2017/04/16 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に佐伯貴子さんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に寄月 秋輝さんが現れました。
佐伯貴子 > アキと私ってさ、お茶するの久しぶりだよな。
付き合ってからセックスばかりだったし。

(紅茶を飲みながらそんなことを言う。
 事実そうなのだが、誘ったのは佐伯貴子であり、
 しかも受験勉強のストレス発散のためである。
 寄月が何かを言おうとすれば唇を塞ぐという始末なのであった)

寄月 秋輝 >  
そんなことは無いだろう、と言おうと思ったものの、塞がれるならば仕方がない。
すす、と静かにコーヒーを一口啜る。
それで相手の気が紛れるなら、それでもいいと思っているところがある。

「ショートケーキを二つお願いします」

通りがかる店員に、何事もなく注文を通しておく。
正直異様な光景にも見えるかもしれない。

ただ、そんな状況でも貴子を見つめてふっと笑顔を浮かべる。
文句など無く、それでいいし、それが幸せとも思っているのだ。

佐伯貴子 > あーあー、アキは幸せそうでいいよなあー…

(笑顔を見せる男に、唇を尖らせる。
 教師になって余裕が見えてきた気がする)

んでさ。
私って実はアキのことよく知らないし…
アキも私の過去とかよく知らないと思うんだけど。
そういうの、話しておいたほうがいいと思うんだ。

(相手の目を見つめながら言う)

寄月 秋輝 >  
「ん、オレは幸せだよ。
貴子のおかげで」

臆面も無く言い放つ。
以前よりもずっと険のない、これが自然な笑顔なのだと思える表情で。

「うん、お互いのことを知らないままというのもね。
……とは言っても、何を聞いて、何を話せばいいのか……
母親を亡くしたこと、昔恋人が居たこと、死にかけたはずがこっちに来ていたことは漏らしたから、オレからはこれで全部じゃないかな」

しかし相手のことで何を聞くべきかがわからない。

「……じゃあ、ここに来るまでと、家族のこと。
教えてほしい」

真っ先に、聞くことを少々ためらう内容に踏み込む。
この女性が家族ではなく、恋人になったばかりの自分にこれだけ寄りかかるには、何か理由があるのだろうと思っている。

佐伯貴子 > そうなの。

(興味なさそうな様子でそう返す。
 よく見れば口元が緩んでいるのがわかるだろう)

それで全部って、人生ってそんなに薄いものじゃないと思うが…
細かいことをいいたくないならいいよ。

(何を生業にしていたのかとか、なぜ死にかけていたのかとか。
 聞きたいことはたくさんあるが。
 それは寄月にとって重要じゃないのかもしれない)

…あまり面白い話じゃないけど…
私の異能は知っているだろう?

(そうやって昔話を始めた)

寄月 秋輝 >  
「本当に何を話せばいいかわからないからね。
だから貴子が聞いてくれるなら、その時に教えるよ」

語る内容が無いわけではなく、こちらに来るまでの15年はあまりに濃密すぎたのだ。
なので彼女が知りたいと願うことだけに絞っていこうと思っている。

「才能……魔術的なものや、異能等を強化出来る異能だったかな。
オレもさすがに、そんな能力は聞いたことが無かったから覚えてる」

先ほど頼んだショートケーキが届いたので、それを自分と貴子の目の前に置く。
勉強で頭を使っている貴子にはちょうどいいかもしれない。

佐伯貴子 > わかった。じゃあいずれ聞いていくことにしよう。

(昔話は、今回は佐伯貴子のターンというわけだ)

うん。
普通…と言っていいのか、裕福じゃないけど…
母親と父親のいる家庭で育ったよ。
おじいちゃんとおばあちゃんの顔も覚えてる。
で…いきなり記憶が真っ白い研究所に飛ぶんだ。

(ショートケーキを切り分け、口に運ぶ)

私の能力は、研究するにはうってつけだ。
私自身の能力も、他の能力者も、いっぺんに研究できる。
…だから…私は、両親に売られたんだと思ってる。

(それはつまり、両親の愛情をそれほど信じていなかったと。
 そう告白しているのだ)

寄月 秋輝 >  
「……そうか」

ケーキには手を付けず、コーヒーを啜った。
ぬるい苦みが口の中に広がる。
彼女にとってはつらい記憶だろう。
けれど。

「それを聞けてよかった。
親は居ないけど、今は恋人が居る。
……オレと同じだ」

貴子の感情も考えも否定しない。
その結果と現状がかみ合うなら、それでいいのだ。

「ごめん、話の腰を折っちゃったな。
その研究所からのつながりで、この島へ?」

佐伯貴子 > (ショートケーキは、まるで砂を噛んでいるような味がする)

ふふっ…そうだね。
私は不幸なわけじゃないよ、異邦人の君に比べれば。
こっちの普通よりちょっと面倒ってだけだ。

(両親どころか、見知った顔がいない世界に住む。
 それがどんな恐怖かわからない。
 自分なら耐えきれないだろうと思う)

で。
異能研究は頭打ちっていうか…ある程度進んで止まっている感じらしいんだ。
だから、私も全力を出して実験に協力した。
早く逃げ出すために。
そしたら、ある事件が起きたんだ。

(ケーキを食べつつ話を続ける。
 ここで一旦区切ったのは、もったいぶったわけではない。
 整理しながら話すためだ)

寄月 秋輝 >  
彼女はそう笑ってくれたが、状況はそう簡単なものではない。
自分はまだ親を失って、数年後とはいえ救ってくれた人たちが居た。
佐伯貴子が被った恐怖と絶望は、自分の受けたその比ではないのだろう。
お互いに、お互いの不幸までは理解しえないものだ。

「さっさと終わらせるために協力したのまではいいけれど……
事件、というと?」

コーヒーカップを置き、貴子を見つめる。
受け入れる覚悟は十分にある。

佐伯貴子 > (紅茶を一口飲む)

事件と言うか事故というか。
『門』が開いたらしいんだ。
単純な実験だった、「他者の異能をどこまで強化できるか」。
私は本気を出した。
一瞬のあとには、強化ガラスの向こうの被験者…どころか、
研究所の一部がごっそり消失してた。

(ケーキを食べ終わってしまう)

本当に『門』が開いたのかどうかはわからない。
でも、研究者たちは大騒ぎさ、これは大発見だとか、リスクが大きすぎるとか。
結局、そんな予測の付かない力を持っている異能者を置いておくことは、
危険だと判断されたらしい。
最低限の身分とクレジットを与えられて、逃げることができた。
そして、ここに入学して、働きながら学んでいるというわけさ。

…昔話終わり。
せっかくの甘いものがあんまり美味しくなくなるな。

(そう締めくくった)

寄月 秋輝 >  
「それはまた」

確かに、なんとも暗い話だった。
親には捨てられ、同じような立場の可能性の者たちを間接的に消してしまい、挙句には危険だと捨てられた。
これほど嫌な話も無いかもしれない。
淡々と語っては居るが、人を殺したと思ってふさぎ込んだ時期もあったかもしれない。

「……大変だったね」

それだけ呟き、ケーキにようやくフォークを突き刺す。
そして自分の口には運ばず、貴子の口元に向けた。

「なら、これから幸せになろう。
俺は君を捨てたりしないから」

このケーキは、きっと甘くておいしいと信じて。

佐伯貴子 > 大変だったよ。
でも、楽に生きている能力者なんていないと思うけど。
あーん…

(遠慮なくケーキを食べてしまう。
 いつもの通り、絶品な甘さだ)

これからって?私は今が一番幸せだけど?
アキはそうじゃないのか?

(言いながら席を立つ)

じゃあ、暗い話は今日はこの辺にして、商店街でも見て回ろう。
夏の私服が見たいんだ。

(そう微笑む佐伯貴子は、いつもどおりであり。
 寄月と付き合い始めてから見せる幸福そうな笑顔である)

寄月 秋輝 >  
「これからだよ。
今が一番を、これからずっと続けよう。
後から思い返して、あの頃が一番だった……なんて寂しいだろ?」

自分の口と貴子の口、交互にケーキを入れて、手早く食べ終えて。

「うん、そうしよう。
涼しくて綺麗な服があるといいな」

続けて席を立ち、伝票を取る。
もう脅されたりのものではなく、そうしたくて自分で支払うものだ。
これまでの仏頂面はどこへやら、恋人と居られる、幸せな笑顔を浮かべていた。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から佐伯貴子さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から寄月 秋輝さんが去りました。