2015/09/10 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に三枝あかりさんが現れました。
三枝あかり > 放課後、夕暮れ。
テラス席に座ってぼんやりと外を眺めている。
人々の往来。雑踏。街並み。そして、夕焼け空を。

彼女が指定した情報屋を待ちながら。

三枝あかり > 風が少し肌寒い。もうそんな季節なんだ。
今日のテラス席ならアイスティーよりホットがよかったかもね。

情報屋に調査を依頼したのは、兄である川添孝一が人に迷惑をかけていた頃に使っていた違反薬物『変革剤』の売人。
その流通ルートを調べて、自分で何とかするまではできないまでも。
風紀に通報して流通を潰してもらうことが今回の目的。

兄の過ちを少しでも清算したい。
そんな想いでの行動。もう兄に負の感情を抱いているわけではない。

三枝あかり > 情報屋はまだ来ない。
どんな人かも知らない。
仮に誰であっても構わないけれど、少し興味はある。

彼氏には変革剤のことを調べると伝えてある。
いざとなったらきっと彼は私を守ってくれる。
その安心感を抱いて、今日は情報を仕入れるだけ。

うん。

少し早いけれども、私はこの選択を後悔することになった。
これは私、三枝あかりの歩んできた道が台無しになるまでの物語。
違法薬物なんて放っておけばよかったんだ。
何も知らないままでよかったんだ。
そんなことを今の私が知る由もない。

三枝あかり > 物語の結末が、近づいてきていた。
三枝あかり > ふと、私の席に金髪碧眼の男性? あれ、女性?
とにかく、綺麗な人が近づいてくる。

ふと、依頼した情報屋の名前を思い出した。
フラン・デュアメル。外人さん?
ひょっとしたらこの人が情報屋なのだろうか。

彼?は私の席を通り過ぎていった。
なんだ、人違いかぁ。
ふと、気付くとテーブルの上に折りたたまれた紙がある。

開いてみると、そこには落第街のある場所と時間が書かれていた。
文末には『情報が正しかったら報酬を支払ってね フラン・デュアメル』と。
立ち上がって振り返るももう、情報屋はいない。

これが彼女?のやり方なのだろう。
この場所が変革剤の取引の現場になることは明白。
梧桐先輩にメールを送る。
ついてきてもらうことになるけど、いいよね?

三枝あかり > 情報屋からもらった紙をポケットに仕舞いこんで立ち上がる。
アイスティーの支払いを終えて、その場を立ち去る。

もしも、私が見ている世界が壊れても。
私には信じるべきものがあるから。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から三枝あかりさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に『ウィザード』さんが現れました。
『ウィザード』 > 先に言っておこう。
邪悪なる七英霊の一人『ウィザード』は本日、事を起こす気はない。

テラス席の一つを占領している『ウィザード』は、りんごジュースが入ったグラスを口にする。
向こうの席にはカップルの学生が、あちらの席には女子グループ達が楽しく飲み物を飲みながら、話している。
平和なカフェテラスだった。

「『ハンター』め、動き出したかと思えば、早速しくじったようだな。
 愚か者めが」
誰にも聞こえない声で、同じく七英霊の一人『ハンター』の事について呟く。
『ハンター』は昨日、商店街で狩りを行っていたらしいが、一人も射殺できず、風紀委員から命辛々逃げのびたのだ。
なんとも、情けない結果だろう。
先兵がこれでは、これから先、不安でしかない。

「それにしても、ヘタレとは言え英霊である『ハンター』を追い詰めるとは、やはり情報通り、風紀委員会には優秀な人材がいるらしいな。
 注意せねばならないようだ」
この島で暴れる上で警戒しなければいけない組織の筆頭とも言える。
あとは公安委員会か……。
どちらにしても、常世島には強い奴が多くいるようだ。

『ウィザード』 > 英霊達は、好き勝手島で暴れる事だろう。
七英霊は、決して一枚岩ではない。
それぞれ、自分の目的のために行動する。
今は情報集めに専念して慎重に動くべきだと『ウィザード』は考える。
だが他の英霊達は、『ウィザード』の思惑など関係ないとばかりに活動するだろう。

他の英霊が今後どう動くか、予想は立ててみる。

まず昨日しくじった『ハンター』だ。
奴は今後も、射殺記録なるくだらぬものを伸ばし続けるだろう。
『プリースト』の回復魔法で傷が言えれば、またすぐに活動再開するのは間違いない。

『モンク』もすぐに動き出すだろう。
奴はひたすらに破壊衝動を働かせ、ただ勝つ事だけを求める。
頭が悪いので、ただ暴れてもらう事になる。
だがその戦闘能力だけは、期待できる。

『プリースト』も今は聖書『デス・アポカリプス』の洗脳を使い、手下を集めているようだ。
近々、『邪神様』なる存在の教え通りに動きだすだろう。

『ウィザード』 > 落第街を縄張りにする『シーフ』は静かに活動する。
奴の関わる事件は当分、闇に葬られる事になるのは想像できる。
もともと、落第街という場所は事件でももみ消されやすい場所だ。
さすがは狡猾な『シーフ』と言ったところ……。
うまい具合に闇に隠れて行動する。


『ナイト』の奴は、あの性格からしてしばらく動かない。
島で強い奴達を探す事だろう。
奴はただ、強い奴をぶっ殺したいという目的で動く。
当面の間、表に姿を現す事はない。
しかし一度動き出してしまえば、多大な成果を上げてくれると期待できる。

『サモナー』の奴に関してはな……。
正直、何考えているか分からぬ。
いつ活動開始し始めるのかも分からない。
七英霊の中でも、謎が多い奴だ。
それでも、自分と召喚獣の楽園をつくるために、いつかは動き出すだろう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」にリビドーさんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に笛木 奏太さんが現れました。
リビドー > 「やぁ。少々混んでいてね。相席良いかい、お嬢さん。」

 ひょい、と、軽く声を掛ける年若い風貌の青年。
 実際に混んでいるかどうかは見ての通りだが――いかにもな魔法使いの装いをした少女に話しかける。
 視線は赤い服、青い髪、そして瞳の順に移るだろうか。

笛木 奏太 > 一般的な日系の学生が店内できょろきょろしている。

「困ったなあ……この時間なのにまだ混んでるよ」

落第街でひったくりを取り押さえた笛木は一仕事を終えた自分へのご褒美にちょっと豪華な晩御飯を食べに来ていた。
だが座る席が無い。

「相席でどうぞー」

店員に進められるままに店内を見回す。
よりにもよって空いていたのは――――

「えっと……すいません、こちら相席してもいいですか?」

リビドーから若干遅れたタイミングで彼はそう尋ねた。

『ウィザード』 > オッドアイの若者に相席を求められる。
何者かと内心警戒するが、表ではそんな様子を見せない。
「そうだな、この店はかなり人気のようだ。
 このりんごジュースもとてもおいしいので、それも納得の事だろう。
 相席か? 私は構わぬぞ。
 席がなければ、仕方がないからな」
リビドーに相席する許可を出す。

「貴様も相席か」
続けてくる奏太の姿に溜息。
「どれだけ人気なんだ、この店は……。
 仕方がない、私は構わぬぞ」
奏太にも、相席の許可を出した。

リビドー >  軽く警戒して観察してみるのなら、軽い貪欲な気配は目にと言うか、鼻にというか、目立つだろうか。
 当の彼自身はまぁ、砕けた調子ではあるものの。

「そりゃそうだろう。この変で最も著名なカフェテラスだぜ。
 当然、混雑している事の方が多いかもしれないな……と、恩に着るよ。」

 さっくり座ってメニューを開く。
 一通り見てから店員を呼び、ハンバーガーとジンジャーエールを注文した。

「おや、そちらのキミもこんにちは……いや、こんばんわかな。
 にしても、今日は盛況だね。何かフェアでもやっていたかな……」

笛木 奏太 > 「ありがとうございます。今日は大盛りフェアだったんで混んでるみたいなんですよね。あ、店員さん超盛りカツ丼一つ」

笛木は嬉しそうにマイ箸を取り出して笑顔を浮かべる。
人懐っこい笑顔でいかにも無害そうな様子である。

「お兄さん今日は大盛りフェアらしいですよ。やっぱり学生は身体が資本だから食べなきゃですよね! 俺は身体能力強化系の異能者なので特に腹が減っちゃって!」



しばらくすると人理を冒涜するサイズのカツ丼が出てきて、笛木は質量保存の法則に挑戦するが如くそれを猛烈な勢いで食べ始める。

『ウィザード』 > 『ウィザード』もいずれ、島で大犯罪を起こす。
それも、島民共を殺害する方向性だ。
だが本格的に事を起こすまでは、島の住民に紛れて暮らすのが得策である。
無意味に騒ぎを起こす必要などどこにもない。
昨日の『ハンター』みたいに無駄に目立つのは馬鹿のやる事。

どうせ『ウィザード』の策はいずれ発動する。
それまで、島民共と慣れ合いごっこを嗜んでおくのも一興。
情報収集にも繋がって悪くない。
どうせ、その慣れ合いごっこごと、『ウィザード』はこの島を破滅に導くのだ。

「私はこの島に来たばかりでな。
 知らない事も多いのだ。
 そうか、ここが著名のカフェテラスか」
多くの人を殺すにはうってつけの場所というわけだ。
そういう意味でも覚えておこう。
情報収集も結構進んでいる。
だがそこは、あえて謙虚に装った。

「大盛りフェアだと。
 そういえば、そんな事が書いてあったな。
 周りの客も大盛りばかりだ」
そう言いながら周囲を見渡す。
結果は、発言の通り。

しばらくして持ってきたカツ丼は驚くべき量だった。
あまりにも、あまりにも……。
食べればデブになるデバフにでもかかるんじゃないというぐらいに……。
多い……。
「な、なんだこの量は。
 とても人間が食べれる量ではないではないか!
 大盛りフェアと言えども、限度があるだろう……」
『ウィザード』もびっくりな量であった。
そういう『ウィザード』は肉体よりも頭脳派な事もあり、大盛りよりは甘いりんごジュースだ。

リビドー >  
「そうかい。教師……いや、学生さんかな?
 ま、ボクはリビドーと名乗っている。此処の教師だから、宜しく頼むぜ。
 ……ああ、因みにボクはここが大好きでね。ゆっくりと落ち着くには丁度好い。
 キミもそう思わないかな? 此処はゆっくりする事に実に適しているってさ。お嬢さん。」

 雰囲気も良し、食事も良し、治安も良し。
 のんびりと食事をするにはうってつけだ。
 軽い笑みと共に、翠と紫の瞳を少女に向ける。
 
 ――彼の者を見定めんとばかりに、深く底知れぬ瞳が少女を覗いている。

「……おお、大盛かい。
 確かに学生は身体が資本だ。身体を使う異能者や魔術師なら尚更だとも。
 とは言え此処は味も良いんだ、よく噛んで味わって食べる事お勧めするとも。」

 ……なんかおばさん臭い事を言ってる。
 おせっかいか、はたまた冗句か。

笛木 奏太 > 「おっといけない。気をつけますね」

笛木は腹をすかせすぎていたからといって勢い良く食べ過ぎていた自分に気がつく。

「なんていうんですかねー、俺の場合とにかくエネルギーを使うのでたくさん食べなくちゃいけないみたいでー……食費捻出の為のバイトとか大変なんですよ」

笛木はリビドーの指導に従って味と、ついでに女の子との会話も楽しんで食べ始める。
だがこの学生服の青年は決して箸を止めない。

「普段は出版社に事件の写真なんか売りつけてるんですけど、割の良いバイトとかないですかね。なんて、あははは……」

リビドーが自己紹介をしたのを見て自分も自己紹介をしようと思い立った。
強大な異能者でこそあるが、NO☆N☆KIかつNO☆U☆KI☆N極まりない彼はリビドーとウィザードの考えていることなど知るよしも無い。

「あ、俺も自己紹介します。笛木奏太です。あのーリビドーさんってもしかして先生ですか? だ、だとしたらなんというかその……同じ学生だと思ってましたごめんなさい」

異能系の研究や指導に携わっている場合は二年生の笛木奏太は非常に高レベルな加速能力者として記憶に残っているかもしれない。
加速能力しか持たないが、その加速能力のみで規格外の評価を受けるという知る人ぞ知る特殊研究対象だ。

『ウィザード』 > 「ああ。
 これから学生になるだろう」
嘘である。
それも、かなり無難な嘘をつく。
教師相手に、現在進行形で学生、と嘘をつくとばれやすい事も考慮しての、未来形学生だ。
「貴様は教師なのだな。
 ならば、今後世話になる事も、もしかしたらあるだろう。
 それで、何の教師なのだ?」
世間話のつもりで、質問する。
「そうだな。
 この場所は落ちつけるようだ。
 また着たいとは思うな。
 ここのりんごジュースも随分とおいしいものだ
 ああ。思うとも。
 人々が安らげる場所は、とてもいいものだ」
だからこそ、ぶっ殺しがいがある場所だ!
このテラスで悲鳴を上げながら血をながしてバタバタ倒れて行く人々を見るのが、楽しみでならない!

口元が不気味に歪みかけた──

いや、落ちつこう……。
『ウィザード』が事を起こすのはあくまで、準備が整ってからだ。


「それぐらい食べなければいけない程に燃費が悪い異能なのだな。
 食費もかかる事だろう。
 むしろどれだけ食費をかけているか、気にもなってくるな。
 どんな異能を扱うのだ?」
燃費が悪い肉体系の異能。
エネルギーを使う点を除外すれば、強力なものかもしれない。
情報収集も兼ねて質問した。

「事件の写真を売りつけていると言うが、この島の治安はどれほど良いのだ?
 事件はどの程度起きる?」
島について知るのは大事だ。
今後の計画にも関わってくる事になる。

「リビドーに笛木奏太か。
 二人が自己紹介したとならば、私も名乗っておかなければなるまい。
 私は、ウィズだ」
これから事件を起こす予定なのに、『ウィザード』と名乗る事もない。
偽名を使うのが得策。

リビドー >  
「そうかい。ま、大体の生徒は受け容れるだろうからな。楽しむと良い。
 ……ああ、教師だよ。専門は哲学だが、他にも周辺分野をぼちぼちと教えている。」

 曰く、進行形で生徒になる予定らしい。
 そんな話は聞いていなかった気もするが、全部の転入を把握出来ている訳ではない。
 この規模の学園となれば当然の事も在るといえばあるし、然程気にかける事でもない。

「ああ。だから大好きだよ。落ち着いて食事の出来る好い所だ。だからこそ――」
 
 不気味に歪みかけた口元は見逃さない。
 ぶっちゃけボクもたまにやる。アレ。だからこそ分かってしまうといえばしまう訳だ。

「こんな所で荒事を起こす奴が居たら誰も彼もがキレるだろうな。
 ――良からぬ妄想を抱くのも良いが、少なくとも此処では変な気を起こさない事をお勧めする。理由は簡単だ。」

 ――其処まで言って、深みを増した翠と蒼がウィザードを見据える。睨む。
 警告のような忠告のような鋭く雑な物言いには、何処か底知れぬ意が混ぜられている。

「"食事の恨みってのは、恐ろしいからなぁ"――
  ――此処で何かを起こせば、慈悲もなく容赦はされないと思いな。
 一発逮捕で済めばまぁ、良い方かもしれないぜ。

 ……ああ、勘違いだったら申し訳ない。
 いきなり言いがかりをつけてくる、意地悪な先生とでも思っておいてくれれば良いさ。」

リビドー >  
 ……ウィザードを睨み終えれば一つ溜息を付いて、奏太へと視線を移す。
 
「構わないよ。若く見られるのは慣れているからな。
 ま、宜しくな。……そう言えば話には聞いた事があるな。
 異能の強度で言えば上位に位置する加速系異能を持っている……んだったか。多数か。」

 ……ふむ、と、一つ呟き、先の彼を思い返す。
 はて、何時か見た資料では、彼は加速系の異能に於いてはトップクラスのものを持っていたような。
 詳細こそ覚えていないが、記憶の中ではそう記憶している。

(任意の値のライフを支払い、その値をXとする。このキャラクターは+X/+Xの修正を得る。
 ……かどうかは兎も角、そんな傾向の異能だった気がするな。)

笛木 奏太 > 「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。能力自体はシンプルで、超高速移動をするってだけなんだ。でも純粋な出力だけなら誰にも負けないって自身が有るぜ!
 もし君が学生になって異能の訓練をするなら呼んでくれよな! 特にこの辺りって落第街程でないけど治安が悪いからさ、女の子でもしっかり鍛えないと!」

女の子の前でええかっこしたがる笛木。
ウイザードが見たところ、彼はあくまで純朴なヒーロー気取りの青年である。



「お、知っててくれていたのですか! ありがとうございますリビドー先生! 先生は哲学ってことですけど……哲学ってどんなこと教えるんですか?
やっぱり……」

笛木は仮面ライダーっぽいポーズを決める。

「――――正義とは何か! とか教えてたりするんですかね!」

笛木は能力者としては強力かもしれないが……
正義っぽいことが大好きな少年ハートの持ち主でもあった。

『ウィザード』 > 「本当に、この島は面白そうで、楽しめそうだ」
……別の意味でな。
言うまでもなく、殺戮という意味だ。
知識の探求も捗りそうだ。
「哲学だったか。
 貴様の授業を受けてみるのも、もしかしたら楽しいかもしれぬな。
 興味深い事が知れぬやもしれん」
それは知識欲。
これを満たすには、生徒のふりをするのも手だと考えられる。
だが計画が横道に逸れるのはいただけない。

リビドーからの警告ともとれる、睨みながらの言葉。
『ウィザード』の行動から、何か察せられたのだろうか?
その可能性は考慮して、下手に表情などに出さない方がいい。
彼は、鋭い人間のようだ。
あくまで、一般人を装う事にしよう。
「こんな所で荒事を起こされたら、貴様の言う通りたまったものではないな。
 こんなにおいしいりんごジュースが飲める店だ。
 お前もそのキレる人の一員に入るのかな?」
そうなると、思考するまでもなくいずれ敵になる。

「なんだ?
 まるで、私が何かしでかすとでも決めつけるような発言ではないか。
 困ったものだな」
『ウィザード』は静かに、あざ笑う。
おかしくて、おかしくて、そして正解すぎて、笑う。
「ああ、もちろん貴様の勘違いだ。
 初対面の奴に、そこまで言われるとは私も思っていなかったぞ。
 全く、言いがかりをつけてくるあまりに意地悪な教師だな。
 いいだろう、貴様の冗談という事で受け取っておく事にする」
そして、りんごジュースの入ったグラスを口につける。
これ程に鋭い教師がいる。
やはり警戒するのに越した事はない。
このリビドーという男、七英霊にとっては危険な人物になるかもしれない。
……注意しておこう。


「多くのエネルギーを使って素早く動くのか。
 異能は、シンプルな程、その規模がでかくなれば便利で強力にもなる。
 例えばただ炎を出すだけのシンプルすぎる異能でも、範囲が大きくなれば町をひとつ丸々燃やせる事になるな。
 だからこそ、純粋に出力だけなら高いというなら、それがかなり強大な力だと予想できる。
 いや、私はおそらく、異能を訓練する事はない。
 なんだ、この平穏な空気に包まれている場所でも、治安が乱れているのか。
 異能や魔術を使ってやんちゃする輩が多いのだな。
 あるいは、治安維持機構が機能し辛い状況になっているのか?」
前者でも後者でも、『ウィザード』にとっては都合が良い。
「忠告感謝する。
 私も、自分の身を守るために鍛え上げる事にしよう」
どうやら、笛木奏太は何も察していない。
警戒するに越した事はないだろうけど、リビドー程注意する事もない。
 

笛木 奏太 > 「治安維持機構はしっかり働いていると思う。でもそれ以上に悪党の数が多すぎるんだ。一人一人が目の前に有る悪に対して立ち向かっていかなくちゃいけないのに……それを人任せにしてるから……」

笛木は拳を握りしめる。
それは今までのある種のんきでおきらくな彼の姿とわずかに矛盾している気もするかもしれない。

「ま、ともかく気をつけた方が良い。何か有ってからじゃ遅いからさ。それでも危ない目に遭った時は……」

笛木はカツ丼を食べ終わった。

「ヒーローを呼べば駆けつけてくれるかもしれないぜ」

笛木はそのまま店員を呼んで会計を済ませる。

「じゃあね、縁が有ったらまた会おう!」

彼は冒涜的質量のカツ丼を平気で平らげ、彼女の目の前から姿を消した。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から笛木 奏太さんが去りました。
リビドー >  
「正義、そう云う事も教えるとも。だが正義って言うのは難しくてね。
 何が正義かと決める段階ですら、非常に悩んでしまうものさ。
 "正義"が何を指すかの前提が食い違えば、それはもう大変だぜ。戦わなければ生き残れない。

 正義を扱った哲学だと、丁度21世紀初頭の彼が記憶に新しいか。正義の話をしよう、だったか、何だか――。
 ……ま、難しく慣れてないと聞いているだけで頭が痛くなっちまうかもしれないが、気が向いたら探してみな。

 他にもまぁ、コミュニケーションから始まり幾何学や心理学、後は魔術も教えているよ。
 数学も絡むといえば絡むが、講義の中心に据えるには需要がなくてね。」
 
 専門分野に食いついてくれたこともあってか、饒舌さを見せる。
 とは言え彼の真っ直ぐなハートにケチを付けるものではなし。
 ……区切らなければ延々と話しかねないかもしれない故に、区切る。

「ま、wizも気が向いたらおいで。
 何らかの手違いで生徒になれなくともまだなってなくても個人授業ぐらいはしてやるとも。

 ……ふむ。そう云う事だよ。ボクはどっちだろうな。
 ともあれだ、打ちのめすだけの正義を背負った生き物ってわりかし恐ろしいぜ。」

 問われれば、短く答える。そして続く言葉は、長いものの。

 ……そうだな。間違いであるならば安心したような、残念なような。とは言え哲学者ってのはこんなもんだ。
 有象無象も尊いモノ、果てには禁忌だって疑って食って掛かり、頭ん中にあるもの全部引っ張りだして現実を仮想し空想しする。
 そして導き出した結論を真理だと言わんばかり言ってのける。それだってまぁ、哲学の一つだ。
 勿論、此れ以外にも哲学ってのは色々あるがね。互いに尊重し対話を以って互いの思考を共有し議論を進め、
 考察と推測を深め、共通の神話や理を見出す。これだって哲学かもしれない。

 ……悪いね、話が逸れた。
 此処で何かが起きるのは、美味い食事処が暫く無くなるから勘弁してくれってのは本音だな。
 ――嘘じゃないんだ、キミだって心の底からそう思うだろう?」

 年若き風貌の彼が浮かべるは、年若い見た目よりももっと悪童らしいものだ。
 意地悪げに笑って、席を立つ。

「ま、お詫びに此処の食事……ってもりんごジュースぐらいだが、奢ってやるよ。
 何、間違いを侵したんだ。これぐらいはやらせておくれ。」

 拒まなければウィズ――ウィザードの分まで伝票を取り、その場を去る。
 拒めばまぁ、自分の分だけだろう。

『ウィザード』 > 「悪党が集まってしまうとは、随分と危険に晒されていう島だな。
 風紀委員会や公安委員会の手がまるで追いついていないというわけか」
『ウィザード』達七英霊もまた、そんな悪党の一角。
落第街という放棄された場所があるぐらいだ。
人々を殺すには、都合の良い環境が揃っているようだ。
当然のことながら、治安維持機構の警戒はちゃんとしておかなければいけない。

拳を握りしめる笛木奏太を見て、『ウィザード』は考えを改める。
加速能力の持ち主笛木奏太。
何らかの決意をしているようにも見える。
この場にいる人物で注意すべきは、リビドーだけではないという事だ。

「ああ。笛木奏太。
 もしかしたら、またどこかで会うかもしれないな」
テラスから姿を消す笛木奏太を見送った。


「正義がなんたるか難しいのはあたり前だ。
 なにせ、正義をどう思っているかは、その立場や時代、風景、生き様などで大きく変わってくる。
 だからこそ、歴史的に見ても、互いの正義が食い違い、そして戦いは多く起きた」
正義、それは永遠の謎に満ちた課題かもしれない。
そんなものに答えが出るはずもなく、人は何らかの正義を信じる事になるのだろう。
「そうだな、『正義の話をしよう』か。
 探してみるのも悪くなかろう。
 貴様は、魔術まで教えているのだな。
 需要で言えば、異能や魔術に傾いたりもしそうだな」
異能制御は重要だし、魔術を学びたいという人も多くいる事だろう。
そのために、この学園に訪れているという奴も少なくはない。
饒舌に語る彼から、本当に教師なのだと納得する。

「ああ。気が向いたらな。
 だが私は今後忙しくなりそうだからな、来れないかもしれぬぞ」
知識の探求をするならば、彼の元にまた来るのもいいだろう。
しかし、計画を脱線しないようにする、という条件は必要だ。

「打ちのめすだけの正義が恐ろしいか。
 力こそ正義、という混沌なる思考を持つ事になるな、それは」
七英霊もまた、各々自分の目的のために力を使っている。
正義云々はともかく、混沌なる思考の持ち主にあたる。

同意を求められるが、この場は素直に首を縦に振っておこう。
「ふん。そうだな。
 私も今後、このテラスに訪れるだろう。
 それがなくなってしまうのは、良い事ではないな」
これも、もちろん嘘だ。
こんなテラス、どうなったところで『ウィザード』の知ったところではない。
むしろ、いつかこちらから手を出してやる!

「その必要はない。
 金ぐらい自分で払う」
奢る事を提案されると、きっぱりと断ってしまう。
その後目を細めて、立ち去るリビドーを見送った。


彼が立ち去ったあと、『ウィザード』は不気味にニヤリと笑う。

この島の住民は、我々七英霊が殺し尽くしてくれる!


りんごジュースを飲み干すと、『ウィザード』は会計を済ませて店を出るのだった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から『ウィザード』さんが去りました。
リビドー >  
「惜しいな。打ちのめすだけの正義は怖くない。
 アイツは打ちのめしても良いと大義名分を得た正義だよ。
 迷いも容赦もない奴は強いぜ、色々とな。」

 ――去り際に一つ呟いて、その場をさった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からリビドーさんが去りました。