらを変人のような目で見てくる。
そして先程自分が口にした失言を思い出せばやっちまったと言わんばかりの表情を浮かべ、焦ったような口調で。

「あっ、あぁ。さっき別れたんだよ、腹痛いとか言い出してな?」

『見テラレンナ。』「仕方ねぇだろ気が抜けたんだからよ!」『大体オ前ハナ...』脳内で繰り広げられる口喧嘩。
口を紡ぎ、何か我慢するかのような表情を浮かべれば数秒の間をおいて再び口開く。

「学生証?あぁ、必要ねぇよ。ただアンタが知ってるかは知らんが、最近はかなり物騒でな。
落第街の方はいま大騒ぎだ、何人も死んでる。」

一瞬憎悪を込めた表情を浮かべれば、またすぐに表情を戻す。
周囲を見てはいたがアンデッドの気配はしない。
違和感はあるのだが。

「まぁ、気が利く俺はアンタにそれを伝えようと思ったわけだ。」

鈴ヶ森 綾 > 「変かしら?この時期、昼間に出歩くのはちょっとね…。暑いし、気をつけてないと日焼けも酷いわ。」

そんな戯言で煙に巻いた。

「あら、それは大変。お大事にって伝えておいて?
 …そうみたいね。元々一般学生の立ち入るような場所ではないから関係ないけど。
 お硬い風紀の連中が慌てふためいてるのはそこそこ見ものだわ。」

それ以上の追求こそしなかったが、返した言葉はどう聞いても男の言い訳を信じた風の口調ではなかった。
一般学生、自分もそうだと主張しながらもそのように風紀を揶揄する。

「それにしても…貴方、なんだか無理をしてるんじゃない?
 さっきチラッと見せた表情…そっちの方が私は好きだわ。」

じゃれる猫を脇に置いてゆっくりと腰をあげる。
一歩、二歩とわざとらしい程に緩やかな動作で男に近づくと、その胸にしなだれ掛かろうとする。