2015/08/08 のログ
帯刀わたいれ > (少年の隣に座り、軽くシャワーを浴びると持ち込みの石鹸をタオルで泡立てる、
十分に泡立ったのを確認し、髪の毛に付けるとがりがりと頭を洗っていく、
帯刀は全身くまなく石鹸で洗う派である、サッパリ感が好きなのだ)

(隣で身体を洗いながら、帯刀も必死で無言を打ち破ろうと頭を回転させていた、
脳内で「初対面の人と話すこと」について必死で考えているが、
空気の読めないクソポン刀は相変わらずの騒音と絶叫で帯刀の思考を邪魔する、
折れろクソポン刀、僅かに殺気立つが、慌てて殺気をしまう)

神宮司 ちはや > ひやっとした何かが横から伝わってぎょっとしながら横の相手を盗み見る。
なんというか、恐ろしい感じを受けたのだがそれも一瞬のことで気のせいかと思い直すことにした。
そのうちすっかり洗うところが無くなってしまうまで無言で考えた末に、
ついにお湯をかけておわりという段階で帯刀にかけた言葉は

「あ、あの……変なことお聞きしますけれど……剣とか刀とか……それか何か”よくないもの”を身体にしまっていますか?」

何故かそんなことが口をついてでた。

帯刀わたいれ > (髪を洗い、次は体を洗うかと腕を動かしたところで、隣から言われた言葉に)

「!」

(言葉の内容__帯刀わたいれの肉体の本質を突いた言葉に、思わず石鹸を落とす、
この学園に来てから自分の体質について看破されたことは無かったが__
やはり、解る人には解るのか)

「……ええ、剣とか、刀とか、そういうものを私は”喰わされた”、らしいです」

(そう言って、手のひらから僅かに妖刀「一目恋」の切っ先を出す、
切っ先からは一切の流血は無く、手のひらから「取り出した」ように見える)

神宮司 ちはや > 帯刀の手のひらから出された切っ先にわ、と反射的に驚く。
だが、切り裂かれてはいないことを悟るとそっと覗きこむように顔を近づけた。

「”喰わされた”……?っていうのはあなたの意思で望んで入れてるわけじゃないんですか?
 あ、ご、ごめんなさい急に、変なこと聞いちゃって……
 なんとなくさっきからあなたの方を見てたらなんとなく剣とか刀とかがちらちら見えたような気がして……

 えっとぼく、一年の神宮司ちはやって言います……。」

そろそろと申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめんなさい、本当は知られたくないこととかだったら暴き立てちゃったみたいで……
 ここ、そういう不思議な人もたくさんいるのはわかってるけど実際目の当たりにしちゃうとびっくりしちゃって」

帯刀わたいれ > 「……まあ昔色々ありまして」

(過去にされたことは相当胸糞悪いことだし、積極的に言うことではない、
やはり見えるものには見えるのか、なんて感心しつつ、適当にはぐらかす)

「ちはやさんですね、私は帯刀わたいれです、別に隠してないので大丈夫ですよ」

(頭を下げる少年を落ち着かせるように、穏やかな声音で言う、
一目恋をしまい、落とした石鹸を拾う)

「あんまり気にしなくていいですから、早くシャワーを浴びたほうがいいですよ」

(冷えますよ? と体を洗う手を止めた少年に向けて笑う)

神宮司 ちはや > 本人が乗り気でないのならばあまり事情に立ち入っては失礼だろう。
それ以上は聞かずに相手の自己紹介に少し緊張をといて

「帯刀わたいれさん、ですね。わたいれって珍しいお名前……。よろしくお願いしますね。
 あ、そっか……風邪ひいちゃう……」

言われてシャワーの蛇口をひねり湯を浴びる。
身体の泡を流し、温まってから湯を止めると座っていた椅子を洗って片付ける。

湯船に向かうとそっと足を入れ、湯の中に身体を浸した。

「あ、あのでも……隠してないことでよかったです。
 こういう急に変なことを聞いたりして、変な奴って思われることもちょっとあったりするから……」

帯刀わたいれ > (珍しい名前、という言葉に苦笑して)

「確かに珍しいですよね、「わたいれ」って名前、
名前を付けた人曰く、「空っぽの身体に腸(わた)を入れる」って意味らしいです、
……結構好きですよ、この名前」

(「人の形を否定された鞘に肉を与えるために」、養父はそう言っていた、
養父に拾われたからこそ、この名前を得たからこそ__自分は「鞘」でなく「人」であると知った、
恥ずかしさとくすぐったを覚えながら、体を洗う)

「別に気にしなくていいんですよ、鋭いのは”優れていること”であって”変なこと”じゃないんですから」

「ま、この島で”そういうもの”が解るってのは大事な才能ですよ、
ここ、島の外とは違って”そういうもの”が多いですから」

(足の指の間までくまなく洗いながら、軽い調子で励ます、
実際この島は魔術や異能が混同し、闇鍋のごとき混沌を為している、
そんな中で爆弾の火薬を嗅ぎ分けられる感覚は大事だろう)

神宮司 ちはや > 自分の名前を好いていると言う帯刀に良い物感じる。
名前の意味は少しおどろおどろしいものの、
彼にとって空っぽの中に何かが入る、詰まっているということは大事なことだというのはなんとなく伝わった。

「そんな意味だったんですね。ちゃんと意味がわかるととてもいいお名前だなって思います。」

そこに彼が抱く真の意味がわからなくとも誰か名づけてくれる相手が居るということは大事なことだ。
帯刀わたいれというものを見ていてくれる人が居るということだから。

”優れている”という言葉には少し悩ましそうに眉根を寄せる。

「そうでしょうか?
 あんまり鋭すぎるとそのせいでいろいろなことに気づいてしまうし自分が傷ついたり誰かを傷つけちゃったりしないでしょうか?
 ぼくはあんまり、そういう才能でいいことがあったことがないからかもしれませんけど……
 帯刀さんは刀?を体にしまっていていいことってありましたか?」

湯の心地よさに包まれていたら少し眠くなりかけてきた。
長旅の疲れが今になって出てきたのかもしれない。
浴槽の縁に腕と顎を乗せる。

帯刀わたいれ > 「ふふっ、ありがとうございます」

(シャワーで全身の泡をくまなく落とし、濡れた長髪を持ち込んだ髪留めで纏める、
浴槽に座り、足で湯加減を軽く確かめると湯に浸かる)

(刀をしまっていて良いことはあったか、という言葉に息が詰まる、
脳裏に浮かぶのは魔術結社での地獄の日々、初めて人を切り伏せたときの冷たい快楽、
愛々之射鬼の絶叫が止まる、消え去る声にどうしようもなく苛立った)

「……それは」

(僅かに声が震える)

(体質と妖刀達のせいで人生はめちゃくちゃになったし、なんとか呑まれずに生きようとしても不安は消えない、
この身体のせいでみんな離れていく__そんな想像がずっと脳裏にこびりついている、
妖刀をなんとかして剥がそうと思ったことはある、しかし肉体と癒着しきった刀を剥がすことはできなかった、
この身体で得したことなど一度もない)

神宮司 ちはや > 帯刀の声の震えと表情の曇り具合に、落ちかけていた瞼を見開いた。
軽く口にしてしまってはいけないことを自分はいってしまった。
それを悟った時、どうしようもない後悔が襲ってきた。

そうだ、鋭いことは優れていることだ。だけど優れていることがイコール幸福につながるかと言われればそんなことはない。
抜きに出たものは多かれ少なかれ注目を浴びる。決して平坦な道は選べない。
きっと彼の才能だってそういうことだ。自分だってそうなのだから。

自分の気の利かなさと失敗に恥ずかしくなってそのまま湯船に沈んでしまいたくなる衝動を必死に抑えて帯刀に向き直る。

「……ごめんなさい。全然分かってないのに変なこと聞いちゃって……。
 良いことばかりじゃ、ないですよね……そんなの。わかっていたのに、ごめんなさい」

小さく呟いて、気まずさに湯から慌てて上がる。

「ごめんなさい、今言ったこと忘れてください。
 それから……気休めかもしれませんけど、別に帯刀さんのそれ、僕は”優れている”って思っていますから」

彼が自分の鋭さをそう認めてくれたように。
そんなことを言っても何も取り返しがつかないことはわかっているが、
そそくさと浴場を後にすると脱衣所で身支度を整え髪を乾かす間も惜しんで大浴場をあとにした。

もう少し、考えてからものを言えばよかった。自分の迂闊さを呪った。

ご案内:「大浴場」から神宮司 ちはやさんが去りました。
帯刀わたいれ > (そんなことは、そう言おうとして__脊椎から直接ぶつけられるような絶叫に息が詰まる、
いつもより激しく響く声に耐えながら、目は少年の小さな背中から離さない)

「あっ……」

(立ち去る彼に手を伸ばそうとして、ぐい、と腕を掴まれる感覚を覚える、
備え付けの鏡に目を向ければ、紫を帯びた瞳と玉鋼色のメッシュ、
__先ほどの絶叫といい、愛々之射鬼は彼を引き留めたくないらしい)

「……このドス野郎が」

(冷めきった声で呟きながら、浴槽から上がる、
脳裏に浮かぶのは彼が立ち去る前に放った言葉、
__「僕は”優れている”って思っていますから」
頭を押さえながら大浴場から出て、着替えると髪も乾かさずに立ち去る、
どうしようもない苛立ちを妖刀達にぶつけながら)

ご案内:「大浴場」から帯刀わたいれさんが去りました。