2015/07/04 のログ
久喜棗 > 昼下がりの午後、男子寮のエントランスに少女が布包みを持って現れる
あまり厳格に守られているわけではないが本来女性が立ち寄る場所ではないため
はたから見ても多少そわそわとした様子で入寮者を呼び出すためのインターホンへと向かう
メモを開き以前教えられた番号をインターホンに入力していく
プッ…プッ…プッ…と電子音が飛び飛びに鳴り、入力された番号の部屋ではチャイムが鳴るだろう

久喜棗 > 相手が出ないまま呼び出し中のランプが光り続ける
しばらく経って、もう一度だけ呼び出しボタンを押す
……しかしやはり相手は出ない

「……留守か」

誰に言うわけでもないが呟き、ため息を吐く
手に持っていた布包みの結び目をぎゅっと握り

「まぁ腐るものでもない、荷物受けにでも入れておけばよいか」

布包みを解き、中からコーヒー豆の入った袋を取り出す
それを先ほど呼び出していた住人の荷物受けへと投函した
これで用事は終わり、後は帰るだけだが
もしかしたら途中で住人が帰ってくるかもしれない、とロビーのソファに座る
幸い、いまロビーには誰も居ないようだった
とは言え人の往来の少ない場所ではない、その内誰か通り掛かるだろう
男子寮に一人で居て変に思われないだろうかと少し人目を気にしてきょろきょろと視線が泳いでしまう

ご案内:「ロビー」にカミューさんが現れました。
カミュー > 「…むむ、来客でござるか。」
ふあぁ、と起きたばかりの乱れた様子で上から降りてくる騎士姿。
不審な様子の女性がロビーにいるのを見て、見慣れぬ顔だし女子の来客と見当をつけた。

ぼさっとしていた髪をささっとまとめ、髪飾りでまとめると近くへと歩いていく。

久喜棗 > いっしょに食べようかと思って買ってきたドーナツの袋を開ける
相手が不在ならば仕方ない、豆は腐らなくても流石にこちらは日持ちしない
エンゼルフレンチを一つ取り出し、ぱくつこうとしたところで手が止まる
急に声が聞こえ面を上げ見てみると目の前には騎士姿の女の子に見える人間が立っていた
胸も膨らんでいるので女装でもないだろう、いやもしかしたら豊胸してるのかもしれないが

「む…もしかしてここは女子寮じゃったか?」

男子寮に来たつもりでいたので思わず狼狽える

カミュー > ささっと装着しただけの鎧の留め金や服装の乱れなどを確認し、目の前へ。
相手はドーナツを食べようとしている…堂々としているなどと思いつつ。

「いや、男子寮であっているでござる。
間違ってくつろぎに来た…というわけではなさそうでござるな。
…来客なら茶でも用意するか?それとも目当ての相手がいるなら呼ぼうか。」

向かいのソファーの背に上半身を預け、首をかしげて尋ねた。

久喜棗 > 男子寮という言葉に一応安堵しほっと息をつく

「ああ、やはりここで合っておったか安心したわ
 ああ、一応ここの住人に用事があってきたのじゃが…今は居ないようだ
 なので呼んでも意味は無い
 もしかしたらそのうち帰ってくるのかと思ってここで待っておるのだが…」

と呟くように口に出して入り口を見る

「しかしお主は何故ここに?
 儂と同じように男子寮の住人に用事でもあるのかのう」

小首を傾けカミューに尋ねる
外見から完全に女の子と判断しているためカミューがここにいるのを不思議がっている

カミュー > 「そうでござるか。
せめて暇つぶしにはつきあおうか?拙者も暇でござるし。」
つられて入り口のほうを見る。

「おぬし…?…ああ。
拙者は男だから、男子寮の住人なんでござる。カミューと申すでござる。」
古風な呼び方に少し不思議そうにして、すぐに理解すると自身の説明を。

「ええと……おぬしはもしやこちらの世界出身のたしか… ようかい、という奴でござるか?」
そして少し興味を持ったような瞳で相手にそう問いかけた。

久喜棗 > 「そうか…すまぬな、わざわざ
 しかし今日はもう帰ってこぬのかもしれんよ
 別段約束を取り付けておったわけでもないからのう…
 いつなら居るか聞いておけばよかったわ」

ふぅっと再びため息をつく

「……ってなんじゃと、お主は男なのか?
 いやしかしお主胸がむしろ儂なんかより…」

外見と反する性別に困惑しながらカミューの胸部を指差す

「ああ…まぁ、そうじゃな。妖怪と言っても差し支えないだろうな
 儂は久喜棗という鬼じゃ、よろしくなカミューよ」

先ほどドーナツを取り出した袋の口を広げ、カミューへと向ける
中にはまだドーナツが何個か入っているだろう

「お主も一つどうじゃ?
 なに遠慮することはない、そんなに日持ちする食べ物でもないからな
 むしろここで食わないほうが勿体ないからのう」

にこりと微笑んでカミューへとドーナツを差し出す

カミュー > 「そう言う…根無し草みたいなやつでござるか?
拙者もそこは人のこと言えないので慰めようもないでござる。」
普通の生徒ならちゃんと帰ってくるだろうが…、
自身もふらり何処かへ行ったりしてしまうためそこは後頭部をかいて苦笑するしかない。

「む、いやこれはそう言うように見える衣装で…」
指差された場所、ふわっとした胸元の布をつまんで見せて…棗の胸元に視線をやってしまい。
「…いや、確かに貴女よりはあるかもしれんが。
あ、いや女性は胸の価値ではない。そう、キモノがよく似合っているでござる!」
正直な感想がこぼれてしまったフォローにわたわたと手を振り回す。

「やはり妖怪でござるか!久喜さんでござるな。
こちらこそよろしくでござる。」
嬉しそうに。

二人分と思しきドーナツを差し出されると、いっとき困ったような表情をしてみせて。
「む、しかし…いや、ここで遠慮するのも失礼でござるな。
ちょっと待つでござる。」

と言うとすたた…と走って、すぐにペットボトルのお茶を2本抱えて戻ってきた。

久喜棗 > 「いや、儂があの者が普段どうしておるか知らぬだけじゃ
 ここに来るのも初めてでな…流石に住所と部屋番号を間違って覚えたということはないと思うのだが
 まぁ会えないなら会えないでも良い、また他の機会に会うこともあろうしな」

ドーナツをもぐもぐと頬張り窓の外を見る
時刻は夕方になりかかってるだろうか

「今は試験期間だからまた図書館なぞで勉強しておるのかも知れぬな…」

カミューのうっかりこぼれてしまった正直な感想に笑顔が少し硬くなる

「はは、そうじゃな…いや別に儂はそんなこと気にしておらんよ
 儂は産まれた頃よりこういう身体だ、今更胸の大きさで人と張り合おうなどと思わぬ」

と言いつつその言い振りと表情からは少しだけ不機嫌な感情を読み取ることが出来るだろう
カミューが持ってきたペットボトルに口をつけ、こくりと喉の渇きを癒やす

「ふぅ…気が利くのう、やはり甘いものを食べるときは飲み物がなければな」

カミュー > 「名前があって男子寮住まい、となれば…
いや、一応常世寮以外の寮もあったでござるか。」
あくまで公営というだけで、寮なら他にも存在することを思い出すように。
「とはいえ普通ならばここで間違い無いと思うでござる。」

夕日を見て、こちらも時計を見たりしながら図書館と言う言葉に反応し。
「勉学に熱心な相手なのでござるな。」
若い相手なのだろうか、などと思う。

「…本当にすまないでござる。
あ…、ドーナツ一ついただくでござる。」
相手の様子に冷や汗を垂らしつつあとはもう謝るしか。

相手が茶を口に含む様子を見て、己の分もドーナツを適当に一つもらおうと手を伸ばした。

ご案内:「ロビー」に狛江 蒼狗さんが現れました。
狛江 蒼狗 > 「………………」
大柄な白髪の青年はロビーを素通りし、学生証をセンサーに翳す。
入寮者の認識が完了し、自動扉が開いた。
「………………」
開いたが、その体勢のまま暫し静止する。
(いま。……久喜が居たような)
背に歓談の──そう、女性的なきゃっきゃとした感じの──声を聞き、首を傾げる。
「んん?」
(俺は女子寮に迷い込んでいる……???)
そのまま更に思索。
学生証が反応したし、男子寮のはず。はずだが。

久喜棗 > 「ほう、そうなのか?
 儂はてっきり男子寮は公営のものしか無いと思っておったよ
 私営の寮はやはり設備等がここより良いのかのう…」

とはいえ私営と言ってもピンきりだろう
棗が住んでいる長屋などはよくいえば昔ながらの家屋と言えるが客観的に言えばオンボロ木造建築だ
それを好き好んで住んでいるのだから棗としては問題ないのだが

「ん、ああそうじゃな…少なくとも不真面目ではなかろう
 お主の方は勉強はどうじゃ、ちゃんと進級できておるか?」

そういえば目の前の子は何年生だろう、この学園は外見で何年生なのかよくわからない
まさか性別すら外見で判断できないとは思わなかったが

「…気にしてないと言ったじゃろう?
 うむ、好きに持って行ってよいぞ」

と、袋を開けた時入り口に人を視認する
その人影に向かって手を振る

「ようやく帰ったな、待っておったぞ」

控えめに、しかし嬉しそうに声をかけた

カミュー > カミューの声は中性的…と言うよりは少女より。
のど仏なんかも無いので仕方ないです。

帰ってきた相手の気配に視線をさりげなくやり、妙な立場の日陰者と有名な人物に眉を上げる。
「…狛江。」
カミューも4年であるし、年数の多い寮生であれば互いに見知っているくらいはあるかもしれない。

「取り柄は安いことでござるからな。
完全セキュリティ食堂はフレンチ設備は高級なものを取り揃えたホテル然の由緒正しい血筋用の高級共同寮!
…なんてのもあったはずでござる。
というかうっかりいれられそうになったでござる。流石に侍女が付いてきてしまうので遠慮したでござるが。」
そういうのもあるらしい。実際カミューにはそういうほうが都合はいいのだが…。

「一応単位は揃ってはいるでござる。
どうしても試験期間は気まぐれで出る程度なので、暇でござるな。
卒業できなくてもかまわないんだが…。」
くすり、と笑って見せてそう答える。

抹茶のドーナツを一つもらいながらやってきた相手に声をかけるのを見て。
「…彼が目当てだったんでござるか?」
と意外そうに問いかけた。

狛江 蒼狗 > 男子寮に間違いはない。
たとえ偽造学生証であろうとも簡単な細工で通り抜けられる頼りない認証ロック扉に、彩りのない無骨なロビー。
これが女子寮の設備であって堪るものか。

振り向いて確かめてみる。すると手を振られた。確かに久喜である。
「……連絡をくれればすぐにでも帰ったが」
以前に約束を取り付けたが明確な日時の指定はなく。
「とにかく、ようこそ」
むくつけき男の世界であるため、そう歓迎できるものでもないが。

そして。傍に居るのは。
「……。カミュー」
確か、公安本部で何度かその目立つ容姿を見掛けた事がある。この男子寮でも。
頻度はそう多くもないし、最近は特に見かける事は少なかったが名ぐらいは憶えていた。
所属年数は見かけより長く、“あの事件”の噂も耳にしているだろう。
表情を見て、こちらも目を逸らした。

久喜棗 > 「それはもう寮と呼べるのじゃろうか…ただのホテルではなかろうか
 儂もそこまでいたれりつくせりだとかえって萎縮してしまうな
 もっとこじんまりとした方が良いのう
 その点この寮は適度に狭くて良い感じじゃな、いや褒めてるのじゃよ?」

と生活感のあるロビーを見渡す

「それはいかんのう…居心地が良くて留年するものも割と多いと聞くが
 やはり卒業してこそ学生というものではないかな?
 努力して駄目ならばともかく最初からやる気のないのは感心せぬぞ
 まぁ…ここでやり残した事があるならばその限りではないがな」

カミューに対してくどくどと言い聞かせる
棗は歳のせいか若者に対して時折保護者のように振る舞ってしまう悪癖があった

「目当て…というと何かこそばゆい感じがするではないか
 儂はただ以前世話になった礼をしに来ただけじゃ」

カミューの言葉に照れくさいのか言い訳をしてしまう

「う、うむ…そうなのだが、お主も忙しいかもしれぬじゃろ?
 だから来て待っておればそのうち帰ってくるかと思ってな
 ほれ、お主もどうじゃ」

とドーナツの入った紙袋を蒼狗へ渡す

カミュー > 「…その、一人で久喜さんがロビーにいるところを暇つぶし程度にお相手していたのでござるが。
彼氏が帰ってきたなら拙者は退散したほうがいいでござるな。勘違いされても困るだろう。」

狛江へ向けてか説明調でそんなことを言いながら、あははと笑って。
お口にむぐむぐドーナツを咥えてお茶のボトルを掴み、立ち上がった。
事件がどうこうで係わり合い…というよりは普通に気遣いのような気はする。早とちりしているようだが。

「このロビーもそこまで狭くは…いや、その高級寮と比べれば狭いでござるが。
うむ、まあ庶民!と言う感じがしていいでござるな。」
久喜の言葉にうんうんと頷いて。なにやら育ちのよさが…?

「居心地がいいとかやり残したことがあるとか、そういうわけでもないんだがな…。
まあ忠告はありがたく聞いておくでござる。…妖怪らしく実は結構お年でござるか…?」
苦笑して見せて、ついうっかり年を聞く…。女性相手なのですぐにしまったという顔になるが。

「ただの礼でござるか。ふーん…。」
信じているような、信じていないような。
そんな呟きを返しつつ、二人の邪魔にならぬようそっと脇へ移動した。

狛江 蒼狗 > 二人の談笑はとりとめのなきもの。
この、読みかけの雑誌が公共物となって隅に置かれたこの環境と、毎朝最新の日付の新聞がロビーに用意された環境の違いをお話しているらしい。
カミューが言うには久喜の暇潰しの相手をしていたと、ならば、有り難いことだ。……なにが有り難いのかうまく説明できないが。

「気が長いな、久喜は。別に遠慮などせずとも良かったものを……とにかく、入れ違いにならず良かった」
安堵に胸を撫で下ろす。
図書室での独習を早めに切り上げてきて正解だった。
まぁ、あまりに眠いので帰って早めに寝ようと思っただけなのだが。
ドーナツを一つ受け取りつつ、齧ってみる。糖分が脳に周り、気分が落ち着いた。
「うまい」

「いや」
(彼氏? 彼氏……??)
無表情に、寡黙に。手を前にして否定する。
内心かなり動揺しているが表には出ない。
「その勘違いは久喜に失礼だ。……本当に、以前の礼を」
すす、と端の方へ退散するカミューを見て、おろおろとする。
こういう状況には全く免疫がないので、どうしたものやら解ったものではなく。
「持ってきて。くれたのだよな?」
対応に窮し、久喜にパス。

久喜棗 > 「面積の話ではない、雰囲気じゃ雰囲気
 …なるほどのう。まぁお主の進路じゃ、儂がどうこう言い過ぎることもよくないかの
 うむ、まぁそこそこ歳はとっておるよ。正確な歳は数えておらぬがな
 数え始めてからは500年ほどかのう…」

ひいふうみいと指折り数えてみせる
実際どれくらい生きているのかは棗自身もわからない
流石に千は超えてないだろうといった程度の把握だ

「……ってなんじゃその目は、何故そっと脇へ移動する
 その気遣いは多分不要なものじゃぞ!?」

思わず頬を染め、声を上げ、カミューを捕まえようとする

「あ、ああもちろんじゃ
 ただお主が居ないと思って荷物受けの方に入れてしまったがな
 あとで取りにいくといい」

蒼狗の狼狽した態度に嫌な汗を流しつつも笑顔を維持する
しかし他人に弄られるのに慣れていないため表情がぎこちない
結果として二人ともぎこちなく何処かよそよそしい空気が流れてしまう

カミュー > あっさり年齢を答えられてちょっと拍子抜けした様子で。
すこしほっとした感じだったとか。

「やはりずいぶんと…さすがでござる。
こんど昔のお話など聞いてみたいものだ。」

妖怪に興味津々、といった感じだが新たな来客にここではこれ以上話題を続けるつもりはないようで。


「……二人ともそう言う感じではないでござるな。
わざわざ男子寮まで来るとはてっきりそういうものだと…。うわぁ!?」
手はお茶とかじりかけのドーナツで埋まっていて、捕まえようとすれば抵抗できる様子も無く。
両手を挙げて抱きとめるような格好になる。
不意をついた格好であれば倒れこむかもしれないし、膂力はあるのでそのままかもしれない。

狛江 蒼狗 > 「500……」
年寄だというのは知っていたが、久喜の年齢自体は初めて聞いた気がする。
もっと少なく見積もっていたので驚きを隠せない。
(……敬語、とか。使うべきだろうか)
そして今更ながらにそんなことが気になり始める。

「わ、わかった。後で内側のほうの荷物受けから取って上がる……」
会話は終わった。
マンデリンだったか、久喜の選んだ豆は無事蒼狗へ届き、いつかぶりの礼は果たされたというわけだ。
(こちらからも、何か)
など考えてもみるが、現在そんな余裕もない。寡黙な青年はより寡黙になりつつある。

「そうだ。そういう感じでは…………危なっ……?!」
目を泳がせていると、追いかけられたカミューがバランスを崩した様子で。
周囲はソファで床はカーペット。然程焦る必要はないだろう。
けれど手は伸ばして。それは当然ながらに空を切る。

久喜棗 > 倒れ込みそうになるカミューを左手で鎧をつかみ支える

「おっとすまぬ、つい力が入ってしまったわ
 大丈夫かカミューよ」

棗の体格は小柄であるものの、鬼の力があるためカミューを支える程度問題ない
鎧をつかんだままグッとカミューを引き起こす
ソファへと戻り話を続ける

「この前…男子寮に女子は結構普通に来るから大丈夫と聞いてな
 そんなものかと思っておったのだが…やはり珍しいのか?」

少し困った顔をして、その後蒼狗の方を向く

「そういえば…蒼狗に儂の事はあまり話してなかったな
 確か、鬼であることも言ってなかったかな?
 この前儂のことを異邦人と勘違いしておったしな」

思い出し笑いなのかクスリと微笑む

カミュー > 相手が姿勢を崩したわけでなければ、カミュー自身も足腰は崩れることは無い。
のけぞった上半身を戻してそそっと元の位置に戻り、久喜さんの向かいのソファに座るよう狛江に勧める。

「…もしかしてその話をしたの鈴成さんじゃないでござるか。
確かに侵入自体は難しくないでござるが…。ロビー自体は来客があっても問題ないしな。」
ふと以前あった少女の顔を思い出しながら。彼女も堂々とロビーにいた…。
「さすがに男子の群れに用も無く一人で来る女子はなかなかいないでござる。
だからその、そういう用事が多くてだな…。」
ちょっと誤魔化すように。

「…ほう、鬼でござるか。」
横から話をふんふん、と聞いている。

狛江 蒼狗 > 「………………」
手が空を切った状態で、前のめりに静止する。
(片腕で、騎士鎧を着た人間を……)
しかも、引き起こした後に息を切らした様子もなく。事も無げである。
蒼狗は自らがこの小柄な角少女に抱いているイメージと、実際の“久喜棗”にはかなりのギャップがあるのではないかと感じ始めた。

「……日本生まれ日本育ちの、妖怪、的なことは。前に。
 久喜は鬼、だったか。……座敷わらし的なものではなく……」
角があるから鬼と見るか、
角の生えた座敷わらし様の妖怪と見るか。
その二択で後者を選び、以降そのような感じで久喜を捉えていた。
(うちの神社では鬼避けの結界を作ることもあったから、何か複雑な気持ちだ)
鬼。
先程カミューを助けだした片腕を見る。華奢な女の細腕に見える。もう片腕は、ないそうだが。
次に顔を見る。少女の顔立ちに角がミスマッチなようでマッチしている。
「………………」
あまり、ピンとこない。

久喜棗 > 「鈴成…静佳のことか?
 たしかに静佳なら男子寮でも普通に一人で行きそうなものじゃな
 しかし違うよ、確か…そう、ハバキと言っておったな
 忍者の。ああでも本人は忍者ではないと言っておったが」
 
視線を下に向け、少しシュンとしながら

「やはりそうか…少し失敗したな
 しかしそういう用事とは…?
 静佳は何用でここに来ておったのか…」

人差し指を顎に当て、ふーむと思案する
蒼狗に座敷わらしと言われ思わずクスッと笑う

「座敷わらしなど…そんな可愛いものではないよ、儂は
 座敷わらしの力は幸を呼びこむが、儂の力は不幸しか呼び込まぬ
 役立たずじゃ」

自虐的にそう自分を言い表す
蒼狗が自分をじっと見ていることに気づき、困ったようにはにかむ

「な、なんじゃ儂の顔を無言で見つめおって
 さっきの食べかすでも付いておるのか…?」

と自分の頬を袖で拭ってみる

カミュー > はっと、うっかり言ってしまったが、相手の名誉のためにもぼかすべき…と考え。

「あ、そうでござるか!ハバキ、ハバキのほうでござったか!
いやー、まったくニンジャはしょうがないでござるな!」

食べかけだったドーナツを久喜さんの口に詰め込もうとしつつ、そんな風に叫んで思考を妨害してくる。

見詰め合う雰囲気は台無しになるかもしれない…。とは思うものの、
ちょっとヤケだ。
ちょうど少し不幸がどうこうと自虐的だしちょうどいい、と言う思惑もあるようで。

狛江 蒼狗 > 「……かたじけない」
ソファへ腰掛けながら、久喜とカミューの会話を横聞きしつつドーナツを齧る。
“男子寮に来る女生徒”というのは、噂になり易いものだ。
これが“女子寮に来る男子生徒”というのでも恐らく変わりはないだろう。
あらぬ噂やある噂が入り混じって、“異性の寮に来る者はそういう目的”という印象がついてしまうのだろう。きっと。

「ならばあなたと接して幸福な俺はどうなる。……気にしすぎるのはいけない」
その、自らの“力”に引け目を感じる様子が気にかかり、短く否定を突きつけた。
【異能】を持って、何らかの不幸に巻き込まれたのなら、それを理由にして自分を責めてしまう。
それが良いものであれば、『あの時ああすれば』と、悪いものであれば、『あの時ああしなければ』と。
蒼狗にも憶えがあった。
ただ、今は関係ない話だ。あまり思い出さずにおく。
【異能】はそのヒトの全てではない、そういう話だ。
「いや、あまり。……その、鬼らしくは。見えないものだ、と……」
そして見ているのを指摘されると、またおろおろとし始めた。
不躾だったか、とか、他意はないとか、言葉は浮かぶが口から出ない。

と。その時に焦りだしたカミューがドーナツを久喜の口へ向けて。
「……カミューにも忍者と思われているのだな」
ここぞとばかりに話題の焦点をずらした。
忍者であることを否定する忍者らしきハバキには悪いが、好機である。
カミューに感謝せざるをえない。

久喜棗 > 蒼狗の言葉に少し照れくさそうにしながらばつが悪そうに視線を外す

「そう言ってくれるのは嬉しいぞ…だが
 儂の場合は前科があるからな
 良かれと思ってやったことでも、された者が望んでおっても
 結果として、やらなければよかったと思ってしまうことはあるものじゃ」

遠くを見るような目でそう話す

「確かに、お主らがよく知る鬼は儂とは少し違うろうな
 だがやはり儂は鬼、甘く見れば怪我をするぞ」

と視線を戻し、笑顔で冗談っぽく話題を締めた

「む、お主ハバキを知っておるのか?
 そうそうあのニンジャの……っむぐむが!?」

話途中に唐突にドーナツを口にねじ込まれ悶える
ねじ込まれたドーナツを何とか飲み下し、カミューに向かって怒りの表情を向ける

「な、何をするか!!
 いくら儂とてこんなことをされたらさすがに怒るぞ!!」

むせたせいで涙目になりながらカミューに対して抗議する
一連の行動で先程までの話題はすっかり頭から抜けたようだ

カミュー > 幸福、と語る狛江の様子にあながち己のさきほどの言葉が間違いでもないのかな、と軽く眼を見開くような表情をする。
最初の否定では無表情だったためそこまで気にしなかったが…。

「…ポーカーフェイス、でござるな。」
物静かだが確かに言葉を尽くす男の様子に、ぽつりとそう呟いた。

久喜さんの怒る様子にすまなさそうにぺこぺこと頭を下げる。
「そこはすまんが…。下世話な話題だったしほら、いま狛江さんの前で悩むこともないでござる。
申し訳ないついでに拙者はちょっと引っ込んで詫びでも用意してくるでござるよ!」

ドーナツはこれで片付けた、お茶はボトルだからポーチに突っ込んで。
両手が空いたこの間にと申し訳なさそうに謝罪しながら、そそくさと奥のほうへ引っ込もうと後ずさった。

狛江 蒼狗 > 「……うん」
否定も肯定もなく頷く。
久喜の思う事が何かも知らないのに迂闊は言えない。
ただ黙って聞くより他に蒼狗に為す術はなく、“鬼”の話の締めくくりにもまた、
「うん」
と頷きを返した。無表情は僅かに笑みのように緩んでいるように見える。

さて、ドーナツの行方は久喜の口の中である。
カミューとしてはアンタッチャブルな話題だったらしく。
逆にその過剰な反応に(一体何があったというのだろう……)と疑問を覚えること頻り。
なにはともかく、湿っぽい空気も晴れたので終わりよければまぁまぁ良しである。
くく、とわかりやすく小さく笑って、二人を見ていた。

「………………」
カミューが引っ込もうとすると、蒼狗はおもむろに一歩そちらへ近づいた。
「………………公安での俺のこと、あまり触れずにいてくれて助かった」
最初に対面した時のお互いの反応を思い出していて。
それが意図して話題を避けたのか、それとも無意識になのか、もしかするとあえて話す程“狛江蒼狗”についての知識がなかったのか。
どれであっても助かった事に変わりはなく、小さく礼を言い離れた。

久喜棗 > ペコペコと謝るカミューにふぅっとため息をつき矛を収める

「…まぁ、そうじゃな。儂も妙に腐った態度を取ってしまったな
 どうしてもこう、自分の話となると自虐的になってしまって…儂の悪い癖じゃな」

ソファへと深々と座り、奥へと引っ込むカミューを見送る
ペットボトルのお茶を一口飲み、一息入れる

「そういえば、お主カミューと面識があるのか?
 最初の時名前をつぶやいておったが…
 にしては友達といった空気ではないように見えたが」

なんとなく訊いてみる
友人関係でないということは委員会の同僚だろうか、とアタリをつけながら

カミュー > 公安と言うものについてカミューは情報を収集している。
当然、4年前から。
ただカミュー自身が公安であることを広く公言してもいないし、積極性もない。

「…個人の事情を軽々しく漏洩するものではあるまい。」

そう、狛江の囁きに先ほど誤魔化すことを思考したのと同じ様子で答えて。
奥へとそっと引っ込んでいった。


かちゃかちゃと向こうのほうから音がする…。

狛江 蒼狗 > 「同僚だ」
即答。
たまに居る、武器の携行許可を求めて所属している公安委員であろうが、同僚は同僚だ。
もっとも、部署は違うし顔を合わせる事もなければ積極的な会話を交わすこともないぐらいだが。
「………………」
投げかけた言葉には正論が返ってきて、なんとなく安心する。

なんだか慌ただしく時間が過ぎていった気がする。
ソファに腰掛け深く背を凭れ掛からせる。
久喜を見ると思い出したように。
「そういえば、礼がまだだったな。……ありがとう。
 屋上で会ったのは10日前なのに、えらく昔の事のように思えるが」
微笑みかけて、大した事もしていないのに転がり込んだ礼に思いを馳せる。
これまで何度か会ってこちらのほうが世話になった記憶しかない気がする。
……と。カミューの去っていったほうから陶器がこすれるような、金属がこすれるような音がする。
「?」
なんだろう、と見てみるが奥の様子は一見してわからず。
(“詫び”とか言っていたが)
首を傾げる。

久喜棗 > 「やはりそうか
 しかし意外と公安も身近にいるものじゃなぁ
 もっと裏で闇で暗躍してるようなイメージがあったが
 お主たちを見ると意外と活動は地味なのかもしれぬな」

ふふっと含み笑いしながら面白そうにイメージを広げる
ゴミ出しや地域清掃などばかりしてる公安の姿
だがこれらはどちらかというと生活委員の仕事だろう

「そう改まって礼を言われるほどのことをした覚えはない
 そういえばまだ10日しか経っておらんかったか…
 この島に来てからというものの時間の経過が遅く感じるのう
 儂はこれまでほとんど引きこもって生きておったから、余計にそう感じるわ」

ド田舎でその日暮らしをしていた過去を思い出す
あれはあれで楽な日々だったが、やはり島での日々は刺激が多く楽しい

蒼狗の視線につられて棗も奥のほうを見てみる
だがカチャカチャとした音が聞こえるばかりで何をしているのかは察せない

「何か探しものでもしておるのかな…?」

カミュー > 陶器やポットを弄る音のようで、耳がよければお湯を注ぐ音なんかも聞こえるだろう。
やがて音が止むとすぐに戻ってくる。

戻ってきたカミューはエプロンをかけた姿で、トレイの上にティーカップをのせていた。

「お茶くらいしかないでござるが…せめて茶の一杯くらいはゆっくりしていくといいでござる。
先ほどのドーナツでのども渇いただろうし、詫びもかねているし、なにより狛江の分の茶はないでござるし。」

そういってドーナツのそばに二つのティーカップを並べ。
優雅な手つきでそこに紅茶を注いでいく。
侍女の見よう見まねではあるが、自身でやることもあり並みより上、美味しい紅茶にはなるだろう。

二人分用意し終えると。
「では拙者はこれで部屋に戻るでござる。
あとは適当に炊事所にでもかたづけて置けばいいでござるよ。」

ではー、といいつつ今度こそロビーを立ち去っていった。

ご案内:「ロビー」からカミューさんが去りました。
狛江 蒼狗 > 「公安も一枚岩ではない」
暗躍というが、暗躍するほうがレアケースなのだ。
大半の生徒は表で風紀委員が触れられない領域において取り締まり等を行い、未然に犯罪を防ぐことに尽力している。
それこそが本義であり、そうあるべきはず。
一度ついたイメージは拭いがたいし、所属する委員会員自身もそのイメージに添っている部分もあるが。

「…………その言葉はそっくりそのまま返す。ただ星を見ただけだ」
夜明けの近い真夜中で星見の具合もそれほど良くなく、解説も掻い摘んだものだし、空の星は自らの手柄ではない。
(俺も、最近は時の進みが遅く……そして早いようにも感じる。懐かしい感覚だ……この島に来た時の……)
引き篭っていたと言えば、自分もだ。蒼狗は一年前からの“特雑”としての自分を思い出していた。

「うん?」
女子寮に比べて使われる事の少ない炊事場から、カミューが戻ってきた。
エプロンが無闇に似合っている。鎧に陣羽織にエプロンというもの凄い組み合わせが可愛らしい。
(“実は男”とか全く信じられんが……? 本当に何故男子寮に自然に居るのかわからんな?)
「うん……うん? 狛江のぶんのお茶、今出てきたが……?」
ボトルの茶の話を蒼狗はあまり意識していなかったのでちょっとした混乱が生じる。
「ともかく、ありがとう。…………ではな、また」
皿を取り、自分のほうへ。口元でカップを傾けながらカミューを見送る。
紅茶は呈色も良く香りもきちんと出ていて、美味い。
コーヒーもいいが、紅茶も良いものだ。自らは進んで飲まないから、こういう機会にしか飲まないが。

久喜棗 > 「…お主がそう言うならそうなのだろうな」

あえて曖昧な返答をする
普段蒼狗が公安でどのような仕事をしているのかは知らないが
きっと闇で暗躍するような人間とは反りが合わないのだろう

炊事場からしばらく音が鳴った後、ふんわりと紅茶の香りがロビーにまで漂ってくる
手を膝の上に置き子供のようにわくわくした気分で待つ
目の前でそそがれた紅茶を手に取り香りを楽しむ

「うむ、いい香りじゃ」

緑茶のことならば多少はわかるが紅茶についての知識は疎い
これがどういう茶葉なのか棗にはわからなかったが、心地良い香りというだけで十分だった
ドーナツをかじり、合間に紅茶を飲む
そうゆったりと過ごしていたが外の陽は夕方を通り越し既に西の地平線に没し夜がやって来ていた

「ふむ…流石に長居しすぎたのう」

飲み干したティーカップを炊事場へ片付けながら壁にかけられた時計を見る

「今日は楽しかったぞ蒼狗よ、儂もそろそろ帰るが…いづれまた茶でもしようか
 それでは、またな」

蒼狗へにこりと微笑みかけるとそのまま入口を通り、夜の闇へと消えていった

ご案内:「ロビー」から久喜棗さんが去りました。
狛江 蒼狗 > 「………………」
公安の動向を全て把握しているわけでもない。
一枚岩ではない、と言うべきか、一つに纏まって動けない組織である、と言うべきか。
まぁ、いまは、それについてディベートをする場面ではない。

暫く、久喜と過ごす。一杯の紅茶が飲み終わるまでだ。
別段これといった出来事もなく、緩やかに時間が過ぎていく。
孤独ではなく、しかし静かなひとときであった。
終わりもまたしめやかである。
炊事場で洗剤をつけたスポンジを内側へ軽くこすらせ、水で流し食器カゴに置く。

「うん。ではまた」

短い返答で見送る。
(送ろうか)とでも、言おうと思ったが、入り口を潜った久喜は溶けるように夜暗へ消えていて、もう見つからない。

「…………ああ、そうだ」
認証を済ませ、ゲートを潜る。
内部のポストの鍵にもまた認証を済ませて、包みを受け取った。
「………………」
嬉しそうに微笑むも、すぐに顔には翳りが差して。
「幸福、幸福か。………………難しいな」
自室がある階層へ続く階段を、静かに登っていった。

ご案内:「ロビー」から狛江 蒼狗さんが去りました。
ご案内:「ロビー」に相楽 満さんが現れました。
ご案内:「ロビー」にエルピスさんが現れました。
相楽 満 > 「っしゃー、ひさびさにただいまっと」

かばんをロビーのソファ近くに置き、伸びをする。

「エルピスもおつかれー。
 試験なんだかんだ疲れるしなぁ」

エルピス > 「うん、そうだねー。
 機械の身体でも、やっぱり意識的な疲れみたいのは大きいかも……」

 ちょこん、とソファーに座る。
 尚、エルピス自身は細めの見た目とは裏腹に結構な質量であるものの、
 重心制御機構などにより一般の家具に損害を与える事はめったにない。

「どう、試験の方は順調?」

相楽 満 > 「そりゃ敵との戦いだもんなぁ。
 怪我するかもってなれば精神疲労もあるって」

軽そうな女の子だなーとか思ってみている。
実際の状況と考えていることが真逆だ。

「割となー。多分全科目8割以上じゃねーかな、古典以外。
 っても全部事前受験したから、答え合わせとかあんましてないんだわ」

くぁ、とあくびをする。
少しずつ、しかし明らかに息が荒くなってきた。

エルピス > 「気を張ってないといけないからね。
 そこは筆記試験より全然大変かも。」

 うん、と頷きつつ。
 大きなお団子ヘアを作った上で尚腰まで届く程の長い髪が揺れるだろうか。
 もしかすればちょくちょく満にあたって、くすぐったいかもしれない。

「ボクも多分そのくらいかな。大体の試験の問題は自信のある答案で埋めたし……
 ……事前受験? 何か出られない理由でも――って、調子悪そうだよ。満。
 部屋まで戻った方が――」

相楽 満 > 「こっちも怪我とかしたら大変だしな」

体がわずかに揺れる。
随分と顔色も悪く、エルピスの体に寄りかかりそうになる。
髪があたってくすぐったい、などという状況ではない。

「あー、うん……実は最近、病気が悪化してて……
 心臓が……もう、まともに……」

完全に少女の体に寄りかかった。
ぐったりと力が抜け、荒い息のまま。

エルピス >  
「えっ、ちょ、み、満!?」

 寄りかかれば抱き寄せ、持ち上げる。
 此処で寝かせても好転しない。病院か何処かに連れていかないと

「――と、とりあえずっ!」

 満を背負い、ドアを出て、黄昏時の空を――飛んだ。

ご案内:「ロビー」からエルピスさんが去りました。
ご案内:「ロビー」から相楽 満さんが去りました。