2015/06/11 のログ
ご案内:「浜辺」に朝倉千蔭さんが現れました。
■朝倉千蔭 > 「……流石に寒いな」
買ったばかりの温かい紅茶を手に、夜の海をぼんやりと眺めている。
いつまでもいつまでも引いては寄せる波を眺め続けるのは、嫌いではなかった。
■朝倉千蔭 > 「……」
「はぁ~……」
深くため息を吐いた。
昨日自分が嘘をついて他人と接したという事実が深く心に根を張っている。
あの時感じた焦りも、彼女の冷たい視線も、そして自分が確かに誰かを陥れようとしたことも。
今まで自分がおとなしい高校生として過ごしてきた時間の中ではありえるはずもなかった。
空閑さんはそれでも、自分の事を友達だと言ってくれた。――恐らく自分が危ない人間だと分かっていたのに。
「……ん……」
紅茶の入ったペットボトルのキャップを開けて、口をつける。
買ったばかりのそれは、海風で既に冷め始めているように思えた。
■朝倉千蔭 > これから自分がこの企みを押し進める限り、今感じている蟠りの根はいつまでも育っていくのだろうか。
そうして心を掴み、頭を貫き、心臓を鷲掴みにして――私は暗く淀んだ植物の影の中へと沈んでしまうのかもしれない。
それでもなおこの計画を推し進めるだけの覚悟が、私にあるのだろうか?
今はまだ答えられる自信のない疑問を、自問する。
漏れそうになる否定の言葉を押しとどめるように、紅茶を一気に流し込んだ。
「げほ、ごほっ」
……案の定むせた。格好がつかない。
■朝倉千蔭 > それでも。
包帯が手首まで巻かれた左手を、ゆっくりと、強く握りこむ。
それでも、やりたい。やらなきゃいけない。
私は終末論者で、悪い人間で、目的のためなら何でもできる。
脳内で繰り返す言葉は、さながら暗示を掛けるようだった。
夜風には慣れてきた。
これからは太陽の光より、夜の冷たさの方が触れている時間が多くなるかもしれない。
「……いつまで掛かるのかな」
ぽつり、誰にともなくそう呟いた。
■朝倉千蔭 > いつまでも終わりなく続く波の音。
私はそれをずっと聞いていることができるだろう。
……だから、自分で踏ん切りをつけないと。
「帰ろうかな」
そう口に出し、海に背を向ける。
空になった紅茶のペットボトルを手に、海岸を歩き始めた。
ご案内:「浜辺」から朝倉千蔭さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に蓋盛 椎月さんが現れました。
蓋盛 椎月 > (深夜の浜辺を散歩している……
寝付けなくてこんなところまで来てしまった。
当然のように誰もいない。)
蓋盛 椎月 > (海の方を見れば真っ暗闇が広がっている……。
泳ぐには少し早い季節だ。
もちろん最適な季節だったとしても泳ぐつもりはないけれど。)
蓋盛 椎月 > (白衣のポケットに突っ込んであった煙草を取り出して
火を付け一服。
うまい。
喫煙というのはなんというか孤独で救われてなきゃいけないんだ……
などというこだわりは持っていないが。)
蓋盛 椎月 > あっとと。
(ボケーっと煙草を咥えながら歩いていたら
足元のゴミにつまずいて転びそうになる。
本当にこのあたりは何の明かりもない。
ここだけ文明から切り離されているかのような場所だ……)
ご案内:「浜辺」に矛海 遼さんが現れました。
■矛海 遼 > 深夜の浜辺、水の浅い所に裸足で足を入れ、演舞の様な物を行う青年が一人。
空を切る音と波の音が響いている。
蓋盛 椎月 > おや……
(スマートフォンをハンドライト代わりにして歩いていると
踊る人影が視界に入った。
そういえばここ普通に魔物とか出る世界なんだから
こんな人気のない暗い場所でひとり歩きするのめっちゃ危険だよな……と思い当たる。今更ながら。
でもあそこにいるのは多分人間だろうよかった。
邪魔したら悪い気がするので遠巻きに見守るにとどめる。)
■矛海 遼 > 足を上げると水を切り、アーチのように弾け。
腕を振れば水と空気が袖のように靡く。
例えるならばお祓いをする巫女のような舞を舞っている。
軽く深呼吸し、構えを取ると足元の浅瀬に向けて両手を叩きこみ、周囲に水の牙のような物を発生させる。
暫くすると水の牙は崩れ落ち、ゆっくりと姿勢を整えて浅瀬から上がってくる。
蓋盛 椎月 > (ほお……と煙草を手に感嘆の息。
何かの儀式か、あるいは鍛錬か。
浅瀬から上がってくるのをぼうっと見守っている。
このままここに居たら気づかれそうではあるが、
別に見てはまずいものを見ていたわけではあるまい。多分。)
■矛海 遼 > ゆっくりと、足に付いた水を自身の力で気化し、乾かすとサンダルを履いてそちらへ向かって歩いて行く。
「…………?誰かいるんですか?」
蓋盛 椎月 > (軽く会釈)
ああどうも。散歩中に通りすがっただけです。
おじゃましてしまいましたか?
(ごく穏やかにそう言って、誰なのか闇の中目を凝らす。)
■矛海 遼 > 徐々にお互いに顔が見えてくるだろうか。
「いえ、別にそんなことは………と、蓋盛先生でしたか」
見知った顔を見たからか、少し声は軽く感じるだろう。
相変わらず顔は無表情の仏頂面だが。
蓋盛 椎月 > ……なんだ、矛海先生でしたか。
(見知った顔に少し驚く。まあそんなこともあるだろう。)
さっきは何やら踊ってたみたいでしたが……
あれは何をされてたんです?
あたしは先ほど言ったとおり、散歩なんですけど。
(わざわざ夜の浜辺でやっていたということは
多分この時間この場所でなければならない理由が
何かあるのではないだろうか……そんな問い)
■矛海 遼 > 「いえ、唯純粋に寝つけなかったので、体を動かしていたのですよ。」
体育などの授業を受け持つが、それとは別に、自身は格闘家としての側面もある。
純粋に己の鍛錬に時間を割いて暇を潰していたという所だろう。
「アレは演舞、とでもしておきましょうか。
元々は古武術の物ですが、忘れないようにこうやって実践式で鍛錬する物でして。」
軽く一礼を返しつつ、言葉を返す。
蓋盛 椎月 > ああなるほど。あたしとあんまり変わりませんね。
なにやら儀式めいた調子だったので特別なことかと思ってしまいましたよ。
誰にも見られない場所でやらなくちゃいけなくて、
誰かに見られたらそいつを殺さなきゃいけない、みたいな……
(冗談めかしたノリで。それは丑の刻参りである。)
しかし大丈夫ですか、夜の海は危険ですよ。
噂じゃ常世島の浜辺には夜な夜な半魚人が上陸してきて、
捕まると同じ半魚人にされてしまうとかなんとか。
ああ恐ろしい恐ろしい。
(今思いついた適当な出任せを笑って並べた。)
■矛海 遼 > 「まぁ、何があってもおかしくないですから。
河童や鬼に竜もいるでしょうし。」
平然と冗句を飛ばしていく。
堅いのは顔だけのようだ。
「まぁ、見られたら殺さなくちゃいけないようなことはしていませんよ。
断じて、ね。
それに危険だったら貴女も危険じゃないですか。」
蓋盛 椎月 > 確かにそうですね。(確か鬼の生徒だか教師はいたな……)
どうせ出てきて襲ってくるなら美少女とか美少年がいいなー……
河童とか出てこられてもB級映画の犠牲者にしかなれないし。
(煙をふかす)
あはは、それもそうですね。まあ大丈夫ですよ。
あたしってなんかちょっとやそっとじゃ死なない気がしてるんで。
特に根拠はないんですけど。
(まったく危機感の感じられない表情。)
もし今怪異が襲ってきたら、その時は矛海先生に守ってもらいますし。
■矛海 遼 > 「では守らせて頂きましょう、お嬢様?なんて」
軽く軽口を叩きながら手に付いた砂を払い、そちらの隣へ回る。
「まぁ、このような所で襲ってくるような者もいないでしょう。」
蓋盛 椎月 > (肩をすくめて笑う)
あっはっは。結構ユーモアありますね先生。
ありがたく守られるとしましょう。
(隣に立って歩き、視線を海のほうへと向ける。)
でもこんな明かりのない、黒々とした海をジッと見つめていると
何かが出てきてもおかしくはなさそう……そんな風には思いません?
■矛海 遼 > 「古典的なB級映画ならば鮫が陸上を歩いてこない事も無いのですが。
生憎動物の相手は犬で手一杯なのでご勘弁頂きたいのですね。」
恐らくはあの時に治療を施した犬の事だろう。
結局飼う事になったようだ。
「まぁ、デカい蛸ならば経験はあるのですが。」
蓋盛 椎月 > 最近の鮫は歩くどころか飛んで襲ってきますからね。
勘弁願いたいものです……(苦笑して手をひらひらと振った。)
巨大タコって結構海洋アドベンチャーっぽい敵ですねー。
いいなー。(何がいいのか?)
矛海先生ほどの方でも犬は手強いですか。
……戦うことより面倒を見ることのほうが難しい、
ってことかなー。
(あくび)
……んじゃ、あたしそろそろ帰りますね。
お喋り付き合っていただきありがとうございます。
(しばらく浜辺を歩いた後、別れを告げて去っていく。)
ご案内:「浜辺」から蓋盛 椎月さんが去りました。
■矛海 遼 > 「えぇ、お気を付けて。良い夢を。」
手を振り、見送って行くとその場から一回、海を見つめるとそのまま背を向けて浜辺を後にする。
ご案内:「浜辺」から矛海 遼さんが去りました。
ご案内:「浜辺」にテリメーラさんが現れました。
■テリメーラ > いつから居たのだろうか。
少女が浜辺でクッションを抱きしめ座っている。
昨日痛めた右手はまだ痛むようで、なんだか浮かない表情で寄せては返す波をぼぅっと眺めている。
■テリメーラ > 何をやってもうまくいかない訳ではないが
そう錯覚させるほど昨日の失敗は彼女の中で大きな存在となっていた。
いまならなにをやったって失敗できそう、そんな気すら起こる。
こんな調子でいずれ登校できるのだろうか。沸き立つ焦燥感からおもむろに雲のクッションを千切っては海に投げた。
ご案内:「浜辺」に名取 美子さんが現れました。
■テリメーラ > そんなことを痛めた右手でやるもんだから、当然のごとく激痛が走る。
昨日の失敗の象徴とも言えるその痛みは、少女をさらにいらだたせた。
「もーばかーーーっ!!」
自分を罵りつつ左 手でクッションを思い切り海へと投げる。
が、運動神経がないので海まで届かない。
こんなこともできないんかい、と心の中で突っ込みつつ、とぼとぼと拾いに行く。
今度は拾う寸前に波にさらわれる。
「まっ…わぷっ!」
■名取 美子 > (波打ち際にしゃがみこむ影が一人。貝殻を拾っている。)
(黙々と拾い集めては時折空に透かしてみたり。と、波が少し勢いを持って美子に降りかかる。)
きゃあっ!
(悲鳴をあげるとそのまま尻餅をついた。)
■テリメーラ > その場に転んで今度はびしょびしょ。
おお、母なる星々よまだ眠っているのですか、と絶望的な運のなさに生気のない顔で陸へと上がってくる。
■テリメーラ > 俯いて地面見てとてとて歩いていた少女は、悲鳴に気づいてそちらを見やる。
見覚えのある顔だ。
今どちらかは解らないが。
「えと…えと…理子さん?」
少し離れた場所から、恐る恐る聞いてみる。
■名取 美子 > (近くで声が聞こえた。どこか聞き覚えのある高い声。)
(これ以上汚れないようにと急いで立ち上がる。落ちきらないべとついた砂を払いながら辺りを見回すと、何やら知っているような姿を捉えた。)
あれ、そこにいるのは…テリメーラちゃん、ですか?
(先日の失敗を思い出す。少し気まずそうに苦笑いしながら。)
今の私は美子ですよ。この間は迷惑かけちゃってごめんなさい…。
■テリメーラ > 「美子さんでしたか、こんにちは。」
と精一杯笑って歩み寄る。
浴場でのことに言及されると、
「あ、いえ、その僕こそはしゃいじゃってごめんなさい…」
あの日は彼女にとって俗に言う最高にハイっていうやつだった。酔っ払ってはしゃぎ回った後、そのことについて言及される感覚、ようするとこ物凄く恥ずかしい。赤面して目をそらしている。
■名取 美子 > ふふ、全然大丈夫ですよー。初めてのお風呂ですからね。マナーとかはいつでも気を付けられますし。それよりも、倒れそうだったところの面倒を見てくれてありがとうございました。
(ぺこり、と律儀に頭を下げる。)
さっき転んでたみたいですけど、大丈夫ですか?
(言いつつ手元からハンカチを取りだし、テリメーラの衣服を軽く叩くように拭き始める。)
■テリメーラ > 「僕よりメアちゃんが頑張ってくれたし…、それに理子さんにも会えたし、二人が元気で良かったです。」
ままた一緒に入りたいです、と心の底から無事を喜んでいるようで。
「そんなこと言って美子さんだって転んでたじゃないですか、きゃーって」
おとなしく服をはたかれつつ、くすくすといたずらっぽく笑ってみせる。
■名取 美子 > 理子もお礼を言ってました。二人とも凄くいい子だったって、誉めてましたよ。
(少女の無垢な笑顔を受け取ると、こちらもつられて満面の笑みに。)
えへへ…ホントドジばっかりで嫌になっちゃいます…。弁解も何も出来ませんね…。
(力なく笑いながら失態を認める。しょっちゅう転んではいるが、見られるのはやはりいつだって恥ずかしいのだ!)
ところで、テリメーラちゃんは何をしてたんですか?お散歩って感じじゃなさそうでしたけど…。
■テリメーラ > 理子さんにもほめられた、と嬉しそうに笑い、(やっぱり美子さん、ちょっと私に似てるかも)、うっかり仲間の存在ににこにこしながら偉そうに
「もー、き気をつけなくっちゃだめですよ」と窘める。
「えっ!?あー…こんっ…えーあー…」
一人いじけてましたなんて、口が裂けなきゃ言えない。こういう所で見栄っ張りなのだ。
しばらく考えた後
「海を見に…」
とぎこちなくわらってこたえる
■名取 美子 > はい、気を付けます。でも、それはお互い様ですよ?
(なんて、たまにはちょっと意地悪そうな笑みを浮かべてみたり。)
(どもる少女には何か別の理由があったのかもしれなかったが、海をみにきた、ということだけでも十分可愛らしかったし、否定する気にはならなかった。)
確かにここの海は綺麗ですよね…私も理子も、気に入って度々来てるんですよ!
■テリメーラ > 「あ…う…はい。」
やっぱり見られてたか、照れながらこくこく。
「海、キレイですよね…」
そうか、二人も好きなんだ…。
なんだか、一人いじけにきた自分がやましいような、わるものような、言葉にはできないが申し訳なくては逃げてしまいたい。
「あの、あの、今日は僕帰ります」
プルプルと、涙を浮かべて笑ってみせる。
■名取 美子 > (突然少女の様子が代わり、たじろいでしまう。こういう時、冷静に宥めてやることが出来ないのだ。)
あっ…ごめんなさい…用事があったんですね。
私も作業してたところでした…あはは。
(なんとか誤魔化して平静を装った。)
(……また海に来たらゆっくり話せるかな、などと考えながら、少女の頭を軽く撫でながら。)
それじゃあまたね、テリメーラちゃん。
(ちょっとだけ名残惜しそうにしながら、砂浜に足跡をつけ、踵を返し浜辺を歩き始めるだろう。)
■テリメーラ > 撫でられるとすこし涙が少しこぼれるが、そのまま振り返る。
去っていく美子の背中にごめんなさい…と、つぶやくと、いつものように雲にのって帰って行った。
ご案内:「浜辺」から名取 美子さんが去りました。
ご案内:「浜辺」からテリメーラさんが去りました。
ご案内:「浜辺」にスピナさんが現れました。
■スピナ > 「…………。」
海から上がってくる少女が一人。
この少女、最近この浜辺によく来ている。
■スピナ > その目的は、歩く練習だった。
「きょうも、おさんぽ……」
二日前は苦戦していた、海から陸に上がる過程も
数回こなしてればだんだん慣れてくるものだった。
少し危うい足取りではあるものの、すんなりと陸に上がり
二本足で歩くことが出来ている。
■スピナ > 「えへへ」
少女は歩くことを楽しんでいた。
これまで、数十年、もしくは数百年の時を、ほぼ海の中で過ごした彼女にとって
歩く、ということは、これまでにない経験だったから
新しいことは、好きだから
■スピナ > 道のりは昨日と同じだった。
海と反対側に歩き、島の中心に向かうように、歩を進める。
昨日、アップルジュースを貰ったところにもついた。
あの飲み物は何だったのだろう。
とても甘くて、不思議な入れ物に入ってた。それは不思議の塊だった。
味を思い出し、少女の顔は綻ぶ。
■スピナ > 楽しい気持ちのまま、さらに陸の中心部へ向かう。
しばらくすると、石の上……一般的に、道路と呼ばれるものに辿り着いた。
「きのう、くろうがいってた、いし……これ、なのかな?」
少女はおそるおそる、道路の上へ足を乗せる。
ごつごつして、硬い。あまり踏み心地はよくなさそう。
■スピナ > 「かたい……」
流石に、まだ道路の上を歩く勇気はなかったようで
そっと引き返し、砂浜の上を散歩するのを続けた。
砂浜から見た海は、月光に照らされ輝いていて……
「きれい……」
思わず、そう呟いた。
■スピナ > 水平線を見ながら、少女は歌い始めた。
最近聞いた、とても綺麗な歌。
テリメーラが歌っていた、あの歌。
言葉の意味は、まだよくわからないけど
とても綺麗なメロディだった、月夜に似合うメロディだった。
だから、月が綺麗なこの夜も、歌を歌った。
ご案内:「浜辺」にまりもさんが現れました。
■スピナ > しかし、その歌は途中で止まる。
聞いたのは、ここまでだから。
続きは、まだ聞いていない。
「ききたいな……」
風に吹かれ、薄紫色のワンピースがなびく。
ちょっと寂しげな、それでいて満足そうな、そんな顔だった。
■まりも > (歌……?こんな夜中に、誰だろう。)
防波堤より手前から、ふと、歌声に耳を傾けていたが、
歌声が止まったのを境に、声の主を探して砂浜へと降りる。
ここに来るのには理由があった。
月明かりの強い夜は、不思議と体が疼く。
そんな時は決まって、彼女は人目につかない場所で、
こっそりと異能を発現させるのだ。
住宅区から遠く、人も疎らな夜の砂浜は、そんな彼女にはおあつらえ向きの舞台だ。
■まりも > *ざっ* *ざっ*
青白く、ゆらゆらと燃える炎を右手に携え、声の主を探す。
持ち前の好奇心も相まって、やや歩調は速いが、声の聞こえた場所からは少し遠い。
その場所に辿り着くまではまだ猶予がありそうだ。
■スピナ > 「……?」
波の音に耳を傾けていると、別の音が混じったのに気づく。
それは足音のようだった。だとしたら、自分以外にだれかがいる、ということだった。
「だれか、いる?」
どこかに向けたわけでもないその言葉を、宙に放つ。
■まりも > 「あやっ、邪魔しちゃいましたかね?」
思いのほか、近くから聞こえた声に、慌てて炎を消す。
あまり、人に見られたくはない力だったからだ。
「こんばんわ。こんな夜に……キミも、お散歩?
となり、座ってもいいかな。」
夜の帳の中から姿を現した彼女は、柔らかい笑顔を浮かべながら、少女の横を指差した。
長い髪が夜風に靡き、金色の糸が月明かりに照らされキラキラと光を放つ。
■スピナ > 「わわっ、そこにいたんだ、びっくり。」
存在に気づくと、ちょっと慌てる。
そんなに近くにいるとは思わなかったのは少女も同じだったようだ。
「うん、おさんぽ、してたの。あるくれんしゅう。
となり?だいじょうぶだよ。」
笑みを向けられると、こちらも笑みを返す。
柔らかくて、無垢な笑みだった。
■まりも > 「ありがとっ!
それじゃぁ、ちょっと失礼して……よいしょっと。」
履き慣らしたスニーカーを脱ぎ、ついでに靴下も脱いで裸足になると、
隣へちょこんと体育座りをする。
「んーっ………!
夜が気持ちいい季節だね。昼間よりも、よっぽど過ごしやすいや。
……ところで、"歩く練習"って? 普段は歩き回ったり、しないのかな。」
微笑み返され、その笑顔にややドキっとしつつも、
目前に気になったそれについて聞いてみる。
どこか人間離れした雰囲気を纏うその子に、彼女の好奇心センサーの針は振り切れていた。
■スピナ > 「わたし、うみからきたから
りく、あがるの、なれてないの。」
広大な海を指差す。
「わたし、うみのせいれいさん。なまえはね、スピナ。
ここ、いろんなもの、あるって、きいたから。」
少女は立ったままだ。……座ると立ち上がれる自信がないのだろうか。
■まりも > 「わっ、すごい! 海からなんてロマンチックだよ!」
海から来た、と言う言葉に、思わず立ち上がり、両手を合わせて感嘆の声を漏らす。
「私はまりも。……あっ、そういえば毬藻も海の生き物だけど、私は人間だよ。
へぇ、スピナちゃんは精霊さんなんだね……。陸に上がったのは、最近の事なのかな。」
■スピナ > 「まりも……うん、おぼえたよ、まりも!
まりも、なのに、にんげん……おもしろい」
無邪気に笑う。
まりもという名前には親近感を感じているようだ。
「ん~?えっとね、おととい、はじめてあがってきたんだよ。
だけど、あるけなかったから、きのう、いっぱいれんしゅうしたの。
きょうも、れんしゅうしてたんだよ?」
えっへん、って顔をする。とても楽しそうだ。
「まりもは、ここのひと、かな?」
■まりも > 「ここ、って言うと……学園の事かな。
うんっ! 私はここの生徒、というか、うーん……
一人前になるために、ここで、お勉強させてもらってるんだ。」
体は波打ち際の方へと向けたまま、スピナと視線を合わせ会話を続ける。
想像していたよりも、円滑なコミュニケーションが取れそうで少し安心だ。
「たった1日で、歩けるようになったんだ……。
スピナちゃんは、頑張り屋さんなんだね。
―あっ、そうだ! 頑張るスピナちゃんにプレゼントをあげようっ!」
【背負った鞄を自分の前に持ってくると、ファスナーを開けて中をごそごそと漁る。】
■まりも > 「えと……んー……と、あっ あった!
はいっ、どうぞ。」
鞄の中から円筒状の缶を取り出し、差し出す。
月明かりの下で黒光りする缶には、夜目が利く者なら『(元祖)おしるこコーラ』と書かれているのが分かる。
■スピナ > 「おべんきょ……いいなあ
わたしも、いってみたいなあ」
少女が想像してる光景は、実際のものよりもだいぶずれている気がするが……。
「えへへ、おともだちが、ささえて、くれたからだよ。
ころんだら、わたしひとりじゃ、おきあがれないから。
……ん、これは?」
それは、昨日もらったアップルジュースの容器と同じ形をしていた。
しかし、描かれている柄は違う。文字も読めない。
「あっぷるじゅーす……?」
よくわからないので尋ねることにした。
■まりも > 「これは"おしるこコーラ"って言ってね、
とっても甘くて、口に入れるとしゅわしゅわするんだよ。
アップルジュースとは、また違った飲み物の一種……かな。」
(アップルジュース……りんごジュースが好きなのかな。
確か、神社の自販機で見かけたような。)
*ぷしゅん*
【飲み物、と言うよりは食べものに近いボリューミーな飲料を勧めつつ、
もう一本の缶のタブを起こし、自らの口に近づける。
炭酸が抜ける、やや鈍い音が(まりもにとっては)心地よい。】
■スピナ > 「そうなんだ……のみもの……」
真似をして飲もうとする……あれ?飲めない。
……よく見た、開いてない。
これはどうやって開けるんだろうか。少女はわからなかった。
「まりも……これ……あかない……」
ちょっと涙目。
■まりも > 「あっ、ごめんごめんっ!」
(そうか、陸の物には慣れてないんだっけ……)
「ちょっと貸しt……あっ、いや。
これはね、こうやって、この輪っかの所に爪を引っ掛けて……
起こすと、こんな風に穴ができるんだよ。」
思わず甘やかしてしまいそうになりつつも、
今後のことを考えると、この手の手段は覚えて貰ったほうが、
彼女のためになるだろうと思い、身振り手振りで開け方を教える。
スチールの缶はアルミ缶と違い、やや硬いが……
頑張り屋の彼女になら、案外簡単にこなせてしまうかもしれない。
そんな思いを込めて見守る。
■スピナ > 「んー……これを、こうやって……
……んー……んー!……ん~~~!!」
プルタブをおもいっきりあげようとする……
が、少女は非力だった。ちょっと上がったとこまではいいが、底から先へ進まない。
少女の表情が曇る。泣きそう。それでも開けるのを続けた。開かない。
■まりも > (かっ、かわいい……! でもちょっとだけ、かわいそうかも……?)
頑張る少女の姿を間近で見守る。
気付けば、私の手にまで汗が握られていた。
……助け舟を出すべきか、見守るべきか。決心がぐらつく。
もう少し、もう少しだけ。助けを求められるまで。
それまで見守ろう。
■スピナ > 「ん~~~~~~!!!ん~~~~~~~!!!
……ん~~~~~~~~!!!!」
しばらくの間、缶のプルタブと格闘していたが
ついに限界が来たのか、ちょっと涙を見せながら
「これ……あけて……」
上目遣いでそう懇願してきた。