2016/06/20 のログ
ご案内:「部屋」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 「アンスールよし、ユルよし、ペオースよし……」

てくてく、と玄関から中に歩いていきつつ、あちこちを指さし確認している司。
……この部屋には、巧妙に隠されているが大量のルーンが先んじて刻んである。
侵入者がいれば感知し報告するアンスール、防衛を意味するユル、秘密を守り内部へののぞき見等を防ぐペオースなど。
そもそも『文字を刻んで魔力を込める事で効果を発揮する』と言う特性のあるルーンは、能動より受動……待ち構える要塞に使う方がいいのである。
この司の部屋も、魔術師にとっての工房……つまり、要塞と等しいものとなっており、十分な防備が敷かれている。
その確認をしているのである。

ご案内:「部屋」に雪城 括流さんが現れました。
雪城 括流 > ここっ こここっ

窓の端っこ、カーテンの陰から何かが窓を叩くような軽い音が聞こえる。
もしそこを覗き込めば、なんだか睨み気味の括流が壁に張り付いているだろう。

鼻先で窓をつんつん っここっ。開けろと言っている様だ。

高峰 司 > 「ニイド、ハガル……」

刻んだルーンを確認しつつ部屋を歩き回っていると……何か、聞こえた。

「……………………」

しばし沈黙。
窓の付近に設置してあるニイドを発動して縛り付けようか……などと一瞬考えるが、絶対後で面倒臭くなるので我慢。
がら、と窓を開ける。

「なんか用か?」

相変わらずの仏頂面で問い掛け。正直面倒な予感しかしない。

雪城 括流 > 良い判断です。
まあ括流相手にルーンが効くかどうか、というとまた謎ですが。

開いた窓からしゅるん、と部屋の中へ入り込む。
胴体を少し縮めて、ぴょんと飛ぶとテーブルの上に。
その頭部を後ろの相手に向けてめぐらせて。

「ちょっとついでの用事もあるけど…
一番は、あの召喚獣についてなんだ。」

有耶無耶にはなってませんでした。じとー。

高峰 司 > しゅるん、と入ってくる蛇。アイツの事かな、と思っていたら案の定であった。

「…………やっぱか」

げんなり。
心底いやそうな顔でその言葉を聞く。あの戦乙女、どれだけ主に面倒を押し付ければ気が済むのだ。

雪城 括流 > よく見ればちょっぴり何やら不機嫌そう。しゅるるる、と舌をだしたりひっこめたり。
ただ、その不機嫌さを感じさせない口調でしゃべる。話題が不機嫌さの原因ではないようだ。

「その様子だと、手綱を握れていると言うわけではないようだ。
せめて彼女の立場をはっきりさせないと、あの在り様は学園の本質に対して危険を孕むよ。」

だから、と続けて。

「高峰さんはあの北欧のをどうするつもりなの。」

と問いかけた。

高峰 司 > 「…………」

はぁ、と盛大に溜息。
どうしようかといえばある程度方針は決まっているのだが、何しろアレがフリーダム過ぎる。
手綱を握れる気がしない。

「取り敢えず、なんかの形で住民登録させたい、とは思ってる。アタシとアイツの契約条件はそれだからな。
放っておけばむやみやたらに力を使う事もねーだろ……問題は、アイツの神気だな。宝物も含めた。アレがある限り、アイツは面倒を引き寄せる。
アレばっかりはアタシにはどーにも出来ねぇ……ミョルニールの柄なんてのも貰ったが、それを除いてもスキーズブラズニルの木材、ヤールングレイプルの欠片、グングニルの柄、グレイプニルの一部その他なんざ、アタシにどーにか出来るわけがねーだろ。
アイツ本体もフリーダム過ぎて、アタシの言う事聞きやしねぇ……住民登録させて、維持の条件でもなんか付ければ多少は落ち着くかもしれねーけどな」

とにかく考えていることをぶちまける。
戦力としては間違いなく有能なのだが、それ以外の面で面倒な事が多すぎた……しかも、司は、基本召喚獣の日常にはノータッチである。
故に、フリーダムに日常を過ごす事でこちらに迷惑をかけてくるタイプの召喚獣の扱いには慣れていないのであった。

雪城 括流 > ぶちまけられた会話のところどころで、尻尾がぴこっぴこっと反応している。
ちょっとだけ不機嫌の度合いが上がった…ような気がしたかもしれない。

「縛り付ける、というつもりはないよ。
もちろん立場を得ればそれ相応に扱われるだろうし、もちろん風紀に対処されることもあるはずだ。
神や悪魔がどうこうというのは、いまさらだからね。」

頭を左右に振る。

「でも立場がないことのまずさは違うんだ。
それでは誰も彼女の責任を取ることができない。風紀が取り締まるにしても、それは不法入島者としてだ。
ルールに応じて彼女を誰も止められないんだよ。それでも、学園のルールに関わるというのならそれは外敵になるんだ。」

不法入島者にはそう言う組織も多い。
そしてそれらが学園の一部だとみなされているケースは、多くはないだろう。

高峰 司 > 「なら、さっさと何かしらの枠に当てはめちまえばいいだろ……アレは食堂なら垂涎の人材だぞ?」

なんせ兵站のすべてを担える権能持ちだ。食材費が浮く事間違いなし……そうでなくても蕎麦なら作れるし。

「もしくはアレか、契約主としてアタシに全部の責任が回ってくんのか?だったら猶更、さっさと住民登録でもなんでもしてやってくれねーかな……仮契約でそこまで持ち込まれるのもめんどくせーし、それ以上にアレの普段振る舞いの責任なんざ取れ切れる気がしねぇ」

溜息。
結局、立場が曖昧なのが問題なのであれば、それを固定してしまえばいいのである。
それをしてしまえれば、大体の問題は解決できるはずなのだ。

雪城 括流 > 責任がとれないと言うため息に、やや半眼で呆れたような応えを返す。

「まあ、そうだろうね。
病院での振る舞いを見る限りあんまりだとは思うよ。」

「でも全部とはいかなくとも、彼女が君のことを山車にして動けば責任は降りかかってくる。
仮契約なんだ。立場については彼女自身の問題でもあるけど。
高峰さん、君に神を使役するものとしてどう考えているのかが聞きたくもあったんだよ。」

一応、無体に扱っていないかと言う懸念もなくはなかった。
まあこの様子だと高峰さんは振り回されているようだったが。

やや真剣な様子でじっと真っ直ぐに見てくる。ああいうものとの付き合いかたに、どういう答えを返すのか。待っているようだった。


「枠にはめることについては、本人にも聞いてみることにする。」

高峰 司 > 「アイツの手綱の握り方はアタシが聞きたい。アタシが言えば素直に聞くってタマでもねぇしな」

アレは神格どうこうではない、単純に根がフリーダムなのである。翻弄体質とでも言おうか。
天然でもあるのだろうが、要するに素直に抑え込もうとしても抑え込めないタイプなのだ。

「変わんねぇよ」

あっさりと。
神との契約だろうが何だろうが、変わりないと言い切った。

「アタシと契約しアタシの召喚獣になった以上、あるのは力の差と適性だけだ。神だからといって特別視はしねぇ。
神だろうが人だろうが精霊だろうが霊獣だろうが……アタシと契約すれば等しく召喚獣だ。例外は一人しかいねーよ」

そう、全ては同じ。
『契約によって結ばれた相互扶助関係』でしかない。
契約してしまえば、全員一緒。高峰司の召喚獣と言う枠から出るモノではない。
それだけの枠に収まらないのは、現状無二の親友だけだ。

「おう、聞いてやってくれ。……正直、さっさと仮の所取っ払いたいんでな」

雪城 括流 > 目を細める。
少しだけ不快そうな様子だった。

「例外が一人、か。
じゃあそれ以外の…おそらくだけど、そこには契約と利害関係しかない。違う?」

やや強めの口調で、問いかける。詰問するような。

「もしそうなら、手綱なんて握れるはずは無い。
精霊とか霊獣はもともと、従うものだ。彼らと神は違う。決定的に違うんだ。」

そして、諭すような。
周囲を見回す。そこに転がっている棒をふと視界に入れて、嫌そうな顔をした。

高峰 司 > 「利害しかねぇよ」

あっさりと。
それが当然であるかのように言い切った。

「結局のところ、確かに例外は見つけたが……それでも、アタシの根本的な考えは変わらねぇ。
関係性の中で、最も信用出来るのは契約と利害関係だ。
心理的な感傷なんざな……ほとんどの場合、意味がねぇんだよ」

こちらは、心なしか濁った瞳で見つめ返す。
口から吐き出される言葉は、心にこびりついて取れなくなった泥を吐き出しているようで。
『故あって、その価値観で固定されてしまっている』のが分かるかもしれない。

「神だろうが変わらねぇ。現にアタシは、神格持ちとも契約してる。利害と、契約の関係だ。
アイツらの利益をアタシは守り、アイツらはアタシの召喚に応じる。
簡潔で、偽りのない、関係だ」

―――高峰司は気付いていない。
召喚獣の一部は、利害だけでなく、恩義や興味関心から契約を維持していることを。
全ての取っ掛かりとなった『利害による契約』が、彼らを縛る全てであるのだと思い込んでしまっているのだ。

雪城 括流 > 「それはない。」

ばっさり。

「神話を紐解いてみたらいい。
精霊が人と一時寄り添えても、神と人の間に対等な契約が結べたことは、ほとんど無い。
人に差し出せるものなんてほとんどないんだ。神と人との契約は大抵騙されるか、騙して…怒りの裁きを受けるか。
契約は、鎖だよ。君自身に絡み付いているただの鎖だ。」

神と人とは対等ではない、と鋭い、そしてどこか物悲しそうな蛇の瞳が見つめてくる。
これは矢だ。相手に価値などなく、契約に意味などないと突きつける一本の矢。

「まるで喚き言い聞かせることで目を閉じているだけみたいだ。
高峰さんは自身と相手を見つめなおしたほうがいい。君が差し出したものは、与えられた力に見合っているのか。
そしてもし今度こそ答えが見つかるなら、そのときは聞くよ。」

もう聞く意味は無いとばかりに、机の上で蛇がくるりと背を向ける。
そのままゆっくりと出て行くのだろう。

高峰 司 > 「だがな、契約を結んだ以上は対等だ」

それで、今までずっとやって来た。
イフリートも、フギンも、ムニンも。どれも裏切る気配はないし……そもそも、相互了解の契約により、強固に『一方的に裏切る事は出来ない』と言う制約が課されている。
相互了解契約は、相手が『それを了解した』と言う事実を抽出し、それを反故にすることを強く戒める魔術契約だ。
だから、裏切れない。こちらが縛られているのなら、相手も同様に縛られているのだ。

「騙されてるにしても、契約で縛っている以上関係ねぇ。こちらから騙すつもりはねぇ、騙せば契約の制約が崩れる。
事実がどうであろうがな……アイツらは全員、アタシの提示した内容を理解して、契約した。ならばそれは絶対の誓いだ」

強く睨み付ける。
何を分かった風な事を、と言わんばかりに。

「失せろ。テメェがどのレベルの神格かは知らねぇが、アタシの契約関係に何の権利があって口を出す。
偉そうに説教垂れるより、テメェの仕事をする方が先だろうが」

自分の根幹である契約魔術。
それに対して好き放題言われた事による不快感を隠す事もせず、言い放った。

雪城 括流 > 「どうにも頑なみたいだけど。
権利を語るのならば教師としての教えと、同族としての共感だ。
強い言葉を使いたがるのは、それを否定したい気持ちの表れだ。あくまで私は自問自答してみるように、言っただけだよ。」

その言葉を向ける先は間違っている、と言うように。
啖呵を切られればぴくり、と止まって。

「失せるところだけどね。
その言い方は不快だと思う。一応の仕事は教師なんだけどね。
事情があることはわかる。でも君自身が彼らと同じ場所に堕ちている必要はないはずだ。」

ゆっくりとその頭部を振り向かせる。
なにかをわかったような、そうでないような。そんな言葉を呟きながら。

小さな蛇だが、その様子は明らかに怒っている、ようだった。

高峰 司 > 「テメェは保険課じゃなかったか?
……ああ、そう言うことか」

人の抱えている事情に干渉してくるのは管轄外ではないのか、と言おうとして、そう言えばメンタルカウンセリングなども保険の管轄であったかと思い直す。
つまりは、こっちの契約関係に関して、問題があると思ってわざわざ忠告しているというわけだ。

「うるせぇ、オマエに何がわかる」

彼ら、という言葉に引っ掛かりを覚える。
この相手には当然話した事はないはずだが、暗に自分の実家の事を言われたようで腹が立った。
自分が、あのクズ共と、同類だとでも言いたいのか。そんな不快感が胸を占める。

「……ち、余計な事思い出してむかっ腹が立つ。分かった、考えるだけ考えるからさっさと失せろ」

『もしかして、本当に同じになっているのでは?』
そんな疑問を僅かに抱き、不快感に顔を顰め、目を逸らせて手で追い払う仕草をする。
……とにかく、一人で落ち着いて考えたかった。

雪城 括流 > あっさり態度を翻されたことに拍子が抜ける。
睨みつけていた目がぱちぱちと何度か瞬きし、どうしたものかと少し困り顔になったようだった。

いやほんと、どうしたものでしょうね。
それまで言い捨てようとしていた言葉を全部飲み込んで。

「…そう?」

とだけ、なんとか言って何処かのスキマからしゅるしゅると部屋を出て行った。
考えるというのなら、なんということももはや無い。くくるはただ答えを待つだけだ。

神格と言うことが分かっていて啖呵を切りぞんざいに扱うと言うのなら、相応の報いを受けてもらおうと思ったのだけど。
ちっ、運が良かったなと誰かが言ったような気がした。

ご案内:「部屋」から雪城 括流さんが去りました。
高峰 司 > 「…………」

気分は靉靆とし、晴れる気配はない。
高峰の召喚契約術は、基本が利害制約だ。
契約で縛り使役する。必要ならばこちらからもアクションを取るが、そうでなければ基本は相互不干渉。
ずっとそうしてきたし、そうする事に違和感を抱いたことはなかった。
が。
それは、あの実家の流儀の上にあるだけではないか。
結局、同じレールの上を歩んでいるだけなのではないか。
そんな疑問を植え付けられ、それが離れない。

「クソが……!」

苛立ちが増す。あの実家と同類だ、などと、考えたくもなかった。

高峰 司 > 否定。否定。否定。否定。否定。否定。否定。否定。否定。
その為の材料を探し探し探し探し探し、それでも疑念は消えず。
違うと言ってみても、召喚術自体がそもそも高峰式と言う時点で否定しきれるものではなかった。
魔術には、考案者のイズムが反映される。つまり、高峰らしさと言うのは少なからずこの契約方式に出ているはずだ。
自分を『次代の高峰』としてしか扱わなかった実家と。
召喚獣を『相互扶助の手駒』としてしか扱っていない自分と。
何が、違う……?

「違う、アタシのこれは相互扶助、一方的な押し付けじゃねぇ!」

本当に?

「アイツらは納得して契約してる!なら相互に文句はねぇはずだ!」

たったあれだけの事で?

「文句があるなら何故応じた!拒否する権利は与えてるだろ!」

追い詰めて拒否の権利を実質潰すお前の契約が?

「だったら何が悪い、それがアタシのやり方だ!」

ならお前は同類だ。所詮お前は『高峰』だ。

「クソ、クソクソクソクソクソクソクソクソ…………!」

望む結果が出てこない。否、何を望んでいるのかすら分からない。
そんな疑念と苛立ちの渦の中で、同居人が帰ってくるまでの時間を過ごすのであった。

ご案内:「部屋」から高峰 司さんが去りました。