2016/06/22 のログ
ご案内:「部屋」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > 「ただいま~」

この言葉を見慣れない玄関で言うのももう慣れた頃
高峰司の部屋に居候してはや一週間以上が経った

妹の経過は順調
もうじき退院だろう
この部屋で寝泊まりできる時間も、少しずつ減ってきていた

ご案内:「部屋」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 「ん、お帰り」

奥で机に向かって、紙に何かカリカリと書きながら返事をする。
実を言うと、凛霞に帰って欲しくない、と言うのが本音の司。
理由は、未だに夜、一人になると不安がぶり返すからだ。
思ったよりこの事件で、心が参ってしまっているのであった。

伊都波 凛霞 > 「何書いてるの?」

年頃の女の子には不釣り合いな、質素な部屋
制服のリボンをしゅるりと解きながら机を覗き込む

───いつもと変わらない様子、
でもまだ、高峰司の心は傷ついたまま
本当は一緒に過ごしてあげたいけれど

高峰 司 > 「ルーンでの、ウイルス対策の可能性の研究だよ。
今んとこ微妙だけどな……根本治療も必要だが、こっちで難とか出来れば、とも思ったんだが……クソ、ルーンの弱点だな」

紙には滋養を意味するフェオー、防衛と幸運を意味するアンスール、治療を意味するユルなどが書いてある。
が、その横には×印が書いてあり、組み合わせ例もいくつか書いてあるが、それもまた×がついている。

「ルーンはどこまで行ってもシングルアクション……アタシの魔力じゃ大した効果は出せねぇ。ルーンだけで何とか出来るシロモノじゃねーみてぇだ……」

溜息。
顔には疲れが見え、心なしか動きも緩慢である。
根を詰めて、それでも成果が出ずに心身ともに疲弊しているのが感じ取れるかもしれない。

伊都波 凛霞 > 覗き込むと、色々なシンボルが描かれていた
専門とはいえこの年でこれだけの図形の意味や組み合わせが頭のなかに入っているだけでも凄い
本人的には、結果が出せなければなんともなのはわかるのだけど

「まだ、時間はあるはずだし根詰めないで、ね?
 他の魔術の講義とか受けてみると幅も広がるかもしれないし…」

簡単な治癒魔術の習得に留まる凛霞には難しいことはさすがにわからないけれど、
ため息をつく司の肩を治癒魔術を展開しながらもみほぐす、ふにふに

高峰 司 > 「あ”ー……悪い、助かる」

肩を揉まれれば、力を抜いて礼を言う。
……この『礼を言う』と言うことが司にとってかなりレアムーブなのだが、当人は意識していない。
親友である凛霞に対し、心を開いている証左でもあるのだろう。

「だな……ルーンだけじゃ限界がある。他のも組み合わせてなんとか……凛霞ぁ、なんか思いつかねーか?」

だるーん、と力を抜きつつ問い掛ける。
そもそも、ルーンは付与系の魔術の為、他の魔術と組み合わせるのに向いている。
ルーンガンドなどはその典型。ルーンはそも補助系の魔術とも言えるのだ。
完璧超人などと言われているしなにか案があったりするだろう……と言う打算ではなく、単に何の気なしに聞いただけではあるのだが。

伊都波 凛霞 > 「うーん、私も魔術方面はまだ勉強しはじめたばかりだしねー…」

困ったように眉を下げる
神童と呼ばれようと、一朝一夕ですべてを掌握できるほど魔術という学問は狭くも浅くもない

「私が知ってる知識だと、ルーンってそれぞれの持つ意味が曖昧だから、
 組み合わせるなら具体的な結果を出力する…式を構築して答えに辿り着くタイプの、スタンダードな魔術との相性がいいのかなって」

ただしあれはいわば数学にも通じる、複雑な計算能力を要求された気がする
複雑になればなるほどに限定的な結果にたどり着き、その効果は圧縮され高まってゆく
ある意味ではルーンとは正反対なのかも、などと考えたりして…

高峰 司 > 「成程、スタンダードな魔術の効果をルーンで補助する形だな。
ルーンの持つ効果に方向性を与える意味でもアリか……広範の魔術を学ばなきゃなんねーのはめんどくせーが」

どうせなら、魔力効率の良い魔術が良い。
司は魔力量は並だが、魔力の精密操作にはかなり長けている。
よって、難易度が高くとも、効率よく運用する事で効果を強くする系統の魔術の方が向いているのだ。

「難易度高くても効率のいい魔術か、何があっかな……。 そうだ、妹はもう退院ちけーのか?」

首をひねって考えつつ、ふと思い出したように問い掛ける。
実を言うと、結構大事な問い掛けだったりもするのだが。

伊都波 凛霞 > 「極めればかなり限定的な効果を発揮できるのが魔術式を使うタイプの長所だからね」

とんとん、と軽く司の肩を叩いてマッサージ終了

「今私が使ってたのはすごく簡単な魔術式だから、
 アバウトに『リラックス効果を与える』ってだけだったけど、もっと式を複雑化させれば
 何処を、どれくらい、どうやって~って更に絞れたりするよ」

あんまり複雑化させると式も膨大になり、圧縮した式を起動するための詠唱等が必要になってくる…ということになるのだろうけど

「うん、大分快調みたい。運動もできるようになったみたいだし…。
 多分、遅くても明後日には退院になるかもしれないね」

そう答えつつ、制服を着替えてゆく
妹が退院するということは、つまり凛霞の居候の期間も終わるということである

高峰 司 > 「そうなるな……となると、オーソドックスな元素変換(フォーマルクラフト)か、契約とかの延長と対価次第で効果が増える黒魔術(ウィッチクラフト)か……」

うーん、と考え込む。
式を複雑化するのはどんと来いだが、出来ればこれと言う軸は欲しい。
ルーンとの相性や、自分との相性。それを踏まえて、新たなモノを決めたいのだ。

「……そうか。なら、この生活ももうすぐ終わりだな」

退院は近い、と聞いて、少し表情が沈む。
少しくらい、部屋に装飾でもしておけばよかったか……とすら思う。
ウイルスに犯されてから、一人の夜が恐ろしい。時折夜に目を覚まして、何もない質素簡素な部屋を見て急に不安になり、横で寝る凛霞を見て少し落ち着く……などと言ったこともあった。
無駄を省いたのはいいが、飾りっ気が無さ過ぎるのも問題であった。
そんな状況で、心の支えが居なくなるのは、辛い。

伊都波 凛霞 > 絹が擦れる音を立てつつ、部屋着に着替える
制服はちゃんと皺にならないように伸ばしてからハンガーへ

「専門の先生に相談してみるのもいいかな、なんだけど。
 …あの学校信用できない先生、結構いるからなあ……」

ルギウスとかルギウスとかルギウスとか

「ん…うん。そうなるね… …寂しい?」

高峰 司 > 「教師の癖に信用ならねーのや、無駄におせっかいなのもいるからな……めんどくせぇ」

溜息。
蛇な先生などは苦手な部類である。別系統での苦手ではあるが。
高難度魔術となると、教導できる教師も限られるだろう。そしてそれが信用出来るかと言う話になってくると、これがなかなか難しい。

「…………」

寂しいか、と言う問いかけには、こくん、と小さく頷く。
もっと言えば、怖い。心の支えが近くから離れてしまうのが、不安でならないのだ。

伊都波 凛霞 > 無言で頷く司に、小さく苦笑して

高峰司はまだ16歳
本来ならば親に保護されているような年齢
それを突っぱね、壁を作って自分を護ってきた少女だ

一度支えを得てしまえばそれを失うのは恐ろしい
弱さに転じる…凛の言葉を思い出す
それぐらい、今の目の前の高峰司は弱く見えた

でもそれは、司にとって未知の恐怖に蝕まれた、それが原因だ
断じて、友達が出来たことが原因ではない

「大丈夫」

そっと司を後ろから、少しだけ強めに抱きしめて

「私と司ちゃんの間には、司ちゃんの作ってくれたリンクがあるじゃない?
 …寂しかったら、いつでもお話できるし、いつでも会えるよ」

高峰 司 > 「……分かってる」

自分を抱きしめる腕を握りしめ、俯いて返事をする。
怖い。今まで当然だった一人が、今となっては狂おしいほどに恐ろしい。
この温もり、安心を直接得ることが出来るのも、後一日二日。今の内に少しでも、と腕に頬を寄せる。

「でも、夜とかだと流石にな……目が覚めねー事を祈るか」

最悪、時限式で『イス』のルーンを刻んで自分を停滞させてもいい。
とかく、夜起きてしまうのが一番の不安なのである。

伊都波 凛霞 > 「ウィルスなんて、どうせやっつけちゃうんだから。平気平気」

声はとにかく明るく、元気づけるように
自分に身体を寄せる司を安心させるようにもう少しだけ、強くその小さな身体を抱いて

「…ほんとは、言おうかどうか悩んでたんだけど。
 司ちゃんに聞いて欲しいことがあるんだ」

抱きしめながら、ぽつりとそんな言葉を零す

高峰 司 > 「……そーだな。頼りにしてるぜ、凛霞」

体を抱く腕を、こちらからも強く抱き返して。
弱くなった、と言えばそうだろう。寄りかかって、自分の足で立つのもままならない現状は、弱いと言って差し支えない。
だが、誰かに寄りかかれるというのは強さでもある。特段意識はしていないが、高峰司は一つの強さを得たともいえるのだろう。

「なんだ……?」

ちょっと不安を覚えつつ、凛霞の話の続きを促す。
この親友が躊躇う内容、と思うと、少し不安になりもするというものだ。

伊都波 凛霞 > 不安げな声色に、やはり戸惑う
親友だと行ってくれる司でも、踏み込まれたくない領域は確実にあるのだから
それでも、これを黙っているのは……

いけない気がした

「…司ちゃんの弟が、この島に来てるみたい。司ちゃんを探しに」

だから、迷いつつも、しっかりと言葉にする

高峰 司 > 「……は?」

目を丸くする。
と同時、少し俯いて考え込む。
弟?何故?
名前も覚えてすらいないが、確かに数名弟はいた。
どれもこれも魔力がロクに無い連中で、才気などありはしなかったが。
実家から連れ戻しに来た……と言うのが妥当筋だが、違和感がある。

「(連れ戻しに来たなら、何でクソ親父じゃねーんだ。アタシにどーやっても及ばねぇ雑魚を寄越すよりは、多少は礼装で誤魔化せば戦えるクソ親父の方がマシなハズ。アタシに家族への情なんてモンがねーのは向こうも分かってるハズだ、今更ツラも覚えてねぇ弟なんか持ち出して来ても意味ねーのはいくら馬鹿でも分かるだろ)」

そう、チョイスがおかしいのだ。
本気で連れ戻すならば、相応の手練れを用意すべき。それこそ傭兵などの方がマシなくらいだ。
だが、弟。明らかに司未満であろう、弟。
そんな雑魚を持ち出したところで、迎撃されて仕舞いなのが分からない程馬鹿ではあるまい。
つまり……。

「何の意味があるんだ、それ……?」

全く以て合理的ではない。
その意味不明さに、首を傾げるしか出来なかった。

伊都波 凛霞 > 「…わかんない。正直信頼できる情報かどうかもわからないよ」

抱きしめていた腕をといて、その両肩へと添える

「ただ…高峰司の弟が、姉を探してる。何かしらないか…って。
 列車内でそう声をかけられたのが…司ちゃんをスラムの地下に探しにいく直前。
 色々あって、今日まで言いそびれちゃったけどね」

嘘ではない、ということはきっと伝わるはず

だからどうする、というわけでもなく
単なる1つの情報でしかない
それでも、司は知っておかなければならないことだと思った

高峰 司 > 「……わかった、覚えとく」

こくん、と頷く。
凛霞が嘘を吐くとは考えられない。少なくとも、そう言う情報はあったのだ。
そして、火のない所に煙は立たぬ。
高峰司に弟がいるという情報も一般に出回っていない以上、何かしらの根拠があって発生している話なのだ。
意味も意図も不明だが、記憶にとどめておく必要があるだろう。

「まあ、そんな雑事よりも、今はこっちだがな……」

言いながら、右足を見る。
ウイルスに犯された、右足を。

伊都波 凛霞 > 雑事、確かに雑事である
けれど、何か胸騒ぎがする

家族との事情、を大まかにとはいえ司本人から聞いている身、
弟が司を探している、という状況自体が既に何かの事件性を匂わせていて…

「(……なんだか、嫌な予感がするよ。司ちゃん)」

…ただでさえウィルスに振り回される司に、その言葉を向けることは出来ずに…

「…‥そうだね、当面の課題。なんとかしないと…。
 司ちゃんと安心して学園生活も楽しめないもんね」

そう行って元気づけるように笑った

高峰 司 > 「……そーだな。オマエとも、遊べないしな」

凛霞の心配には気付かず、小さく笑って返事をする。
―――まだ、過ごし足りない。
友と言うのは、生涯に一人二人、本当に信頼し合える親友を得られれば十二分に幸せだ。
その親友、得難き宝を得たと言うのに、一緒にいる時間が失われてしまうのはあまりに惜しく、恐ろしい。
その仲は永遠ではないかもしれないけれど。
それでも、続く内は……出来るだけ長く、親友との時間を過ごしたい。

「さっさと治して、どっか遊びに行こうぜ。オマエとなら、大体どこでも楽しそうだ」

ちょっと強がりも混じっているけれど。
それでも、素直に願望と展望を口にして、微笑んだ。

伊都波 凛霞 > 「ふふ、そうだね」

今はもう見慣れた司の笑顔
この顔が見れるようになっただけでも、友達になった甲斐がある

険しい表情が潜まって、笑顔がもっといろんな人に向けられるといいね

そんなことも思いながら、二人で笑いあった

───2日後、妹の退院が決まり、伊都波凛霞は少ない荷物を纏めて、司の部屋を後にした
そしていくつかの私物は『また泊まりに来るから』と言って置いて帰るのでした───

ご案内:「部屋」から高峰 司さんが去りました。
ご案内:「部屋」から伊都波 凛霞さんが去りました。