2018/08/25 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 穏やかな午後のカフェテラス。
土曜日ということもあって、多くの学生で賑わい、活気に満ちている。
友人と、恋人と、家族と。思い思いに平和な休日を楽しむ人々の姿があった。
そんなカフェテラスの一角。日当たりの良いテラス席でアイスココア片手に二人の生徒と向かい合う。

一人は勝ち気そうな雰囲気の眼鏡をかけた女生徒。もう一人は、制服を見苦しくない程度に着崩した男子生徒。
両者とも、腕には【新聞部】の腕章を付けている。

『――それでは、現在発生している落第街での騒動について、風紀委員会から公式に発表する事は無いということですか?』

滑舌の良い口調と共に、女生徒から質問が投げ掛けられる。
巡回中に彼等に捕まったのが運の尽きというやつか、と小さく溜息を吐き出してから、カップを置いて女生徒に視線を向ける。

「先ず訂正を。そもそも、落第街なる地区は学園内に存在しません。それ故に、落第街で発生している騒動という事案自体が存在し得ない、ということになります。
しかしながら、歓楽街の一部地域において過度に治安が保たれていない地区が存在することは事実です。その為風紀委員会としては、生徒の皆様にそのような地区に立ち入る事の無い様に、お願いしている次第であります」

学園都市の公式見解として、そもそも落第街なる場所は存在しない。それに準拠すれば、そもそも風紀委員会としても【落第街で発生している騒動】等というものを認める訳にはいかない。
言葉遊びの様なものではあるが、穏やかな笑みと共に二人にゆっくりと首を振って見せるだろう。

神代理央 > 『それは詭弁でしょう。それでは、【歓楽街で発生しているアンデッド騒ぎ】と言えば事実を認めて下さるので?』

今度は、制服を着崩した男子生徒が此方に声をかける。
マスコミの業界人にでもなったつもりなのだろうか。まあ、こういう手合は適当に満足出来る餌を与えてやれば良い。

「歓楽街においては、違反部活等の不法な組織によりアンデッドに限らず様々な治安悪化要因が複合的に発生しています。
そういった点では、歓楽街にアンデッドなるものが存在しない、とは言い切れないでしょう」

此方の発言に、男子生徒は複雑な表情を浮かべる。
事実を否定するわけでも肯定する訳でも無い。隠蔽もしていないし虚偽の発表をした訳でもない。
要するに、男子生徒は煙に巻かれてしまったのだ。

「しかし、我々風紀委員会はそういった事案に対し常に全力で対処に取り組んでおり、優秀な委員達の活躍に寄って学生街への治安悪化要因の流出は防がれているという事実があります。
我々は、これからも治安維持に全力で取り組んで参ります。その活動に対しての皆様からの御協力とご支援の程、切にお願いする次第です」

そう締めくくった言葉の先に、何とも言えない様な表情を浮かべた二人の姿がある。
線の細い自分なら、少し圧力をかければ何でも話すとでも思ったのだろうか。欲する情報が得られなかった不満と、それを言葉に出来ないもどかしさを宿した表情を眺めながら、再びカップを手に取り甘ったるいココアで喉を潤した。

神代理央 > 結局、彼等の質問は全てのらりくらりと交わし続け、最後には疲れ切った表情の二人をにこやかに見送る事になった。
そもそも、突発的に取材を申し込まれたところで、此方は委員会が公式に発表している事実以上は話すことが出来ない。
それくらい、理解して欲しかったものだが―

「まあ、所詮はマスコミごっこという訳か。下らんな」

二人が立ち去った後、謝礼としてせしめたココアと茶菓子に舌鼓を打ちながら機嫌よく呟いた。
同じく謝礼として差し出された新聞に目を通しつつ、そのゴシップめいた記事の数々に含み笑いを漏らした。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > やがて、カップの中身も茶菓子の乗った皿も空になり、真夏の日差しも幾分弱まってきた。
一度本庁に戻るか、と椅子から立ち上がる。

「今夜くらいは、アンデッド共も大人しくしていて欲しいものだがな」

週末の夜ともなれば、歓楽街を訪れる生徒も多くなるだろう。
それらの補導に追われるのは面倒だ、と思いながらカフェテラスをあとにした。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から神代理央さんが去りました。