2015/08/07 のログ
薄野ツヅラ > 「───まァ」

何度溢したかも解らない言葉を落として。
思考せずに言葉を交わせる──"友人"に笑顔を向けて。

「いやァ、全く如何して」
「アンタは十分『ヒーロー』じゃなくて主人公よぉ」

くすり、笑みを浮かべて。
じわりと滲むような意地の悪い笑みでなく、人を小馬鹿にするような笑み。
中々彼女にしては、珍しいような、そんな。
───自然に零れた、笑み。

「あッは、上手いこと言った心算かしらァ?」
「渡辺慧の青春の詩集、とか売ったら食いつく女子も多いんじゃあないのぉ?」

くるりと表情を変えて、今度は真正面から馬鹿にするような。
学園の女子の中で中々人気のある彼を見据えて、コレは何人が羨ましがるかな、と。
傍から見ればデートの現状を笑って。
学生らしい、そんな日常を謳歌しながら、軽口を溢す。

「あーあ、楽しかった」
「偶には悪くはないわねェ、こう云うのも」

渡辺慧 > 「路傍の石にだって、そりゃ」
「主人公に位ならせてもらうさ」
「書いてくれる人がいればさ」

――そんな暇な奴、いやしないだろう。
とでも言うように、胡乱げに。
それでいて楽しげに嘯く。

そう。いやしないのだ、そんな暇人は。

友人。――それを多用しすぎるのも、なんだか。
だから、きっと。それでもないのだろうけど。
そう賢くない、思いつかない自分には、これで代用させてもらおう。
“悪友”。きっと、立ち位置――いや。
イコールがつくことは、まずないのだろうけど。

「君は俺をなんだと思ってんだ」
「俺だったらまだ、野良猫の鳴き声を書き留めた文集の方に食らいつくと思うけどね」

肩肘をつきながら、それに顔を乗せる。
残り少なくなったコーヒーを憮然げにしながら。

「――そりゃ。光栄ですこと」
「俺も“仕事”の息抜きになりましたよ」

――だから。
――今日という日も、悪くないのだろう。

薄野ツヅラ >  
────場所が変わってカフェのテラス席。
女子学生に撫でられていた赤い首輪をした猫がひとつ、にゃあと鳴いた。

先刻二人が座っていた席には、空のコーヒーカップとグラスだけが残されていた。
 

ご案内:「カフェテラス「橘」」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から薄野ツヅラさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に佐伯貴子さんが現れました。
佐伯貴子 > ショートケーキ…じゃなくて、木苺のミルフィーユと紅茶のセットを。
(「バイト」2回めを終えてカフェのカウンターで一息つく)
(男の部屋の上がるというのは初めてだったが案外なんとかなるものだ)
(そもそも当人はいなかったし)

佐伯貴子 > (懐から封筒を取り出す)
(バイト代ではなく「辞表」と書いてある)
(件の事件のフードの人物が誘拐事件の犯人だった場合、提出するために持ち歩いている)
(あのような強力な力はその可能性は捨てきれない)
(放校も辞さない覚悟であった)

佐伯貴子 > (正直放校されてやっていけるのか心配ではある)
(しかし自分の能力は自分の責任だ)
(生きていく限り付き合っていかなくてはならない)
(ため息をつくと辞表を仕舞った)

佐伯貴子 > (自分は中卒どころか小卒の資格があるかどうかも怪しい)
(少なくとも自分では認識していない)
(だからこの島から追い出されればどうなるかわからない…)
おっ。
(そんな深刻な悩みも、目の前にケーキが出されれば吹っ飛んだ)

ご案内:「カフェテラス「橘」」にライガさんが現れました。
ライガ > 「アイス珈琲……いや、エスプレッソで。
…え?泥くさい?
おっかしいな、ちゃんとシャワー浴びたんだけど」

自分の手をすんすんと嗅ぎ、首をかしげる。
そんなに臭うかなあ。
数歩歩いたところで立ち止まり、靴裏を確認する。
汚泥はそぎ落としたはずだけど……
顔を上げ、人の少ない席に座ろうと、きょろきょろしたところで、友人の顔を見つけた。

「や、お疲れ様」

佐伯貴子 > お疲れ様、ライガ。
(チラリと顔を見て、視線はケーキに移る)
(ミルフィーユはたしか倒して食べた方が食べやすいらしい)
えいっ!
(ミルフィーユを倒す)
…隣が空いているぞ。
(ライガを見てポンポンと席を叩くと、再び視線を戻す)

ライガ > 「隣いいの?
んーじゃ、ちょっと待ってね」

ポケットから消臭スプレーを取り出し、シュッシュッと自身に向けて数回吹き付ける。
……まあ、女の子の前だし、喰う気削ぎたくないし。

エスプレッソが運ばれてくると、受け取って隣に座る。
ミルフィーユか、食べるのにコツがいる菓子だ。そのままフォークを刺そうとすると、クリームがはみ出して潰れちゃうからな。
……ここのは甘いから苦手なんだけど。

「そうそう、部屋見たよ。
塵一つ残ってなかったし、フロアは鏡みたいにクローゼットが映り込んでたよ。
ありがとうね、次も頼むよ」

カップに口をつけ、舌を潤すと、
気を使い、小声で囁く。

佐伯貴子 > …?
(スプレーなんて気を使わなくてもいいのに)
(怪訝な顔をしながらも、ケーキに向かえば真剣な表情になる)
(フォークで普通に一口分切ろうとする)
(…ちょっとグチャッとなってしまった)
…それはよかった。
もらってる金額が金額だからな、しっかりしないとな。
(苦笑するが力は感じられない)

ライガ > 完 全 消 臭 。
よし、匂いはしないな。

「ああそれ、ナイフ使うといいんじゃない?
フォークで抑えてさ」

食器皿から小さめのナイフをとり、持ち手を貴子へ向けて差し出す。
その時に顔をまともに見て、力なく笑う表情に顔をわずかにしかめる。

「ところで、……なんか元気なさそうだけど、どうしたの?
僕でよければ、相談に乗るよ」

流石にお金の事じゃあないよなあと思いつつ。
風紀委員会本部襲撃の件だったら、できることなんて限られてくるが。

佐伯貴子 > おお、ありがとう。
ミルフィーユを食べるのは初めてなのでな。
(笑顔でナイフを受け取る)
(気が利く男だ)
いや、ミルフィーユが潰れてしまって…
(と言いながら言うかどうか悩んで)
…私が誘拐されたことは知っていたな。
その時、能力を悪用されて、大きな事件を起こしてしまったかもしれないのだ。
可能性は低いがないとはいえない。
(ミルフィーユと格闘しながらそんなことを言う)
(ライガが公安だとは知らないので細かいところはぼやかす)

ライガ > 「ああ、ミルフィーユはちょっと気をつけないとすぐ崩れるからね。
落ち込むのはわかr……いやいや」

冗談交じりに返しかける。
よく考えたら、おどけてる場合じゃなかった。

「なるほど、確かにそれは心配だね。
…しかし、大きな事件ってーと、なんかあったかなあ。
委員会街のどこかが騒がしかったのは聞いてるけど、その時は僕、異邦人街に居たしなあ」

もちろんでまかせである。
実を言うと風紀の本部建物から煙が出てたらしいというところまでは把握しているのだが。
いくらなんでも漏れる煙、何かが焦げるようなにおいまでごまかせるとは思えないし。

「んで、君の異能で強化され、事件を起こした奴がいたとして。
君が責任を負わなきゃいけない、もしかしてそう思ってないかな」

佐伯貴子 > わかってくれるか…って、そうじゃないのか。
(冗談かどうかわからないことを言いながら)
とにかく、大きな事件があったのだ。
その主犯がとんでもない能力の持ち主のようでな。
私を攫って身につけた能力かもしれないのだ。
(形の崩れたミルフィーユを一切れ、口に運ぶ)
(笑顔はない)
誰もそんなことは言わないし、責任を追求されないかもしれないし。
そもそも根本からして見当外れかも知れないが。
最悪の場合は、この島から出て行く覚悟も決めている。
(視線はミルフィーユに刺さったまま)
今回直接責任はなくても、次があるかも知れないだろう?
そういう覚悟で生きている。

ライガ > 笑顔をすっかり失ったその表情は、ライガが思ったより、よほど思いつめているようであった。
言葉を失いかける。

「いや、必ずしも、そうと決まったわけじゃあ……。

それに、最悪、出ていくって……仲のいい友達もいるんだろ?
そいつら、君が出てくって知ったら、どんな顔するかな。

君が居なくなった時だって、探してたやつはいたと思う。
無事戻ってきた君の病室に、まさか誰も来なかったなんてことはないだろ?
義務感とかそういうのは置いといてさ」

貴子の視線はきっとライガを向いていないだろうが、ライガは片肘をついて、相手に目を向ける。

「誘拐されて、自分の異能を利用されたって、君は言ったね。
それは、君にとっては不本意な事だろ。抗えなかったのなら、なおさら。

誘拐されて他人を強化した君と、
誘拐して君に強化させた誘拐犯。いや、誘拐犯とは別人かもしれないけど」

いったん言葉を切って、続ける。

「問うよ。
どっちが責任、いや、許されなさ、とでもいうべきかな。
……どっちが許されないと思う?君がもし、他人の立場だったら、どう考えるかな」

佐伯貴子 > 仲がいいからこそ、これ以上迷惑を掛けたくないのだ。
(しかし次の言葉にはっとなってライガを見る)
(そうだ、あの短期間に何人が来たと思っている)
(視線を合わせる)
…。
(返す言葉もなくじっと聞いている)
…人を殺すのは銃ではなく人だ、という言葉がある。
(それが答えの一つ)
しかし銃が銃であることを選んで銃でいるのだとすれば。
銃にも責任の一端は、ある。
(もう一つの答えはそれだった)

ライガ > やっと目を見てくれた相手に安心するも、
貴子の言葉が深く突き刺さる。

『人を殺すのは道具ではなく人。
だが、道具が道具でいようとして道具たりえるのであれば、それにも責任は生じる』

それに対して何かを言う権利は、この子に言葉をかける権利は、僕には本来、ない。
なぜなら、僕は、もう……

いや、考えを振り切って、できるだけのことをしよう。
彼女はまだ、踏みとどまっているように感じるのは気のせいか。
そうであるとしても。道を外れ、闇に堕ちてしまう前に、押し戻さなきゃいけない。

「そう。じゃあ君は、自分は人間ではない、銃だっていうんだ?
銃って、自分のしたことに対して責任を感じて悩むものだっけ」

佐伯貴子 > …私は…
(なんなのだろう)
(自らに問う)
(そんな作業は飽きるほどやったはずだ)
(しかし…)
私は人間だ…
銃ではない…
(若干呼吸が荒くなる)
(思考が乱れているのだ)
人間だから、役に立てそうな風紀委員に入った。
金と単位が目的なら生活委員会でもどこでもいいのに。
私の能力が助けになると思って…
(そこで言葉を切る)
(悪用されるとは考えなかったのか?)
(風紀委員ならば誘拐されないと油断していたではないか)
…私は…
本当は…
皆を守りたかったんだ…
(声がかすれる)
(喉も口も乾いてしまっていて)

ライガ > 頷きながら、相手の話を聞く。
かすれた声を聴けば、ライガの目つきが穏やかなものになる。

「そう、君は人間だ。
しかも、顔も知らない誰かの助けになりたい、護りたいって、
そう言えるほど、立派な人間だよ。
引き金を引くだけで、あっさりと簡単に弾を発射する、銃じゃない。

…いや正直、責任がまったくないとは言わないし、言えないよ。
でも、君だけが苦しみ続ける必要はないんだ。
君が、皆を守りたかったように。
君を思う皆だって、君を守りたいと思い、
守れなかったことを悔やんでいると思うから」

もし許されるならば。
友を慰めるように、その肩に手を回し、軽くたたこうとする。
それくらいが、今の自分にできる限界だ。

「だから、出ていくなんて、言わないでくれよ。
そもそも、ここは常世学園。
異能と上手く付き合ってくための、場所だろ?

君を責める奴なんていやしない。
もしいたら、君の親しい仲間に頼りなよ。
喜んで、きっと力になってくれるさ」

佐伯貴子 > うっ…
(相手の声に思わず涙が溢れ、顔を伏せる)
(何人に心配をかけてきたんだろう)
(いや、そもそも何人から支えられているのだろう)
(レイチェルは言っていた「自分も支えられている」と)
(その中に自分も入っていると)
………。
(肩に回される手の暖かさは、自分の心を温めてくれるように感じた)
…立場がすっかり逆転だな。
(かすれた声で苦笑しながらそんなことを言う)
そうだったな、この学園はそういう場所だった。
一人で悩みに来る場所じゃない。
(涙を拭い、紅茶で喉を潤す)
ありがとう、ひとつスッキリしたよ。
(そして笑顔を向ける)

ライガ > 相手の目が涙で濡れている、やばい泣かせちゃったか?
ここはおどけて場を和ませようとする。

「立場?
さて、なんのことかな。
それはそうと、ミルフィーユが放っとかれて拗ねてるよ」

軽口をたたく心の奥底で、何かが僕を嘲笑っている。
お前はまぎれもなく銃だ、道具だ、と。
傷跡もないのに痛む心を押し殺すようにさりげなく胸に手を当て、
温くなったコーヒーカップを傾けると、静かに笑った。

「いやいや、大したことじゃない。
異能持たない僕にはこれが限界だけど、何かの助けになったなら幸いだ」

やっぱ笑顔のほうがかわいいな、と聞こえるか聞こえないかの声で呟く。

「さて、コーヒーも飲んだしそろそろ帰ろうかな。
君はどうする?」

佐伯貴子 > 冗談はいい。
感謝の気持を示させてくれ。
(言いつつ伝票をかっぱらった)
(相手からもらった金で相手を奢るという二度手間)
助かったよ。
表に出してなかったとはいえ、思いつめていたのかもしれない。
(当然小さな声は聞こえない)
拗ねているミルフィーユを片付けてから出る。
ああ、バイトだが、続きがあるならメールしてくれ。
(その表情と声は普段のものに戻っていた)

ライガ > 「あ、伝票……
ま、いいや。正当な報酬として受け取ろう」

伝票に狙いを定めていたが、一手遅れて空を切る指先。苦笑する。

「バイトは了解だよ。くれぐれも、無理のない範囲でやってくれ。
落ち込んでる日はやらなくていいからね、せっぱつまってる日は別だけど」

相手の様子が普段通りに戻ると、さすがだな、と心の中で思う。
場所を開けるように立ち上がり、先に進んでいくだろう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からライガさんが去りました。
佐伯貴子 > そうそう何度も落ち込まないさ。
(それだけ言うと手を降って見送り、ミルフィーユと格闘する)
(しかし――)
(ライガ程の年齢なら普通なのだろうか)
(結構な過去を持つ自分からでも、ライガの過去に重いものを感じた)
(だからすぐに立ち直れたのだ)
(人の過去は聞いてみないとわからない)
(その機会は訪れるのだろうか――)

(ボロボロになったミルフィーユの残骸は、そんなことを知るはずもなかったのである)

ご案内:「カフェテラス「橘」」から佐伯貴子さんが去りました。