2015/07/08 のログ
ご案内:「ロビー」に烏丸 九郎さんが現れました。
烏丸 九郎 > だれもいねぇな…?

(別段誰も居ない必要はない。
顔を合わせたくない、その相手さえいなければ何も問題はない。
少年はひっそりと足音を消しつつロビーを横切る。)

烏丸 九郎 > (今日ここにきたのは、自分の部屋に帰るためではない。
自分の部屋からギターを持ち出すためである。
しばらく寮に帰ることはないとして…ギター、氷架に貸したり、ライブに使うやつじゃなく
気軽に持ち出せるアコースティックギター。それを取りに来た。
勉強道具やらは基本学園においてあるから問題はない。
テスト週間中はさすがに持ち帰るが、それらも今は俺流道場の方に持ち帰っている。)

烏丸 九郎 > (こそこそと少年はニンジャのような動きで階段へと忍び寄る。
その間ロビーに続く道から誰かこないか、耳を澄ませている。
とにかく、今はこっそりとギターを持って帰る(?)ことに全力をつくすことにする。
それ以外に必要そうなものがあったら一緒に持ちだそう。
何度もこんな綱渡りはしたくない。)

烏丸 九郎 > (やがて、なれない忍び歩きを続ければ、上へと続く階段へと辿り着くだろうか。
ここまで来れば、あとは超高速で部屋に向かってさっさとここから脱出するのみ。
イージーミッションだ。
パッと終わらせぱっと帰ろう。
いや、自宅はここなのだが。)

烏丸 九郎 > (すたたた…と階段をかけ登っていく足音。
少年はやや小走り気味に部屋へと急いだ。
そして数分後、ギターとカバンを抱え、同じように早足で階段を降りてくる。)

ご案内:「ロビー」に鈴成静佳さんが現れました。
鈴成静佳 > ふーむ……おしっこは「コッチ」のほうが楽にできるなー……いいなー男子は。
(ブツブツと呟きながら、ロビーのすぐそばにあるトイレから出てくる静佳)
(当然、男子トイレだ。男子寮なので)

(ジャージを持ち上げながらロビーへと戻ろうとすると、階段から降りてくる九郎くんに出くわす)
おっ、九郎くん! こんちわ! テストどうだった?(手をあげて挨拶)
……ん、どうしたの、そんな大荷物抱えて。

烏丸 九郎 > …よし。

(これでOK。いそいそと現場からずらかろうとする少年。
行きと帰りを見られなければそんなに怪しまれることもないだろう。
帰りはちょっと余裕を持った移動。
こそこそとしてたら逆に怪しまれそうだし。っと思ったら、馴染みある声に止められる。ここで聞くはずのない女友達の声…。)

なっ!?ちょ…なんでいるんだ、お前!?

鈴成静佳 > えへへー。たまに男子寮にもおじゃましてるッスよ。ロビーまでだけどね。
(今日は新たにトイレを開拓したが)
保健委員、ひいては生活委員たるもの、女子寮だけじゃなく男子寮の現状も知っておかなくっちゃってね!(歯を見せて笑う)
九郎くんもこの前言ってたじゃない、ベッドがよくないとか。

……で、ずいぶん慌ててるようだけどどうしたのさ。
軽音部の活動? テスト期間まだ1日残ってるのに? というか部室に楽器があるって氷架ちゃんから聞いたよーな……。
(九郎くんの前に立ちふさがりながら、首をかしげる)

烏丸 九郎 > ま、まぁ、男子寮に女子が遊びに来る分には大丈夫そうだしな…警備ゆるいし。
一応委員活動してんだな…テスト期間だってのに感心するぜ。

(思わぬ相手に見つかって、やや焦る。が、会話にそれは現れてない、と思いたい。
というか、目の前に立たれると、さすがに無視して移動するわけにも行かず…)

あ、慌ててなんて無いぜ?ちょっと外に散歩でもと思ってな…。ははは…。

(視線を逸らしながら、笑ってみせる。
この少年は、そもそも嘘のたぐいはあまり得意ではない。)

鈴成静佳 > そう、警備がゆるいの。まぁ男子は警備なんかなくてもドロボーくらい自力でどうにかしちゃうッスよねー?
(細マッチョの九郎くんの身体をにまにまと眺めながら)
委員活動ってのはぶっちゃけ建前だけどね。ただの暇つぶしッスよ、暇つぶし。テストはもう大丈夫だしね~。

散歩……っていう装いには見えないけどなー。路上ライブするにしてもギター以外の荷物がでかいし。
(嘘を勘付きやすい静佳だ。しかしその裏の真意まではさすがにわからない)
……お引っ越し?

烏丸 九郎 > 異能を使ったドロボーとか、肉体強化したドロボーとかいたらどうにもならねぇけどな…。
そうおもったら、この男子寮の状況も良かぁねぇのかもしれねぇな。

(視線を感じると、少し顔を赤らめる。
静佳の視線が体をなぞっていくのがわかるから。)

暇つぶしか、羨ましいぜ。俺は最後までテスト勉強に…
いや、俺のことはいいか。

(テスト勉強に追われてるならなぜ散歩なんて出かけるのかとツッコまれたら
うまくさばける自信はない。ここで話を区切るのがいいだろう。)

ぅっ…ひ、引っ越しってわけじゃねぇんだけど…
修行…そう、修行だ。
俺流の。

(嘘はいっていない。向こうについたら修行に精を出すつもりだったし。)

鈴成静佳 > 修行かぁ~、さすがだね、九郎くん。テストはもう大丈夫そうって感じッスね!
(親指を立ててみせる)

……ん、俺流? なんか最近、別の人からもそんな言葉を聞いたような……。
(しばし思案する仕草をし)
そうだ、焔ちゃんだ。九郎くん、焔ちゃんと同じ流派なの? それとも別の俺流?
九郎くんって格闘技もするんだねー、なんか文武両道って感じで素敵ッスよ?

……ところで、なんかさっきからキョロキョロ周りを見てるような気もするけど。だれか待ってるんスか? 師匠?
(自分もロビーをきょろきょろと眺めながら。人はいないように見える)

烏丸 九郎 > ああ、師範を知ってるのか。
同じ流派っていうか、師範に教えてもらってるんだ、俺流をな。
俺の異能は、戦闘系じゃないからよ。

(自分の身を守るため、そして、大切なモノを守るためにはじめた俺流…。
その意味も失われてしまったが…。
だが、師範の期待、何より自身の強くなる道を閉ざすことはしたくはなかった。)

いや、誰もまっちゃいねぇぜ…。
むしろ、あまり人には見つかりたくないっちゅーか…

鈴成静佳 > うん、焔ちゃんは女子寮住まいだからね。よく話すよ。
……あ、そうだ。九郎くんからも言ってあげてよ。焔ちゃんももう少しオシャレにも気を配ろうって。もうすぐ夏が来るんスよ?
アタシは本格的なオシャレを指導できるほどこだわりないからさー、九郎くんから指導してあげてよ?(無茶ぶり)

っと、見つかりたくない……? その割にはアタシとは普通に話し込んでるッスけど。
(首を再三かしげながら)
まぁ、それなら足止めして悪かったッスね。なんなら途中まで歩きながら話そうか?
なんか会いたくない人でもいるんスか? ケンカしちゃった人がいるとか?
(言いながら、道を譲る。歩き出すなら並んで歩こうとする)

烏丸 九郎 > おしゃれって…俺も詳しくねぇよ。
特に女のお洒落とかよくわかんねぇし…。
そういうのは格好気にしてる氷架とかに聞けばいいんじゃねぇのか?

(さすがに女子のおしゃれまではチェックしていない。
というか、自分もおしゃれに関してはあまり頓着してないというか。)

喧嘩はしてねぇけど…顔を合わせたくねぇ奴はいるな…。
まぁ、なんだ…。
静佳は悪くねぇよ。俺が今回はわりいんだ。

(道を開けられればゆっくりと歩き出す。)

鈴成静佳 > おっと、意外と九郎くんオシャレに疎い方だったか~。フフッ。
まぁ男の子からオシャレ教わるのも女の子的にはビミョーだろうしねぇ。とりあえず師匠さんに発破だけでも掛けてみてよ。
一緒にお洋服をお買い物してみるとかさ~。修行ばかりじゃなくてね。
(九郎くんと焔ちゃんの組み合わせも悪くないなと思い始めた静佳であった。相性が悪くなければとりあえずくっつけようという思考)

顔を合わせたくない、ねぇ……。
(さすがにここまで言われれば静佳も薄々感づく。この前の海岸での、疲れきった九郎くんの姿。今のこの慌ただしい様子。きっと、氷架さんの彼氏に会いたくないのだ)
(その相手が実際誰であるかは知っているだろうか? しかし、聞くのも言うのも野暮ではあろう)
……アタシが悪くないのは当然として……うーん、九郎くんも、悪くないんじゃない?
(並び歩きながら)

烏丸 九郎 > 師範におしゃれかー…あの格好以外の師範ってのも考えつかねぇな。
一緒に行っても、どんなんがいいかわかんねぇしよ…。
そういうのは女子同士で行ったほうが絶対いいと思うんだけどな。

(困った顔で頭をかく。
女のお洒落にどう口出ししていいものかはわからない。
そもそも男が口を出す領域じゃないだろう、絶対。)

……いや、俺が悪い。
悪いやつじゃねぇのに、一方的にこう思ってる俺が悪い。

(静佳の言葉には、首を横に振りつつ、歩き続ける。)

鈴成静佳 > まー確かにねぇ~。詳しくない同士でいきなりアパレル行ってもしゃーないかぁ。
フフッ、じゃあとりあえず、その「あの格好以外の師範」がいきなり出てきても驚かないようにすることね。
あ、逆に驚いたほうがあの子のためになるかな?
(おしゃれに関しては焔さんのほうにも吹き込み済みだ。どうなるかはさておき)

(そして、九郎くんの口調でいよいよ確信する。誰に会いたくないかを)
……んー、なるほどね。アタシわかっちゃったかも。九郎くんが具体的に誰に会いたくないか。
(九郎くんの顔を見上げながら、敢えて口に出す。静佳はその者の正体を知っている、と分かるように。聞くかどうかは九郎くん次第)
自分を責めちゃう気持ちはわかる。嫉妬ってやつかな。そんな感情を抱いちゃったことに後ろめたさを、さ。
でも、そんなの普通の気持ちだよ。思うだけならなんの問題もないと思うよ。苦しいとは思うけど、悪いと思うことはないよ。
仕方がないよ……。

烏丸 九郎 > はは、そりゃ驚くなって言う方が無理だぜ。
そもそも師範って気づけねぇかもな!
っと、そりゃさすがに失礼か…。でも、いきなり違う格好で出てこられたら
驚いちまうな。うん。

(コクリと頷き考える。あの道着以外の師範…
制服姿なら、ギリギリで思い浮かぶ。)

(嫉妬と言われれば、ギリッと唇を噛む。
そのとおりなのだが、やはり、認めたくはない。
だが、認めざるをえない。)

そっか、ありがとよ…。でもよ…あいつは、ほんとに、なにも悪くねぇんだ。
だから、この感情は俺の責任だ。

鈴成静佳 > とりあえず、どんなファッションで出てきても、とりあえずは褒めてあげることね。
焔ちゃんは男っぽいけど女の子なんだよ? 褒められたら絶対嬉しがるからさ。ね?
(あのボデーは道着に包みっぱなしにしておくには勿体無いものがある)

……でさ、アタシが疑問に思うのはそれだよ。「責任」ってなにさ。
(真面目な、というよりも睨みつけるような顔で九郎くんを見つめる)
そりゃ、九郎くんが「その人」に負の感情を抱いて、その結果殴ったり誹謗中傷したりしたならそれはよくないよ。責任も感じるべきだよ。
でも九郎くんはただ、悪く思っただけじゃん。それだけなのに、それ自体に責任とか、負い目を感じちゃうなんで、それこそ負の連鎖ってやつだよ。
自分だけを追い込んでさ。あんなに全身凝りきっちゃうくらいにさ……(海岸でのマッサージを思い出す)

「嫉妬」ってのが当たってるならさ、いいじゃん、嫉妬して。
その人が嫌いなら、頑張って見返してやるのもいいと思う。その人に触れたくなければ、堂々と他人の振りしてればいい。
苦しい気持ちにもなると思うけど、「嫉妬しちゃった」ことそのものに負い目を感じるよりは絶対楽だよ?

烏丸 九郎 > ああ、努力はするぜ。あんまり珍妙な格好されたらさすがに笑っちまうかもだけどな。
師範はなんて言うか…女の子っていうか、師範だしな…
まぁ、女の子であるところは認めるけどよ。

(なんというか、師範は男前なのだ。
だから、女の子という意識があまりない。)

何も悪く無い奴に悪感情を持つならともかく…あいつは、氷架の恩人なんだよ。
それに嫉妬だなんて…悪く思うなんてよ…
あんまりにもかっこ悪くて…責めずにはいられねぇよ。自分を。

(睨みつける静かには笑ってそう返す。いつの間にか歩みは止まり、男子寮の入り口で話し込んでいた。)

鈴成静佳 > (ああ、やっぱり氷架ちゃんのことで、零くんのことか。99%の想定が100%になる。フン、と鼻息を鳴らす。とはいえ、「恩人」とはなんだろう?)
(静佳は「炎の巨人事件」の詳細は知らない。その場に零くんや九郎くんが居たことまでは知らないのだ)

……むぅ。恩人がどういうのかは知らないけどさ。それとこれとは別、って考えられない?
氷架ちゃんの恩人で、いい人。そうかもね。でもそれと「氷架ちゃんを取った」ってことは別だと思うよ。
それを悔しいって思う気持ちまで仕舞いこんで、自分の心に嘘をついて、一人で苦しむなんて、人生損してるッスよ。
そんな九郎くんは、アタシ、見たくないな……。
(笑みを浮かべる九郎くんとは対照的に、静佳の面持ちは沈痛だ。泣きそうにも見える)

烏丸 九郎 > …そ、そんな顔すんじゃねぇよ。
だけどよ、俺は…そんな心は誰にも見せたくねぇんだ。
たとえそう思ってたとしても、俺は、人生損しても…
お前や氷架や…友達には…カッコわりぃところはみせらんねぇよ。

(今の段階でかなりかっこ悪いのだが…感情を吐露してしまえば、それこそ…)

鈴成静佳 > カッコ悪いところを見せたくないんだったら、いまの九郎くんは……寮でこそこそしてるような九郎くんは、とってもカッコ悪いと思うよ。
そりゃ、アタシが男子トイr……男子寮におじゃましてたところに偶然ばったりだったから仕方ないかもだけど。
(とはいえ、いま思い出せば、浜辺で黄昏れる九郎くんも十分にカッコ悪かった……。ただ疲れていただけかと思っていたが)

ホントにかっこいいヤツってのはさ、どんな時でもかっこいいと思うよ。
寝てるときでも、テスト中でも、トイレの中でもね。
カッコ悪い瞬間を隠そうとしていろいろ小細工や嘘をつくのは、やっぱりカッコ悪いよ。そんな状態で上辺だけカッコつけても、それは「カッコつけ」だよ。

「音界の覇者を目指す」だっけ? 氷架ちゃんが言ってた気がするけど。
髪も赤く染めてさ、格闘技も習い始めてさ、九郎くんがホントにカッコイイ男を目指しているんならさ、自分にだけは嘘はついちゃダメだよ。
アタシはカッコつけの九郎くんじゃなくて、カッコイイ九郎くんがいいな……。氷架ちゃんもそう思うと思うよ。
(沈痛な面持ちは消えたが、その視線には寂しさが滲む)

烏丸 九郎 > っ……。

(ぐうの音も出なかった。少年は言葉をつまらせ、黙ってその視線を受け止める。
しばらく静寂がロビーを支配する。
少年は、思わず静佳の肩に手をおいて、ようやく口を開く。)

すまねぇ。
そう、だな…。情けねぇ…。
カッコわりぃよ、ほんとに…。
俺は、悔しかったんだな…やっぱ。

(眉毛をハの字にして、それでも笑顔を見せたまま、静佳に謝る。)

鈴成静佳 > 素直になったね、九郎くん。
(肩に手を置かれれば、その手に自分の手を添え、静佳も笑顔を浮かべる)

九郎くんは軽音部のリーダーでボーカルなんでしょ?
軽音部の顔で、氷架ちゃんや他のメンバーを引っ張っていくんでしょ。そんなヘンな顔してちゃダメ。ビシッとしなきゃ。
悔しい気持ちがあったらバネにしていくべきだよ。前向きで行かなくちゃ。ね?
(九郎くんの胸板に、服越しにどん、と握りこぶしを当てる。心臓に喝を入れるように。初対面時の電車の中でそうしたときのように)

烏丸 九郎 > へへへ、そう、だな。
まったくもってその通り…情けねぇ顔は、ここまでだ。

(胸に拳を当てられると、顔をあげて両手で拭う。
両手を下ろせば、そこにはいつもの笑顔の少年がある。)

ま、修行に行くのはほんとだからよ。
ちょっと寮は一旦出る。
俺にようがあったら、俺流道場の方に来てくれよ。
ありがとな、修行に行く前に…ちょっとスッキリしたぜ。

鈴成静佳 > フフッ、アタシでスッキリしてもらえてよかった!
(久々に、九郎くんの普段の笑顔を見れた気がする。ほっと肩の力が抜け)
うん、修行、気をつけて行って来てね。氷架ちゃんに居場所聞かれたらそう言っておく。
身体を動かして気持ちの整理をつけるのもいいと思うよ。焔ちゃんとも仲良くね?

じゃ、アタシはそろそろ帰るね。今度は海あたりで逢うかなー? 水着姿でさ。フフッ♪
(九郎くんを見送りつつも、自分も女子寮へと帰ろうとする)

烏丸 九郎 > へへ、生活委員、向いてるかもな。静佳は。
それじゃ、師範に幻滅されねぇためにも、ちょっくら技の1つでも習得してくるぜ。

(少年は駆け出そうとするが、水着姿と聞いて少し顔を赤くする。)

こ、こんど海で会うときは、ショボくれた顔なんてしてねぇだろうからよ。
カッコつけの意地ってやつを見せてやるからな。

(そう言い残して駆けてゆく)

鈴成静佳 > ………フフッ、結局はカッコつけかぁ。まぁそれはそれで。
(呟きながら、逆方向へと歩いて行く。笑顔で)

ご案内:「ロビー」から鈴成静佳さんが去りました。
ご案内:「ロビー」から烏丸 九郎さんが去りました。
ご案内:「ロビー」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。
日恵野ビアトリクス > 夜。
どうにも寝付けなくてロビーまで降りてきてしまった。
この時間だから当然ながら誰もいない。静かなものだ。

少し歩き回ったら帰ろう。そのうち眠気が来る。
そう考えてぼんやりとロビーを歩きまわっていると、
七夕の笹飾りが目についた。
翌日には川に流されてしまうだろうか。

日恵野ビアトリクス > そういえば短冊に何も書いてなかったな、と思い出す。
ご丁寧に短冊と鉛筆が側に備え付けてある。
まだ間に合うなら手慰みに書いてしまってもいいだろう。

願い事を書く。要は、書き初め――年始めに一年の抱負を書く、それと同じだ。
言葉にすることで気持ちをあらたにする、ということだ。
『言霊』という考え方もある。
やっておいて悪いことはないだろう。

日恵野ビアトリクス > (しかし何を書こう)

いざ鉛筆を取ったはいいが、手がピタリ、と止まって動かない。

(願い事ってなんだ)

まず最初に思いつくのは――
「…………」
かぶりを振る。
とてもそんなこと、誰が目にするかわからない場所に書けはしない。

日恵野ビアトリクス > もう少し無難な方向で考えてみる。
絵がうまくなりたい、お金がほしい、体力を付けたい……
いろいろと願いはなくもないがどれも虫が良すぎて恥ずかしい。
毎年こういう悩み方をしている気がする。

数分悩んだ末に鉛筆を動かし、書いたものは――

『一日一枚』

日恵野ビアトリクス > ビアトリクスはデッサンやスケッチで毎日必ず
スケッチブックを1ページ以上埋めることを習慣として自らに課している。
それを継続していきたい、という意味だ。

「……本当に書き初めみたいなことを書くなよ」
自分で自分にツッコミを入れながら、それでも笹に吊るす。
そうしてロビーを去り、自分の部屋に戻った。

ご案内:「ロビー」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。
ご案内:「ロビー」に紺 死郎さんが現れました。
紺 死郎 > 朝。着流し姿の男が伸びをしながらロビーへ現れる
「んん・・・」
開いているのか閉じているのか判断の難しい彼の細い目に留まったのは色とりどりの短冊達。
鮮やかな色彩に目が覚めて。ああ、昨日は七夕だったな。と思い出す
「あれま。懐かしいですねぇ七夕の願い事」
どれどれと筆を執り適当に短冊を一枚取る
「さてなんと綴りましょうか・・・」

紺 死郎 > 具体的な願いが浮かばずふと顔を上げる
『一日一枚』
誰かの書いた短冊だ。
「へぇ。どなたさんが書いたんでしょうかね。 あたしにはちぃとも分からないや」
誰かに見せて語るわけでもなし。個人の願い事というものはこのくらいでいいのだろう。そう思うと気が楽になって自然と筆が動いた
『たらふく 喰えますように』

紺 死郎 > 「書いてどうにかなりゃ苦労はないんですけどねぇ」
へへへ・・・、と苦笑しながら欠伸を一つ。そういえば朝食はまだだったとロビーを後にする

ご案内:「ロビー」から紺 死郎さんが去りました。
ご案内:「大浴場」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。
日恵野ビアトリクス > 昼ごろ。
寮の大浴場が最も空く時間帯。

最終日の試験は筆記ばかりで特に問題なく終わった。
進級に支障が出ることはないだろう。
試験時間は午前の数コマに集中しており、
早く下校が叶ったので、浴場に誰もいないのを確認して一人で入った。
同性異性問わず裸を見られることを好まないため、
普段は個室のユニットバスばかり使っている。

「ふう……」
やはり広い湯船を自分だけで独占というのは気持ちいい。
ユニットバスでは得られない快感だ。

日恵野ビアトリクス > だら、と湯船の縁に腕を置き、その上に顎を乗せる。
あまり筋肉のない二の腕の肉を指でつまんだ。

先日いきなり水着ファッションショーになったのはビビった。
日頃から肌の手入れをしていてよかったと思う。
女物の服や水着を着るのに日々のスキンケアは欠かせない。

保湿をする。早寝早起き。紫外線を浴びない。
脂っこいものばかり食べず、ちゃんとビタミンのある食べ物を摂る。
etcetc...
普通の女性も大変めんどうくさく思っているだろうが、
女装を行う男性は普通の女性以上に失点が許されないのだ……。

日恵野ビアトリクス > 毎日ちゃんと一般教養の勉強をして、
絵や魔術の修行を欠かさず、毎晩早めに寝て……
まるで修行僧のようだ、とビアトリクスは思う。

女性のように装って生きることは別に構わない。
けれどそれは自分に求められていることなのだろうか、
とは思う。

自分のしたい格好とは果たして何なのだろうか。
水着は男物でもいいかと一瞬思ったが、自分への似合わなさは致命的だ。
本来の性別と合っていなくても女性物を纏ったほうがはるかにましだ……

湯船から上がる。
誰に見られているというわけでもないが、腰にはタオルを巻いておく。

日恵野ビアトリクス > 汗を流し、身体と頭を洗う。
誰も居ないのをいいことに、毛の処理もすませておく。
入浴時に毛を剃るのは手軽だが、高温多湿の環境ゆえに肌を痛める原因となることもある。
(まあいいや)
肌を持ち込んだ化粧水で整え、全身の各所にクリームを塗って
剃刀で剃っていく。

ご案内:「大浴場」に湖城惣一さんが現れました。
湖城惣一 >  裸。一糸まとわぬ裸のままで目付きの鋭い男が入ってきた。
一応肩にタオルはかけているが、さらさら隠すつもりはないらしい。
「……む?」
 誰も居ないとは思っていたが、どうやら先客が居るらしい。
湯気でかげって良くは見えないが――あれはどうやら、一度出会った少年のような……。

日恵野ビアトリクス > 丁度処理が終盤にさしかかり、そろそろシャワーで流そうかなという時に。
「あっ」
毛の処理というのは肌を傷つける可能性があるために集中を要する繊細な作業だ。
だから人の気配に気づけなかった。
目が合う。

「……」
見られていただろうか。いや見られたに違いない。
「…………」
油断していた……なぜ空く時間帯とはいえ人が来る可能性がある大浴場で
自分はこんなことを…………

「………………」
流し台で、細く白い手足を亀のように丸めて頭を抱える姿があった。

湖城惣一 > 「…………何か拙かったか」
 顎を撫でてから思案する。ひとまず、視線を逸らした彼の様子を見て、一度こちらも視線を外す。
やや離れた位置の流し場に座り込むと、身体を流しながら。
「……」
 何が悪いかがわかっていないままに謝るのも違う。理由を考える。
「日恵野だったか。……どうやら、気分を害してしまったようだな」

日恵野ビアトリクス > 「いえ、その…………お見苦しいところを……」

このまま固まっていても仕方ないのでシャワーでクリームを流す。
さっぱり。ビアトリクスはこのシャワーで流す工程が密かに好きだ。
とてもいい気分――誰かに見られていなければ。

「…………湖城先輩は……悪くありません、から……」

ようやくそれだけを言う。
今自分がどんな顔になっているか見たくない。
さっさと去りたい気分でいっぱいだが、
あまりにもいたたまれなくて立ち上がる気力と勇気が起きなかった。

湖城惣一 > 「見苦しい? 何がだ?」
 あまり人の機微を介さない湖城という男。
ひとまず頭を洗いながら尋ねる。
 いつもは相手の目を見つめながら話す男だが、
流石に頭を洗いながらそれはできない。
「見苦しいというだけなら、俺の腹などよほどだろう」
 自覚はあるらしかった。男の腹には常に、真一文字の傷が刻まれている。

日恵野ビアトリクス > ビアトリクスにとって化粧やスキンケアなどの瞬間を
見られることはたまらなく恥ずかしいことだった。
通学電車内で化粧を始める女性の気持ちなど全然わからない。

「腹……」
横目でちらりと伺う。
腹の傷だけではなく、湖城の鍛えられた逞しい肉体が目に入り慌てて目をそらす。
自分の裸体を見られるのも嫌なら、他人の裸体を見るのも苦手であった。

「見苦しいとは思いませんけど……何かの風習なんですか、それ?」
俯いて座り込んだまま、そう尋ねてみる。
着衣していた落第街でもそこだけはだけさせていたし、まさか露出趣味なのだろうか。
ととんちんかんなことを一瞬考える。

湖城惣一 > 「俺は……」
 隠すつもりはない。頭の泡を流し洗い終わったあと、いつまでも残る腹の傷を撫で。
「俺は深い意識の底に潜ることで"神域"へと至る」
 さも気にしないといった素振り。無表情で、淡々と。
「だが、ただの精神統一では俺の求める境地には至れない。
故、俺は神に命を捧げることによって、その剣技の深淵に沈む」
 つまりは供犠だ、と、事も無げに告げて。
「趣味といえば、趣味だろうな。俺は誰かと競いあいたいわけではない。
ただ、己の剣の果てを見たいだけで、な」

日恵野ビアトリクス > 少し気持ちを紛れさせようと思って、もう一度シャワーの栓をひねり
流しっぱなしにしてそれに打たれる。

「命を……」
そのために腹を割く、ということだろうか。
供犠、と聞いてもうひとり思い浮かぶ人物がいる。
湖城とは正反対のような人物だが。

「……なぜそこまでして?
 あるいは、なにかきっかけでもあったんですか」
“己の剣の果てを見たい”――そう思うように至ったのは。

湖城惣一 > 「キッカケか」
 果たして、それはどこからだったろうか。
「特には――無いな」
 無い。そこに理由はない。あまりにも己の命に頓着しないあり方。
「俺は勝ち負けに価値を見いだせない。
だから、俺はただ俺の剣を独りで追求することだけが人生の目的だった」
 ただ神域に沈みたい、というシンプルな願望。
それだけが男の心にある。
「趣味も、使命もないような男だ。だから、俺にはこれしかなかった」
 だから腹を切る。それは家族にも理解されぬあり方であった。

日恵野ビアトリクス > 「無い……」
さすがに二の句が告げない。
ビアトリクスにも湖城の精神を理解する
(あるいは、理解したつもりになる)ことは難しかった。
剣士――というよりは剣そのものになることを望んでいるような。
研ぎ澄まされた刀身をつきつけられたような戦慄。

シャワーを止め、蛇口から冷たい水を洗面器に出し
ぱしゃぱしゃと顔を洗う。

「――すごいですね」
ようやく出てきた言葉がそれだった。
羨ましいとすら感じる――その迷いのなさは……
何か一つのことに殉じようとするその姿は、自分の得られないものだったから。

湖城惣一 > 「すごくはない」
 それは心の底から出る言葉だ。
「結局、俺は阿呆なだけ。君の気分を害した理由も分からん男だ」
 そういって、身体を洗う。ただただ、男は一人で完結しているようで。
自分のあり方も、自分の剣も。そのどちらにも価値を見出していなかった。
「人生経験、という一点では、恐らく俺よりも君の方が豊富だろう」

日恵野ビアトリクス > 「…………」
否定の言葉に、納得行っていないという表情を浮かべ。

「でも――」
言いかけて、口をつぐんだ。

いつも、他人の生き方に触れる機会があると、劣等感に慄く。
何者にもなれない自分の卑小さが恥ずかしくて、いつも下を向いている。
しかし本当は、単に目指す方向、重きをおくところが違うだけなのかもしれない。
それがまだわかっていないだけにしても。

ふう、と息をついて軽くタオルで身体を拭く。

「興味深い話でした。……お先に、失礼します」
そろりと、湖城の後ろを通りすぎて、浴場を後にした。

ご案内:「大浴場」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。
湖城惣一 > 「…………」
 参った、と。口をつむぐ彼の気配。
やはりどうにも自分は話すことに向いていないと湖城は思う。
 身体を洗い終わり大きく息を吐く。
 今学期からは色々と考えさせられることが多いことに気づく。
「ああ。また会おう、日恵野」
 言いながらすれ違う。自分は湯船へと向かう。
熱い浴槽に浸かると、軽く目を閉じた。

湖城惣一 >  タオルを頭に乗せて肩まで身体を沈めていく。
熱い湯がじわりと傷跡に染みこんでいくような感触。
 知れず大きな息が漏れた。
 ――人付き合いとは、難しいものだ。
 思えば人の気分を害することの、なんと多いことか。
他者と関わりが薄かった男は、ただ大きく息を吐きながらその難しさを思い知った。

湖城惣一 >  生涯で悩みを抱えたことはほとんどない。
しかし人と関わることで考えることは増えたように思う。
 立ち上る湯気を何気なく見上げ、三度目の息を吐いた。
 なるほど、自分もやはり未熟なのだ、と。そんな自覚。

ご案内:「大浴場」から湖城惣一さんが去りました。
ご案内:「大浴場」に湖城惣一さんが現れました。
湖城惣一 >  そのまま、湖城惣一は空腹を覚えるまで湯船に浸かり続けるのであった。
ご案内:「大浴場」から湖城惣一さんが去りました。