2015/06/19 のログ
■桜井 雄二 > (三千歳泪をひとしきり撮影すると、タブレットを返して)
確認してくれ。これでよかったか?
(岡部の言葉に、右目が熱くなるのを感じる)
(紅い右目を手で押さえたまま)
次元境界線が………(無表情に、それでも仄暗い何かを抱えた言葉)
その何かが、異邦人であったなら。保護をして説明をする。
その何かが、蟻人であるのなら。戦うだけです。
(忙しくなる、その言葉に胸がざわめいた)
(この平和な日常が愛おしい)
(愛おしいのであるならば、戦う価値もある)
そうだな、三千歳泪。デートは早めに、だそうだ。
■崎守 鐡 > 「そりゃー」
「………今直ぐ離れても差別される未来しか見えなかったら離れます?」
岡部先生に奥底の淀んだ物をジャブ程度に吐き出す。
「……ちゃんと、帰れる時になったら帰りますけどね。」
「………家の跡継ぎにもなりたいですし」
「……どこまで、隠し通せるか、という問題もあるでしょうけど」
「………何も知らない生徒は平穏に過ごせるように、しなきゃいけませんね?」
無論、こんな話を聞いた手前、もう自分はその「何も知らない」には計上されていない。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に井戸木さいこさんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に井戸木さいこさんが現れました。
■岡部 吹雪 > 「俺だったら……そうだな。」
「俺だったら、好きに生きるさ。」
「誰でもない自分の人生なんだから、一番気持ち良い生き方して勝手に死ぬね。」
「それが今の俺の仕事ってワケ。」
あまりにも刹那的な生き方ではあるが、それ以外の道が考えられなかった。
故に島に流れ着きもしたし、島を形成する要素の一部となった。
「正直なところ、正式発表する前にここで告知したのが良いかはわからねえ。」
「だがお前らなら、まあ大丈夫だろ。」
「何かあったらまあ……その時は、頼むわ。」
現れた敵を倒せと、そういうわけではない。
桜井の言うとおり、流れ着いた異邦人とは孤独な存在だ。
受け止めるだけの土壌は、大きい方がいい。
この場に居合わせたメンツならば、それができると踏んでのことだった。
「ま、できたらでいいよ。」
「何も起こらねえのが一番いいんだから。」
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に神崎 聖さんが現れました。
■三千歳 泪 > 「ほほう。ガンガン攻めるねこのアングルは! ばっちりだよ。よく撮れてると思う! けっこう見られるんだなー」
記録されたいくつもの視点。そこにはほかのだれかの視点を通してみるバーチャルな自分自身が映っている。
「あ、岡部先生。そうやって口説いてるんだ。真似しちゃだめだよ桜井くん。助手くんも。このおじさんは悪い見本だぞ」
「行きたくなったときが行きどきだよ! ちょっと遊びにいくだけだから、気負わなくても大丈夫。私は逃げないしさ。今度の週末どうかな?」
「壊れたものは私が直す。それが私の戦いかた。被害を食い止めるのは君たちの役目だ。私はけっこう人を信じちゃう方だから、任されてくれるかな」
■崎守 鐡 > 「そうですね―」
何か変に期待されているようだが、実際にそれが出来るか、
と問われればその時になるまで分からないだろう。
異邦人かて人間なのは代わりはない。
それは自分がいちばん承知しているつもりの事だ。
人間だから、差別もするし、受け入れもする。
「…しょーじき、何も起きずに適度に馬鹿騒ぎするのが正しい青春ですよ。俺的には」
■神崎 聖 > 夜食となる時間だが、何かを食べるのも悪くない。
と、言うわけでファミレスにやって来た。
「さて。」
まずは、回りを見る。
座れそうな所は有るのだろうか?
満員なら、しばらく待とう。
そのつもりだ。
■桜井 雄二 > 好きに生きる、か……
(自分の生き方は呪われているのかも知れない、そう思った)
(蟻人への憎悪を抱えたままの自分が、本当に自分の人生を生きているのかどうか―――)
わかりました、岡部先生。
俺にできることを精一杯やるつもりです。
(三千歳泪に頷いて)わかった、今度の週末にデートしよう。
………岡部先生は、悪い見本なんかじゃないさ。
この人は……信用できる人だ。
(神崎聖を見ると立ち上がって)さて、席を占有しすぎたな。
俺はこれで帰ることにする。今日は楽しかった、みんなありがとう。
それじゃ(席を立って帰っていく)
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から桜井 雄二さんが去りました。
■神崎 聖 > 桜井を見ると…。
「さて…。」
とりあえず玄関辺りの椅子に腰をかける。
店員を待ってみようか。
■崎守 鐡 > 「……桜井のにーさんは『無理はするな』とか言いませんが……まぁ、そういうことに敏感だと、大変ですよね?」
何故かここのいる時間だけで、目の前に居る彼を『こちら側』だと思ってしまった。
ただ、俺よりはよっぽど出来た人だ、とは思う。
「……それじゃあ、また、どこかで。」
「岡部先生は良い人ですけど、一部目を瞑らざるを得ないことは認めますよ、ええ」
女性関係の話とか。
■岡部 吹雪 > 「その馬鹿騒ぎってやつは存外貴重だからな。」
「オトナになると難しくなるぜー?」
「俺みてーなのが珍しいんだからよ。」
「見本にするには確かに不出来かもな。」
へらへらと笑いながら、一先ずは話に蹴りを付ける。
「それじゃ解散だな。」
「……あー、明日も仕事だと思うと憂鬱だぜ。」
「授業中寝てたらゴメンな?」
などと言いながら、席を外す。
■三千歳 泪 > 「お客さんだ! 行かなくちゃ。あとで連絡くれるかな。待ってるから!!」
「だってさ。岡部先生。もつべきものは可愛い教え子だね!」
休憩終わり。おなかをすかせた女の子がお店にやってきた。案内できそうな席はあるかな。
明日になれば違う自分が別のどこかで働いてるはず。でも、今日だけはお店のために。
身だしなみを整えて、ウェイトレスその1に戻るのだった。
「いらっしゃいませ、お客さま! どうぞこちらへ!!」
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から岡部 吹雪さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から三千歳 泪さんが去りました。
■神崎 聖 > ウェイトレスの案内で、
席は確保をできた…。
さて…何を食べようか…。
メニューを開き…ゆっくり考える。
■崎守 鐡 > 「さてと……どうしよっかな?」
もう解散のようだし、伝票持って行かれた手前、ドリンクバーだけで過ごすのも悲しい。
「せめて片付けだけはしておこうかな……」
そんな風に、最後の一人も去っていった。
……今後の身の振り方も少し考えようか、と
どこにも所属していない彼は思ったらしい。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から崎守 鐡さんが去りました。
■神崎 聖 > とりあえずケーキと珈琲を注文する。
さっきまで、集まりがあったようだが、
私には関係ないことだろう。
そうして考えれば、注文した品が来る。
■神崎 聖 > 後は、フォークを使いケーキを食べる。
ゆっくりと味わうように食べていく。
こうして、食べ終えたなら…
珈琲をのむ。砂糖は入れてない。
■神崎 聖 > 珈琲をゆっくりと飲んでいく…。
こうして食べ終えたならば…
また来ようかと考えてみる。
こうして支払いを済ませ…
私は寝る前にどこかにうろつくのも
悪くないと考える。
■神崎 聖 > さて…次は何処へ行こうか…
私の一日は終わらない。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から神崎 聖さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 深夜のファミレス。
そのテーブルを一つ囲んで男達がコーヒーを各々頼み。
テーブルの上に置かれた映像再生機械を睨むように眺めている。
やがて映像が一巡すると、一人が重たい口を開く。
「復活したんですね……あの伝説の悪魔のLが」
■五代 基一郎 > 「いや、正確には違う。ヤツは幽鬼のように存在していた。
望む望まないに限らず、走る時間をある種ズラして走る慣習がドライバーの中に出来ていた。
事実ヤツの話が急速に、今広まったのはルシファー川添戦からだ」
映像再生器のボタンを巻き戻すとそこに現れるのは
GTR……R34を駆りパッシングする行動の走り屋ルシファー川添の姿があった。
公道に設置された監視装置の映像である。
■五代 基一郎 > 「ヤツはいつも深夜に現れていた。峠のドライバーの中でも悪魔の伝説として知られてきたからな。
だが比較的新しく出てきたルシファー川添がバトルしたことで、流れが変わり始めた。
今回でいえば点火剤になったのかもしれないな。」
映像の中でルシファー川添戦、クラッシュするFDの場面に変わる。
例え旧式と言えど現在でもそれなりに値段がするものだ。
それが一瞬の判断ミスでジャンク送りになる。
「でも五代さん、ルシファー川添と言えどGTR乗りのガキですよ。
コーナーも曲がりきれない調子に乗ったガキ一人やられたぐらいで皆騒ぎ過ぎじゃないですか」
「わかってないな」
男の目は違った。風紀委員会のやる気のない目でも執行部時代の目でもない。
間違いなくここにいる連中と同じ目をしていた。
■五代 基一郎 > 「確かに川添は若い。R34もいいマシンだ。サーキット、公道用に両立を目指したコンセプトは今でも通じる。
だがそれだけで公道を走る悪魔とは呼ばれたりはしない。
事実奴はコーナーでブレーキを踏んでいる。
この点で既にFD乗りとは技術の差が出ている。」
映像ではラストのコーナー入口でR34の車体を擦りブレーキを踏む姿が見受けられた。
だが奴は生きている。
「ルシファー川添も自分の手足とまではいかずとも乗りこなしている。
公道でバトルをするだけはあるよ。だが敗けた。何故だと思う?」
■五代 基一郎 > 「わからねぇ……わからねぇぜ五代さん!一体なにがあの悪魔の独走を許すっていうんだ!」
「悪魔のL……奴が速いのはブレーキを極力踏まない走法にあると俺は見ている。
加えて言えば、先を走ることで誘蛾灯のように後続車を惹きつける走り屋の精神に訴える姿だな。
先に走るものを見れば追いかけたくなるのが走り屋だ。だが峠と違って公道は時速200以上出る世界だ。
そんなことを続けていれば破滅的な結果しか残らない。
FDもルシファー川添もそのペースに飲まれたんだ。」
カラリ、とアイスコーヒーの中の氷が動いた。
静けさがその一席だけを支配する。
「悪魔のL、公道でヤツと対等以上にやるドライバーの条件を挙げるとするならば
自分のペースを崩さない、時速300の限界以上のゾーンでアクセルを踏める人間だろう……」
■五代 基一郎 > 「そんな人間いるのかよ……」
「だからこそヤツは悪魔のLと呼ばれているんだ。こんなことマトモなメンタルでは出来ない。
頭のネジが飛んでいるとしか言いようがないな。地獄が住処である悪魔というのも、あながち間違ってはいないだろう。
だが可能性はゼロじゃない」
ルシファー川添戦以降のいくつかのバトルデータの映像を見ながら続ける。
「ルシファー川添が呼び水になった。悪魔が悪魔の世界に引き込むようにだ。
今後も激しいバトルが行われるのは予想できる。
その中で条件をクリアしたドライバーだけが……悪魔のLを下すことができる。
公道最速の称号を得るだろう。」
峠と車を好む男達のファミレスの会合は終わる。
次の公道バトルを待ちわびながら……
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に生ヶ易案子さんが現れました。
■生ヶ易案子 > ファミリーレストランに、ドリンクバーで居座る女子生徒がひとり。
……それ自体はなんら珍しいことではない。
真面目な学生諸君も、島の裏側で事件に明け暮れる面々も、そろそろ定期テストを見据える時期だ。
■生ヶ易案子 > しかしこの小娘は、課題を広げるでもなく、ただ机の上にコーヒーフレッシュとポーションの空ゴミを増やしながら、ぼんやりと時間を潰している。
そもそも彼女にとって――『作品』を一瞬で『完成』させる異能、『永遠の一瞬』にとって、課題に時間をかけるとか、労力をかけるとかいった概念は基本的に存在しないのだ。
■生ヶ易案子 > やがて彼女の席の横を、同じようにドリンクバーのカップを手にした生徒が通りかかる。
黒髪に眼鏡、いかにも優等生然とした、地味な印象の女子だ。
立ち止まり、ちらりと視線を向けてくる彼女に、『あんずさん』は邪気なく笑顔を向ける。
「お、カンペちゃんだ」
その識別名(らしきもの)で呼ばれたことに、女子生徒はぎょっとしたように黙りこみ、慌てて周囲を見回すが――、
『あんずさん』は意にも介さず、鼻歌まじりに、新たななんとかかんとかラテにポーションを放り込む。
■生ヶ易案子 > なにかが起きた様子もない。
物理事象、この次元において、なんらエネルギーが消費された気配もない。
しかし、それで、あだ名通りの『契約』は、女子生徒のかばんの中で、しずかに完了しているのだ。
■生ヶ易案子 > 異能によって答案そのものを『完成』させてしまえば、「『作品』は『修正』できない」という制約により、赤ペンによる採点行為が行えない。つまり一瞬でバレる。
なのでまあ、「それ」を作る、というのが、『あんずさん』の利用者の中でのトレンドらしい。
■生ヶ易案子 > こういうので一番大事なのは、疑われないこと、らしい。
そういうことをするタイプだと、教師に思われないこと、だそうだ。
……自分の能力が何に使われるのかを、他人に一任するのが彼女の流儀だ。
まるで他人事のような感想を抱きながら、そそくさと立ち去る女子生徒の、きっちりとした三つ編みが揺れるのを見送る。
■生ヶ易案子 > 「もうこういう季節だなあ……」
初夏の風物詩だー、なんて言いながら、もうしばらくファミレスでほっこりしていよう。
■生ヶ易案子 > 「んーむ」
さすがに腹もたぷたぷになってきて、無限なんとかラテはいったん休憩。
伝票……を手に取ろうとして、ふと、伝票の横のアンケート用紙に目を留める。
周囲をちょっと見まわし、知り合いの気配がないのを確認して、
「……よし」
備え付けのボールペンのキャップを外す。
久しぶりの動作だ。
■生ヶ易案子 > 数段階になっている店の各種サービスの評価に、わりと高評価な感じで丸をつけていく。
人差し指がまわる。
親指が無駄に跳ねたりしない。
右手はまだ、「ふつうにペンで線を引くとき」の動作をおぼえている。まだ大丈夫。
■生ヶ易案子 > 最後の自由欄に、ちょっと考えて文章を書く。
『ところで、この島にファミリーってどのくらいいるんですか?』
ファミリーレストラン、目下、最大の謎である。
■生ヶ易案子 > 「よし、オーライオーライだ」
ぐりっと手首を一回回して、伝票を手に取り、レジのほうへ――。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から生ヶ易案子さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > 「う、ぅぅ……」
テーブル席を一人で独占しながらメニューを見て唸る一人の少年。
机の上には、白いコーヒーカップ。
■渡辺慧 > 「オム……オム…………」
「うー、ん…………ン」
いつものようにフードを頭からすっぽりと被り、果たして彼が何をしているかというと。
視線の先には、メニューに載る、オムライスと、オムカレー。
……まぁ。どちらがいいか、悩んでいるわけだ。
■渡辺慧 > ちなみにかれこれこの状態で30分ぐらい経過している。
机の上のコーヒーカップは、先程見かねた店員が訪れメニューを聞きに来た際に慌ててドリンクバーを注文した際の物だ。
その時に店員に言った台詞は。
『あの、これどっちの方がオムっぽいですか。……あ、なんでもないです、ドリンクバーおねがいします。はい』
店員は地味に半ギレ気味だった。
■渡辺慧 > 「う゛……う゛…………」
頭を抱えだした。
「オ、オム…………オムゥ……」
果たして、今の気分的にどちらか。非常に甲乙つけがたい。
どっちの方がオムっぽいのか。
誰かに教えてほしい。
どっちだ……どっちのほうがオムっぽい…………。
■渡辺慧 > そもそも、オムっぽいとは何だ。
そんなん知るか。
オムっぽい方がオムっぽいのだ。
いやその前にオムってなんだ。
オムオムと言いながらメニューを見て唸り声を上げている姿は物凄く怪しかった。あと邪魔。
■渡辺慧 > …………とりあえず。
コーヒーを飲もう。
席を立ち、おかわりのようにブレンドを注いでくる。
好みで言えば当然のごとく、いつも利用するカフェテラスのコーヒーだが……まぁ。たまにはこういうのもいい。
そもそも缶コーヒーも好んで飲む自分には、そう言った味の違いの細かさを言及する権利もないのかもしれないが。
席に着き、再びメニューを眺め出す。
■渡辺慧 > 仮に、このメニューに載っているオムライスにかかっているソースがケチャップなら迷わずオムカレーを選択していただろう。
だが残念ながら現実は非常だ。
デミグラスソースがかかっている。
普段、あまりファミレスに寄らないため、このような事になるとは思ってもいなかった。
――俺に、俺に選択しろと言うのか……。
自信を速いと自称する少年はメニューを選択するのは非常に遅かったという話。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に三千歳 泪さんが現れました。
■三千歳 泪 > 「アルタイル!! 今日はいちだんとヘンな鳴き声だねー。大丈夫? 具合でも悪いの?」
壁のようにテーブルに突き立っているメニューを引き倒して向かいに座る。ウェイトレスさんがお水を持ってきてくれた。
■渡辺慧 > 抱えていた頭を、その声に反応するように頭を上げる。
……その、名前で俺を呼ぶのは。
「……あー。……あー」
名前が出てこない。
「あー、あれだ。モンキーレンチ少女」
適当すぎる呼び方だった。
丁度いいや。
ご丁寧にもう一つのメニューを取り出しながらオムライスのページを開き聞いた。
「なぁなぁ、これどっちの方がオムっぽいと思う?」
■三千歳 泪 > 「略してモンちゃんだね!!」
「どっちがいいか決めらんないんだ? 私にいい考えがある! そういう時は両方たのもう」
「私が半分ずつ手伝ってあげれば、君は両方楽しめる。それがたったひとつの冴えたやりかた! こういう時はよくばらなくちゃ」
「あっちもいい。こっちもいい。でもどっちかを捨てないといけない。ゲームはゼロサム? 違うよね。ルールは自分で作るのさっ」
「迷ってる暇はないよ! 君はもうすぐ生まれ変わるんだから」
エンドレスなループに突入しそうな気配を感じる。ウェイトレスさんを呼んでふたつともオーダーした。
■渡辺慧 > 「うん」
「……うん?」
まて。
「どういうこと?」
「待ってモンちゃん。色々ツッコみたいところはないわけじゃないけどさ。生まれ変わる辺りに特に重点的にツッコミを入れていきたいわけだけどさ。そういえばなんでいんの? オムライスとオムカレーの押し売り業者始めたの?」
まくしたてる様になんかいろいろ事態が進んでいたのでこちらもまくしたてる様にツッコミを入れてみた。
後オムっぽいに応えてもらってない。俺の疑問が解消される間もなく問題が解決しそうだ。
「……よくわからないけどルールは守った方がいいと思うよ、うん」
どの口が言うんだ。
■三千歳 泪 > 「そういう君はどうしてここにいるの? 決まってるよね。ごはん食べにきたんだよ!」
「君に会えたのはただの偶然。時計塔さがしてもぜんぜんいなくってさー」
「そしたら君がこんなとこでオムオム言ってたわけだよ。これはもう運命感じちゃうよねー」
「ふっふっふ、ねこ魔術だよ! 忘れたフリとかしちゃってさー! 探すのほんっっっっとーーー!!に大変だったんだよ」
「でも平気、お礼はいいから。君に会えたからどんな苦労も報われる。つまりね、この人に頼めばいいんだって!!」
鞄から黒ずんだ仔牛の革の装丁本を引っぱりだしてテーブルに広げる。ヒョウの頭のヒョウ人間の挿絵がのったページを開いた。
燃え落ちた世界から発掘されたグリモワール。城よりこぼれた欠片のひとつ。『ミュンヘン降霊術手引書』。全文ラテン語でお送りしてます。
■渡辺慧 > 「……マテマテマテマテ」
え、なに。この子、ガチで探してきやがった――!?
一応、ラテン語は。読めるようにはしてある。ぎこちないが。
そういう話じゃないけど!
「時計塔には昨日行きましたって、そういう話でもないし、えっと、オォン。……え、まじで?」
ミョンヘン降霊術手引書。いわゆる、ネクロマンサーズ・マニュアルだ。……あれ、これ写本とか?
胡乱げに、というより、恐る恐る眺める。
「……あれ、これ禁書とかじゃねーの?」
■三千歳 泪 > 「そうそう。騒乱の時代に灰になった書物のひとつ。これはオリジナルの手稿の写し。燃え残りをわざわざ集めてる奇特な人がいたんだよね!」
「これも私が直したんだよ。マニアの人たちの仕事を請けて請けて請けまくって! やっとここまでたどり着いた」
「アングラなオークションハウスに潜り込んだりとかさ。愛が重すぎるビブリオマニアとかブックハンターの子たちとやりあったりさ」
「笑いあり涙ありの大冒険があったりなんかして今に至るわけだよ。おかげでいろいろ詳しくなっちゃった」
「本が手に入ってからも大変だったよー。前にそっち系の先生のために働いたことがあったから、研究員さんたちに解読してもらったりしてさ」
「それもこれも、すべては君をねこにするため!」
オムオムが運ばれてきた。どっちもおいしそうじゃんさー!
「お先にどうぞ。ねこはオムオム食べれるかどうかわからないし。最後の晩餐だね!!」
■渡辺慧 > 「待てよゴラァ!」
最後の晩餐ってなんじゃこらァ!
「その涙と笑いが詰まってそうな冒険譚には非常に興味がないわけではないが最後の晩餐ってなんじゃゴラァ!」
机をバンバンと叩く。
オムライスとオムカレーは邪魔にならないようにとりあえず置いとく。
「いや! イヤイヤイヤイヤイヤイヤ! 待て! ウェイト! プリーズ! 俺は確かに猫に憧れてるとは言ったけど今後の人生をすべて猫生に変える覚悟があるとは言ってねーぞオラ! 一時的! 刹那的! ワンモアプリーズ、あ、これは違う! いやそうじゃなくてだなぁ! 頂きます」
オムライスを口に入れる。
おいしい。
すっごいオムっぽい。
「…………いやそうでもなくてだなぁ!」
■三千歳 泪 > 「つまり早くしてってこと? ねこ語で言ってくれないとわかんないよ」
まずは落ち着こう。お水のんで。ね。グリモワールは逃げないからさ。
オムライスを自分のお皿に取り分けてドミグラスソースもいただく。うむ。ファミレスの味だね!
「――ちょっと真剣に聞いてくれるかな。ねこにかける君の気持ちはそんなものだったの?」
「憧れってさ、きっと人間がもてる感情の中でも一番きれいなものなんだよ。君はそれをねこに捧げてた」
「私ね、いいなって思ったんだ。胸に手をあてて聞いてみて。君が抱いた憧れは今もそこにいきているはず」
「これが最初で最後のチャンスかもしれない。君の願いをかなえるために、私は約束を果たしたよ。アルタイル。君はどうするの?」
■渡辺慧 > 差し出されるままに水を飲む。ゴクゴク。
ケプ。
「いや今会話してるよね? いや、そうじゃなくて」
急に真剣になった顔に戸惑う。俺の……猫にかける気持ち……?
胸に手を当てて考える。
猫…………確かに自分は、あの自由な姿にひどく。憧憬にも似た、いや、憧憬だろう。まさに、その通り。憧れだ。
そうだ、これが、最後のチャンスかもしれない。これ以降、俺は猫になるチャンスはやってこないかもしれない。
そうだ、そうなんだ、だったら、俺は……。
「まじで勘弁してください」
割と軽い気持ちでした、と犯罪を告白するように。
まじで勘弁してくださいという顔で頭を下げた。
「せめて、せめてこう、たまになる感じで……たまに、たまに猫になる感じがいいんですぅ…………タマだけに」
アルタイルだった。
■三千歳 泪 > 「たまにならいい。時々はヒューマンに戻りたいんだ。そのへんはこの猫科おじさんにお願いしてみたら?」
王冠をかぶってマントをまとったヒョウ頭のおじさんが灰皿に腰掛けてにゃーにゃー言ってる。身長10cmくらいかな。
「なんか小さくない? 出力不足かなーこれは…でもかわいいからよし。私はいいと思うよ!!」
「やっぱり捧げものとかいるよねえ。焼き魚定食でいいかな? 本人に決めてもらおっか」
ミニマム猫科おじさんの前にメニューをひらく。視線をたどっていったその先には産地直送シマアジの姿が!
「おっけー。旬のお魚を選ぶとはさっすがお目が高い! 大根おろしはとってもらった方がいいよね? まかしといて!!」
ウェイトレスさんにさっそくオーダーを通すとおじさんは腕を組んでこくこくうなずいていた。ちょっと嬉しそうだ。
■渡辺慧 > 「比率が逆なのだが!?」
そう、そうじゃない! とバンバンと机を叩こうとして、机の上のおじさんに気を使ってやめた。
「……あの、えっと…………可愛いなこのおじさん!」
注文してる間に、モンちゃんに聞こえないように小声で猫おじさんの耳元でこそこそと。
「あの……たまに、猫になる方向でお願いできます……? たまに猫になる方向がいいんです、あの、ごめんなさいね、ご迷惑かけて。うん……」
ダラダラと冷や汗。
「……おむらいすおいしい」
■三千歳 泪 > アルタイルがなにかささやいてる。ヒョウの喜怒哀楽とかわかんないから猫科おじさんの反応がうかがいしれない。
そうこうしてる内にまるまると身がついて脂の乗ったシマアジが運ばれてきた。チラチラ見てる。見てるよ!! かわいいなー。
「オムカレー冷めちゃうから先に食べるね?」
絶妙な火のとおり加減。半生で残ったわずかな層がカレーのルーとよく馴染む。こっちの方が当たりじゃないかな!
おいしい、と言いかけていきなり目がくらんだ。猫科おじさんの目が強烈な光を放つ。
とっさに手をかざしたけど何も見えない。世界は白く染まったまま、少しずつ輪郭をとりもどしていく。うまくいったかなー。
「アルタイル…? どこどこ?? 生きてる? 平気? 聞いているのかねアルデバランくん!!」
■渡辺慧 > まぶし。
咄嗟に目を閉じる。
え、なになに。これまじでやってんの? まじでなるの?
え、いや、冗談だよね、世紀のマジックショー的な。俺が被験体的な……被験体っていっちゃった!
聞こえるモンちゃんの声。誰だよそれ。
だからツッコミを入れた。
「にゃふご」
(アルデバランって誰だよ)
突っ込んだ自分の声が猫だった。
「ぷげ」
(なんでやねん)
まじかよ。
――そこには配色が白多めの三毛猫がいた。
■渡辺慧 > せめてオムカレー食べさせてくれないかな。
■渡辺慧 > 後ここペット大丈夫かな。
完全に現実逃避している。
■三千歳 泪 > 「あっ」
「――かわいい」
「なってるなってる!! ねこだよアルタイル! しかもオスの三毛って超レアなんだよ!!」
いい仕事しちまったぜみたいな顔してサムズアップする猫科おじさん。地獄の大総裁は伊達じゃないよね。
シマアジのお皿によじ登ってしっぽのあたりをヨイショとかつぐ。テイクアウトする気だこの人!!
「きみは三万匹に一匹のレアキャットになったのだ! 末端価格で数千万は下らないって噂。すごいぞアルタイル。ありがとう猫科おじさん」
「ふむ。なになに? これしきの魚ではせいぜい三日足らずだ。終生ねこで過ごしたければクジラでもささげるのだニャー?」
「だってさアルタイル。また魚をささげればいつでもなれるってことじゃん!! あ、消えちゃった。いぶし銀だなー」
タブレットを出してここぞとばかりに撮る。撮ろう。撮らねば。アルタイルの愛くるしい姿がガンガンたまっていく。
オムカレーおいしいです。
■渡辺慧 > めちゃくちゃ目つき悪そうに、物凄くどうしようもないやるせない顔をしている。
俺何やってんだろうって顔してる。
「にゃ……にゃ゛………」
(オムカレー…………たべたい……)
………え、三日? 三日って言った?
「にゃふんが!?」
(三日もこれなの!?)
君これでも一応俺学生なんだけど!?
3日でないとか、あ、ちょっと。
ちょっと、猫おじさん、まって! まって、消えないで、負けないでもう少し! さいごまではしりぬ……違う!
「にゃ゛あ゛あ゛!」
(オ゛ム゛カ゛レ゛ー゛!)
■三千歳 泪 > ふてくされた顔もクールでかわいい。今のでちょうど200枚目。ねこ画像が一気に増えていく。
アルタイルくんてばなかなかイケねこじゃないですか。
「けっこう長いよね。次からはにぼしを持ち歩くといいよ。めざしの干物一匹でちょうど一日くらいじゃない?」
「おやおや。これが気になるのかい? おいしいよオムカレー! 次からはこっちがおすすめ。きっと君も気に入るはず」
「でもねこってたまご大丈夫だっけ。…まーいっか、どうぞだよ! よごれちゃったら拭いてあげよう」
平らなお皿にとりわけてアルタイルの前へ。カレーのスパイスがむしろデンジャー?
でも食いしん坊には関係ない。食べたいものがそこにあるから。それ以外の理由はいらない。気持ちは痛いほどよくわかる。
■渡辺慧 > 恨めし気にモンちゃんを睨む。
ファミレスにオムライスかオムカレーを食べに来たら猫になるってとんだ仰天人生だ。テレビクルーだって置いとかないよ。
うわぁぁ……どうしよ…………あー……。
後写真やめなさい。
頭を抱えて悲観を表そうとするが、毛づくろいしてる様にしか見えない。
「ふげ」
(そうする)
にぼしかー。なんだかそれ、にぼし好きなひとみたいだな……。
あれま。くれるのかい。じゃあ、ちょいと……くいづれえ。
顔を前に伸ばして、舐めるように、そのオムカレーに食いつく。
割と冷えてきているはずのそれなのに、舌がビリビリ。猫舌という言葉をここまで体感することになろうとは。……どっちかっていうとスパイスの効果かな?
あ、でも。
「ふぅぐぅ……」
(うめー……)
■三千歳 泪 > 「ねこがオムカレー食べてる!!」
「ちょっとした衝撃映像だよこれは。シャッターチャンス! いいよいいよーこっち向いて!!」
「その状態じゃお水も飲めないよね。ねこも大変そうだねーアルタイル。人間さんの世界じゃけっこう生きづらいのかも?」
きれいなお皿にコップの中身をあけて、頬杖をついてじっと眺める。あ、ウェイトレスさんがこっち見てる。
内緒にして、と唇に人差し指をあてると目をそらして行ってしまった。大丈夫かな。出入り禁止になったりしない?
「君はどっちがよかった? ねこの舌じゃわかんないかな。わたしはオムカレー派だよ!!」
■渡辺慧 > ちくしょうまじで誰のせいだと。
だけれどこの姿じゃ、気のせいか睨みもまるで怖くないだろう。
それでも負けずにぎぎぎ、と睨む。
くっそー。ほんとどうすんだよー……。……3日間……。
水をなめる。ううう、ほんとやりづらいなー。慣れるといいけど……いや、慣れちゃダメだろこれ。
ビリビリしたのが薄れる。
ムムムー……味覚もちょっと変わって……まぁ、そりゃそうか。
まぁ、でも。
「にゃにゃん」
(オムカレー)
多分ね。
■三千歳 泪 > 「意見の一致をみたね!! これで次からは迷わずにすむわけさ!」
「おいでアルタイル。顔がべとべとだよ」
こっちにきたまえと手招きして両手を広げる。ハンドタオルを水で塗らして準備はばっちりです。
「ところでさ、けっこう見られてるよアルタイル。これは追い出される前に出た方がいいかもしれない」
「今日はごちそうしてあげよう! いいのいいの。君にとっては大事な記念日なんだし」
「それに、今はお金もってなさそうだし。服とかどこに消えちゃったんだろうね?」
あれ。じゃあ今全裸ってこと? うん。ううん。考えないようにしよう。さすがにちょっと気の毒だから。
ウェイトレスさんを呼んで席で支払いを済ませる。見てる見てる! アルタイルに目が釘づけになってたよ。
■渡辺慧 > 「ふぐん、にゃーん」
(どうかな。オムライスの気分ってときもあるさ)
それこそ、俺の気分さ。……いつものように笑えない。まぁ、猫だからか。笑ってるッぽくなってるかな?
呼ばれるままに近づいて。
「…………にゃー。ふにゃ。にゃふ……」
(……まー、そりゃ、そうでしょ。……ごちそうさまです)
「………………にゃん」
(戻れば、きっと、元に、戻る。はず)
多分。あんまり考えないようにしよう。
ま、なんにせよ、そろそろでよーな。
■三千歳 泪 > 胸の下に抱いてカレーのよごれを遠慮なくふき取る。ちょっと強くしても平気だよね。男の子だし。
「私はそろそろ行っちゃうけど、どこか行くとこある?」
「野良猫くんは風紀に捕まったらデッドエンド。マッドな科学者に捕まってもデッドエンド」
「あと路地裏のモヒカンにつかまってもやっぱりデッドエンドなハードモードだ!」
「時計塔に隠れていれば大丈夫。あそこは人がこないから。三日くらいなら何も食べなくたって死なないはず」
「あとでお水とねこ缶もってってあげてもいいよ! 貴重な舶来品のモンプチとかさ!!」
「それと、君にはもうひとつの選択肢がある」
アルタイルをかかえてお店の外へ。君は晴れて自由の身だ! 足元にそっと降ろして問いかけた。
「ウチくる?」
午後の仕事が終わるまで一緒にいてもらうことになるけど、ねこくんが一匹増えても大丈夫。ぜんぜん平気。
せっかくの自由。持て余しちゃいそうなら私が面倒をみてあげよう。決めるのは彼。そのまま歩きだしていく。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から三千歳 泪さんが去りました。
■渡辺慧 > 拭き取られ。少し痛そうにしながら、大人しくする。
「……………」
その言葉に、悩む。
あぁ、そうだな。
もしかしたら、それもいいのかもしれない。
抱かれて。降ろされて。ふっと頭を垂れて。
考えた。
ある意味迷惑料だ。それも、そうだ。
……あぁ。そうだな。
ふい。
踵を返して、反対側。――時計塔のある方向へ歩く。――
「にゃん」
(大丈夫。俺は、猫なのさ)
今度は、上手く笑えてたと思う。
……あ。
「に」
(やばかったら行く)
かっこ付かなかった。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から渡辺慧さんが去りました。