2015/07/07 のログ
ご案内:「職員寮/括流の部屋」に雪城 括流さんが現れました。
雪城 括流 > あの公園での日から氷架たちの部屋には帰っていない。
あんまり離れすぎていればひょーかも心配するだろうと自惚れるものの、まだあと数日は帰る気はなくて。

珍しく人型のまま布団に突っ伏して、枕に顔をうずめている。

(…眠い。
でもそれ以上に、もやもやする…。)

不安定な思考と己の矜持がせめぎあうのを感じる。

雪城 括流 > (私は宗仁くんやりょーみたいに悩まない…迷わない、はず。)

りょーには悩むと言われた気もするが、括流は自身を揺らがぬものと規定している。
日本風に言えば常世のもの、本質のありようは変わらないし、変われない。そう言うルール。

「へびぃ…。」

転生を繰り返して擦り切れた古い記憶の、奥底にしまった映像がちらつく。
ひょーかと同じ顔をした、でもその髪は短い誰かの姿。

切なくなる。

雪城 括流 > 夏とはいえ、まだ夜は冷える。
ぶるりと体が震える。氷架から離れてとどめられない体温を維持しようと。

ひょーかが零くんを選んだとき、嫌な気持ちになった。
その人生を見守ると思っていたし、そう言うことがあっても祝福できると思っていたけど。

「…いきなり奪われるのは繰り返しているみたいでつらいな。」

超常のものであれば持たないこの気持ちを知っている気がする。
いや、こちらでは蛇神はそういうものなのかもしれない。
この地に影響されているのだろうか、などと考える。


――わかっている。違う。ただ消化しきれていなかっただけだ。
ぎゅっと枕の端を握り締める。

雪城 括流 > 一度意識してしまえばしまっていた思い出が紐解ける。
シルバーかピンクブロンドの中間のような髪色の少女と、氷架のような少年が共にいる光景。

(ああ、あの時は――)

あのときだけは私は蛇じゃなかった。
あのときだけは私は神ではなかった。

たった一度、それまでの記憶を失っていた時間。
そこで得た幸せ。そして失ったもの。
今の姿はそのときのものに執着していた結果だというのに、見ないようにしていた。

そっと枕から顔を離す。
その瞳はいつもの縦長の瞳孔ではなく、人の瞳に。

私は、括流であって括流じゃない。
その目に嫉妬の炎を宿らせて。


―――【ストーリー:人としてのヒュクルールクルケイア】が開始しました。

どこかで何かが砕けるような声が聞こえた気がする。

雪城 括流 > 起き上がって、手の動きを確かめる。
寒さに震える身体の様子を確かめる。

冷える夜だというのに、不調は無い。
この身体はたった一つ残った牙を残して、確かに人のものだ。

「…ああ、妬ましいんだ。」

自身がどう氷架を想っているのかわからない。
でももうそれでいいんだと感じる。

今の私は人であるのなら、悩んでもいいのだから。
この調子ならもうしばらく帰らなくてもいいよね、ひょーか。

そう口の端を歪めるような笑みを浮かべて。

雪城 括流 > 普段はいない部屋をくるりと巡って、この部屋に来るときに買い込んだ食糧袋を漁る。

取り出したのは時期外れの真っ赤な林檎。
机にそれを載せると、椅子に座ってそれをいとおしげに指先で撫でた。

「ああ、どうしてかな…。
蛇姿だと食べられないのに、どうしても欲しくなる。」

蜜柑より西瓜より、この真っ赤な果物にどうしても惹かれるのだ。

それを何かに見立てたように、これからを考える。
学園のお仕事は続ける…ずっとやっていたのだから。
ひょーかはしばらく避けていれば心配してくれるだろう…自惚れがそう答える。

零くんは…どうしようか。どうしてやろうか。

くすりくすりと笑って林檎を指先で左右に転がした。
ただし傷つければ氷架が黙っていないだろう…それくらいは考えている。

雪城 括流 > ああ、いまはトテモいい気分。
寝ている場合じゃないような。

弄んでいた林檎を夜食代わりに手にして、部屋の扉に手をかける。
艶かしく涎に濡れた肉色の舌を突き出して、その果実に牙を付きたてた。


ざくり がちゃん ばたん。         きい  きい

きい。

ご案内:「職員寮/括流の部屋」から雪城 括流さんが去りました。