2016/10/07 のログ
■オーギュスト > 「卵……あぁ、卵か。なるほどな。
俺の世界じゃ、卵も高級品だよ。ったく、つくづくすげぇなここは」
そもそも塩も専売だし胡椒も超高級品だ。ただ卵を焼くだけの料理など、発明されようもない。
「いや、さすがにこの学園のシステムは生活委員から教えてもらったよ。
教員か。なるほどな」
サラダをフォークに刺してもそもそと食べはじめる。
食べるごとにマジマジと皿を見て。
「畑も近くにねぇのに、なんでこんな野菜が新鮮なんだかなぁ」
感嘆の溜息を漏らし。
■蓋盛 > 「より正確に言えば養護教諭ってやつだね。
生徒の健康を預かる仕事で……あと、白衣がかっこいい」
ニヤと笑って見せびらかすように白衣を広げる。
「いやー、そう改めて言われるとこっちとしても不思議になっちゃうよね。
そっちのご出身のことは知らないけど、流通の発達さまさまだ。
世界の裏側の食材だって簡単に取り寄せられる時代なのだよ」
次に運ばれてくるのはメイン、鉄板プレートに盛り付けられた目玉焼きハンバーグとライスの皿だ。
プレートにはポテトや人参などが付け合せとして添えられている。
「オーギューはここに来てどれぐらい?」
あんまり高栄養価すぎると身体がびっくりしてしまうかもしれないが、
まあ、多分大丈夫だろう。
■オーギュスト > 「白衣で、健康を預かる……あぁ、お抱えの医者みたいなもんか」
王城などや大貴族の家には、その主人から使用人などの健康を診るお抱え医者が居る事がある。
オーギュストはソリが合わなかったので薬をかっぱらったり強奪したりして嫌われたものだ。
「流通なぁ……本当、あの車ってやつぁどんな仕組みで動いてんだ……」
通りを走っている車を見て仰天した。
馬も無しひく人間も無しで、本当どうやって走ってるんだか。
「おぉ、まだ3日目だ……うめぇなこの肉!? なんの肉だ!?」
あつあつの鉄板に、なにやらここでよく出てくる白い穀物を蒸した「米」と呼ばれる食事。
オーギュストは肉や野菜をばくばく食べながら感動する。
■蓋盛 > 「あーうんうん、まぁそんな感じ。厳密には医者ではないけど。
にしてもきみはなんというかコテコテの異邦人だな。逆に新鮮だよ」
もし飛行機を見たら『なんであんな鉄の塊が……!?』とか驚いてくれるのだろうか。
「多分牛と豚の合い挽きかな? よく噛んで食べなさいよー。
ごはんはちゃんとおかずと交互に食べるようにね。そのほうが美味しいから」
夢中で食べる様子が微笑ましくなってつい母親のようなことを言ってしまう。
「にしても、たった三日で一人でレストランまで来るなんて、タフだねえ。
環境が合わなかったり精神的な問題で一週間ぐらい引きこもるのも
そんなに珍しくないんだけど。
故郷でなんかやってたのかい?」
この世界の知識はだいぶ欠けているようだが、精力的な様子のオーギュストに
多少感心したように。
■オーギュスト > 「んな気取ってもしゃーねーだろ。わからんもんはわからん、理解できんもんは理解できん。驚く時は素直に驚く。
俺はそうやって生きてきたからな」
そして牛と豚の合い挽きと聞けば。
「牛ぃ? 嘘つけ、牛だったらもっと筋があって硬いはずだろ。
さすがに騙されねぇぞ」
農耕牛を潰してつくった牛肉は、筋ばって硬くて、根気よく煮込まなければ食べれたもんではないのだ。
白衣の女性の言うとおり、ハンバーグを米に乗せ、一緒に食べてみる。
これは――絶品だ。
オーギュストはあっという間に平らげると、お代わりを注文する。
「あぁ、元いた世界では将軍をやっててな。
軍団の連中を置いてきちまってなぁ、はやく怪我治して戻らなきゃならん。
引きこもってる暇もねぇんでな」
そう、はやく元の世界に戻る算段をしなければならない。
■蓋盛 > 「いやいや旦那。
ここの牛はそんじょそこらの牛とは違う、スーパーな牛なんですよ。
だから柔らかくて食べやすいんですねぇ~」
だんだん真面目に教示するのが面倒くさくなってきたらしい。
そのあたりはもっときちんとした人に教えてもらうのがいいだろう。
「へえ。えらい軍人さんか。そりゃ納得だ。たくましいね。
……でも戻りたくなくなっちゃうかもしれないよ?
ここの食事摂り続けてたら」
目を細めて、意地悪な口調で囁く。
おかわりまで食べて満足したところで、注文の最後――
ガラスのジョッキにデンと盛られたフルーツたくさんのパフェが届くだろう。
■オーギュスト > 「牛まで特別製かよ。ったく、恐れいるぜ」
いいながらバクバク食べる。
美味い。塩も胡椒も利いてるし、タレも絶品だ。
下手すれば生きて来た中で一番美味い。
あと水に氷が入っている。
どんだけ贅沢なんだ本当。
「そりゃねぇな。
あいつらは家族で、俺はその長だ。
戻ってやんねぇと――おぉ!?」
パフェを見てぎょっとする。
なんだこれは、食べ物か?
■蓋盛 > 「即答か。まったく、からかいがいがないなぁ」
言葉では残念がるが、表情のほうを見ればそうでもない、愉快げなものだ。
パフェは季節のフルーツ――洋梨や巨峰や栗が贅沢に使われており、
もちろんクリームもぎっしりだ。
「オーギューの旦那、教えてあげよう。
こっちの世界じゃこういったでかいパフェを食えないようじゃ
一人前の“男”としては認めてもらえないのさ」
――まさか食えないとでも?
いけしゃあしゃあと、もっともらしい口調で言い放つ。
唇の端に舌を出すのが見えたような見えなかったような。
■オーギュスト > 「……やってやろうじゃねぇか!」
嘘だろうが別にいい。
売られた喧嘩は買うもの。
ましてや、女に舐められてたまるものか。
同じ物を注文し、出てきたパフェを見てごくりとつばを飲み込む。
どんな味か、皆目検討もつかない。
ちなみに周りでは店員が笑いを堪えていた。
「――あっまぁ!?」
一口食べて絶叫した。
生涯口にしてきたものの中で、ダントツに甘い。
■蓋盛 > 「どうした! 男を見せてみろっ……!
オーギュストっ……!」
拳を握って激励する蓋盛だが目が笑っている。
手に構えたスマートフォンでしっかり写真を撮影するのも忘れない。
このように異邦人にいい加減なことを教えて大変な目に合わせるのは
フォリハラ(フォーリナー・ハラスメント)と呼ばれて近年問題視されている。
いい子はあまりやってはいけない。
器の大きさのためか、オーギュストの甘い物耐性のなさゆえか
まるで食べても食べてもなくならないような錯覚を覚えるだろう……
――果たして食べ切れること叶うのか。
■オーギュスト > それはまさに暴力。
甘さと柔らかさによる蹂躙。
なにせ砂糖すら滅多に口に入らない世界の住人である。
こんな甘さが一度に襲ってきた事など、生涯で一度も無い。
「こ、のぉ……!」
しかし、ここで退くわけにはいかない。
男には、やらねばならぬ時がある……!(今この時とは言ってない)
食べる。食べる。食べる。
甘い。甘い。甘い!!!
「……へへ、みた、か」
最早最後は味とか感じなかった。
なんかどんぶりを平らげるような容量だったが、オーギュストはひとまず目の前のパフェという難敵を殲滅する事に成功する。
息も絶え絶えだったが。
■蓋盛 > 「なん、だと……!
クッ……思ったよりやるね。この勝負あたしの負けらしい」
妙に低い声で驚愕する蓋盛。
それにしてもいつのまに勝負が成立していたのだろうか。
「確かに見届けさせてもらった。オーギュスト、あんたは確かに“男”のようだ……
また機会があれば会おう、稀人よ……」
白衣の襟を正し、妙にいい顔のまま立ち上がり、自分の分の会計を済ませてニルヤカナヤを去っていく。
心なしか木枯らしのようなものを纏いながら……
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から蓋盛さんが去りました。
■オーギュスト > 「うぷ……何が男だよ……人間の食い物かこれは……」
いや、甘い物好きな女だったら喜びそうだが。
しかし男が食うにはきつすぎるだろう。
オーギュストはまたひとつ、世界の新たな事を発見しながら、会計を済ませ帰宅する。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」からオーギュストさんが去りました。