2016/06/21 のログ
ご案内:「その他」に霧依さんが現れました。
ご案内:「その他」に東雲七生さんが現れました。
霧依 > 旅する女、地に足つかぬ女と言えど、学業に専念するなら住処はある。
寮の部屋は、ありがたく平和に眠る場所として、もしくは、外に出る気分にならない時の隠れ家として使わせてもらっている。
住処って何だろう、って疑問が沸かなくも無い。

「………ふー。」

女子量の裏の広場。
自分のバイクを簡単に洗い終われば、そこに軽く腰を掛けつつ、煙草に火をつけようとライターを探す。

青い髪をショートカットにした、長身の女。
今日は学校にちゃんと通った後、早めに帰宅して明日の準備だ。
明日はこれで、島をもう少し広く回るつもりの女である。

東雲七生 > 七生がその日、女子寮の前を通りかかったのは、ただの偶然でしかなかった。
午後の授業の一環で未開拓地区へ行き、
そのまま現地で放課になったので居住区を突っ切って異邦人街に入り、そのまま帰宅しようと言う魂胆で。
ただの帰り道の一つ、でしかなかったのだが。

「ホント、この辺は寮が乱立してるし民家も多いし、走るのは楽で良いや。」

建物の屋根を飛び移るようにして文字通り直線距離で異邦人街を目指す。
小気味よい足音を立てながら、とある女子寮の広場に着地して、

「あれ? ……霧依じゃん。」

見知った顔を見掛けた。
相手側からすれば突然空から降って来たかのような登場だが、それも気にせず。

霧依 > ……空を見上げて、ふと考える。

「今日の天気は晴れ時々東雲先輩か。不思議な天気だね。
 明け方こそ東雲色だったけれど、それが降ってくるなんて、杞憂が杞憂になりゃあしない。

 ……ふふ、こんにちは。 今日はお帰りの途中かな。」

視線を戻して、普段通りの口調で普段通りの言葉を返し、バイクに座ったまま、煙草をそっと仕舞いこむ。
僅かに濡れ光る黒と赤のバイクは長身の彼女が丁度良い程度の大きさ。

制服の似合わぬ彼女は、しっとりとした声を浮かせながら微笑みかけ。

東雲七生 > 「あっ、悪い悪い。驚かせ……た、って感じじゃないな。」

着地の衝撃で痺れる足を交互にぶらぶら振りながら辺りを見回す。
どうやら霧依以外に人の姿は無いらしいことを確認すると、少しだけバツの悪そうに頭を掻きながら近づいていく。

「うん、帰る途中。
 ……霧依は何してたんだ?制服姿のまま……バイク?」

こてん、と子供じみた所作で首を傾げながらバイクと、そこに腰掛ける彼女を見比べる。
これまで何度か遭遇した時は、どれも彼女単体でしか無かったのだから、少し物珍しいのだろう。

「あっ、煙草なら気にしないからさ。吸うつもりなら吸って良いよ?」

俺は吸えないけどね、と笑いながら。

霧依 > 「ここに来てから、驚くことばかりで疲れてしまったよ。
 ちょっと表情に出ないだけ、心臓はびっくりしてしまって、テンポが既にロックか何か。」

微笑のままに、そうは見えない穏やかな声で語りつつ。
相手の声に頷きながら、ぽん、とバイクを叩く。

「さすがの僕も、島の端から端まで歩いて行っていたら、学校に戻ってくることができそうにないからね。
 これでいけるところまでは、これでいくのさ。
 今度はどこぞの荒野でも行ってみようかとは思っていてね。

 煙草は別にいいんだ。 特に吸わないと辛いというわけでもない。
 あの匂いが昔の恋人を思い出すのさ。

 ……なんて言えば不思議な女になれるのかな。」

意味深につぶやいて、その直後にさらりと冗談にしてしまう。
ふわふわとした言葉は相変わらずで。

東雲七生 > 「そっか。あんまりそんな風には見えねえけど。
 まあ俺でもたまにびっくりする事があったりするし、来たばっかりな霧依には相当だろうなー。」

大半は慣れちゃったんだけど、と苦笑を浮かべつつ。
軽く叩かれたバイクを見て、それがどういった乗り物なのかは時折街で見かけるから解ってはいるものの、
それでもやっぱりもの珍しそうに見つめる。

「ふぅん……そうなんだ。
 あ、転移荒野に行くなら気を付けてね。落第街とは別の意味で危険だから。
 突然天候が変わったり、変な生き物が出て来たりするし、たまに重力もおかしい時があるから。」

大体経験談である。
不注意で命を落とす確率は落第街の方が多いだろうが、
注意してても命を落とす可能性は未開拓地区の方が上なのではないか、と七生は考えている。
そんな場所で日頃鍛錬を重ねながら考えることでは無いのだけれど。

「昔の……恋人。」

その言葉を聞いて、何故だか少年は神妙な面持ちになる。
そして暫く言葉を探す様に視線を宙に彷徨わせ、そして思い切った顔で

「あのさ、霧依。ちょっと相談したい事?ていうのかな、あるんだけど。」

霧依 > 「よく言われるよ。感受性豊かな少女なんだけどな、気持ちの上では。」

しらっとそんな言葉を吐きつつ、ウィンクを一つ。
本気か冗談かわかりづらい言葉の中で、バイクにチェーンでロックをかけつつ。

「……そうなんだ。
 そりゃあ大変だな、危ないとなったら気をつけなきゃ。
 ここでの危ないは、本当に危ないってことなのはなんとなく分かるからね。」

ロックをかけたまま、ふぅん、と言葉を漏らす。
好奇心がどうにも擽られる言葉だ。
不思議な場所に興味があるせいか、今から行こうかと一瞬考えてしまう。
明日の学校? 自主休講だよね。

……とはいえ、自主休講は次の言葉でやめることにする。


「……うん? 相談、ね。
 ついに告白かな? ……って、茶化せない雰囲気かな。

 僕でいいなら、そりゃあ構わない。
 なら、部屋に行こうか。 ここは多少暑いし、何より僕もずっと動いていたから、着替えを一つしたいところさ。」

東雲七生 > 「少………?」

割と本気で怪訝そうな顔をした。
その直後、ああ気持ちの上では、と納得したように頷いてすぐに笑み浮かべた。

「突然顔を見なくなったら死んでました、とか嫌だからね。
 落第街は……まあほら、霧依ならのらりくらりやれそうな感じするけどさ。
 転移荒野は……ガイドか何かつけた方が良いよ、絶対。」

1時間1000円で引き受けても良いけど、と軽く肩を竦めながら笑顔を向ける。
勝手知ったる何とやら、ある程度の“安全地帯”は把握しているから、と。

「う、うん。ちょっと霧依で良いかは不安なとこだけど。
 ……他に適した相手も思いつかないんだ。

 あんまり誰かに聞かれるのも恥ずかしいから、屋内で俺も構わないけど。
 あの、その……じゃあ、着替えが済んだら呼んでくれる?」

まさか人を部屋に招いたうえで着替えたりしないよね、と。

霧依 > 「傷つくもんなぁ。」

くすくすと笑いながらそんなことを言い立ち上がる女。
傷ついたようには見えやしない。

「そうだね、考えておくさ。
 僕も大怪我をしたいわけではないからね。
 とはいえ、二人旅はしたことがないんだよな……。
 これ、二人乗れるのかな。 まあ、………その時が来たら頼むさ。」

言いつつ、少しだけ考えるように首を傾げて。

「僕でいいかは不安だけれども適した相手もいないとなると。

 さて、どうだろう。
 別に僕は鍵の掛かった扉の開け方とかは、ある程度しか知らないよ。

 …僕は気にしないけどね。 そりゃあ、流石にカーテンは閉めるけど。
 カーテンごしじゃあ襲っちゃう、って言うなら終わるまで待っていてくれればいいよ。」

なんて、ウィンク一つ。
こっちだよ、なんて言葉をすぐに発して、さあ行こう、と中に連れ込んでいく。

東雲七生 > 「別にそれに乗せて貰わなくとも、俺には自前の足があるし。
 ちゃんと舗装された道ならともかく、荒地となると負ける気はそんなに無いかな。」

そんな事を言いながら、案内されるがままについていく。
女子寮は何度も─何度かではなく何度もだ─入った事はあるが、やっぱりどこか落ち着かない雰囲気がある気がする。

「って、別に襲ったりしねえし!
 どうしてそう、妙に自信ありげなのさ!何だと思ってんの俺の事!」

仮にも先輩ですけど!ときゃんきゃん吠えながら。
先導されるままに辿り着くのは彼女の私室だろうか。

霧依 > 「なるほどね。 まあ、いいのさ。
 先輩を歩かせて後輩が単車を転がすなんて、妙なものだから。」

男性を連れていてもごくごく自然。
何の躊躇いも不安も無い様子でのんびり歩けば、ずっとここに住んでいたかのような足取りで部屋へと剥かす。

「そうなのかい?
 いやあ、僕の魅力が足りないね。」

からりと笑いながら扉を開けば、あっさり彼女の部屋へと辿り着く。
この島の地図が壁に貼ってあることが特徴的な、簡素な部屋だ。
…というより、家具が少ない。
カバンやリュックの類は結構にあるのだが。

東雲七生 > 案内された部屋は、思ってたよりずっと簡素で、小綺麗だった。
正直なところ、七生は多少なりと汚れた部屋を覚悟はしていたのだったが。
これは彼女に対する印象を変えないといけない、と少しばかりの反省と謝罪を胸中で行って。

「お邪魔しまーす。
 なーんか、女子の部屋って感じしないな。」

この部屋に来るまでも思った事だが、どうも霧依に対しては異性であるという感覚が薄い。
きっと浮雲の様な彼女の雰囲気が性別以上に印象に残ってるせいだろうか、と推察して。

「それで、ええと……どっち向いてれば良い? 俺。」

ひとしきり部屋の中を見回した後、これから着替えるんでしょ?と確認するように彼女に振り返る。

霧依 > 「ほとんど戻ってこないからね。
 あんまりインドアな趣味が無いんだ。

 女らしい扱いをされたいものだけど、東雲先輩に何かしらねだればいいのかな。」

そんなことを言いながら荷物を下ろす。
気にしているのか、いないのか。きっと気にしていないのだろう、ごそごそと鞄を開いてタオルを取り出し。

「カーテンをかけるから気にしなくてもいいさ。
 僕としてはどっちでもいいんだけど、気にしてしまうだろう?」

言いながら、そのバスタオルをひらりと七生の頭に乗せて、はいおしまい、と囁く。
その上で、すぐに反応しなければするすると衣擦れの音がし始めて。

「………ああ、冷たいお茶でも用意してから着替えればよかったかな。」

東雲七生 > 「うーん、ぬいぐるみくらいなら用意出来るよ?」

今度持ってこよっか、と真面目に返答をする。
赤い仔犬のキャラクターのぬいぐるみ、時折数少ない趣味の一つを満喫しに行くと貰えたりするのだ。
そんなぬいぐるみでも、何も無いよりはよっぽど良いだろうと小首を傾げて。

「カーテンって、そんなのどこに……」

ブティックの試着室の様なものを想像していたら、頭にバスタオルを被せられた。
面食らって動けないでいると、衣擦れの音がし始めて尚更動けなくなってしまう。
とにかくじっとしている他ないと、頭にタオルを被ったまま大人しく着替えが済むのを待つが、どうにも気が気じゃない。

「こんな状況で悠長にお茶なんか飲めるかよっ!」

霧依 > 「ふふ、ありがとう。
 今度、ぬいぐるみは見せてもらうとするよ。

 部屋に荷物を溜めすぎると、今度は動けなくなってしまうからね。
 一杯一杯抱えて動けなくなるより、頭の中に入れておいたほうが、よっぽど自由に動けるものさ。」

相手の言葉を受けながら、穏やかな言葉を返す。
そういう主義の人間なのだろう。
タオルの下で怒る先輩の声に首を傾げて、それから少しだけ遠慮がちに声をかける。

「これは、あれかな。 シャツと下着で「もういいよ」とか言ったら怒られるパターンかな?」

学んだ。さすがの学習能力を見せる女。

東雲七生 > 「じゃあ、うちにあるの持ってくるよ。
 友達に見せてもやたらと好評でさ。

 なるほどなあ……
 でもこの島に居る間くらい色々置いてみりゃいいのに。」

自由に動けるのも良いかも知れないけど、今は学生なんだから、と少しだけタオルの下で口を尖らす。
まあ、本人がそれで良いのだろうから、強制するつもりも無いのだが。
あまり遊び心の無い部屋は、元居た部屋を思い出してちょっとだけつらいのだ。
と、ひとりしんみりした気分になっていたら

「……当たり前だろ!!
 あ、いや、でも、ここは霧依の部屋だし、霧依が楽なら別に……」

仮にも無理言って部屋に上げて貰ってる身である、というつもりのようで
基本は部屋の主の意向に沿うよ、と控えめに告げる。

霧依 > 「そういうものさ。
 僕は物は頭の中に置いておきたいんだ。
 物を持ちたがると僕は際限がないし、何より捨てるのが辛くなる。
 それに、整理が苦手なんだ。」

相手の言葉に素直に返す。
きっと、ゴミ屋敷にならないのはそういう理由なのだろう。

「おかげで、僕の頭の中はずっと華やか。
 そういうのも、楽しいものだよ。

 ああ、じゃあこれでいいよ。」

相手がタオルを取れば、素肌にタンクトップ、ハーフパンツの女が僅かにあるベッドに腰掛けていて。
さて、どんな話だったっけ、と声をかけてくる。

東雲七生 > 「頭の中に……
 でもさ、それって不安になったりしない?
 何かの拍子に、全部忘れちゃったりするかもしれないじゃん?」

そう訊ねる声が僅かに震える。
思い当たる節があるのだろう。実のところ、思うところがあるなんてもんじゃないのだが。
忘れるのも、忘れられるのも、彼にとって等しく恐怖の対象でしかないのかもしれない。

「あ、じゃあタオル取って良い?ていうか取るよ。
 さっきから息苦しくって仕方ないし……」

まともに話すのにも一苦労、というほどではないが。
被っていたタオルを取り払うと、まずは大きく息を吐いて。
それから改めて霧依の方へ向き、表情が強張った。

(楽な様に、って言ったけどラフ過ぎやしないかなあ!)

相手を異性として見てないのはどっちだ、と思わなくもなかった。

霧依 > 「それならそれで、新しい物を詰め込んでいくさ。
 僕はそういう人なんだ。 普通の人じゃあない、馬鹿者って類の人種さ。

 僕を真似しちゃあ、いけないよ。」

くすくすと微笑みながら、相手の表情がこわばることには気が付かぬ様子で、じゃあお茶を淹れるね、と立ち上がる。

「…………それで、どんな話だったっけ。
 僕のことを襲ったら駄目だよ、ってところまでは覚えているけど。」

お茶をことん、と置きながら、目の前に座って首を傾げ。

東雲七生 > 「そう、っか。
 ………そうするしかないかな。」

紅い瞳が少しだけ物憂げに揺れる。
しかしそれも僅かな間だけで、すぐにまた外で見せたような神妙な顔になった。
相談を切り出すか否か、今でも少し迷っているのだろうか。

「襲わない。
 ……えっと、あの。
 霧依って今まで彼氏とか居た事あるでしょ?」

お茶を受け取って、少しだけ口を濡らしてから。
いきなり何の疑問も無く、恋人が居た事前提で切り出した。
外での、昔の恋人、という言葉をそのまま信じているのだろう。

霧依 > 「そうさ。」

端的な言葉。
ゆうるり、ゆるり。穏やかな時間が流れる。
浮いた雲は逆に言えば、どこにも寄る辺が無い。
着地しているようで、この場所にも腰掛けているだけ。
悲壮感の無い、力の抜けた表情のままに、手をひらりと振って。


「………ん?
 いきなりストレートな質問だね。
 僕の現在の状況を見れば、誰ぞの側にずっといる、といった相手はいないことはわかるだろうけど。

 でもまあ、大きな意味で言えば、あるって言えばあるよ。」


身体を重ねる関係もまあ、ネ!
口にはしなかった。

東雲七生 > その言葉に、少しだけ気が楽になった様な気がした。
しかし、同時に彼女がその生き方まで忘れてしまったら、どうなるのだろう、という疑問も沸く。
丁度、去年の自分のような。それまでの生き方を突然失ったら。
……例え話として訊ねようかとも思ったが、それを訊く勇気は、まだ無かった。

「あ、う……まあ確かに。
 一人でぶらぶらしてそうだもんな……う、うーん。」

少しだけ躊躇いが混じる。
もしかしたら適切な回答を今回も得られないのでは、と思わなくもなかったが。
そこはまあ、自分より人生経験が豊富そう、という点に賭けるほか無い、の精神で。

「じゃ、じゃあさ。
 えっと……今、好きな人とか居る?
 ……っていうより、異性を好きになるのってどんな感じ?」

Likeじゃない方で、と詳細設定も加えて。
見るからに好奇心を爛々と瞳に宿し、少しだけ身を乗り出して。

霧依 > 「………………。」

相手の言葉に面食らったような顔をして、考える。
しばらく言葉を選んでいる様子を見せて、……その上でゆっくりと口を開き。

「そうだね、今はいない。
 まだここに来たばかりだし、そういう意味ではこの島そのものに心を奪われているようなものだから。

 その上で、好きになる、か。」


「いろんな考え方があるし、その場その場で気持ちが変わってしまうくらいに、不安定なもの。
 それでもあえて口にするなら。

 僕なら、相手のことを知りたくなる。
 何が好きで、何が嫌いか。 どんなことに怒って、どんなことを悲しんで、どんなことを喜ぶのか。
 どこに自信を持っていて、どこを気にしていて。
 どんな価値観を持って、どんな思考をしていて。

 単なる隣人であるなら無価値にも思えるものが、色づいて艶やかな宝石に見えてくる。」


囁くような声のまま、お茶に手を付けずに言葉が浮かぶ。


「そして大体、我侭になる。」


言葉を続ける。


「自分のことを知って欲しくなるし、理解して欲しくなるし。
 自分に興味を持ってもらいたいし、自分が3歩近づいたなら、できれば3歩、そうでなくても1歩近づいてきて欲しくなる。

 究極的には、相手にも好きになって欲しくなる。


 でも、ことはそう簡単にはいかない。 だから恋愛は難しい。」

東雲七生 > やっぱり少し難しい事を聞いてしまっただろうか。
霧依よりもっと年上の、出来ればお爺ちゃんお婆ちゃんくらいの歳の人に訊けば良かっただろうか。
彼女が口を開くまでの間、そんな事をぐるぐる考えながらも、じっと、その唇を注視する様に待って。

そして一言も漏らさず、逃すまいと聞き入ってから。
彼女が語り終えると、まるで自分が話していたかのように大きく息を吐いた。

「そっ、か。
 何だか霧依がいうと妙に詩的な感じがするけど。」

何だか妙に疲れた顔に笑みを浮かべ、そんな軽口を一つ。


「けど、ありがと。
 恋をするのって、俺が思ってたよりももっともっと複雑だったんだな。」

でも、それが全てでも無いのだろう。
彼女は、「僕なら、」と一言断りを入れた。であれば、今語られたのは霧依個人の思う恋愛観なのだろう。
それでも、十二分とはいかずとも納得のいく回答であったように思う。

「思ってたよりも複雑で、なんだか大変そうだ。
 ……うん、凄く大変そうだ。」

霧依 > 「詩のようなものさ。
 単なる言葉の羅列なのに、美しく見え、その奥に大きな景色が広がって見える。

 恋愛も、足のサイズみたいな情報なのに、他の誰も知らないことを知っているだけで、心が満たされているようになってしまう。

 複雑で、とても大変だけれど。 同時に楽しさも与えてくれる。
 大変さに見合うかどうかは分からないし、見合わないことも、とっても多いけれどもね。」

相手の言葉に自分なりに付け加えながら、窓の外を少し眺めて。

「どちらにしろ、己の内から出てくる気持ちだから。
 なかなか、コントロールは難しいものだよね。」

東雲七生 > 「ふむふむ……
 
 詩的だけど、やっぱ霧依が言ってると思うと変な感じ。
 そんな風に思える相手が、今まで何度か居たって事だもんね?」

くすくす笑いながら、それでも分かりやすいよ、と屈託ない笑みを向ける。
やっぱり訊いてよかった、と一口、お茶に口を付けて

「俺さ、前に片思いみたいな事したことあったんだけど。
 色々あってさ、結果的にフラれる形になっちゃってさ、やっぱり恋愛なんてまだ早かったのかなーってずっと考えないようにしてたんだけど。

 霧依の言う分じゃ、俺はまだまだ、恋愛のれの字にも届いてなかったみたいだ。」

口と喉を軽く濡らしてから、そんな告白を。
少しだけスッキリした様な顔は年相応よりだいぶ幼く、それでも子供と大人が混在する様な雰囲気だった。

霧依 > 「さあ、どうだろうね。
 もしかしたらいたかもしれないし、いなかったかもしれない。
 全て受け売りかもしれないよ。」

相手の言葉に微笑みながら、煙に巻こうとするかのような言葉を重ねる。
そのまま、お茶を軽く傾け。

「……どうだろうね。
 僕は、他人のことは余りしゃべらないようにはしているんだけれど。

 恋はきっと心の内から出てくるものだから。
 それでいて、自分の創りだした気持ちなのに自分で操ることができないもの。

 自分が我侭になり始めたら、それはきっと恋愛の入り口さ。」

囁くような声は、相変わらず熱も帯びない、穏やかなそれ。

東雲七生 > 「まあ受け売りでも、だいぶ俺にとっては有意義だったよ。」

実際、彼女の恋愛遍歴は今は問題の外だ。
ちゃんと納得のいく答えが返って来るかどうか、が一番の目的だったのだから。

「我儘だったのかな、どうなんだろう。
 まだ俺が一年で、学校に通いたての頃でさ。すっごく、笑顔が素敵な先輩が居たんだ。
 
 いつか俺も、この人みたいに笑えたらって。
 
 ……でも、今思えばそれだけだった。
 憧れてはいたけど、それは好きだって言うのとはまた別だったみたいだ。」

少しだけ困った様に、眉尻を下げながらも笑みを浮かべる。
心の中は安堵と少し残念な気持ちが半々といった感じ。

霧依 > 「僕には、それがどちらだったのかは分からないよ。
 そこから恋愛になることだってある。 むしろ、多いんじゃないかな。


 思うこととしては、………その人のことを思い出す時に悲しくなってしまう思い出と一緒にしてしまうのは、僕は嫌かな。
 恋愛だろうと何だろうと、思い出す時には楽しくありたいから。

 こんな言葉が正しいかは分からないし、言うまでもないことかもしれないけれど。
 大切にしてあげるといいと思うよ。

 その上で、いつか笑って思い出せるなら、それが一番じゃあないかな。」


女は口を開いて、その上で目を閉じる。
何かを思い出すかのような仕草を見せて、………少しだけ笑って。

「何かの手助けになれたなら、よかったよ。」

東雲七生 > 「はは、でもその先輩にはすぐに彼氏が出来ちゃったし。
 どのみち失恋はすぐにしたろうさ。

 別に悲しくなったりはしてないよ。
 何て言うか、俺ってば自分で思ってるよりも子供なんだなーとか、そう思っただけで。
 恋愛だなんて、時期尚早だなって……それだけ思ってさ。
 その先輩は、まだ、先輩として好きだから。」

軽く首を傾げる様にしてから、あはは、と笑って肯く。
今はもう、同じように思える相手もいっぱい居るからね、と。
それから霧依の仕草をじいっと見つめて、釣られるようにくすっと笑った。

きっと、そんな思い出が彼女にはそれなりにあるのだろう。自分とは違って。
……それが少しだけ、羨ましく思えて。

「うん、ありがと。突然こんな事訊いても、ちゃんと答えてくれて。
 それで、霧依がそんな風に思い出すような人ってどんな人?」

にひひ、と悪戯っ子っぽく笑いながら質問を重ねた。
別にまともに答えて貰おうとは思っていない。

霧依 > 「まあ、そんなものさ。
 軽く言っているわけではなく、本当にね。

 思い出す時に悲しい気持ちにならないなら、それはきっと間違っていなかった。
 僕は、そう考えるようにしているよ。」

穏やかな声で小さく呟いて、目を閉じたままお茶を口にする。
相手の言葉に、少しだけ目を閉じて考えるような素振りを見せて。

「どうかな。
 たくさんいるから、困ってしまう。

 ………ここから先は、僕と一緒のベッドで一晩寝るなら、話してあげようか。」

流し目とウィンク。
空になったグラスをことん、と置いて。

東雲七生 > 「うん、間違ってた……とは、俺も思ってない。」

ただ、あまりにも幼い考えだったことも否めない。
恋心に満たない憧れまで否定して押さえてた事も、やはり幼いが故かと反省する。
だからと言って、じゃあすぐに誰かを好きになるのかというと、そうでもないけど。

「そんなに居るの!?
 いや、あの、まともに答えてくれるとは思ってなかったけど、それは……
 
 ……って、え、ええっと。
 外泊するなら家に連絡入れなきゃだし、そもそも服もこれしかないし、
 ていうかそういうのはもうちょっとお互いを知ってからというか、ええと……」

分かりやすく混乱しながら、あたふたと言葉を並べていく。
女の言葉を、文字通り「一晩添い寝するだけ」としか捉えていないのか焦りの色はあっても恥じらいは見られない。
そもそも、異性と同じベッドでただ寝るだけなら、割と日常茶飯事というか、その辺りの感覚は麻痺している。
まあそれも、ある程度知り合ってる仲だから、という前提はあるが。

霧依 > 「まともに答えてくれるとは思っていない、とは言ってくれるね?」

くすりと笑いながら、意地悪に言う。
髪をかきあげながら、それでも相手の反応を眺めて、ふぅん、と納得する。

「冗談さ。 話してもいいけれど、長くなる。
 僕の話はそのうちに。

 艶やかと呼ぶには淡い色合いの恋の話は、別の色で塗りつぶしたら勿体無い。」

一つ一つの言葉選びが仰々しく、芝居がかった素振りで首を横に降って。

「ふふ、まあ、何も無いところだけどゆっくりしていくといい。
 お互いを知るにも、何にしても。

 時間はきっと必要なのさ。」


同じ部屋にいるのに、ふわりふわりと浮くような。
タンクトップの隙間から素肌を晒す女は、そこにいるのにそこにいないような希薄さを保ちながら、お茶をまた傾けた。

東雲七生 > 「実際に変な注文つけてきたじゃないか。
 ほら、やっぱり冗談だった。」

分かってるんだから、と言わんばかりにくすくす笑う。
それでも別段気分を害した様子もなく、むしろ傍から見ても楽しそうに、霧依の言葉を聞いていて。

「長くても良いから、いつか聞きたいな。
 せっかく知り合ったんだから、もっとちゃんと相手の事は知りたいしね。」

捉えどころの無い相手なら尚更だ。そう言わんばかりにお茶を飲み干して。

「確かに何も無いけど、別に家具を使って何かしようとか思ってないし。
 霧依が居るだけで、割と十分な気もするしね。あ、眠かったりしたら帰るけど。」

随分と話してて気が楽だから、ついつい居座りたくなってしまう。
ただ、少し露出は控えて欲しい、と伝えるべきか伝えざるべきかという問題だけが行く当てもなく残っていた。

それでも外が夕暮から薄闇に変わる頃合いにはまた来ても良いか、と訊ねてから七生は家に帰るのだろう。

ご案内:「その他」から霧依さんが去りました。
ご案内:「その他」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「食堂」に牧瀬 莉那さんが現れました。