2016/02/08 のログ
ご案内:「部屋」に雪城氷架さんが現れました。
雪城氷架 > 「よしっ…」

4人以上でルームシェアする大きめの一室
そのダイニングに陣取るエプロン姿の氷架

キッチンには大小様々な買い物袋が並んでいる

雪城氷架 > 卵2パック
グラニュー糖1kg一袋
薄力粉一袋
牛乳2パック
バター
ココアパウダー
生クリームいっぱい
スイートチョコレート大量
ブランデー

準備は完璧である

雪城氷架 > さて、この雪城氷架
どこぞのお嬢様と言えるような風貌であるが、こと『女の子教育』に関しては完璧とも言える環境で育っている

化粧等の外見の整え方は勿論、
炊事洗濯掃除お茶お花果てにはお菓子作りまで、子供の頃からばっちり仕込まれている

それもこれも『性格が男の子っぽすぎる』という理由から来る周囲の涙ぐましい努力の結果であるが

雪城氷架 > 当然バレンタインというイベントを逃したこともないし、チョコレート作りも手馴れている

ただし今回は特別だ
いいや、今年から特別とも言えるだろう

家族や友人に作るものとは別に、
夏に初めてできた恋人の分を作らなければならない
それは気合も入ろうというものである

雪城氷架 > そういったこともあり、いつもの型取りチョコではなく…

「ちゃんと焼ければいいけどなぁ」

本格的なチョコレートケーキを焼くことに挑戦しようというのだった

雪城氷架 > まずは卵を割っていく

卵白をわけ、クッキングシートを敷いたボウルにいれてハンドミキサーで泡立てていく
泡の大きさが全体にそろってきたら、グラニュー糖を80g加え更に混ぜ合わせる

ふわふわになったら残りのグラニュー糖80gも加え、
きめ細かくツヤのあるメレンゲを作ってゆく

「(この時点で美味そうなんだよな…)」

つまみ喰い衝動を抑え、作業を続ける

雪城氷架 > 「こんなもんか……?」

ハンドミキサーを持ち上げると、メレンゲが僅かに角立つ
あまりやりすぎても良くないらしい、これぐらいがベストだろう

「次はー……」

何にしても初めての挑戦
作業自体は手馴れているものの、レシピを見ながらの作業である

「卵黄をいれて……薄力粉と…」

先ほど別けた卵黄をメレンゲに投入
そして薄力粉をダマが入らないようフルイにかけながら加えていく

ゴムへらをつかって切るように生地を混ぜる
ここで練らないようにするのがポイント らしい

雪城氷架 > 「さて」

生地は一旦おいておき、ここで次の作業である

耐熱ボウルにバターと牛乳を入れ、溶かして混ぜ合わせる
本来ならば電子レンジを使う作業だが…

「einfache ofen!」

流暢なドイツ語が発せされると共に、ボウルの中身が瞬時に融解する
分子運動の加減速を操る異能・マクスウェルコードにかかれば電子レンジは不要である

別に声に出さなくてもいいのだけど、出したほうが自分の使いたい力の領域をイメージしやすいのだ
…と異能物理学のテキストにも書いてある

雪城氷架 > 溶けたバターと牛乳にココアパウダーを加えて混ぜていく

なんとも言えない香りが食欲を唆る
これこそがバターの威力と言えよう

ダマの残らないように混ぜあわせたら、先ほど作った生地にこれを少しずつ加えてゆく

再びゴムへらで手早く切るように混ぜる 混ぜる 混ぜる

ココでもやはり練らないのがポイントであるらしい

雪城氷架 > 「よーし、これでいいだろ……」

ようやくケーキ本体の生地が完成である
用意しておいた型へ流し込み、トントンと型を叩きつけて空気を抜く

ここから生地を焼くわけだが、さすがに40分間も異能を使い続けるのはしんどい

大人しく170℃に熱しておいたオーブンにぶちこみ、一旦休憩である

「ふぅ、ここまではちゃんと出来てるな」

冷蔵庫からジュースを取り出し、コップに注いで飲む

しばらくの待ち時間である
キッチンテーブルに移動し、椅子に腰掛けてのんびりと待つ

雪城氷架 > ケーキ作りは長時間キッチンを占有してしまうが故、
ルームメイト達がいないであろう時間を見計らって調理を開始したのだが

なんだったらみんなでわいわい作るのも良かったかもな、なんてことを考えつつ
背もたれに体重を預け、スマホのゲームに勤しむ

ゲームなんてやっていれば時間などはあっという間で、
オーブンのタイマーが忙しなく鳴るまでにたいして間を感じなかった

待ってましたといわんばかりにオーブンに向かい、ふっくらと焼けた生地を取り出せば
香ばしくも甘い香りが部屋中に充満する

雪城氷架 > 台の上に固く絞った濡れ布巾を敷いて、型からスポンジを取り出す
ここでの失敗は許されない
新調に取り出し、新調に底と側面のクッキングシートを剥がしてゆく

さて、ここからこのスポンジを3枚にスライスするのだが
焼き上がりすぐでは崩れやすく切りづらい
本来ならじっくりと冷ましてから行う作業だが…

そこは再び異能の出番
氷架の異能は分子運動の加減速を自在に操作する
減速することによって熱いものを冷ますこともお手の物なのだ

「(…割とこの力、パティシエとかに向いてたりして…)」

雪城氷架 > 等間隔に、ズレがないように新調にスライサーをいれてゆく
これで上段、中断、下段と3つのスポンジになったことになる

一番難しい部分の作業を終え、一息

しかしバレンタインケーキとしては、ここからが本番である

雪城氷架 > 鍋に生クリームをいれ、そこへ砕いたスイートチョコレートを投入、溶かしてゆく

この作業はケーキだけでなく
バレンタインで友人や家族に配るチョコ用のものも兼ねる

故に大量
普段なら小鍋でやるところを大鍋である

酔うのではないかと思うくらい甘い香りが部屋に充満する

いやむしろ女子寮全体に甘ったるい香りが垂れ流れていそうだ

女の子ならみんなチョコ好きだろうし困ることはないか、
などという暴論で自分を納得させつつ、ゲロ甘スメルを発生させてゆく

雪城氷架 > 大量のチョコレートクリームが完成する
粗熱をさっさと異能で取り払い、ブランデーを適量落とす

更に異能を用いて温度を下げ、ケーキのコーティングに適した硬さにまで混ぜながら調整
普段なら時間のかかる作業もほらこの通り

異能を使えば1/5の時間で済むんです

と言わんばかりに急ピッチで作業が進む

雪城氷架 > 出来上がったチョコクリームをスポンジにたっぷりと塗りこむ
多すぎるぐらいに塗りこむほうが美味しそうなのでたっぷりたっぷり塗りこむ
一段目が終わったら重ねて二段目、二段目が終わったら重ねて三段目

この段の間にとろんとしたチョコクリームが挟まれているのがポイントである

しっかりたっぷりチョコクリームを塗り終えれば9割がた完成である

「…わ、我ながら美味そうじゃん…!」

ごくり、食べたくなる
しかし我慢だ。自分のために作ったものではない

異能で急速的に冷やし固め、最後の仕上げだ

雪城氷架 > キッチンの上に残った最後の小袋

その復路から取り出したるは…
そう、ケーキをデコるためのホイップ・シュガービーズ・ホワイトチョコレートだ

ここからが腕の見せ所であろう
女の子が食べるなら可愛らしいデコりかたで良いが、送る相手は男である

あまりに可愛くしすぎても微妙であろう
なのでビーズやホイップでの飾り方は程々に

中央のホワイトチョコプレートを少し大きめに作り、
そこにさっきのチョコクリームで文字を

文字を……

「………な、なんて書けばいいんだ…?」

ハッピーバレンタイン?
なんか普通すぎる

Dear相手の名前?
それもベタだろう

I Love you?
恥ずかしくて死ぬ

「うぅ…しまった、考えてなかった……」

雪城氷架 > 10分経過……

20分経過……

30分経過……

「……や、やっぱり、あいらぶゆぅ…?」

口にした直後にキッチン台にデコを叩きつける氷架
ダメだ、恥ずかしすぎる

「ぐぬ…まさかこんなところで躓くなんて……」

雪城氷架 > 「………」

逆にいえば、普段こっ恥ずかしくてなかなか口に出来ないようなことを、
こういうイベントの時だからこそ伝えることができる、というチャンスでもあるのかもしれない
昔の人はよくこういうものを考えたものである

「……ま、遠慮して渡すようなものでもないしな」

広めのホワイトチョコプレート
少しずつ絞りだす赤茶のチョコクリームがその上に踊るように、文字を形作ってゆく

『Frohen Valentinstag lieber.Rei
 ich liebe dich』

直接的な英語だとそれでもやっぱり気恥ずかしくて
自分に馴染みの深い言葉でそう書き連ねる
一息ついて、残ったチョコレートクリームとホワイトチョコを様々な型に流し込んでゆく
たまに混ぜてマーブル模様のチョコなんかも面白い
材料も多めにあったせいか、結構な量のチョコが出来そうだ
家族と友人と、それでも余った分は寮の仲間にでも配ったりしよう

雪城氷架 > 完成したチョコレートケーキと、型にいれたチョコ達を冷蔵庫に入れ。
つまみ食い禁止!のメモをぺたりと貼り付けて、閉める

「…あとは…メッセージカードでもいれればオッケーかな」

普段気恥ずかして面と向かって言えないこと、話せないこと
距離が近すぎて言えないことも結構出来てきた

多分こういうイベントって、そういうものを互いに確認しあうためのものなのだ

「楽しみだな、バレンタイン」

部屋だけでなく寮全体を甘い香りに包ませながら、満足気にそう呟いた

ご案内:「部屋」から雪城氷架さんが去りました。