2015/06/15 のログ
テリメーラ > はっいけないいけない、と頭を横にふるふる。

最近一人になるとすぐに暗いことばかり考えている気がする。
母は卒業したら迎えに行く、と言っていたし、
まずは学校に行くこと、そして真面目に勉強して、真面目に卒業すればいい。
一歩ずつ着実に成長していけばよいのだ。

ふーっと深呼吸して落ち着く。
しかし、嫌なことを考えないとしても、手持無沙汰なことには変わりないのだ。

ご案内:「浜辺」にスピナさんが現れました。
スピナ > 「テリメーラ?」

テリメーラが絵を描いている途中に背後にまわりこんだのだろうか。
後ろから声をかけてみる。

テリメーラ > 「ひゃいっ!?」
突然の後ろからの声に、反射的に体をびくっと揺らす。
なんだか恐ろしげな顔でゆっくりと後ろを振り向くと

「なんだ・・スピナさんか・・こんばんは」
と胸を撫で下ろし、笑顔であいさつした。

スピナ > 「こんばんは♪」

今日は上機嫌そうだ。
にっこりと微笑んでいる。

「なに、かいてたの?」

テリメーラの前にある、絵を覗きこもうとする。

テリメーラ > 「これはですね、僕のお母さんです。・・あんまりうまくないけど」
ちょっと恥ずかしそうに笑いつつ、絵が見やすいようにちょこっと横に移動する。

テリメーラと同じ羊の様な角を持つ4本足のドラゴン・・のはずなのだが、あまりにもお粗末というか、なんというか。奥行きが無い、脚が丸いなど拙い絵である。

スピナ > 「わぁ……」

少女には絵の上手い下手はわからない。
だから、地面に描かれたそれは

「すごい、テリメーラのおかーさん、つよそう!」

とても、かっこ良く見えた。

テリメーラ > 「そ、そう、強いんだよ!」
自分としては凛々しくて美しい母の姿を全力で描いていたつもり。
だが、実際強いし、ほめられるのは悪い気がしない。
多少苦笑いで、賞賛を受けることとした。

「こう、雷とかばりばりーって出せたりするんですよー」
と近くに小さな雲と、そこから発せられる電撃を書き加えた。

スピナ > 「はわわぁ……」

めをかがやかせて、テリメーラの描く絵を見ている。

雷の強さは、少女も知っていた。
海の上で聞いた雷鳴は、とても力強くて、恐ろしかったから。

それを出せるのは、強いこと。

テリメーラ > 「悪い竜が近づいてきたときは、ずーっと遠くまでバリバリーって!ボクもちょっと怖かったけど、いっつもそうやって守ってもらってたんですよ」
自分自身のことではないが、ふふふ、と笑いながら少し自慢げに話している。

・・話せば話すほど、心の陰であいたい気持ちが大きくなっているが、まだ彼女自身が気づくほどではない。

スピナ > 「すっごーい!かみなり、バリバリーって、できるの!
 おかーさん、つよいんだねー!テリメーラも、つよいのかな?」

少女に悪気はなかった。
純粋な気持ちで、親と子は似るという知識から
その発言は出た。

テリメーラ > 「僕にはまだ早い、って言われちゃった。
身体も小さいし、力もないし。雷はほら、危ないですしね。」
すこし恥ずかしそうに。

「雨ならできますよ」
とクッションを宙に浮かべると、少し離れた場所で小雨を降らせてみせる。

スピナ > 「わたし、きいたことがあるよ。
 いきものは、いっぱいたべて、ねる、と、おおきくなる、って。
 テリメーラも、いつか、おおきくなるよ、きっと!」

テリメーラに微笑む。
少女は期待していた。絵に描かれた母の姿みたいに
テリメーラが力強く振る舞うのを。

「わぁー、あめだー」

とてとてと、駆け寄る。

テリメーラ > 「ふふ、任せてください。すぐにおっきくなりますからね」
実際は狩りにうまくいっていないが、スピナに応援されたと思って、早くうまくならなくちゃ、と思うテリメーラであった。

「びしょびしょに・・まいっか。」
濡れたら困るんじゃないかな、と思ったけど、よく考えたらスピナは元々海の中に居たことに気付く。
その様子を、まったりと眺めることにした。

スピナ > 「あはは、ほんとうにあめだぁ」

雨降る雲の下で、くるくる回っている。
雨はべつに珍しいことじゃないけど、雨を作れるってすごい。
少女は思っていた。

本人も気づいてないが、この少女、既に陸上で走ったり回ったりもできるようになっている。

テリメーラ > 「スピナさんあんまりくるくるしてると転んじゃいますよ」
と注意しながらぽーっ見守っている。
なんだか自分の能力で楽しく遊んでいるのをみるとこちらまで嬉しくなってくる。

(アレ、スピナさんってこんなに歩けたっけ・・)
少しは違和感に気付き始めているようだ。

スピナ > 「えへへー、だいじょうぶ!
 もう、あるけるようになった!
 りく、いっぱいあるいたよ!」

上機嫌の理由の一つは、それらしい。
雨の下で、くるくるとステップを踏んでいる。



「あいてっ」

はしゃぎすぎて転んだ。

テリメーラ > やっとスピナに感じていた違和感の正体に気付いたようだ。
「すごいすごい!!」
と立ち上がって拍手をしようとした。
が、その瞬間、転んだスピナを見て、
「だ、大丈夫ですか!?」
と心配そうな顔で駆け寄ってくるだろう。

スピナ > 「えへへ……」

しかし、少女の表情はとても明るかった。
砂まみれになりながら笑っている。

「テリメーラ、わたし、がっこう、いけるかもしれないの。
 りく、あるいて、いろんなひと、であって
 たすけてもらったり、おしえてもらったり、した。」

表情は崩さず。

「おともだち、いっぱいできたんだよ。
 でも、こんなにいっぱい、できたの、テリメーラと、あと、みんなのおかげ
 りく、あるく、れんしゅう、なかったら……わたし、まだうみのなか、だから」

テリメーラ > スピナの笑顔を見て、無事を確認すると手をそっと差し伸べる。
「一番頑張ったのはスピナさんですよ、僕らはお手伝いしただけだから。まず無事で何よりです」
ふふ、と笑って見せる。

「学校・・かぁ・・」
学校に行かなかったのは自分の選んだことなのに、すんなりと行くと宣言できるスピナが羨ましく、少し嫉妬してしまう。
歩くことのできなかったスピナが陸を克服した姿は、今自分の目指す成功のビジョンに近かったから余計に。
ただでさえ最近は失敗続きだったから・・。

でもそれより、見習って続かなくっちゃ。
「僕も、一緒に学校に通えるように頑張るね」
と笑顔で告げた。

スピナ > 差し伸べられた手を取り、立ち上がる。
もう、以前のような、陸への怯えや、不慣れさはない。
しっかりと、立ち上がれていた。

「わたしも、テリメーラと、いっしょにおべんきょうしたい。
 おべんきょうも、ともだちといっしょ、のほうが、きっとたのしい。
 だから、いっしょに、がっこう、いこうね。
 あと……」

にっこりと微笑んで

「また、いっしょにうたおう!」

その笑顔は、とても無垢で、純粋で、可憐で、そして輝いていた。

テリメーラ > スピナの目を見て、何かを感じ取ったのだろう。
(いつかは私もこんな風に変わりたいな・・)と思う。

「僕もスピナさんとお勉強して、遊んで一緒に歌いたいな」
と輝く笑顔を返す。
歌も、この間忘れちゃったところ、思い出したんですよ、と付け加えつつ。

スピナ > 「えへ、これでさいごまで、うたえるね。」

息を吸って、歌いだそう……としたところで
歌の代わりに出てきたのは大あくびだった。
そういえば睡眠の途中だったんだと思いだした。

「んぁ……ごめんね
 うた、うたいたかった、けど……ねむい、みたい。」

涙が出た目をこする。
微笑む口と、眠たげな目とが相まって、ちょっとうっとりした表情にも見える。

テリメーラ > 「いえ、気にしないで、実は僕も」
と、偽物のあくびをして見せる。
が、それにつられてホンモノのあくびも出てきた。
自分で思ってたより、眠気が出てきたみたいだ。

「今日は一回帰りましょっか。」
もう、スピナさん半分眠っちゃってるもんね、と笑っているが、テリメーラもなんだか目がとろーんとし始めている感じがする。

スピナ > 「えへへ、よるは、ねるじかん……わたひ、おぼえたもん……」

ろれつが微妙に回ってない。
とぼとぼと海の方へ歩いて行く。

「おうたは、またこんど……
 おやすみ、テリメーラ。また、あおうね。」

海に浸かり、殻を展開する。
少女は、殻に包まれて、海へと流れていった――

ご案内:「浜辺」からスピナさんが去りました。
テリメーラ > 「うん、そうね、寝る時間・・」
あくびが出たあたりから、一気に自分も眠いと自覚してきたのか、今にも寝そうになってきている。

「また、ね。おやすみなさい。」
と流れていくスピナを見送ると、自分もあくび交じりで雲へと飛び乗った。

ご案内:「浜辺」からテリメーラさんが去りました。
ご案内:「浜辺」にルーシェ・サリさんが現れました。
ルーシェ・サリ > (最大に力を込めて、刹那、砂浜に小ぶりなクレーターを作りつつ前進。水面をかっとんで行くと、能力の制御を失い水に蹴躓き思い切り回転する)

―――――うぐっ!?

(猫が蹴飛ばされたような悲鳴をあげて顔面から海中へと没する。しばらくして海面に顔を出すと咳をした。
 ――彼女は加速の異能を使いこなそうとしていた。問題点があるとすればひとつ。最大まで加速すると制御などできず直進し、壁に衝突して病院送りにされること。プールも距離が足らず、しかたがなく海でやっていたのだ。昼間だと目立つため夜に。海岸でごうごうと燃える焚き火に向かって豪快にクロールで戻っていくと、這うようにして到達する。水着はよくある水着だった。学校支給のものをそのまま使っている)

ルーシェ・サリ > (大人サイズね。そうわかったわ。うふふ。
 採寸してくれた女性はにっこり笑って子供用を出してくれた。エルフの年齢では子供でも人間の年齢なら大人だし普通のくれるだろうと思った結果がこれである。焚き火にあたって暖をとる。流石に海は寒すぎた)

さっむ……。

(横に伸びた耳から水が伝う。白い肌にはぽつぽつと球状になった海水と鳥肌がたっていた。脚を前で抱えて座り込む。ついでに捕獲しておいた魚の串焼きが焚き火の傍で燃えている。食するには小さすぎて一口分が精一杯だった。)

ふーん……お前だけは変わらないのな。

(見上げた先には銀色のおつきさま。元の世界でも月はあった。星座は違うのに月だけは同じように見えた。焚き火に細い指をかざしてしばし休息を)

ルーシェ・サリ > (灯台の光が空をかき回している。闇になれた瞳がかすかに痛んだ。燃え盛る焚き火がまたひとつの木を消し炭に替えた。)

よし。休憩終了!

(休みはおわった。再び特訓へ)

ご案内:「浜辺」からルーシェ・サリさんが去りました。
ご案内:「浜辺」に山田 竹蔵さんが現れました。
山田 竹蔵 > 「……!」 「……!」 *シュッ* *シュッ*

静かな浜辺。月の光と灯台の明かりだけがあたりを照らす中。
青年が一人トレーニングをしていた。

ご案内:「浜辺」にまりもさんが現れました。
山田 竹蔵 > 「………ふぅ、ひとまずこんなところか……」

トレーニングが一段落し、一息つく山田。
鞄から缶ジュース……大抵の人なら運動の後にもっとふさわしい物があるだろうと突っ込みたくなるであろうもの……おしるこコーラを取り出し、缶を開け飲み始める。

まりも > ゆらり ゆらりと 林の影から青白い光
奇妙なそれは 何かを避けるように 時には立ち止まり 確認するように
波打ち際の方へと 徐々に寄っていく

一見すると それは 月の光を紡いだかのような 不気味な青白い"炎"
夜目が利く者ならば その炎を手に携える"少女"の姿も捉えることができるかもしれない

まりも > 「あの子……今日は、来てないかな。」

ぽつりと、波打ち際で呟く。
無用心なのか、もう一人の気配には気付かない。
浜辺には自分ひとりだと思い込んでいるようだ。

山田 竹蔵 > 「……ん?」

月の光、灯台の明かりと似ているようで違う青白い光が、
林のほうから漏れていることに気がつく。

そこから少女が現れ、波打ち際に歩いて行く。
山田はその少女の姿に見覚えがある。

山田 竹蔵 > 「よう、毬藻ちゃん」

山田もよく見知っているその少女に声をかける。

「誰か待ってるのか?」

静けさゆえに聞こえてしまったのか、はたまた偶然か。
少女の独り言に応えるように質問を投げかけた。

まりも > 「っんひあ!?」

唐突に、意中の外から声をかけられ、形容しがたい悲鳴を上げてしまう。
極度に驚いた様子で、声のした方へと振り返ろうと――


した時だった。
するり 手から"何か"が抜け落ち

*ぼちゃん*

……水面を蹴って、かわいい水柱を上げる。

山田 竹蔵 > 「な、なんか落としたけど大丈夫なのか?」

すぐさま彼女が落としたものを拾いに行こうとして、動きが止まる。
落とした先は海の中。
吸血鬼であるがゆえ流水に弱い山田では、とても取りにはいけない。

まりも > 「って ―あれ、もしかして……山田さん?
 びっくりしたぁ……おどかさないでくださいよ~ もうっ!」

最近仲良くなった友人の、顔に向かって、ピッと人差し指を立てつつ頬を膨らませる。

知らない人じゃなくて良かった。
ほっ、とした表情で胸を撫で下ろす、も。

「んえ、落とし……って、あれ?
 あ……ああああっ!!?? 私の水晶玉ぁー!?」

落ちついたのも束の間。
慌ててその場にしゃがみ込むと、ばしゃばしゃと砂交じりの飛沫を上げて海水を掻き分ける。
素振りを見るに、おおよそ彼女にとっては大切なものか、とても高価なものらしい。

山田 竹蔵 > 「……水晶球?それならここに……」

海水の中の一部分を指差す。
おそらく夜目が利いていて見えているのか、彼の指差す先は迷いがないようだ。

まりも > 「んえっ、ほ ホントですかっ!?」

指示された場所を、服が濡れるのも気にせずに、
やや濁り始めた海水の中を必死に手探る。

この姿勢、なかなかに危ない。
ともすればスカートの中がちらりと見えてしまう……かもしれない、かも。


「―――あっ、あったーっ!!」

やや、砂の付いたそれを手に、夜空に大きく掲げる。
少女の手には、拳よりやや小さめの、やや濁ったガラス玉が握られていた。

山田 竹蔵 > 「危なかったな……あと少しで流されるところだった」

少女が無事に水晶玉を取り戻せたことに、自分のことのように安心する様子だ。

「しかし水晶玉だったのか……さっきの青い炎は」

水晶玉の方が気になったせいもあり、彼女のスカートの中は見ていない……ようだ。たぶん。

まりも > 「ひあっー!!? 見た! 見たんですねーっ!」

水晶玉を見つけた喜びから一転、ハッと我に帰ると、
ばしゃばしゃ、と押し引きする波を蹴りながら、山田へと詰め寄り、ずいと顔を近づける。
驚きと心配の表情に、先ほど浴びた海水が混じって、
まるで半泣き顔のようにも見えるかもしれない。
……実際のところ、まりも自身もやや混乱しており、どんな顔をすればいいのか分からない。

山田 竹蔵 > 「み、見たらまずかったか? 暗いから結構目立ってたと思うけど……」

まりもが勢い良く詰め寄ってきたので思わず二・三歩後ずさる。

まりも > 「だっ、だめ……じゃ、ないんですけど、あいや、やっぱりダメです!」

後退する山田にあわせ、さらにずんずんと詰め寄って行く。
怒っている、と言うよりは、どうしていいのか分からず、そうせざるを得ないほど焦っているようである。

「ん゛~~……、誰にもバレないように、気をつけてたのになぁ……。
 すっかりあの子に夢中で、油断してたよぅ。」

徐々に、うな垂れながら肩を落とす。
しまいには、砂浜にぺたりと両足をつけ、あひる座りになってしまった。
乾いた砂浜の上、月の光を受けて淡く輝く水晶玉がころりと転がる。

まりも > 「山田さんが見たのって、コレですよね。」

ぽん、と 指先にマッチの火程度の、青い炎が点灯する。
どうやら、水晶玉の有無は関係無いようだ。

山田 竹蔵 > 「おっ、それそれ。水晶玉関係無かったのか。」

青い炎を見て、納得するように頷く山田。

まりも > 「……えいっ。」

つん、指を突き出すと、山田の顔面目掛けて青白い火の玉が飛ぶ。
―勢いが付きすぎていれば当たるかもしれないし、風が吹けば消えてしまうかもしれない。
炎が目前まで届くのならば、炎にしては不自然に、暖気を纏っていない事に気付くだろう。

山田 竹蔵 > 「うおっ!?……っと、あれ。思ったより熱くない……?」

思いきり顔面に受けてしまった山田。
あわや大ダメージかと思ったが、実際に受けた感覚は拍子抜けするものだった。

まりも > 「……まー、山田さんになら、いっかな。」

くるり、と、座ったまま180度振り返り、足を投げ出して海の上に浮かぶ月を見上げる。

「ナイショにしてて、ゴメンね。
 実は、私も……異能者なんだっ。」

観念したような、諦め混じりな、
けれども、どこか安心した口調で話し始める。

山田 竹蔵 > 「……いやそれ、別に内緒にしなくても良くないか?
異能者なんて、この学校なら普通じゃね?」

山田の反応はとても冷静なものだった。
常世学園に異世界から来たばかりの山田であったが、
山田が元々暮らしていた世界でも異能者や人外は普通に存在していた。
だから山田にとっては驚くに値しなかったのだろう。

まりも > 「……そうだね。
 ここじゃぁ、ごくありふれてるもんね、異能って。」

そう、答えられるのは分かりきっていた。
むしろ、異能を持たない者が少数派なこの大地で、それは至極当たり前の事なんだ。

「私は、ふつーの女の子が良かったな。
 ふつーに学校に行って、ふつーに物を作って、ふつーに結婚して、ふつーに子供が欲しかった。」

でも、彼女はそれが嫌だったらしい。
彼女には、「力を持つ者への憧れ」よりも、「力を持たざる者への執着」の方が、
何倍も価値のあるもののように、映るのだ。

山田 竹蔵 > 「………………」

山田はまりもの言葉をじっと聞く。

(普通……普通を求める……か……)

少し、彼女の言葉を理解するのに時間がかかった。
山田にとっての「普通」は、彼女の求める普通とは違うものだったからだ。

(人間同士で、誰も能力を持たず、日常を送る、か……)

山田 竹蔵 > 「……なるほど……ちょっと俺には思い付かなかったな、そういうの」

時間を置いて、少女の言葉に答えを返した。

「というか……多分俺と毬藻ちゃんじゃ、『普通』が違うんだと思う」

まりも > 「あ、そっか。山田さんって、確か……違う地球から、来たんだっけ。
 違う世界……想像もつかないけど……あっ、そうか。
 私が、想像できないように、山田さんも、こっちの世界の"普通"って、想像できないんだね。」

なるほど納得、と、少女は水平線に向かって頷く。

「でもね、今の生活……普通じゃないのも、嫌いじゃないよ。
 山田さんみたいな、"私"を見てくれる友達もできたし、
 みんな、どこか違う人ばっかりで、あんまり神経質にならなくても良いし。
 おしるこコーラは、どこにでも売ってるしね!」

くるり、と山田に向かって振り返る。
どこか影のある微笑み混じりの表情は、心配事なんてないようにも、
どこか、吹っ切れた道化のようにも映るかもしれない。

まりも > 「んーっ……私らしくないよね。」

立ち上がり、ぱん とスカートについた砂を払う。
濡れた手足はもう乾き、すっかりと砂は落ちきっていた。

「折角だし、ちょっとだけ、私の異能でも披露しよっかな!」

呼吸を整え、落ち着き払う。
声にいつもの調子が戻る。
手指をぱきぱきと、鳴らそうとするが……握力が無さ過ぎて思うようにいかなかった。

山田 竹蔵 > 「お。どんなことができるんだ?」

真剣な表情から一転、すこし表情が和らぐ山田。

こんな真剣な毬藻ちゃん初めて見た。
先ほどそんなことを考えていた山田であったが、その後の切り替えの早さに感心させられた。

山田 竹蔵 > (……真剣な毬藻ちゃんも新鮮だったけど、元気な毬藻ちゃんがやっぱりかわいいな)

手を鳴らそうとして失敗する彼女の姿に和みながら、そんなことを考えたりもしていた。

まりも > 「よくぞ聞いてくれました!
 刮目してくださいね、山田さんっ!」

指がならずにややバツが悪そうにしつつも、
利き手を自らの前に差し出し、手のひらを夜空に向ける。
そのまま瞳を閉じ、暫くすると、手の中に小さな青い灯火が生まれた。

-

こんな力、無ければ良い。
数え切れないほど、そう心の中で叫び続けた。

―でも、本当は心のどこかで、いつも思っていた。
いつまでも、逃げ続けてるだけじゃ、変わらないって。
そして今、確信を持った。
この切欠を機に、変わっていかなきゃ、ダメなんだって。

まりも > *すぅ……*

「いっくよー……えぇいっ!!」

*びゅうん*

ゆっくりと深呼吸し、青い光を握りこんだ右手を左後ろに構えると、自分を中心に大きく輪を描くように思い切り振り抜く。

ぽつ ぽつ ぽつ
不思議な音を立てながら、青白い炎……セントエルモの火・鬼火などと称される、自然発火現象が。
まりもの周囲に巻き起こった。

……遠目から見れば、お化け屋敷の演出にありがちな人魂のそれである。

山田 竹蔵 > 「……!」

山田は、山田らしからぬ柔らかい微笑みの表情で彼女の様子を見ていた。

彼女の披露する異能に対してだけではない。
どこか何かを吹っ切ろうとするように微笑み、気丈に振る舞う姿にも心を動かされていた。

まりも > 「………と、あんまり数を出したことはないけど、
 やってみれば案外いけるみたいっ!」

自分がやった事にやや驚きつつも、小さく燃える青い炎の一つを、
手でたぐり寄せて集める。

「これが、私の異能の一つ……みたい。
 で、本題はこれから。」

まりも > 6、7つはあるだろうか。
ゆらりと立ち上る青い炎を、一箇所に集めて纏め上げると、
鞄の中を漁って、マッチ箱のような物……
というよりマッチ箱そのものである。その中から、1本の燐寸を取り出し、火を灯した。

「ちょっと、危ないかも……。」

山田に対して、やや離れるように制する。

山田 竹蔵 > 「……。」

無言で頷き、距離を取る。

まりも > 「これ……私も危ないかも。
 まぁいいや、それっ!」

火の灯った燐寸を、青い炎の中に投げ入れる。と同時に、全力で炎とは反対側に向かって、飛び込むように距離を離した。

対照的な色の炎が混ざり合った刹那、青い炎を飲み込むように、またたく間に赤い巨大な炎が立ち昇る。
半ば爆発に近いそれは、閃光を放った後、自ら巻き起こした砂煙によって、文字通り瞬く間に消えた。

「うぎゃぁー!!」

……案の定、まりもを巻き込んで。

山田 竹蔵 > 「おお…………すげえ…………ってうおおお!?毬藻ちゃーん!?」

やはり山田らしからぬ反応でまりものもとに駆け寄る。

まりも > 「こんな感じです……かはッ」

駆けつけた時には既に遅く、腹ばいのまま、見るも無残に全身に砂を被っていた。
砂浜に『犯人はヤツ』とダイイングメッセージを遺しつつ、
爆発を間近で受けたまりもは、その短い生涯に幕を閉じ事切れる。

山田 竹蔵 > 「…………」

山田の動きが鈍くなる。

「うそ……だろ……?こんな、こんなことで……!」

山田の頬を伝う。涙。

山田 竹蔵 > 最初に話した時、明るい子だと思った。
また会って、変わった子だと思った。
そして今日。彼女の心の内を聞き、さらに彼女に興味を持った。


初めて異性に心を突き動かされた。
初めて、人を好きになった。
初めて、恋愛感情というものを抱いた。

山田 竹蔵 > 大原 毬藻。
健気でかわいい元気な少女。

そんな彼女が、こんな。

こんな形で。

こんなちょっとした余興で。

まりも > 「そのとき、奇跡が起こる。
 山田の涙がまりもの体にふれると、その口元がかすかに震え、
 薄く、瞳を開いて山田に語りかける。

 ありがとう……はじめての、人外のお友達さん……。」

「かのじょは再び瞳を閉じー、やがて全身の力がぬけるー……。」

山田 竹蔵 > 「…………」

え。

山田 竹蔵 > 山田の動きが完全に止まる。
山田 竹蔵 > 「……………………」
山田 竹蔵 > 「うおあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!普通に生きてるじゃないかうああああああああああああああああ!!!!!!俺の悲しみ返せ!!!俺の涙返せ!!!!!ああああああああああああああ!!!ちくしょおおおおおお!!!!!!!!!!」




割りとマジギレ気味だった。
照れと怒りと、いろいろな感情で、山田は山田らしからぬ雄叫びを上げた。

まりも > 「えへへ……山田さんも中々、可愛い表情するんですね!」

片目を開け、舌をぺろりと出す。

「っぐげ、砂食べた!」

その拍子に、口元についた砂がモロ、口内に入って渋い表情を浮かべた。
どうやらまりもは平気そうだ。
むしろ山田の反応に、先ほどまでの哀愁を感じさせないほど笑っている。

山田 竹蔵 > 「くそっ!!くそっ!!くそっ!!!」

恥ずかしさとさっきまでの悲しみの勢いと怒りですごい勢いで砂に頭突きしている!

「もう今日は許さん……マジで許さん……俺の心を弄びやがって……!」

山田はまだ泣いていた。

山田 竹蔵 > 「うう……ううっ……」*グス*
「良かった……生きてて本当によかった……!」

そして、初恋の相手となった彼女が生きていた喜びの涙もそこにあった。

まりも > 「ちょっまっおちついて!悪気はなかったんです!
 正直なところ一瞬だけ本当にグラっときましたし!」

思ったよりピュアだった山田さんに、今や若干、良心の呵責すら感じた。
―内心、見事にハマってくれたおかげで、笑いは止まらなかったが。
それでも、弄ぶつもりはなく、単なる"まりもなりの場の和ませ方"……のつもりだったのだ。

山田 竹蔵 > *ガシッ*

まりもの肩を掴み、激しく揺さぶる。

「いいか?もう二度とやるなよ?当然俺以外にもだ!
もし次やったら絶交だからな?マジで絶交するからな?いいか二度とやるんじゃねえぞ!?」

再び山田は怒りの表情を露わにする。
ただでさえ赤い目は泣いたことで腫れているようだ。

まりも > 「ひっ、はい!ごめんなさいっ!?
 絶交は私も困りますー!」

山田の剣幕に圧され、いよいよ以って笑い事じゃない事を悟る。
地元では、そこそこウケるネタだったのに……。
所変われば品変わるとも言うけど、これも意識の差なのかな……

それとも、"私だから"……?
いや、考えすぎか。

山田 竹蔵 > 「……この際だから言ってやる、……俺は毬藻ちゃんを好きになった。
だから、絶対に死なせたくないんだ」

今しかない。勢いとばかりに告白までしてしまうことにした山田。

そして……。

まりも > 「―――?」

唐突すぎて、状況が良く飲み込めていない。
一瞬の間を置き、首をかしげた。
意味を理解するのには長い時間がかかった。
口の中に、砂利とはまた違った味が広がる。