2016/08/16 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > ファミレス、『ニルヤカナヤ』

多くの島内生徒で今日も賑わうこの店に、余り姿を見せない顔がやってきていた。


「……まさか、追い出されるとは。」

今日も普段通りに図書館に向かっていたのだが―――
『ずーーーっと貴女図書館居るじゃない!今日はどっかで羽根を伸ばしてきなさい!』

と、まぁ。
知人に背を押されて叩きだされることに相成った。

本人としては大きなお世話、ではあるのだが善意で言われた事もあってそれを了承し、外をウィンドウショッピングがてらフラフラと歩き回っていたのだが、やがて暑さに耐え切れず……。


ぼんやりと、ゴウゴウと音を立てる頭上の空調機に視線を向けた。
最初は良かったものの、羽織るものもないこの格好にはだんだん寒く感じるがそれはソレ。自業自得というもの。

隅の隅、二人用の席を貰って縮こまるようにしてストローからジュースを吸い上げる。

(……ココアでも貰おうかな。)

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に比良坂 冥さんが現れました。
比良坂 冥 > 見つけたのは、お店の外から

数分も立たないうちに、それは店の中へと侵入

『こちらです、ご注文は後ほど───』

店員が恭しく客を檻葉の席へと案内してきた

相席?
いいえ、席はまばら
あちこちのテーブルが空いています

「……こんにちわ」

それは、身体を傾けて顔を覗き込むようにして挨拶を投げてきた

谷蜂 檻葉 > 目を閉じ、寒さに身体を抱き込むように擦り薄っすらとまぶたを閉じて冷房に耐え忍ぶ中、

『こちらです、ご注文は後ほど───』

店員の声が、すぐ近くで聞こえてくる。

丁度いい。
注文をしようと目を開けて――――

『こ ん に ち わ』

テーブルの上の生首……ではなく、覗き込まれ、絡む視線に心臓が跳ねる。
直ぐ様視線を外して周囲に向けるが、明らかに彼女は『此処を狙ってきた』。

「ぁ、え……あはは……こ、こんにちは。冥ちゃん……。」

実害はない。
実害はない。

今のところは。

心の中で、何度も自分に言い聞かせながら僅かに引きつった笑顔で挨拶を返した。
嗚呼、やっぱり、このタイプは苦手だ。

比良坂 冥 > 「……ふふ」

引きつったその笑みを、まるで可愛らしい何かを見るような表情で受け止めて
対面の席へとゆっくりと腰を降ろした

「……こんなところで遭うなんて、奇遇、ね」

以前よりもどこか砕けたような、にっこりとした笑みを向ける
…漂う不気味さというか、重苦しさは変わらないのだけど

「……お昼ごはん?何を食べるの?檻葉は、何が好きなの?」

谷蜂 檻葉 > 僅かに、深く息をする。

「そう、ね。 冥ちゃんはその、どうして此処に?」

視線を落とし、意識的に目を見ないようにして口を開く。

「ここ冷房が強くって……私そろそろ移動しようかなって思っててさ。」

ヘラっとした笑みを浮かべて僅かに腰を浮かす。

「いえ、ちょっとだけ涼みに来ただけよ。
 とはいえ、思ったより涼みすぎて寒くなっちゃったけどね。」

移動を考えたのは別の理由ではあるが、たしかに嘘ではなく僅かに檻葉の唇は色を失っている。
風が直で当たるわけではないのだが、すぐ傍に空調機があるせいでこの辺りは他と比べて確かに寒い。

比良坂 冥 > 「……私?檻葉を見つけたから」

にっこりと笑ってそう答える
何の物怖じもなく堂々と
……視線を外されても、じぃぃ…っとその顔を舐めるように見る目線はそのまま

「……ああ、そうなんだ。外は、暑いものね…。
 じゃあ……席を変えてもらおう…?」

間が良いのか悪いのか
丁度店員が冥の分のお冷を持ってきたところだった

「……此処、寒いらしいので、席変えても良いですか」

言いながら、くるりと振り返って、再び笑顔

先に立ち上がって向った席は、店の壁を背にする…ソファのあるテーブル席
先に座って、と手で促す

谷蜂 檻葉 > 「……そう。」

ちょっとは解っていたのにわざわざ言質を与えるなんて私のバカ…!
先程から寒いばかりに流れているはずの空気の濁りを感じて自らを詰る。

そうして、一瞬ばかり意識を他から完全に手放している間に

『席変えても良いですか』

「え、あ―――」

やられた。
ああ、もう。言わなければ自分から動けたのに……!
自然と舌打ちが出そうになるのを堪えて、「ありがとう」と冥に返す。

(……凄い自然に退路を塞がれてる……)

立ち位置が常に通路の『入り口』を堰き止めるように動線を封じられ、スムーズに更に奥の席。
……の中でも、椅子を手で封じられてソファー席。

「…………。」

机と壁に挟まれた、袋小路に座った。

比良坂 冥 > 奥まった位置
言い換えれば、店員もそうそう目が届かない位置である
ましてや壁を背にしたソファ…
テーブルに隠れて見えない死角も多い

そして、檻葉がソファに座るのを確認して、自分も腰を降ろす
対面の椅子ではなく、ソファの隣へ

店員が前の席から檻葉のジュースを移動させてきたところで、冥もアイスコーヒーを注文

ほどなくしてそれもやってきて…‥

「……昨日、蝶々を見つけたんだ。
 捕まえたんだけど、やっぱりすぐに逃げようとするんだよね…。
 私はその子のことが凄くすごく好きなのにどうして逃げるんだろうね。
 好意ってなかなか伝わらないものなのかな」

どう思う?と、首がぐるりと動いて檻葉の表情を覗き込む

谷蜂 檻葉 > せめて通路側は。
そう思って座ってもすぐ真後ろに冥が続き、どんどんと奥へ奥へと追いやられ―――

(……最悪……。)

前を机、右手と背を壁、冥によって左手側を抑えこまれ肩幅分の広さしかない牢獄に閉じ込められる。
視線で店員に助けを求めようとも、何か生暖かい視線で返された。

―――なにせ、この島では『どんな事でも起こりうる』

やめろ。そういう目で見るな、違う。

「それは、蝶々が……リス……
 危け…… 無償の愛って信用ならないってことなんじゃないかしらね。

 何かをしたから、何かを貰えるって思うから。
 『何かを貰ったら、何かを取られる』って。

 ……そう、思ったんじゃないかしらね。」

つい癖で僅かに冥の方を向けばろくろ首の如くグルリと覗きこまれ、また視線が合う。視線を外す。

比良坂 冥 > 「……そっかぁ…」

そっか、そっか、と
檻葉の答えを聞けば何故かそれを噛みしめるように、
マドラーでぐるぐるとアイスコーヒーをかきまぜる

「……檻葉も同じ?
 無償の愛なんていうのは…信用できない?
 信用出来ないから…受け取れない……?」

視線を外す檻葉
それを追うことはせずに、そのまま声を投げかけ続ける

谷蜂 檻葉 > 「――――?」

今までとは違う、食いついてくるような反応ではないことに僅かに疑問を浮かべるが、
それも短い間隔の事で、やはり繋がれた話題に頭を回す。

「まぁ、そうね。」

左から、ぐるっと上を通して右側―――冥と反対方向に視線を飛ばす。

「いきなり、何も無しに『愛してます!』とか言われても受け取れないわ。
 ……何を考えてるかも、どういう人となりをしてるのかも解らないんですもの。

 直ぐにコロッと手のひらを返すんじゃないかー、とか。
 自分のほうが耐え切れない何かがあるんじゃないかー……とか。

 だからほら、『まずはお友達から』 ってフレーズがあるんじゃないかしら。」

うんうん、と。
やはり視線を反対に向けながら自分の言葉に納得したように反芻する。

比良坂 冥 > 「……それって体よくお断りするフレーズな気がする」

ぼそ、と呟いてから

「……檻葉は、満たされてるんだね」

と、続けた

「何もなしに愛してます…って言われても…。
 裏があったとしても、騙されてるとしても、重い言葉だったとしても…。
 嘘でも、もらえないよりは良いかな、って思っちゃうな……」

ぽつりぽつりと言葉を零す

「喉が乾いて乾いて死にそうな人って、自分の血でもいいから飲みたくなるの。
 ……そういう人は、裏があろうとなかろうと…汚れていてもいいから水を求めるの」

そっとその手を、檻葉の手へと重ねようとする───

「だからそう考える檻葉は、潤ってる………わけてほしいくらい」

谷蜂 檻葉 > 「ま、まぁそういう側面もあるけど……。」

ある意味、当然といえば当然の反応に困ったような表情で考えこむように口元に手を当てる。

「それは、その。

 ……いや、それは、いいの?
 言ってみれば『良いものだよ』って借金手形を貰うような……そういうこと、なんじゃないの?」

不可解な、というよりは『螺曲がった』言葉に視線が向く。
視線が絡んでも、伝える。

「―――それは、『間違ってる』わ。

 ええ、きっと求めてしまうのでしょうけれど。
 本当に文字通り ”何でも良いから”なんて、思ってしまうのでしょうけれど。

 本当に、何でも良いなんて事は無いはずよ。本当に欲しい物が、『正しく欲しい物』があるはず。」


手が、重なった。


「……『分けられるのであれば、分けてあげたいぐらい』だけれど。」

比良坂 冥 > 「……そう、そう…ふふ、そう。
 正しく欲しいもの、そんなもの求めたって手に入らないから妥協するの。
 だって、手が届かない、誰にももらえないものを求めたって滑稽でしょ…?」

するすると、檻葉の手を撫でるようにその手が動く
絡みつく蛇を連想させるような、動きで

「……じゃあ…檻葉は私のことを潤してくれるんだね」

子犬が甘えるように、その上半身を寄せて…檻葉へとしなだれかかる

「でも…大丈夫かなぁ…こんなに細い身体で……私が啜ったら…何か、残るかなあ……」

ぼそりぼそりとつぶやきを零す冥の瞳はどこか虚空を眺めて、ただただ濁っていた

谷蜂 檻葉 > 冷えた身体に、人肌の熱が灯される。

「―――、そ、れは……」

覆いかぶさるように、二人の体が一つに重なる。
掛けられた体重のまま、壁に押し付けられて。周囲からの影になって二人が消える。

「……っ!」

一瞬。
ほんの一瞬、体を押さえつけられる前に見えたその瞳に今迄で最も強烈な「危険」を覚える。

グッと更に体重が乗った瞬間、冥の脇から持ち上げるようにして引き離そうとする。

「何を、するつもり…っ!」

比良坂 冥 > 「……あ」

引き離そうとすれば、それは想像しているよりもとても簡単に
ただ、身体を引き離されたその表情は

「…………分けてあげたい、って言ったのに。
 体のいい言葉を並べて…やっぱり、全部嘘。
 私のことを受け入れるつもりもないくせに、私を拒否しない素振りを見せて…」

見開いた瞳が、深い水底のように濁ってゆく

「そっか、檻葉、そうなんだ…檻葉、檻葉、そうなんだ…そうなんだ」

谷蜂 檻葉 > (不味った…!?)

檻葉の腕力ですら意外なほどに軽く突き放すことの出来たその体躯。
が、その『表情』から自らが沼の奥へ脚を突き込んだことを悟る。

(面倒、だけど…!)

「貴女の、貴女がどう理解したのかはわからないけど。……貴女の事を否定するつもりは無いわ。」

心臓が早鐘を打つ。
凌ぐべきは鎌首を擡げた毒蛇が、次に牙を穿つまで。

「でも、確かに貴女の言う愛を……無償の愛を、全て受け入れるつもりも、無い。」

一つ一つ、確かめるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
それはきっと、『今噛みつかれるか』『後で噛みつかれるか』の違いだろうが―――

「約束する。
 貴女の事を理解して、受け入れるように努力はする。

 ―――でも、『まずは友達から』始めましょう? ……これが私の『好意』よ。 信じられない、かしら?」

上辺と内情の、境界線。
嘘でもなく、その全てが真実でもない。

契約として成立しているが、穴は多数ある。

けれど、谷蜂 檻葉は比良坂 冥に約束を掲げた。

比良坂 冥 > 「───クス」

返答は、嘲笑

「まだわからないんだ…私が欲しいのは白か黒だけなのに…。
 ふふ、でも良いよ。私に好意を向けてくれるなんて、それだけでも嬉しいもの。
 でも……」

ずい、と自身の顔を、互い鼻がすれ合うほどに付き出して

「……私以外にそれが向けられてるのを見たら…どうしようかな……。
 どうすればそれが私だけに向いてくれるか、考えないといけないよね…?
 あはは、難しいなあー………それと…」

言葉を一旦、区切って

「こうしてくれたら、信じようかな…?」

言いながら、啄むようにその唇に口付けを落とす

谷蜂 檻葉 > 「解らないわよ。
 ……言ったでしょ。 貴女の人となりも、どうしても我慢できない事があるかも知らないんだから。」

依然として、危険が去った雰囲気ではないが、
確かに彼女の持つ狂気が薄れるのを見て、小さく息をついた。

「……っ。それ、は」

彼女以外への好意、なんて。
何よりルームシェアをする友人がいるというのに好意の束縛というのは無理難題というか。

―――冥は、『どれだけの危害を撒き散らすつもり』なの……!?

しかし、否定はダメだ。
逆戻りになるのは目に見えている。 そうなると彼女を説得して――――


「――――――。 ん、む。」

至近の距離から動かされた唇が、静かに重なりあう。




檻葉の、ファーストキス達成の瞬間でもあった。

比良坂 冥 > 「───♪」

檻葉が逃げなかったことに悦を覚えたのか、その行為はほんのすこしの間続き…

最後にぺろりとその唇を舐って、顔を離すと……

赤い顔をした店員が慌てて反対側の仕事へ戻る様子が見えた

「……ふふ、見られちゃった」

すとん、とソファに座り直して、氷も溶け終わりそうなアイスコーヒーのストローを咥える

「……檻葉って女子寮の○○号室だよね…今度、遊びにいってもいいかなあ…?」

先ほどまでとはうってかわった、生気のある微笑みを向けてくる
……たった一度の接触で、文字通り見違えたようだった

谷蜂 檻葉 > 思考の停止。
キンと金属音のような物が脳裏に一筋だけ鳴り響く無音。

「―――はっ!? え、うぁ…!?」

ボンッ、と音がしそうなほどに頭に血が上る。顔が、耳が真っ赤に染まる。
慌てて唇を触れば、不自然なほどに湿って、違う味の唾液が舌を撫でる。

「見ら……!?え……今、何!?わた、ちょっと、今キス…?!?」

酔ったように呂律が回らない。
受けた現実に脳みそが追いついていない。

つい先程まで寒いほどだった空調が足りない程に心地良い。

放心状態で、冥の言葉が耳を素通りしていく。
反射のように、言葉を紡ぐ。

「……ルームメイトが居るわよ。だから、その、何時でも良い訳じゃないわ。
 静歌なら良いって言うと思うけど、良い時は、言うから。


 ……ねぇ今、冥ちゃんキス、した?」

比良坂 冥 > アイスコーヒーを飲み終えて、席を立つ

振りかかる質問にはにっこりと振り返って……

「檻葉の『好意』、ちゃんと信じることができたよ。
 ……ふふ、はじめてだったのかな…キス…。やった。いいものもらっちゃった…」

そう言って、濡れた唇を指で撫でてみせて

「それじゃあ……連絡するね」

どこか陰のとれたような
少しだけ明るい印象を檻葉から吸い取ったような
そんなイメージを残して、アルビノの少女は小さく手を振って店を出ていった

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から比良坂 冥さんが去りました。
谷蜂 檻葉 > 「……ファースト、キス……」

それは、別に特別なものではないのだけれど。
そう、思っていたのだけれど。

「嘘だぁ……。」


―――冥に、陽の気を吸い取られたように陰鬱とした表情で机の上に突っ伏した。


彼女に連絡先を教えても居ないのに知られていることに気づくまで、あと少し。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から谷蜂 檻葉さんが去りました。