2016/06/24 のログ
斎藤 朱莉 > 「ですね、理想です。難しいけれど、まあ理想を追わないと理想には近づかないですから。
……ふむ、公園の遊具、ですか。色々考えられる問い掛けですね」

むむむ、と少し考え込む。
さて、色々な手段が考えられるが……善悪等を完全に無視すれば、更に増える。

「……まず、ずっと遊ばせてくれと懇願する。まあ、無難ですけど成功率は保証しかねます。他にも、入れ替わりを要求する相手を暴力で排除する、金銭で買収する、何かしらの権力を用いて独占権を確保する、などの手段が考えられます。
他には、別の遊具を用意する、ですかね。ちょっとズレた解答かも知れませんが」

取り敢えずは、思いついたものを列挙する。
が、大別すれば『入れ替わろうとする相手をどうにかして排除する』と言う方向性と、『自分が使う状況を邪魔される原因を排除する』と言う方向性の二つになっているようだ。

「こうあるべき、と言う考えに凝り固まってはいけない。逆に、凝り固まってはいけないという考えに凝り固まってもいけない。
難しいですね、人間の思考はあっさりと固定化されてしまう。
思想と言語は、確かに魔性の存在でもあると思います。それだけで、どれだけの人々が狂ってきたか」

分かりやすい現象として現れる魔術、異能、後は暴力などが取り沙汰されがちだが。
言葉や思想は、それと同じか、時にはそれ以上に人を狂わせたり、傷つけたりする。
取扱注意と言う点では、何も変わらないのだ。

「……っと、来ましたね」

夏みかんゼリー。分量は絶対物足りないが、これはこれでおいしそうだ。

リビドー >  
 ……暫し、黙って会話を聴く。

「そんな所だな。
 結局"相手の選択に委ねる"以外の手段は実力が必要となる訳だ。排除とも言う。
 恐ろしいものと言う割りには"そのもの"は無力じゃないか。ならばなぜボクらはそれを恐ろしいと言ったのかな。
 ――と、一先ず食べるか。」

 溶けてしまうのも勿体ない。
 甘味に舌鼓を打つ、休憩時間。

 

斎藤 朱莉 > 「そうですね。何もしなければ逆に自分が排除されかねない。
権利が対立した場合、それを裁定する権力が無ければ、当人らの実力に委ねられる。
否、裁定する権力もまた『権力の持つ実力』となりますか」

結局のところ、何かしらの力で以て制約をかけないと、身勝手は抑制できないのだ。
『大道廃れて仁義あり』とはよく言ったもので、もし人類の全員が大道を体現できていれば、法秩序などは不要なのである。
だが、勿論世の中はそう出来ていない。大道は廃れ、人々は身勝手を抑えきれない。
故に仁義……それを抑えるための規範が後付けで用意されたのだ。

「言葉や思想は、人の心に直接影響します。そして、それは間接的に、直接的な力を振るう原因を作る。
結局、力そのものには特に善悪はなく……それを操る心にこそ善悪が発生する。
ならば、その心に影響する言葉や思想は、やはり恐ろしいと言うことになるのではないでしょうか」

結局、最後に何かをする決断をするのはその個人で、その決定は心に依存する。
つまり、心を支配すれば、その個人の持つ力を全て支配する事になるのだ。

「ですね、取り敢えず食べましょう……ん、おいし」

あっさりしてて、でも甘みがしっかりしている。
これは、美味しい。疲れた時に食べると、人心地付けそうな味だ。

リビドー > 「冷たくて甘い。
 くどくもなければ口当たりも良い。暑い時には求めたくなるものだ――と。」

 あらかた食べ終えれば一度置き、ミルクティーに口を付ける。
 軽い食事で意識を解してから、再び口を開く。

「力そのものに善悪は無いとは個人的には言わんが――それでも概ねはそうだろう。
 意思決定にはそれが関わる。故に、実態はなくとも恐ろしいものと定義出来る。
 だが案外、力があるから善悪を定義出来るのかもしれんぞ、と言うのは少し意地悪な話かもな。
 要するに、意志の後ろにある力を見ている。それの大小で善悪が決まるって類の論法だ。」

 くく、っと笑ってみせた。
 

斎藤 朱莉 > 「大衆向けのカフェテラスでこのクオリティは、実際凄いんじゃないですか?不満も聞きませんし」

実際、生徒の話を聞いていても、好評は聞こえても不評は聞こえてこない。
これはこれで、中々すごい事なのでは、と思う。

「……成程、力なき意志は、特に危険性が無い。
力が伴ってこそ善悪が強調される、と言うことですか?」

法についても似たような言及がなされることがある。
司法・裁判の公正さのシンボルとして扱われる『正義の女神』の持つ天秤と剣は、『剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力』と言う思想を表し、正義と力が法の両輪であることを象徴している。
善だろうが、悪だろうが、力が無ければ文字通り無力。
即ち、極論すれば人畜無害になるのだ。

リビドー > 「概ねそんな所だ。
 重ねに重ねた文化と技術の発達の影響で社会が人に及ぼす影響は非常に強まった。
 当然、それを纏める法も強くなる。人は享受し、世は発達し――個人では社会に及ばぬ程の格差が出来た。
 だが社会を作るのは人であり民衆となった。何だかんだで民主主義が選ばれた以上、
 法が弱者の声もくみ上げる故に力なきものの意思も善悪として汲み取られる。
 その善悪を判断するにも社会が大きすぎて自分の立ち位置を判断できず、リスクを加味して無難に流れる。
 無知のヴェールと言う奴だったかな――
 ま、悪用や脱法が実情としてあるのを抜きに考えても、法の在り方は実に強い。強かった。だが。」

 口が渇いたのだろう。
 ミルクティーを一気に飲み干し、置く。

「これからはどうだろうな。
 神も悪魔も竜も跋扈し魔術や物理法則を覆す科学も万民の手に落ちた。
 落第街をはじめとした裏の戸を叩けば、少しの努力で容易くに力が用意されてしまう。
 そしてそれらに対抗しうる自分だけの力――異能の力だって世に溢れた。」
 
故これからは超人の時代にもなりうるし、ならずともそのような意識は増えるだろう。
 個人主義や自由主義以上にも己は他とは違うし屈しない。
 自分の考えを貫き通す・貫き通せる事の出来る奴らが幅を利かせられる時代だ。」

斎藤 朱莉 > 「いわば、力なき人々の意思の集結が力になったのが、民主主義と言う権力体制であり、法と言う規範。
となれば……特定の個人が圧倒的で且つ特質的な力を手にした昨今、秩序と言うのは案外危機に陥っているのかもしれませんね」

考え込む。
法秩序は、それを守る倫理と、守らせる力があって成立するものだ。
即ち、それを守る倫理を持たず、尚且つ圧するための力を超越する存在が出てきたら……あっさりと、崩壊しかねない。

「例の生徒……虞淵なんかは、それでしょうね。風紀委員も頑張ってるみたいですが、アイツを止められた話は聞いたことがありません。
秩序に囚われない精神性と、法の番人を圧倒する力。それを兼ね備えた、まさしくな例と言えるでしょうね」

リビドー > 「全くだ。ニーチェの奴が生きていたらどう思うのやら。」

 含みを持たせ、何かをからかうように――冗句じみた皮肉として笑って見せる。

「人間で言えば彼がそれにあたるだろうが、彼は人間で人間の理を持っている。
 故に案外話せばわかるし、強さはあれど人間の経歴で世界を図っている。
 ――もっと厄介なののは現実に降りた神や悪魔、あるいはそれの形を取る現象や幻想存在。畏れられるそれら。
 細かく定義するのも難しい話だから神や悪魔と呼ぶ。ルーツはどうあれそうに違いない。
 ……彼らは大体は人の理を外れているからな。とても厄介だ。」

「元々居たにしろ、人の信仰や願いから生まれたにしろ、無意識と意識のあいまから欲を成したいと願うものが産まれ堕ちたにしろ、
 時にそいつらは容易く人の世を蹂躙する。人間ならば強者であろうがある程度人間の社会を作るが、そいつらはどうだろうな。
 何処まで人間を想ってくれるのやら。全く。」

斎藤 朱莉 > 「混乱するんじゃないですか?彼は少なくとも、本物の『超常』には出会ってないわけですし」

くすくす、と笑う。
過去の思想学者たちが今の社会を見たらどう思うだろう。
寧ろ、神学者の方も気になるが。

「成程、人理に囚われないのではなく、そもそも人理を有していない。
別の理で動く超常存在……それは確かに、既存の秩序の外に既にあるが故に、秩序に斟酌する必要が無い。
そう考えれば……末恐ろしいですね」

この学校にも、神格を持つ存在が数名いるという。
それらが人理を無視し、暴れたら……人は、どうすればよいのだろうか。

リビドー >  
「それもそうか。そりゃそうだ。出会って自殺しなければ良いんだが。
 ――データベースには大変容に付いてゆけず、自殺した識者が居ると聞くからな。」

「グエンは案外、人間の理性で語るのならばボクらよりも人の世を考える可能性すらある。
 流石に冗句ではあるとは言え、直観と自負心も相まっていれば多くのものと戦い通しながら社会に身をやつしていた訳だ。
 単なる知識とは別の理性と言うべきか。行きずりの関係はあれどずっと人の世を独りで戦い抜いたのだから、哲学はあるだろう。
 智識がないなら語ってはいけない訳でもない。」

 好ましそうにこの場に居ない超人を語る。
 グエンの肩を持っているにも見えるか。

「恐ろしいとも。
 それらがすることは最初は小さな違反かもしれないが、ここぞで大きく踏み出しかねない。
 異なる社会に生きる異邦人なら異なる社会を持つだけだからまだ通じる。
 だが、関係はあれど単独で人の世を掻きまわせるような神ならばそうも行かん。
 だからこそボクは神殺し足りえる学問である哲学に身を置いている訳だが……いや、これは余計か。
 ……人がこの世界を手にしていたように、神そのものは殺せなくもない。大概は特異な手段になってしまうがな。」

斎藤 朱莉 > 「いたんですか……少し軽率でしたね」

反応が気になる、と思ったことを恥じる。
余りのショックに自殺した……そこまでの話を語るには、軽々すぎるものであった。

「見えている世界が違う、と言うのはありそうですね。
そして、ある種の『英雄の相』があるとは思います。専門外ですが、ギリシャ神話に語られるヘラクレスに似ているとも思いますね。
……虞淵は、神相手にすら平然と叛逆しそうな気もしますが。
ただ、私は懐疑的です。英雄色を好むとも言いますが、凌辱被害の報告もある。奔放を越えて無法。ここまで来ると、期待より不安が先立ちますね。」

叛逆と言うよりは、無視か。
相手が何だろうが、一切に囚われず自己を押し通す精神性。
超越的であり、故に危うい。その方向性は注視すべき問題かもしれない。
実際……それで尊厳を奪われた女生徒がいるという報告が、上がってきているのだから。

「一時、神はその神秘を奪われ、神秘と言う名の闇は人智の光に照らされた。
ですが、大変容を機に神秘はまた人の世を覆っている……故の、神殺し、ですか」

民衆と、英雄と、怪物は三すくみの関係にあるという。
民衆は怪物に蹂躙され、怪物は英雄に退治され……英雄は、民衆に潰される。
ある意味でバランスが取れているのだが……ならば。
神は誰が相手取るのだろう。それこそ、神殺しの英雄にでも頼るしかないのだろうか。

リビドー > 「常世財団公開文書データベースを漁ってみろ。
 具体的には常世財団公開文書 《資料編》巻 41
 『英国における《大変容》と旧世紀の思想』より だ。」

 参考になるべきものを告げてみせて、話題を打ち切る。

「人間レベルの無法しか働いていない、と言うことだよ。
 世界を革命したり、世界を転覆させるようなものではない。
 そこも踏まえて、やはり彼は英雄だよ。英雄だって相手からすれば怪物だ。
 彼が腐敗した人間を粛正する、なんて事は言わないだろう。恐らく。」

「それもあるが、もっと味のない話だよ。
 物語・人の願いをルーツにする神は物語……イメージや願いに縛られる。
 イメージ通りで無ければ不死にもなるのが物語だが
 ――伝承通りに語られている存在なら伝承通りに殺せるか、概念通りにコントロールできる。
 ――言い換えれば、人々のイメージ通りに対処できる可能性は高い。確証はないがな。」

 腕を組んで目を瞑り、思う所をあざむように言ってのける。
 色々あるのかもしれない。

「種族における 単に物凄く強いって意味での厄介だが……
 観測出来る上に影響を及ぼせる存在である以上、どうにかしてこちらから影響を及ぼしたり殴り殺せる。
 要するに実体があるから殴り殺せる。とは言え、人の世を蹂躙できる以上厄介な話だ。
 それこそグエンのような存在が倒してくれることを願うか、それに打ち勝つ人間……
 ……+勇者や英雄を作るか見つけなければならない。」

リビドー >  
「……変な話になってしまったな。
 嫌いな話でもないがぼちぼち切り上げるか。十分楽しめたし収穫もあった。
 キミさえ良ければ次も願いたいがね。」

 パフェの残りを食べ切り、帰り支度を見せ始める。
 

斎藤 朱莉 > 「分かりました、帰ったら見てみます」

紙を取り出しメモを取る。常世財団公開文書 《資料編》巻 41、『英国における《大変容》と旧世紀の思想』。
旧世紀の思想を扱う身としては、読んでおくべきものであろう。

「成程、あくまで人間レベル……人の域を出ていない、と。
そう言ってしまうと、被害を受けた生徒が報われませんが……それでも、人の枠の中にいる時点でマシだと言うことですね」

だからどうこう、などと言いだすと、それこそ被害を受けた生徒の気持ちを踏み躙りかねないところではあるが。
被害を受けた生徒にとって、虞淵は悪逆の加害者であることは、間違いないだろう。

「吸血鬼の多くがあまたある弱点に縛られるように、語ることで神格を固定し、穴を用意し、そこを突く。
可能であれば、確かに興味深い話ですね……と、確かに長くなりましたか」

ぱく、とゼリーを最後まで口にして、同じく帰り支度を。

「ええ、こちらも収穫が多かったです。出来れば、次もまた是非」

リビドー >  
「グエンだけの問題でもないし、生きていれば世の中支えられる。
 何、意志が有れば再起や奮起の道もある。それは馬鹿に出来ないよ。
 報われないかもしれないが、何らかの形で挽回できるかもしれない。
 ……そうは思わないかい。」 
 
 制さなければ伝票を纏めて取る。制されれば自分の分のみを取る。
 立ち上がって会計の前まで歩き、肯定の意を聞いたところで首に角度を付けて振り向く。
 快さそうに口元を緩め、片目を細めるだろう。

「ん。それは有難い。また一つ楽しみが出来た。
 それじゃあまた会おうか。斎藤、朱莉。」

 いずれにしても会計を済まし、店を後にした――
 

ご案内:「カフェテラス「橘」」からリビドーさんが去りました。
斎藤 朱莉 > 「そこから立ち上がる意志こそが尊い。確かにそうとも言えますね」

悲劇はどうしたって擁護のしようの無いものだけれど。
そこから立ち上がる意志は、とても美しく輝いている物だと思う。

「いえ、自分の分は自分が。
……ええ、また。よろしくお願いします」

流石に奢らせるのはいけないと思い、制して自分の分は自分で払う。
次はどのような話が出来るだろうか……そんな事を考えつつ、店を後にした。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から斎藤 朱莉さんが去りました。