2015/07/02 のログ
ご案内:「浜辺」に自販機さんが現れました。
■自販機 > (波音)
■自販機 > 「ブーン」
(広大な海原。波打ち際に自販機が佇んでいた。
というより埋まっていた。足元は砂で埋まっており徐々に波に飲まれつつあった)
「ブーン」
(ああ錆びる錆びる)
■自販機 > (波の下にだって都はございます。
いつの間にか横に座っていた魚顔の男が呟いた。
お前どこから来たんだよと)
ご案内:「浜辺」に生ヶ易案子さんが現れました。
■生ヶ易案子 > 可愛らしいフリルのセパレートに、細くはあるが運動はしていなそうな四肢。意外と着やせするんだなと思わせる一部分。
オレンジ色のゴーグルに、半透明の浮き輪。
「よーし海開きだ!」
しかし彼女の他に泳ぐ者の姿はない。
解説しよう! あまりに学校をさぼりすぎて試験という概念を失ったあんずさんは、うっかり試験週間そのものを脳内で飛ばして一週間後と間違えてしまったのだ。
海岸には、なんだかよくわからない漂着物とかがあるばかり。
「……自販機?」
仕方がないので、何やら大きい影に近付いてみる。
■自販機 > (魚顔の男は空気を読んで海にざぶんざぶんと潜っていった。
アウトサイダー呼ばわりしてきそうな顔してんな)
「ブーン」
(自販機が居た。水着を着ていようが裸だろうがピクリともこないよ自販機だし。
自販機が波打ち際に刺さっている。電源コードは海の中というのに普通に低音をあげて営業中だった。
怪異じゃないよ。不思議だよ)
■生ヶ易案子 > 「…………?」
ちょうど足元あたりで、何かが潜っていくように水が跳ねた、が。
どうやらそれも、海水浴客ではなさそうだ。
「おかしいなあ……雨天中止って天気じゃないと思ったのに」
おかしいのは自分の日付感覚なのだがそれはそれ。
とりあえず砂の上で傾いた自販機を検める。海水浴場として設営された……わけではないっぽい。
「なんか見たことないデザインだし、外国から流れてきたのかな」
商品があるのかよくわからないが、動いてはいるようだ。どこかに説明書きとかがないか探してみよう。
■自販機 > (商品は無いが複数のお金を入れる箇所がある。ドルかもしれないし、円かもしれない。商品のあるべき箇所は真っ暗に見える。あるいは、そもそも商品などないように見える。説明書きらしきものは一切なく「最高の気分!」「ヘブン状態!」などと書かれた意味不明な落書き程度しかない)
「ブーン」
(低音を立ててかすかに振動している。まだ動いている。
海水にどっぷり浸かってはいるが営業中ですぜといわんばかりに)
■生ヶ易案子 > お金を入れられるようだが、説明どころか商品のサンプルすらいっさいない。
そういえば、遠い外国ではなんか情報が統制されているみたいな話を聞いたことがあるし、たぶん自販機の商品の情報が統制されている国の自販機なんだろう。
「んーっと、でもジュースっていったら100円だよな」
海水浴に来ているので、水着にひもでくくったビニールのケースに最低限の小銭しか持ち合わせがない。
「喉乾いたもんね。たぶん飲み物が出てくるよね」
なんの警戒心もなく、100円玉を入れてみる。たぶんダメだったら普通に落ちてくるだろう。
ちゃりん。
■自販機 > (ゴゴゴゴゴゴ……自販機が独りでに立ち上がった。傾きが元通りとなり土が盛り上がって海水から離れる。
ガコンと音がして飲み物が出てくるだろう。
が、それは飲み物というよりボトルメールだった。
なにやら紙切れが封じ込められているとても古いものだった。)
■生ヶ易案子 > 「うわああぁノスタルジーだ!?」
たぶんハイテクノロジーと言いたい。
とにかく自販機がいきなり動いたので、びっくりしてずざざざと後ろに下がる。これか。これがヘブン状態か。
変形して発進とかはしないようだ。いや、次の瞬間にしているかもしれないが。
「…………」
商品受けに落ちてきたのは、やや古臭いデザインのガラス瓶に見えた。
「ラムネかな……? ノスタルジーだ」
こっちは多分あってる。
ともあれ拾い上げてみるが、……液体の重みがない。ガラス表面の手触りは、波に揺られたように風化している。中には、日航に焼けたなにかの紙切れ。
「……これは、えーと」
おそるおそる取り出して、
「機密書類……!?」
たぶん違うが、がさごそと開いてみる。
■自販機 > 「はずれ」
■自販機 > (内容は以上だ!!)
■生ヶ易案子 > ――自販機の商品の内容まで統制されてしまうような国(そんなものはない)の機密書類(というわけでもない)だ。もしやとんでもないことが書いてあるのでは。
守秘義務だ。海水浴場知りえた秘密だ、なんてわけのわからないことを呟きながら、どきまぎと古い紙をほどいたのだ、が。
「…………」
はずれ、の3文字と向かいあい、たっぷり10秒ほどの時間がすぎる。
どこかでうみねこが、バカにするように、にゃあ、と鳴いた。
「……あ、あんずさんの学力でも読める!」
ひらがな三文字だからな。
■自販機 > 「と思うじゃん?」
■自販機 > (文字がスススと変化していく。
100円分はしゃべってくれるに違いない。違いない)
「ブーン」
(販売後のことは知らぬと自販機は黙っている。
文字がひとつの棒になるとグルグルと紙の中を蠢き始める。ミミズや蛇のような動き。つまりキモイ)
■生ヶ易案子 > 「うわああぁ!?」
先ほどまで見ていたはずの文字列が突如置きかわる。
驚いて手放しかけた紙きれが風にさらわれそうになるが、慌てて掴み直す。……その頃にはもう、文字は崩れ、うごめく線の集合体に変わっている。虫っぽい。こわい。
「え、ええとこれは、……アレだ! 知ってる!」
あんずさんはとっさに茶化た紙を砂浜に敷いて、……あらたに取り出した10円玉を乗せた。
「こっくりさんこっくりさん、えーと、おいでください……? だっけ」
微妙に色々違うが、たぶん似たようなものだと判断したらしい。
■自販機 > (指を乗せた次の瞬間、10円が紙の上をスススと動く。動くだけで特に何かあるわけでもなかった。ひたすら左右に動くだけ。10円がピタリと止まると棒は次の文字に変化した)
「はいはいこっくりこっくり」
(走り書きさながらやる気の無い文字で言葉が綴られる。
怪異そのものだった。どこぞの組織に施設に閉じ込められてしまいそうな予感さえあるだろう。
文字は少女と会話できるだけの知能があるらしい。)
■生ヶ易案子 > ろくに勉強もしていないので、怪異関連の知識にはあまり詳しくない。
常世学園に入学するよりずっと前。ごくありふれた、噂話しか娯楽のない田園田舎の小学校に通っていた頃に聞いた記憶を必死に掘り起こす。
……たしか、最初の言葉を言ったあとは『はい』の文字がなんかするはずだ。つまり、
「ほ、本物だ……!」
判定基準ガバガバである。
「えーと、じゃあ、鳥の位置までお戻りください……!」
惜しい。鳥居である。それ以前の問題がいろいろあるが。
■自販機 > 「OK」
(バッサバッサバッサ……文字は鳥の姿になると紙から飛び出してどこかに飛んでいってしまった。
鳥の位置といわれたので飛んだのだろうか。
いずれにせよ、怪異というものにうかつに触れるべきではなかったのだ。
そう、ここ常世学園では……。)
「ブーン」
(あわれなるもの。汝の名前は女。
白紙とボトルだけが残されました)
■生ヶ易案子 > 「へぷ」
飛び去る文字のはばたきを、顔に、鼻の粘膜にまともに食らう。
「……っし、へぐ!」
もともと空気の粉っぽい砂浜だ。くしゃみをいくつか連発して、止まらなくなりそうなところで、ちょうど手元に残されていた白紙を口元に当てる。
後には、小娘の沈黙と、波の音と、謎の自販機の駆動音だけが残った。
ひと夏の怪異体験の気配は少しずつ緩んでいく。
ただ、
「……めちゃくちゃ喉乾いた……」
緊張とくしゃみの相乗効果である。
100円を投じて得られた結果は真逆であったことは確かだ。常世学園はつらくきびしい。
■自販機 > (うかつに怪異に金銭を投じてしまったことによって、少女は酷い目を見た。
誰もがおかしくなる場所。
そうここナイトス……常世学園では……。)
「ブーン」
(じはんきさんはたってるだけだよ。
ぶーんぶんいうよ ほーむらんもうつよ)
■生ヶ易案子 > 「うーん。やっぱり、はずれだから海水浴客いなかったのかな……」
謎の解釈をしながら、自販機のかたわらの小娘は遠く沖の空を見通す。
はばたいて消えた文字はもう見えない。夕暮れに染まりつつある空に、カモメともウミネコともつかない海鳥の群れが黒い曲線を散らしているばかりだ。
そういえば、こっくりさんにはお帰りいただかないといけないのではなかったか。
あれで帰ったことになるからいいんだろうか。
こっくりさんかどうかはともかく。
後日、浜辺周辺で、夕暮れの海鳥の群れがいきなりやる気のない文字になる怪現象が多々報告されたりしたのは、また別のお話である。
ご案内:「浜辺」から生ヶ易案子さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から自販機さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に立花 響さんが現れました。
■立花 響 > 実技試験終了後、荷物を女子寮に置いてトランペットが入ったケースと貴重品のみを持ってこの浜辺を訪れる
響が楽器を持って特定の場所に現れる理由は言わなくても分かるだろうが楽器を演奏する為である
ただ今学園は試験期間の為、学園内で試験中の生徒に集中力を乱すような音を出す訳にはいかない
別に演奏するだけなら歓楽街や公園とかでもいいのだが、今日はあまり人気のない所で演奏したい気分なのだろう
「試験期間終わったら、海開きでここも賑やかになるんだよねー…」
金管楽器と潮風の相性は良くない。
その風に吹かれるだけで金管楽器は弱音を上げてしまう。
響はそれを知らない訳じゃない。
別に壊れても響にとってそこまで痛手ではないからというのもあるのだが
■立花 響 > すぅ、と深呼吸をすれば口の前にトランペットを構え、マウスピースに口を合わせる。
トランペットに合うマウスピースは他の金管楽器と比べて小さい為に音を出す難易度だけなら高いだろうか。
演奏難易度で難易度が高いならトロンボーンやチューバとか重かったり演奏方法が他の金管と比べて変わっているものが主だろう。
『―――♪』
特に意味もない、一つの音を続けて鳴らし続ける。
何も考えてない一音が海に響き渡る。
人間の言葉で例えるなら海に《ばかやろー!》と叫ぶようなものだろうか
■立花 響 > 眩しい。
もう夕方なんだな、と改めて自覚させるような夕暮れが目に染みる。
美しい景色といえば美しい景色だが、海の向こうには本土がある。
ただそれだけを考えてしまうと特に美しくもない普通の景色、と考えてしまう
「そういえば、軽音部行かなきゃなぁ」
トランペットから口を離してぽつりと呟く。
烏丸九郎に軽音部に入れてほしい、と言ってからというもの
特に活動をしていないどころか軽音部員に遭遇していない気がする。
後者はただの不運と片付けれるだろうが、前者は自信のやる気の問題である
■立花 響 > 「なんだっけ……えーと、キーボード?だったよね」
軽音部というよりバントのキーボードポジションというのはスタンドの上にキーボードを置いてそれを弾く、というイメージがある
キーボードというのはその音楽全体の音の厚みを出す、所謂土台や後押しのようなものなのだが
「別に弾いた事ないって訳じゃないけど…弾く事自体久しぶりだったような」
今響が思い浮かべている物は『大体のものなら弾ける』という大言をした後にキーボードは弾けませんでした、という最悪のシナリオである
「だ、大丈夫…なはず…多分」
学生区に帰ったら新品のキーボードと周辺器具、後はスタンドもセットで買う、と今心に決めた
■立花 響 > 資金は問題はない。
問題があるとするならば練習する時間と場所である。
「あー…早く試験期間終わらないかな」
わざわざこんな浜辺に来てまで気分転換の演奏をするには遠い。
その点学園の屋上や時計塔等、あまり人気のない所は近い上に場所が沢山ある。
この浜辺は特に悪い事はしていないのだが、やはり近いと遠いでは近い方を選んでしまう。
そんな遠くまで来てしまった鬱憤を吐き出すように響は力強くトランペットの音を海の遠くまで響かせていく
■立花 響 > 「…あー、もうこんなに暗くなっちゃったか。帰らないと」
特に一曲吹く訳でもなく適当にトランペットを吹いているとすっかり暗くなってしまった。
それなりに長い時間吹いていたからかトランペットもやや音の質が下がっているような気もする
「列車はいつでも動いてるけど、あまり女子寮に遅れて帰ると怒られちゃうからなぁ…」
最近知った事なのだが女子寮には門限があるらしく、一定の時間までに帰らないと怒られるとか。
そんなことも構わず響は深夜に歓楽街で猫を拾って部屋まで持ち帰った経験があるが
今のところお咎めが無い辺り、バレてはいないようだ。
■立花 響 > 「…とりあえず、帰るだけ帰ろ」
トランペットをケースに入れ、響は一先ずこの場を引き上げる事にした。
ご案内:「浜辺」から立花 響さんが去りました。
ご案内:「浜辺」にエリカさんが現れました。
■エリカ > 試験期間は短くても体感的には非常に長い。
心身ともに疲労がたまるそんな折、
学生の本分での疲れを癒す為、思い立って気分転換に浜辺に。
砂浜に向かう斜面に腰掛けて海風を体中で感じる。
仄かな夏の香りが心地良い。
月光星光ともに受けて、途中の駅の
売店で買ったアイスクリームを開けて一口。
「ん~……美味しい~」
ささやかな贅沢だけれども、なんだかとても幸せな気分。