2016/01/28 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 「こんにちは」
当時を境に、陽は少しずつその勢力圏を取り戻しつつあった。
…もっとも、日照時間と気温の寒暖の動きには若干のずれがある。今は、1年で一番寒い時期と言っても良いだろう。
放課後。蘭はかじかむ手をすり合わせながらカフェテラスに入ってきて、日当りの良いテーブル席に腰掛けた。
■美澄 蘭 > 「えぇっと…アールグレイにミルクをつけて…あと、焼き菓子のセットをお願いします」
店員を呼んでそう注文すると、本を開く。
先日借りてきた「現代法学入門」だ。
魔術で気になる案件は自分にはまだ早い事が分かったので、今は目の前の勉強を粛々とこなしつつ、ピアノと魔術の練習をそれなりに頑張るスタイルで生活している。
■美澄 蘭 > 本の序章を読み終えたところで、注文したものが運ばれてくる。
「ありがとうございます」
礼を言って品物を置いてもらうと、まずは紅茶に砂糖とミルクを入れて、一口。
普段は、お茶請けがあれば紅茶を甘くしない蘭だが、こう寒い時期には甘いミルクティーが飲みたくなるものなのだ。
「………はぁ」
幸せそうな、ため息を1つ。
■美澄 蘭 > ミルクティーにひとしきりほっこりしたところで、再び本を開く。
この「現代法学入門」は、蘭が履修している法学概論では導入や、理論の補強程度にしか出てこない判例が充実している。
現代社会の、具体的な問題が出てくるとなれば、理解のしやすさが段違いだ。
するすると読み進めていくが…
「………あ、お茶」
「ぬるい」の領域に入りつつあるミルクティーに気付き、静かに少しすする。
そして焼き菓子を1つ口に放り込んで、また読書に戻っていく。
■美澄 蘭 > (…制定法と慣習法、か…)
そんなことを考えながら本を読み進める。
心身を温める目的で頼んだ紅茶が冷めてしまってはもったいないので、節目節目で紅茶や焼き菓子に手を伸ばす事も忘れない。
「…うん、今日はこんなところかな」
章を2つほど読んだところで、本を閉じた。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に黒兎さんが現れました。
■黒兎 > カフェテラスに入ると、私は日傘を閉じる。
私は吸血鬼である、故に、外を出歩くなら最低でも日傘が必需だ。
一息ついてから店内を見渡すと、以前図書館で見知った顔が見える。
「ふむ、挨拶の一つでもして行くか。」
ぱたんと本を閉じる動作から、
彼女がそろそろ帰ろうとしているという事は容易に想像がつく。
どうせならば少しばかり話でもと思わない事はないが、
無事、課題を提出出来た礼をして行くくらいは、してもバチは当たらないだろう。
私はゆっくりと彼女の座る席に近づくと、彼女に声をかけた。
「―――御機嫌よう。
そろそろ帰ろうか、という時ににすまないな。
何、見知った顔に少しばかり挨拶をして行こうと思ったというだけだ。
別に以前の礼を改めて言おうと近づいてわけではないが……。
だが、お陰で、無事課題は提出出来たぞ。」
■美澄 蘭 > 「あら、こんにちは」
自分とは対照的にすら見える、塗りつぶしたような黒髪をした女子生徒を蘭は覚えていたようで、声をかけられればにっこりと、柔らかい笑みを浮かべて挨拶を返した。
「そう…間に合ったなら良かったわ。
私の方こそ、飲み物ご馳走になっちゃってありがとう」
課題が提出出来たと聞けば、更に表情を緩めて。
勉強のレベルが高過ぎてややもすると大人っぽく見える蘭だが、こうすると、年齢相応の少女らしさが顔をのぞかせるだろう。
■黒兎 > 「うむ、そうだな。こんにちは。」
ふむ、こうして見るとなかなか可愛い顔をしているではないか。
―――と、そのふわりとした表情を眺める。
はっとして照れ隠しに髪の毛を払い、
こほんと小さく咳払い。
「いや、あれは課題を教わった礼だ、礼を言われては意味が無い。
……今しがた本を読み終わった所だろう、
帰ろうというところだったのではないか?」
引き留めてしまったのではなかろうか、と
思わず、ちらちらと机の上の小難しそうな本を見る。
相も変わらず、彼女は実に勤勉らしい。
カフェテラスでくらい、他の生徒とゆるりと雑談に興じても罰は当たらなかろうに。
■美澄 蘭 > 「………それもそうね」
色々言いたそうに口を少しもごもごさせた蘭だったが、きりがないと思ったのか、それを声にはせず。
「例を言われては意味がない」といった目の前の相手の言葉に、苦笑混じりの納得を返すに留めた。
…そして、本の事を聞かれれば
「そうね…区切りが良いところまでは読めたから、後はまたじっくり。
お茶菓子が残ってるから、軽く英語の予習してから帰ろうかな、って思ってたところよ」
何でもない表情で、そう答えた。
実際、少女の右手はブリーフケースの方に伸びつつあった。
半透明なブリーフケースの中には、勉強道具などが入っているのが見えるだろう。
実のところ、蘭と同じ講義を履修している学生の多くは蘭よりやや年上で、親しく話せる者があまり多くないのである。
蘭にとってカフェテラスは「ちょっと贅沢な勉強場所」で、「たまに友達と会える場所」であった。
■黒兎 > 「ふむ。」
私は対面の席を引くと、浅く腰掛け、足を組む。
特別理由があるわけではない、どうせもう暫くいるのなら、
少しばかりお邪魔させて貰っても構わないだろうという判断だ。
カフェテラスはいつも混雑している。
他の席を探すのも億劫である、私はめんどくさがり屋なのだ。
「ならば、少しばかりお邪魔させて貰おう。
ああ、勉強の邪魔というのなら無理にとは言わぬぞ。」
近寄って来た店員に追加のお茶菓子と紅茶を頼むと、
お茶菓子を彼女のほうに促す。
―――私はモノは食べない。紅茶は飲むが。
「余ったら持って帰るといい、
お礼のジュースの礼を言われてしまったからな、
此度は礼を言うのは許さんぞ。
それにしても、そうか、
区切りのよい所までは読めたのか、本当に頭が良いのだな。」
■美澄 蘭 > 「いいえ、大丈夫よ。
単純作業なら、話ながらでも結構平気だし」
対面の椅子を引いて座ることを快諾すると、早速勉強道具を取り出した。
…と、勉強道具を広げたところで追加のお茶菓子が回ってくる。
有無を言わさぬ相手の様子に自分と近い我の強さを感じ取ったのか、
「………分かったわ」
思わず笑みを零しながら、有難く好意を受け取る事にした。
本の事に触れられれば
「…こう見えて、結構長居してるのよ?
紅茶を、冷める前に慌てて飲んだくらいにはね」
そう言って、少し悪戯っぽく肩をすくめてみせた。
■黒兎 > 「いくら単純作業とはいえ、
勉強なのだから集中しないと頭には入らぬと思うのだが……。
―――頭の作りかッ!!頭の作りが違うのかッ!!!」
私はそんな事をさらっと言う彼女に僅かながら衝撃を受けつつ、
店員から受け取った紅茶を一口飲む。
外で冷えた体に、淹れたての紅茶の暖かさが心地良い。私は頷いた。
「……うむ、そうだな、紅茶は淹れたてに限る。
紅茶には何を入れる派だ?
ストレート、砂糖、ミルク、レモン。
いや、私はストレートしか飲まないのだが。」
■美澄 蘭 > 「ほら、数学の単純な計算なら、いっそ手が覚えた方が早いとか、あるでしょ?
英語も、単語を調べてメモするだけなら作業だし」
そんな事を言いながら電子辞書片手に、次の授業の範囲だろう英文の中の、知らない単語を調べる作業を進めていく。
この少女、妙に勉強慣れしている。
常世学園にそれほど厳しい入学試験はなかったはずだが…。
「こんな季節だと尚更、冷めた紅茶って悲しいわよね」
そう言ってくすくすと笑い、新しく提供されたお茶菓子に手を付ける。
心地よい甘さに口角が上がり…それを飲み込んだ後、
「そうね…ストレートが多いけど、フレーバー次第ではミルクも使うかしら。
この季節だと、甘いミルクティーが好きよ。気持ちが柔らかくなる感じがするもの」
そう言って、幸せそうに笑んだ。
■黒兎 > 「そ、そうだな。」
そういった経験が無い以上、
適当に相槌を打つくらいしか出来ない。実に悲しい事に。
何しろ吸血鬼なのだ、無限の時間があるのである。
定命の者と違って、ながら作業など、正直な所する必要もない。
そもそもそんな話初耳である。
今度試してみようか。
「そうだな、暖かい内に飲み切るのが入れた者への礼儀であろう。」
同意の言葉を返しつつ、
彼女の手の動きを視線で不安げに追いかける。
口角が上がったのを確認すると、私は内心で安堵の息をついた。
食べたことが無い、食べる必要も無い以上、味が分からぬ。
他人が作ったものであっても、人に食べさせるのなら、若干不安にもなろう。
「季節によって、か、紅茶、好きなのだな。
少なくとも、常日頃から飲む程度には。
―――して、その本、何か興味深い内容はあったのか?」
何気なく彼女の並べる単語を眺めながら、私は紅茶をもう一口含む。
■美澄 蘭 > 「やり始めるまでが結構腰が重かったりするけど…手をつけて、習慣にしちゃえば何とでもなるって、お父さんが言ってたわ」
そう言いながら、電子辞書を操作する手は休まらない。
どうやら、この少女の勉強への慣れ具合は父親の教育の賜物でもあるらしかった。
相手がながら作業を「する必要がない」存在であるというのは、今の時点では気付く様子もなく。
「ここって、お茶もそうだけど、焼き菓子も美味しいのよね。
ケーキよりもお得感があるから、ここで勉強する時はお茶請けに頼む事が多いの」
そう言って楽しげに微笑むと、また焼き菓子を1つ。
「ええ…お母さんがハーブティーにも凝ってたりしてね。
私は、自分で淹れる時は適当にしちゃうんだけど。
………本って、こっち?」
電子辞書を操作する手を止め、勉強のためにブリーフケースの上によけておいた「現代法学入門」を指差して首を傾げながら確認する。
■黒兎 > 「なるほど、父君の……。」
何となくではあるが、
娘に勉強を強要するような父親には良いイメージが無い。
然しながら、彼女の態度を見る限り、尊敬できる良い父親なのであろう。
「ふふ、お父さんっ子というやつであるな。」
私はクックと笑い声を漏らす。
変な笑い方をしてしまって紅茶が肺に入って少し咽て、
こほんと咳払いをして視線を戻した。
「ほう、そちらは母君の。
良き家庭に育っていると見える。
―――やはり、厳しい家であったのか?
何、変な意味では無い、歳にしては随分と落ち着いているし、
見るからに教育が十全に行き届いているが故だ。悪い意味でとらえてくれるなよ?」
電子辞書を操作する手が止まったのを見ると、
邪魔をしてしまったかと、僅かに眉を顰める。
「そうだ、その以前も抱えていた小難しそうな本。
何か今後に生かせるもの、得るものはあったか?」
■美澄 蘭 > 「お父さんっ子ってほどでもないと思うけど…まあ、お母さんにべったりって感じでもなかったから、相対的にそうなのかも。
…あ、大丈夫?」
むせた様子に、気遣わしげに声をかける。
蘭の母親は、「異能」のせいで思春期の悩みに向き合うのに不適格極まりなかったのだ。
その他でも、母親の「異能」が親子の関係の邪魔になった場面は多い。役に立った場面も、全くないわけではないのだが。
そして、「異能」の件がなければ…蘭の母親は、少々感情的な面こそあるが、子どもの成長を素直に祝福してくれるという点で、悪い親ではないのは間違いがない。
「厳しい家…ってほどでもないと思うけどね。
親が関係してる習い事やらされたりはしたけど、今は好きでやってるし…あ、ピアノのことね。
小さい頃は色々注意を受けたけど…それは、そんなにおかしなことでもないでしょ?」
少女は、見た目通りそれなりに良い育ちをしているようだった。
その上で、「みんなそう」と言わない程度の客観性も備えている。
…正確には、「備えてしまった」の方が正しいのだが。
「法学の入門には良い本だと思うわよ、これ。
法の意義について最初に噛み砕いてくれるし…具体例も結構丁寧に挙げてくれてるし。
そうね…今まで読んだ範囲で面白かった…というか、考えさせられたのは、「法」の視点から考える「正義」の問題かしら」
そう言って本を手に取り、ぱらぱらと該当のページを探す。
■黒兎 > 「ふむ。
勤勉な性格も、そうして子供の頃から努力してきた結果、というわけか。
成程、過去から未来へ、しっかりと繋がっている。
今を楽しめているのなら、言うべくもないな。
……ああ、いや、大丈夫だ。」
優しい。
それはさておき、何か母親に事情でもあるのか、と余計な詮索を入れるが、
如何せん、私達はお互いの名前も知らない仲である。
彼女がこの機会に自らして語らぬと言うのなら、ここは語らぬのもまた、縁というもの。
定命の者に自ら進んで関わると言うのは、恐ろしいものなのだ。……主に、別れが。
―――そういえば、名前聞いてないな。
今更聞くのも気まずいか、いや然し。
「タイミングを逃すと聞き難い事もあるな。うむ。」
そう小さく呟いて、私は思わず苦笑いを浮かべた。
「ほぅ、正義、か。聞かせて貰おうか。
然し、そろそろいい時間だ、それを聞いたら、家の近くまで送って行こう。
……何、屹度、其れは面白い話であろう、軽く聞くだけでなく、
もう少し聞いてみたい、と思うのは想像に難くない。」
私は宣言通りに熱いうちに飲み切った紅茶のカップを置くと、
話を聞く為に楽な姿勢を取る。
■美澄 蘭 > 「…どうしたの?」
「タイミングを逃すと〜」の呟きがわずかに耳に入ったのか、首を傾げて相手の様子を伺う。
「そう…法はその妥当性のために「正義の理念」が絶対必要なんだけど、その正義のあり方が形式的なのと、実質的なのと大きく分けて二つあって、それが矛盾したりするから…
ぴしっと決めるのは難しい、っていうか法学の範囲外、って話…かしら。ざっくりすぎるまとめだけど」
「正義」について尋ねられれば、専門的な用語の使用を避け、そのように説明をした。
「…あら、ほんと。陽が大分傾いてきちゃった。
流石に、居住区でも暗くなる前に帰らないとね」
そう言って、勉強道具を片付け出す。
焼き菓子は、まだ少しだけ残っているようだ。
■黒兎 > 私は店員を呼ぶと、
焼き菓子を包む為の紙ナプキンを受け取り、余った焼き菓子を包む。
いや然し、聞くに彼女はお嬢様に部類される人間である。
残したお菓子はそのまま残すほうが行儀が良い。といった教育を受けている可能性も。
―――もしかして、貧乏くさく見えるだろうか。
「いや何、些細な事だ、何れ機会があれば知る事になろう。」
どうしたの?と問いかける彼女を制すと、私は静かに頷いた。
「ふむ……ふむ……?」
彼女の説明を聞いても良く分らないが、
実質的な事、というのは、つまり、私のような人類の敵と言われる者から身を守る法。
殺人者、その他、色々であるが、それらを抑制したりするものであろう。
形式的な事、というのは、何であろうか。
其方は、私には良く分らぬが、特に、時の権力者の都合というものだろうか。
「―――なるほど、全く以て分からん。
其れが概要と言うのなら、帰りながらもう少し詳しく説明して貰おうか。」
包んだお茶菓子を手のひらに置いて差し出した。
「あと、持って帰るといい、と言ったはずだが。」
何だか折角の贈り物を無碍にされるというのは、
その、なんだ、寂しい。そんな事は一切言わないが。
■美澄 蘭 > 「………そう、ね?」
相手が「些細な事」と言えば頷くが、フクロウよろしく首は傾げたまま。
「そうね…少し話しながら整理していきましょうか。
私も、まだまだ勉強中だし」
「帰りながら説明」の言葉に、頷いて了承し。
…と、包まれたお茶菓子を差し出されれば、はにかんだ笑みを見せて。
「ありがとう…どう頼んだら良いのか、よく分からなくて」
単に気後れしていただけらしい。素直に受け取った。
その後、自分で注文した分の会計はすませて。
黒兎と一緒に、最寄りの駅まで帰るのだろう。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から黒兎さんが去りました。