2015/09/11 のログ
ご案内:「ロビー」に嶋野陽子さんが現れました。
嶋野陽子 > (今頃、大西洋を渡り終えたかな?)
敬一君の事を考えながら、夕食を作って食べ、内
風呂に入った陽子は、いつものようにロビーで涼
もうと出て来たところで、ロビーの大画面テレビ
の映像を見て凍り付く。
《(速報)英国航空便がNYでハイジャック》
というテロップの上に、空港の端の方に駐機した
飛行機の映像が流れている。英国航空のA3000、
つまり間違いなくBA001便、敬一君の乗った便だ。
 滑走路にいるという事は、陽子の言った通り、
ステラが操縦をハッキングして強制着陸させたのだ
ろうか?
 音声が聞こえるように、テレビの前に座り込むと、
『・・・犯人は5名で、コックピットに押し入り操
縦士を殺害し、機体をニューヨーク市内に突入させ
ようとしましたが、強力なハッカーが乗客の協力を
得て操縦系をハッキングし、ハイジャック犯の操縦
を排除してケネディ空港に強制着陸させる事に成功
した模様です・・・』と、陽子の推測を裏付けるア
ナウンサーの声が聞こえる。
(よくやったわ、ステラ・・・地上に降りれば、後
は普通の人質事件だわ)と、不安ながらも最悪の事
態を回避したことに安堵する陽子。

嶋野陽子 > 『・・たった今続報が入りました。乗客に
日本人が1名、英国の大学院に留学中の、川治
敬一さん22歳です。ニューヨークで開かれる
学会に出席するために搭乗していたとの情報で
す・・・』同時にテロップに《日本人乗客1名》
と追加される。敬一君の搭乗が確認されたようだ。

見ているうちに、機体からかなり離れた場所で
待機していた警官隊の前に、6つの光の柱が現れる。
陽子には見慣れたトランスポーターの光だ。6人
は宇宙船のトランスポーターの最大能力だ。緊急
時に乗員全員を転送で脱出させられるよう、乗員
定数と同じ6人分の能力を備えているのだ。
しかし犯人は5人組のはず。6人目は一体・・・
陽子の疑問は、6人のうち1人が実体化してすぐ
に倒れた事で中断する。
倒れたのは東洋系の大柄な若い男で、敬一君に似
ている・・・まさか、敬一君が!?
『・・あ、機内から6人が転移された模様です。』
こちらの世界でも、公共放送のニュースキャスター
はどんな時でも落ち着いた声を維持できている。

犯人達と思われる5人のうち3人は武器を向け、
2人は何らかの魔術を放とうとするが、その前に
警官隊側の魔術師によると思われる結界で封じら
れる。

 倒れた男に近づいた警官が、すぐに救急隊を呼
び、男は救急車で運ばれていく。

嶋野陽子 > 次に機体のドアが全て開き、脱出
用シュートが展開され、乗客が次々と飛び出して
くる。犯人が拘束されたのを見て、CAが避難を
開始したようだ。
全翼構造のおかげで、初代の3倍の300人の乗
客を乗せられる機体から、次々と乗客が滑り降り
てくる一方最前部の扉が1か所だけ避難に使われ
ず、そこにタラップ車が横付けされ、警察と救急
隊が機内に上っていく。
どうやらハイジャック事件は解決したようだ。後
は敬一君の消息が判明すれば・・・

嶋野陽子 > 『・・本日は、英国航空機の
ハイジャック関連のニュースのため、時間を
延長してお届けしております・・・』
とニュースキャスターが言いかけた所で、新
しいメモが渡される。プロンプターを使わな
いのは、誤変換事故防止のためで、メモも当
然手書きだと、元の世界では言われていたが、
このメモを見たキャスターの顔色が変わる。

『・・たった今新しい情報が入りました。日
本人乗客の死亡が確認されました・・日本大
使館への連絡によると、川治敬一さんは先程
救急車で運ばれて行きましたが、病院にて死
亡が確認されたとのことです。』

「・・う・・・嘘・・・」
陽子の世界から色が消える。

嶋野陽子 > その後どうやって部屋に戻ったのか、
陽子には記憶が無かった。気が付いた時に
は、自室の布団で、枕に顔を押し当てて泣
いていた。

ご案内:「ロビー」から嶋野陽子さんが去りました。