2017/03/07 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 「こんにちは」
お茶に良い時間。蘭は、少女らしい明るさを纏わせた挨拶とともに入ってきて、窓際の席を取った。
コートを脱いで、傍らに置いたブリーフケースの上に重ねる。たまに寒い日もあるとはいえ、その寒さは冬の頃のそれとは大分違ってきていた。
■美澄 蘭 > 勉強の方は、何とか持ち直した。
難関の魔術学概論も何とか切り抜け、犠牲は確率物理学だけで済んだ。進級の方も、無事出来た。…少なくとも、今年は。
来年は、異能関連の講義が増える。勝手が変わるので、これまでのようにはいかないかもしれない。
(…地道に、やるだけよね)
そんなことを考えながら、メニューを見る。
少しぶりにカフェテラスに寄ったのは、息抜きのためだ。
勉強も一段落して、慌ただしくしていた引っ越しの準備に目処が立ったのだ。
■美澄 蘭 > 一人暮らしが基本なのはさほど変わらないとはいえ、来年度からは、家族ぐるみでよりこの学園都市と深く関わることになる。
何だかんだで、祖父と研究所も良い信頼関係を築いてきているようだ。それでも、「まだ財団に心を許したわけじゃないからな」と強がるのが、ちょっと祖父らしいと思うと、蘭の口元も自然と綻ぶ。
…それから、季節のメニューを指でなぞって、
「すみません」
と、店員を呼んだ。
「ラズベリーチョコレートケーキと…あと、ダージリンをホットでお願いします」
そう注文をして、タッチパネル式の携帯端末を取り出す。
■美澄 蘭 > 音楽の実技講義はもう取らないつもりでいるけれど、趣味としての音楽まで捨てるつもりはない。
今度は「単純な運指面では」難しくない現代音楽でも弾いて楽しもうかと思って、その参考音源を聞くつもりで音楽プレイヤーを起動して…
「………あ」
蘭は、固まった。
そこには、蘭が憧れた「強さ」を体現するような女性アーティストの楽曲を集めて作ったリストの表示が、まだ残っていたのだ。
(…そういえば、気分が沈んでから、どう触っていいのか分からなくてこっちのプレイヤーはそのままにしてたっけ…)
ピアノ曲の再生リストを呼び出して、画面を切り替えたのと、注文したケーキと紅茶が来たのはほぼ同時だった。
「あ、ありがとうございます」
少し慌てながらも、そう言ってお辞儀をして、運んできてもらったものをテーブルに置いてもらう。
■美澄 蘭 > 「………。」
店員に作っていた愛想笑いが消え、微妙な表情で端末の操作を続行する。
ブリーフケースから楽譜を引っ張り出し、イヤフォンを耳にセットしてから、再生開始。
「………。」
時折、紅茶を静かに啜りながら、開いた楽譜の五線上を、白く長い指でそっとなぞりながら音楽を聴いている。
■美澄 蘭 > 現代音楽というと、世間では難解なイメージが強いかもしれない。
でも、メロディアスな楽曲や、そういったものを好んで作る作曲家もいくらでもいて…それでも、その響きは古典的なものとは随分違う。
蘭は、その冷たく透き通った響きが好きだった。清らかな水のように、心に染み通る感じのする音楽が。
(…今の私に…この響きは、ちゃんと作れるかしら)
蘭のピアノ演奏は、そこまで気分屋なものではないけれど。
透明感を高い水準で表現するには、鍵盤を話すタイミングの細かい調整が必要で…それをきっちり表現するには、心身ともにコンディションを整える必要はある。
それに…「どのくらい透き通っているか」を高い水準で判断するには、高い集中力も要る。
ホワイトデーまで、もう少し。「覚悟」を決めなければいけない時が近づいている。
その事実は、間違いなく蘭の集中力を削いでいた。
■美澄 蘭 > 「対等でありたい」「近づきたい」という願いに、心かき乱された。
息抜きによく聞いていた女性アーティストの楽曲を聴くのが、怖くなった。
自分は、強くなんてない。
心かき乱されて、「都合のいい女」がどう生まれていくのかも、何となく分かってしまった。
理性的な判断が、情欲の脇に追いやられてしまうのだ。
(…それでも、私は…)
彼のことは、優しい人だと信じているけれど。
もしも…万が一。相手の真意が、そこにつけ込むことにあるならば。
切り捨てなくてはいけない。心かき乱すほどの割合を占める情欲ごと、相手のことを。
■美澄 蘭 > そうして、ある程度ピアノ曲を耳に流したところで、再生を一旦止めて、イヤフォンを外す。
せっかくデザートも頼んだのだから、紅茶が冷めきる前に楽しまなくては。
(とりあえず、これ食べたらピアノの練習しに行って…冷蔵庫の中は空っぽにしてあるから、学食で夕飯食べて帰る感じかしら)
そんな、他愛ない日常に繋がる方向に、頑張って思考を切り替える。
実際、生活の大きな変化が迫ってきているのだから、「そちら」にかまけてばかりもいられないのだ。
………逃げっぱなしが一番良くないのも、蘭は分かっているのだけれど。
■美澄 蘭 > そうして、気持ちを落ち着けようとするかのように、ゆっくりと甘いものを味わって。
蘭は、会計を済ませて店を後にしたのだった。
引っ越しがあって、来年度からお世話になるつもりの部活(同好会だが)に顔を出しに行って。
今年の3月は、少し忙しい。「気持ち」のことをおいてさえ。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に寄月 秋輝さんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に佐伯貴子さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
「ここに来るのはしばらくぶりですね」
空いた席を見つけて、貴子の座る椅子を引いて待つ。
コートがわずかにふわりと浮いた。
「……受験勉強、進んでいますか?」
ついでに進捗を聞いておく。
■佐伯貴子 > あー…前に来た時いつだっけ…
(疲れた表情で引かれた椅子に座る。
マフラーをするにはもう温かいかもしれない)
おかげさまでなんとか…な。
君は結局卒業してしまうのか。
(運ばれてきたお冷に口をつけながら聞く。
飛び級で卒業するという記憶はあった。
進路は聞いただろうか)
■寄月 秋輝 >
「もういつだったか忘れてしまいましたね」
小さく笑いながら答え、コートを脱いで向かいに座る。
メニューを開いて、貴子の方に向けておいた。
「それはよかった。
ここの生徒で、浪人は厳しいでしょうからね。
……まぁ、貴子さんなら心配しなくてもよかったかもしれませんね」
本当に安心した様子で小さく笑い、同じく水を飲む。
冷たいが、それなりに温かくなった気温にはちょうどいい。
「ええ、飛び級で卒業して、ここの教師に。
風紀委員も終わりにしますから、その浮いた時間で魔術研究にも本腰を入れようと思います」
割としっかりしていた。
■佐伯貴子 > 浪人とかマジで聞きたくない言葉だ…。
そもそも予備校に通うにもこの島にあったっけ…
(頭を抱える。
そもそも常世学園は進学校ではない。
受け皿的なものはあるだろうが、正直メインではない)
そうか…
うちの学校、教員採用がザルだな…
ともあれ、正式な職につけておめでとう。
(力なく、しかし目を細めて微笑む。
生徒から教師になる存在が多いような気がする。
異邦人にとってはその方がいいのかもしれないが)
すみません、ボロネーゼ一つ。
(そして珍しく、甘味ではない軽食を注文した)
■寄月 秋輝 >
「無いと思いますよ。
……逆に、ここでの経歴が学歴扱いされることのほうが、僕としては驚きです」
進学校でないのは当然として、正規の教育機関とはかけ離れた存在に思える。
そのまま大学に進めるというのは、存外すごいことなのかもしれない。
「こう見えて魔術研究の論文をかなり出してるんですよ。
ザルな審査ながらも採用されたのは、それが大きな点でしたね」
軽口には軽口で返しつつ、自分もまたフレンチトーストとコーヒーを頼んで。
「……軽食なんですね。
デザートは別で食べますか?」
■佐伯貴子 > 一応大学レベルの講義もあるからな。
学問に真剣に打ち込んでいる学生もいる。
(専門が問題だったりするのだが。
島の外では違法扱いする国もありそうだ)
ふうん…となると教える科目も魔術関係になるのかな。
ていうか、寄月を先生呼びしなきゃいけなくなるのか…なんてこった…
(自分はこの島でこれ以上魔術を学ぶことはないだろう。
しかし最低1年は、元同僚の教師と同じ空間にいることになる。
気が重い)
デザートはもちろん食べる。
たまには軽食もいいかと思ってな。喫茶店なんだから。
(喫茶店の定義は不明である。
毎回紅茶は飲んでいるので、茶を喫するという意味では普通に使っている)
■寄月 秋輝 >
「見た目が人間とは違うと、特に学問をしっかり納めないといけないという事情もあるかもしれませんね」
結局厄介だな、とため息をついた。
学園そのものは受け皿として成立していても、そこから拾ってくれる者が多くない可能性もある。
ままならないものだ。
「ええ、防御術を軸に、日常生活に扱える魔術を。
……別に今まで通りでいいですよ、どうせ年齢は変わらないですから」
そう言って手をひらりと振った。
これまで同じ立場だった人間から、突然態度を変えられるのも面倒なのだろう。
「別に甘味断ちしてるわけではないんですね。
それなら好きなものを食べてください」
メニューを無意味に眺め、少し満足したら閉じておく。
たまにはそんな時間の使い方もいいものだ。
■佐伯貴子 > そうだな。
そういう差別も少なくなったらしいが、ないわけじゃない。
そのために学問を学ぶ場なのかもしれないな、うちの学校。
(だからといって、稼げるようになるとは限らない。
この島が異種族交流の最先端だとすれば、
島の外はバリアフリーどころかフルバリアなのだろうから)
例の暑さを感じない魔術を教えてれば食いっぱぐれなさそうだな。
うん…面倒だから今のままでいいか…
(佐伯貴子の中のルールとして、上の学年と教師には言葉遣いを変えるというものがある。
年齢や見た目では区別がつかない存在が多いため、
学年と立場を基準にしていたのだった)
甘味はな…脳のエネルギーなんだ…
(魂の底から湧き上がるような強い言葉)
ということは君の奢りだな。後悔しても知らんぞ。
いただきます…
(運ばれてきたボロネーゼをフォークで食べ始める)
■寄月 秋輝 >
頬杖をついて考え込む。
両方が両方を警戒している世界だ、そう簡単に進展しないであろうことは理解できる。
こればかりは時間がかかるだろうことも。
「あれだけに限りませんけれどね。
教えられるのは二年以降の、魔術適性がある生徒に限りますけれど」
魔術は教えられるが、魔術を使いたいという段階の者には教えられないのも悩みどころだ。
けれどそれは別の教師がやってくれることだろう。
「お好きなだけどうぞ。
金銭事情はなんとかなりましたから、お礼を返す時間ですね」
自分のフレンチトーストにも手を付け始める。
ナイフとフォークで綺麗に切り取り、口に運ぶ。
コーヒーも砂糖を入れず、一口すすって、その苦みを楽しんだ。
ふと手を止めて、貴子の姿を見つめる。
もうじきこの人も居なくなるか、と思うと少し寂しくなった。
■佐伯貴子 > 別に大規模な社会問題というわけじゃないし、なんとかなっているのだろうさ。
(考え始めた相手に言葉をかける。
人間のみに限っても、異能と魔術で諍いが起きた。
人外と異邦人を混ぜたあと、100年ほど寝かせたのがこの世界。
「形にはなっている」のだ。
…最も、島の外はよく知らないのだが)
使うための知識じゃなくてもいいだろう。
魔術を使うものがいて、その作用や仕組みはこうなっていて…
というのを学ぶのも、今の世界には必要なことだと思うぞ。
(ボロネーゼを食べながらそんなことを言う)
お好きなだけ…
ちぇっ、最初からスイーツにすればよかった。
(パスタを腹に入れてからでは、デザートの入る隙間は狭くなる。
別腹というものの、本腹には負けるのだ)
…何を見ている。
今生の別れでもあるまいし。
(実際、あと1年はこうして会う機会もあるかもしれないし、
大学在学中も常世祭に遊びに来るかもしれないし、
卒業後にひょっこり戻ってくるかもわからないのだ。
佐伯貴子はそんな感慨より、
ボロネーゼを食べ終わった後のデザートを考えるのに必死なのであった)
ご案内:「カフェテラス「橘」」から佐伯貴子さんが去りました。
■寄月 秋輝 > ふ、と小さく笑って頷いた。
考えすぎなのかもしれない。
もう少し、人も異邦人も、自分も世界も信じるだけの余裕が必要なのだ。
「そういうのを学ぶのは、他の先生方に任せますよ。
その上で、僕の魔術や構成を学びたいものに教えることとします」
先日、ある教師との会話でそれは割り切ったつもりだ。
それでも学びに来るのならば、それも受け入れるのだが。
「いえ、別に。
気にしないでください」
そう、まだ終わりではない。
だからもう少しだけ、こうして友と語らう時間を楽しもう。
コーヒーの味と香りを楽しみながら、そう考えていた。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から寄月 秋輝さんが去りました。