2016/08/25 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に癒斗さんが現れました。
癒斗 > 外はまだ、暑さをじっとりと感じる時間帯だ。
たまには外で何か食べようかなと考えた癒斗だが、特に何か浮かぶわけでもなく。
ファミリーレストランに頼ってしまいましょう、というわけでここにやってきたのであった。

外に置いてある期間限定メニューの一礼をしばし眺めて、さて、いい加減入ろうか。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に加賀智 成臣さんが現れました。
加賀智 成臣 > 「…………あ。」

ばったり。じっとりと貼りつくような暑さに襲われる午後、久々に気分転換にコーヒーでも飲もう、と立ち寄った。
そこで出会ったのは、顔見知りの人物。

「……どうも、癒斗……あ、いや、夜久原さん。」

今更、急に下の名前で呼ぶのはどうかと感じた。

癒斗 > 「加賀智さん」

ドアに手をかけたまま、暑いですねーと小さく手を振る。

「下の名前でも問題無いですよ。
 夜久原って呼ぶよりは、癒斗の方が短くて楽じゃないですか」

そう笑いながら、一緒に入っちゃいましょうとドアを開く。
冷房利いた風がふわっと出迎えてくれるのは、非常に嬉しいところ。

加賀智 成臣 > 「………そうです、ね。暑いです……」

気の利いた返しも思い付かず、言われたことをオウム返しに言い返す。

「……あ、はい。じゃあ、癒斗…さん。
 あ、そう…ですね。それじゃ、失礼して……」

後ろに追従するように店へと入る。
冷たい風が肌を撫でれば、すっと汗が引いていくような感覚を覚える。
……気温差で腹を壊さないと良いのだが。

癒斗 > 「昔は名前で呼び捨てばかりだったので、それでもいいんですけどねー」

店員が何名ですかと聞いてくれば、2人ですと答えながら指を立てる。
煙草をあまり好まない癒斗としては、選ぶ席は禁煙であった。
ソファ席へ通されながら、ドリンクバーを横目に。
あ、紅茶パックに新しい味が増えてる。

「何食べようかなー」

メニューを片手に、まずは季節限定メニューの再確認をする。楽しそうだ。

加賀智 成臣 > 「そ、そうなん、ですか。……流石に、それは馴れ馴れしいので、はい。
 ……え、あ…2名……」

ちょっときょとんとして、発言の意図をワンテンポ遅れて飲み込む。
結果として、相席となった。癒斗の正面の席で、体を丸めるように座っている。

「………………。」

落ち着かなげにきょろきょろと周囲を見渡し、お冷を飲む。
何をそんなに落ち着かなそうにしているのかはわからない。

癒斗 > 単品でボリュームのあるものを頼むか、セットにするか悩んでいた。
せっかくなのでサラダもたっぷり食べたいし、お肉のメニューも良いけれどお魚も良い気がする。
パスタも捨てがたい。でもごはんをしっかり食べておきたいような。

…といったところで、加賀智の雰囲気に気づく。
メニューから顔をあげ、いつの間にか置かれていたお冷を片手に

「どうかしました?」

もっと奥の席のが落ちつきますか、くらいの顔である。

加賀智 成臣 > 「あ、ああ、その、いえ。
 ………癒斗さんと二人で食事なんかして、誰かに噂を立てられたらどうしようかと。
 僕なんかと食事してたって噂を流されたら不快でしょうし……」

そんなことを言って、やっぱりチラチラと辺りを見廻している。
食事に関して気にしているわけではないようだ。
……そもそも本当に、普段から物を食べているのだろうか。

癒斗 > 加賀智の言葉に、癒斗は水を吹き出しかける。
思わず周りを見渡してしまったが、こちらを見ている人などそういない。
改めてお水を飲み直す。うーん、おみずだ。

「し、心配しすぎですよ、加賀智さん…。
 同じ委員会に所属する同士なんですし、知ってる同士でごはん食べるだけじゃないですか」

そんな風に言われたらこっちも恥ずかしくなっちゃいます、と苦笑い。

「学校ならともかく、オフはあまり人とは食べないので、私。
 そんなこと気にしないで、一食付き合ってください」

加賀智 成臣 > 「そ、そうでしょうか……
 ……すいません。そうですよね、ご飯食べてるだけですよね……」

一旦落ち着く。流石に、これ以上ネガティブになったら食事云々どころではない気がする。
緊張で口の中がカサついてきたので、お水を飲む。うむ、水である。

「……そうなんですか。僕もあまり食べないので……1ヶ月に1度くらいしか……
 わかりました。えぇと…本日はよろしくお願いします。」

食事をするだけなのにやたらとかしこまっている。

癒斗 > 「そんなかしこま………1ヶ月に1度?!」

死ねない――不死ってそんなに低燃費なんだろうか。
単純にご飯を食べるのが面倒くさいだけだろうか。
加賀智を見ていると、どっちにも取れてしまう。

「……ごはん食べるの、苦手なんです?」

苦手という言い方もどうかと思うかもしれないが、
癒斗は少々心配そうにそう聞いた。

加賀智 成臣 > 「……そう、ですね。よく忘れます……
 気付いたら塩を舐めたり、水飲んだり程度で……料理とかも全然出来ませんし……」

少し申し訳無さそうに目を伏せる。めんどくさい。
ともかく、食事を食べなくても低燃費だから平気、というわけではなさそうだ。
単純に死なないから食べてない、ということであるらしい。

「それでも、たまに食べに来るんですけど……たまに……
 大抵は、コーヒーとか……」

癒斗 > そんな塩分摂取で良いのだろうかと、
癒斗はテーブルに設置されている塩の小瓶を見た。

「そっかー、加賀智さん料理できない人でしたか…。
 ………大鍋料理を作ると冷蔵庫がいっぱいになっちゃったりするんですけど、
 そういうときは、その、声かけましょうか?」

余計なおせっかいだったらアレですけど、と小首をかしげる。

「コーヒーはごはんじゃない気がしますね、とても。
 サラダくらいはどうですか、ほら」

夏野菜たっぷりサラダとかありますよと、メニューのページを見せた。

加賀智 成臣 > 塩の小瓶をちらっと横目で見る。
小さな小瓶は特に何も言わずにそこに佇んでいる。隣にはコショウがあった。

「……はい。あんまり、料理は。
 ………良いんですか?その、うちには冷蔵庫がなくて…
 もしかしたら、保存できなかったりするかもしれないんですけど……それでも良いなら。
 ありがとうございます、嬉しいです。」

普通に喜んでいるようだ。……冷蔵庫がない、という辺り予想以上にまずいことになっているようだ。

「ああ、サラダ……サラダか……
 ……じゃあ、サラダを1つ……。セットは要らないです……」

サラダ単品で注文、という非常に珍しい光景である。

癒斗 > そっかぁ、冷蔵庫も無いのかぁ。
癒斗は目の前にいるこの加賀智という人物の寮部屋には、
布団がぽつっとあるだけではなかろうかと想像してしまった。

それでも、自分が出来る小さなことで喜んでもらえるのは嬉しいもので。

「食べてくれる人が増えてくれるだけでも十分有難いので、問題無いです」

あんまり酷かったら、小さい冷蔵庫くらいは勧めた方が良いのかもしれない。
せめて環境を人並みに、というような気持ちだ。

「じゃあ、加賀智さんはこのサラダ単品ですね。
 …コーヒーは頼みますか?」

癒斗はメニューを決めたらしく、呼び鈴のボタンに指をかけている。

加賀智 成臣 > ふと、自分の部屋の情景を思い返す。
布団が部屋の中央に、窓の近くにカラーボックス。
カラーボックスには何も入っていない。買っただけである。
……流石に殺風景すぎるかな、とふと思ったのだった。

「そう言って頂けるとありがたいです。……買いに行く気が、あまり起きなくて。」

かりかりと頭を掻く。

「はい、それで……和風おろしドレッシングで。
 …そうですね、コーヒーも……」

なんだか胃に優しそうなラインナップだ。
しかしコーヒーというのは胃に優しいか微妙である。というか多分優しくない。

癒斗 > 流石の癒斗も、加賀智の部屋がトンデモ殺風景だとは想像できなかった。
予想の斜め上を行く殺風景っぷりだなんて、欠片も。

ファミレス独特の呼び出し音が響く。
そうしないで店員が来るだろう。ご注文は?と笑顔で聞いてくる。

「このサラダを単品で、和風おろしドレッシングでお願いします。
 それから夏野菜とチキンのパスタのセットを、アイスティーでー…
 
 加賀智さん、コーヒーは温かいのですか?冷たいのですか?」

どっちにします?と聞く。

加賀智 成臣 > 「あ、冷たいのでお願いします……
 ミルクとシュガーは要らないので、はい。よろしくお願いします…」

ファミレスの店員にも腰が低い。ペコペコと頭を下げつつ注文。
そして注文が終わると、ふぅ、と溜息をつく。

「……癒斗さん、飲み物は大丈夫ですか?
 ドリンクバーくらいなら奢りますけど……はい……」

ぼそぼそと言葉を吐き出す。

癒斗 > ここまで低姿勢…というよりも、態度が弱々しい人も珍しい。
癒斗は改めてそう感じながら、メニューを横のスタンドへ戻す。

「んぇ、ドリンクバーですか。………うーん」

少し悩んで、加賀智の方を向いて微笑みながら

「加賀智さんとのお喋りが長くなったら、奢ってもらいますね。
 口が渇けば飲み物が欲しいでしょうし、一人でドリンクバーを飲むのも味気ないので」

その時は一緒におねがいしましょーね、と。

加賀智 成臣 > 「あ……わ、分かりました。それじゃ、後で……」

微笑まれれば、体を軽く動かす。
萎縮したのか、それとも恥ずかしがっているのか、ひょろ長い体を丸めるように縮こまっている。

「……長くなるほど面白い話題も出せないですけどね……
 すみません、気が利かなくて……」

そう言って、しょんぼりと謝る。

「……そういえば、その……
 谷蜂さんが、禁書庫整理の時に倒れたんですけど……
 その後のこと、なにか聞いてたり、しますか?」

癒斗 > 「なんとなーくお喋りが続くって、そういうものですよ」

面白い事を探すのも結構大変ですと話をひとつくくり、
加賀智が谷蜂について聞いてくれば、僅かに唇を引き締めて

「当日の噂はよく耳にするんですけども、谷蜂さんのその後はあんまり…。
 症状が軽いとはいえ禁書絡みですから、検査は入るんじゃないかなーって、思うんですけども」

そこまで交遊のある人じゃないので、と残念そうに言う。
整理には直接かかわった身ではないが、知っている人に何かあれば気になる。
加賀智の表情を見ながら、少しだけ間を置いて

「一緒にいたとはいえ、あんまり自分を責めちゃダメですよ?」

加賀智 成臣 > 「……そんなもの、でしょうか。」

ふぅ、と小さくため息。
そのまま、続いた話には申し訳無さそうに眉根を顰める。

「………そう、ですか。…………。
 …僕のせいですから。……謝るつもりでは、いますけど……
 ……口を聞いてもらえないことも、覚悟してますし……」

そう言って、肩を落とす。かなり責任を感じているようだ。
仕方ないだろう。
自分のミスで人一人を殺しかけ、今でも後遺症が残るかもしれない、という可能性があるのだ。

癒斗 > 「…そーですねえ…」

谷蜂がどう感じているかは、他人が言うにはどこまでも憶測でしかない。
ただ、その後の情報がつかめない加賀智の気持ちも分かる。

癒斗は届けられたサラダの片方を加賀智へ渡しながら、フォークを差し出して

「すぐに病院で処置、というわけでないなら"きっと"大丈夫だと、私は思います。
 …"謝ってから"考えましょ?加賀智さん。
 分からない事を分からないまま心配し続けたら、なんにもできなくなっちゃいそうです」

加賀智 成臣 > 「………。
 ……そう、ですね。同じこと、違う人からも言われました。」

ふぅ、とまたひとつため息。
だが、それは悪い意味でのため息ではないようだ。

「分かりました。……心配するな、というのは…すぐには出来ませんけど。
 ……謝ってから、考えます。…頂きます。」

フォークを受け取って、もぐもぐとサラダを食べ始める。
ぱりぱりと小気味いい音と、ほんの少しの青臭さ。そしてポン酢の風味と大根おろしの香り。
おいしい。

癒斗 > 他の人もそう言ってくれるなら、なおさらだろう。
元々扱いきれない存在の多い禁書が詰まった、あの場所なのだし。
違う人が言ってくれてるならば、間違った事は言ってないよなと、違う心配を自分に覚えた。

「そうそう、食事しませんとね~。いただきまーす」

癒斗もサラダを食べ始めた。
ツヤの良いパプリカやトマトをフォークで刺す感覚は、食事の楽しみとして代えがたいものがある。
好みはシーザードレッシングに黒コショウを足したものらしく、
空腹もあってかもりもり食べている。

「そういえば、加賀智さん。
 あのー、話がガラっと変わるんですけども」

神妙そうな顔でサラダをモリモリしながら、ぼそぼそと言う。

加賀智 成臣 > 仮に、この道が間違っていたとしても、自分以外の意見なら……
そんな卑屈な考えが一瞬過ぎり、すぐに追い出す。
仮にそんなことが会っても、過ちを誰かに押し付けるなど最低な行為だ。

「……………。
 あ、はい。何でしょうか?」

神妙そうにサラダをムシャムシャする癒斗を見つめ返す。
二人共サラダを食べているので、すこし緊張感がない。

癒斗 > サラダをモリモリ進めているところに夏野菜のパスタが届く。
モリモリしながら、店員にありがとうございます!という顔を向けた。

「……えーとですね。大したことでは無いんですけど。
 私が男子寮で生活してるのは、その、ナイショってことで……」

最後のトマトが刺さったフォークを片手に、加賀智を見つめる。

加賀智 成臣 > …結構美味しそうなパスタだなぁ、と思った。
食欲が無いわけではないので、普通に美味しそうなものは美味しそうだと思うのだ。

「……ああ、はい。……まぁ、言うつもりもないですけど。
 僕に言うよりは、他の人に釘を刺したほうが良いですよ……。」

くるくると回る赤いトマトを目で追いながら答える。
元から誰かに言いふらしたりするような勇気はない。やる気もない。

「……そういえば、どうして男子寮で?」

癒斗 > トマトをぱくりと頬張り、むぐむぐと口を動かす。

「……そうですね、他の人にもお願いしないと…。名前知らない子もいましたけど。
 ええと、私が男子寮にいるのは~~~、んんー……加賀智さん、
 男でも女でも無い性別、というのをご存知ですか?」

サラダの皿を横へそっとどけて、パスタ皿を前に持って来る。
厚めで一口サイズのチキン、こんがりと焼いた夏野菜が彩り豊かなパスタだ。
ソースに偏りが無いよう、一口を取るのに周囲を混ぜながら話を続ける。

「私は、それなんです。見た目はほぼ女性ですが、私には男性機能が備わってるんです」

そこまで言うと、パスタを巻き付けたフォークを頬張る。
表現の難しい恥ずかしさを誤魔化すようにも見て取れるだろう。

加賀智 成臣 > 「………男でも女でも……ああ、なるほど。
 そういう方が居る、というのは、どこかで聞いたことがあります。
 無性だとか、両性具有だとか……癒斗さんは両性具有の方なんですね。」

かりかりと、サラダに乗っかったクルトンを1粒ずつ食べながら話を聞く。

「……でも、大部分が女性なら女子寮でも良かったのでは?
 精神のベースも女性でしょうし……
 ………あ、すみません。不躾な質問だったでしょうか……?」

少しだけ気恥ずかしそうな癒斗を見て、申し訳無さそうに縮こまる。

癒斗 > 「いえいえ、大丈夫です。
 私も最初は女子寮で申請を出したんですけども…」

話の途中で食べるのは、自分の中で説明の言葉を整頓するせいか。
まだ熱々な状態のチキンを食べると、アイスティーに手を伸ばした。
チキンの中身がびっくりするほど熱かったらしい。

「………男性機能が"正常"なので、その……あの………。
 他の子と、万が一があってはいけないってことで、男子寮ならと許可が出されまして……」

つまり、癒斗は元気な男の子という部分もある。ということらしい。
言葉が続くたびに、トーンダウンしていく。

加賀智 成臣 > 「……………。」

ああ、そういうことか。そういうことなら頷ける。納得だ。
……だが、そのことを女性の口から言わせてしまったことにひどくつらい気持ちになっていた。
どうしたものか、言葉が出てこない。そう思いながら、コーヒーを一口啜った。


「……大変、でしたね?」

結局出せたのはその一言。
何が大変だったんだ、上から目線で偉そうに、などと心のなかでツッコミを入れる。

癒斗 > 加賀智の言葉に無言で頷きながら、髪をうしろへやる。
パスタを食べる動きがぎこちないまま、それでもモリモリと食べ勧めていた。
まだ空腹が羞恥心に勝っている。

「男子寮内を歩くのはそこまで苦労しませんし、
 出入りする時も着替える程度なので。………と、とりあえず、そういうことなので」

「よろしくお願いします、ね。……あ、そういえば加賀智さんも寮生活なんでしたっけ」

加賀智 成臣 > 「……あ、そ、そうです、ね。僕も寮生活で。
 …と言っても、大した物はないですけど……ただ、そこにいるのが安いから、という……」

こりこりと頬を掻く。実際その通りだ。
島内とはいえ、マンションなど借りようものなら結構高く付く。
それなら寮に居たほうが安いのだ。

「………よく今まで見つかりませんでしたね。」

少し首を傾げる。
下世話な話だが、癒斗の体は凹凸がはっきりして、女性的だ。
一目見たら『あ、男子だな』などと思い込むのは幻覚魔法でも使わなければ無理だ。
それ故、少し疑問であった。

癒斗 > 「今までお互いに気づかなかっただけで、すれ違ってたかもしれないですねー。
 一応、男子寮で過ごすときは大きめのジャージと、体型を潰すシャツを併用してますから。
 あんまり自分の部屋から出ないっていうのもありますし、何より2階の人の少ない方に住んでますので」

髪は結って服の中にいれちゃいます、とつづけた。
すれ違う程度ならば、どうと言う事は無かったのだろう。

ぺろっとパスタを平らげ、ごちそうさまでしたと手を合わせる。
アイスティーを飲みながら、メニューに手を伸ばしていた。
さっきのごちそうさまはどこに行ったのか。

加賀智 成臣 > 「……かも知れない……ですかね?
 でもまぁ、ともかく……これからもあんまりバレないようにしてくださいね。
 僕が言うのも難ですけど、こう……広まると大変でしょうし」

少し首を傾げる。
そういえば寮の廊下にうっすら甘い匂いが漂っていたことがあった気がする。
何の匂いかその場では分からなかったが、今思い返せばなるほど葡萄の香りだったかもしれない。

食後の珈琲をちびちびと飲みながら、癒斗の注文を見守る。
特に注文するものもなく、ぼーっとしているようだ。

癒斗 > メニューの影から顔をだして、頼りない笑みを浮かべる。

「そーですね。頑張ってばれないようにします」

加賀智に料理をおすそ分けする時も、気を付けないといけない。
ちゃんと連絡先を聞いておいた方が良いなと思いながら、眼はメニューに戻る。
デザートが食べたいのである。パフェか、ケーキか。

「………甘いものはたべないんですか?加賀智さん」

加賀智 成臣 > 「………僕、甘い物は苦手で。
 苦いものとかありませんかね……」

ひょこ、とメニューを覗き込む。
……抹茶味しかないようだ。まあ、それでも甘ったるいものよりはマシだろう。
そう思って、抹茶アイスを注文する。

「……抹茶、いただきますね。」

癒斗 > 「甘いもの苦手なんですか。じゃあ、カレーは中辛以上ですねえ」

どこか話のずれた認識をする。

ただ、一人で食べ続けているというのもちょっと気が引けていたのだろう。
加賀智が抹茶のアイスをと言えば、にこーっと笑う。
癒斗は季節のサンデーを頼んだようで、
店員が注文を抱えて歩いて行けば、アイスティの残りにミルクを足した。

「……あ、そうだ。お料理おすそ分けするのに、連絡先…」

いいですか?と聞きながら携帯端末を取り出す。
そうやって、デザートが来るまで他愛のない話を続けていくのだろう。

加賀智 成臣 > 「というか、苦いものが好き、というか……
 なんだか、このまま死ねないかなって感じの味なので……」

ひどい理由だった。
ともかく、そうして一緒にアイスを食べよう、という空気は出来上がった。
笑顔が素敵な人だ、と改めて思う。

「……あ、はい。構いませんよ…」

そう言って、自分の携帯端末を取り出す。電話帳には、自分と学校しか入っていなかった。
そうして、だらだらと夏の午後は過ぎていく。