2015/07/31 のログ
ご案内:「浜辺(海開き状態)」にダナエさんが現れました。
ダナエ > 絶え間なく寄せては返す白い波。
その遠くに、ぽつりと丸い物が浮かぶ。
丸い影、それは、フルフェイスの兜。
そして途方もなく長い時間を掛けて、肩、胴、下肢が海中から現れる。

──ザッ……ザシュ、……ザッ……ザシュ

ぼたぼたと滴を垂らし、砂浜に上がる。
海底そのもののような石灰化したプレートアーマーは、やがて歩みを止めた。

ダナエ > 「ここが…………トォコヨォ島」

少しかすれた声、日本人ではないと分かる発音の“常世島”。
手甲に覆われた右手が、兜の面当てを上げる。
口元はまだガードで隠れてはいるが、露わになった顔は少々険があるものの、ごく普通の少女といって差し支えない。

ダナエ > 長く海に浸かって体が冷え切っているのか、顔色は悪い。

「…………冷えるな」

ぶるりと体を震わせ、再び兜のガードを下げて目元を隠す。
鎧のあちこちにへばりついた海藻や海中のゴミを払い落としながら、ゆっくりと浜辺を移動する。

──ザッ……ザシュ、……ザッ……ザシュ……

次第に歩みが東へと傾いていったのは、何のことはない、海の家の鉄板で焼かれた食物の香りのせいだった。

ダナエ > 「何だこれは……?
 甘く滋味のありそうな何かが、
 ほどよく焦げたようなかぐわしい香りが……!」

くんくんと鼻を鳴らし、兜の面当てを上げ口元を覆っていたガードも下げる。
海の家の軒先へ近づき、覗き込んだ先にあるものは──ソース焼きそば。



海の家のおばちゃんが金属ヘラ片手に、ぎょっとして固まっている。

ダナエ > 「ああ、すまない。
 驚かせるつもりはなかったんだが……」

海の家のおばちゃんの動揺に気づいて、こちらも動揺を隠せない。
威圧感を和らげようと、一歩後ろへ下がってみる。

──ザグッ。

動いた膝の装甲の継ぎ目から、小さなカニがカサコソと慌てて逃げ出していった。

「………………」

気まずい沈黙に、互いに顔が引きつる。

ダナエ > (さて、ここからどうすれば……)

愛想笑いでも出来れば楽になれるのだろうが、生憎その程度の処世術さえ身についてはいない。

「………………」

焼きそば一つ六百円だよ、という声が響く。
流石に客商売、先手を打ったのは海の家のおばちゃんだった。

「ろ、ロッピャク円……?」

ご案内:「浜辺(海開き状態)」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「おわーっ、すげえ。何だあの……甲冑?」

(折角の夏休み、たまには昼から走ってみようと思い立ってやってきた浜辺。
 東雲の視線の先には海の家のおばちゃんと対峙する全身鎧があった。
 学校でもあまり見かけないその姿に、興味津々といった様子で近付いていく。)

「なんだろ、誰か着てんのかな。
 暑くねーのかな……あ、磯臭い。」

ダナエ > 円、は知っている。この国の貨幣の単位だ。
だがロッピャクという響きが思考を惑わせる。
惑わされて、やがてそれは八つ当たり的な怒りに変わっていく。

「……同じ銀貨を枚数によってヒャクと言ったりビャクと言ったり、あまつさえピャクだと!?
 なんと分かりづらい言語の国だ!!」

そこへ掛けられたのは、磯臭さを素直に指摘する声で。

「ぶ、無礼な!
 これはあまたの恵みをもたらす神聖なる海の香りだぞ、
 貴様は海を愚弄するのか!」

東雲七生 > 「あっ、聞こえてた?
 悪い悪い、別にそんなつもりは無かったんだけどさ。」

(にっ、と日に焼けて赤くなった顔に笑みを湛え、
 ぺこり、と頭を下げた。別に海を愚弄する気なんて更々無い。)

「そんで、何してんだっ?
 そんな恰好で焼きそば睨んで……腹でも減ってんの?」

ダナエ > 「う、うむ。それならば良いのだ……」

頭を下げられ、怒りは消沈。少し気まずい。

「いや何、腹は減ってなど。
 異国の料理が珍しかっただけだ」

空腹の指摘には、素直に頷けない無意味な意地を張る。

「まったく腹は減ってはいないのだが……」

──ジュージュー、ジャージャー……


浜辺の焼きそばの、音と香り。

「…………少年よ。
 ヒャク円ダマというのは、穴のない銀貨の小さい方だったな。
 ロッピャク円というのがヒャク円ダマ何枚か、わかるか?」

やはり食べたい。ヒソヒソ声で。
腰に下げた小さな革袋の中から、どこで拾ったものか小銭を出して相手に見せてみる。

東雲七生 > 「うん? ろっぴゃくえん?」

(取り出された小銭と、焼きそばとを交互に見る。
 小声で囁く鎧を見てにまーっと笑みを浮かべる

 大体の事情は察した様だ。)

「やっぱ食いたかったんだな!
 600円は100円玉6枚だぜ?」

ダナエ > 「おっ、大きな声を出すな!」

慌てて海の家のおばちゃんをチラ見。
騎士が焼きそばを食べたかろうが、六百円が幾らなのか知らなかろうが、特に蔑視する様子はないようだ。
目の前の少年にも、こちらを蔑む様子は感じられない。
自分が気にしすぎていただけのようだと、安堵のため息。

「……感謝する。
 この国の者は皆、騎士とはこうあるべきと厳しくは考えないようだな。
 この国の騎士は幸せだな……」

母国では騎士は尊敬も集める分、見る目も厳しかった。
海の家のおばちゃんに六百円を払い、少年をじっと見下ろす。

「……少年。
 おまえもさぞヤキソヴァを食べたいのだろうな」

なけなしの残金に眼を落とし、迷う。

東雲七生 > 「騎士とはこうあるべき……?
 んまあ、あんまりそういうの気にしたりはしないんじゃねえの?
 ……ま、俺の場合騎士のことよく知らねえってのもあるけどさ。」

(精々騎士が職業だという事くらいしか知らない。
 よく分からないが、周囲の評価を気にする職業なんだろうかと想像して、
 体面を気にしたことにも納得することにした。)

「え?俺?
 ……いーよいーよ、俺は。まだランニング残ってるしさ!」

(多少の空腹は感じているが、言われる程じゃない。
 素直にそう告げて、笑みを向ける。)

ダナエ > 「そうか。
 ところ変われば何とやら、だな……」

異国の価値観を新鮮に感じつつ、頷く。

「おお、らんに……らんにぐ……の、途中だったか。
 すまなかったな、続けてくれ」

ランニングについてゴニョゴニョと知ったかぶりつつ、焼きそばを待ちがてら少年を促してじっと見る。
ランニングとは果たして何なのか?という興味津々の様子。

東雲七生 > 「まあ馴染が無いってのが一番かな。
 わりと周りが気にしない事には鈍感だからさー。」

(最近は異邦人の知り合いも増え、
 その自分たちとは異なる感性に驚かされることも多い。
 そんな中で一つ気になっていることがあった。それが、
 ──自分たちは気に“しなさ過ぎ”なのでは、ということだ)

「知らねえ?ランニング。
 んーと、何て言えば良いかな……長距離走の自主鍛錬だよ。走り込み。
 ……続けて良いんなら、俺行くけど。」

(首から下げていたタオルで額を拭い、焼きそばと全身鎧とを交互に見て首を傾げる。
 このまま自分がこの場を去れば、また認識の違いから何か問題が生じないかと少しだけ心配している様だ。)

ダナエ > 海の家のおばちゃんから焼きそばを受け取る。

「ふむ……。
 恐らくそれが、異邦人がこの島に来る理由なのだな。
 異質な者でも奇異の目で見られずに済むというのは、
 有り難いことだ」

あっさりランニングを知らないことを看破され、恥ずかしさで一瞬白目に。

「な、なるほど。
 長い距離を走ること、それが“らんにんぐ”か。
 理解した。
 ……というか、理解していた。私の思っていた通りだ」

まだなお知ったかぶる。

「鍛錬の邪魔をして悪かったな。
 自主的に鍛錬を積むのは大切なことだ、
 おまえの未来は明るいぞ。
 ……私もしばらく自主的な練習をしていないな」

上から目線で誉め、相手がランニングに戻るならば焼きそばを懐に収納して自分も同行するのだろう。
たとえ最初の数歩で置いて行かれるとしても。

東雲七生 > 「そうなのか?
 異邦人たちにも、何か目的があってこの島に来るなんて考えた事も無かった……」

(てっきり勝手にこの島に召喚されているものだと。
 少なくとも授業で聞いた話では不可抗力の部分が大半だと言っていた気がする。
 まあ、多少“都合よく”弄られててもおかしくはないか、と七生は感心して頷くフリをしながら考える。)

「ははっ、サンキュー!
 けどまあ、大体半分くらいだし、少し休憩しようと思ってたとこだから。
 食ってて良いよ、焼きそば。 その間少し話を聞かせてくれよ。
 アンタの事とか。 俺さ、異世界のこととか結構興味あるんだよね!」

(流石に鎧を着こんだ相手と直射日光の下で話すもの気が引けるので、
 適当な大きめのパラソルの下へと、誘導する様に歩き出した。)

ダナエ > 「……異国ということを差し引いても、
 特殊な島のようだな、ここは」

常世島そのものに興味が湧いてきた様子。

「そうか?
 未来ある少年の鍛錬を邪魔をするのは気が引けるな……」

相手を実年齢より三歳ほど下に認識しているため、大人から子どもへ向けるような口調。
とはいえ、素直にパラソルの下へ。
移動にはたっぷりと時間がかかってしまう。

──ザッ……ザシュ、……ザッ……ザシュ

「……待たせたな」

着席すると椅子が壊れそうなので立ったまま、テーブルに焼きそばをそっと載せる。

「少年よ。
 そういうおまえは、この島の生まれなのか?
 ここの生活にはかなり慣れているようだが」

東雲七生 > 「んまあ、特殊っちゃ特殊かな!」

(パラソルの下、遅れてくる事に対して非難するでもなく。
 多少の道場にも似た視線を向けつつも、笑顔で待っていた。)

「気にしない気にしない、どうせ帰りも走るんだし!

 ……俺?
 えーと、一応生まれた場所は違うぜ。
 ただ、環境は此処とそんなに変わらないし、つーかむしろこの島の方が快適なくらいだし。
 だから、慣れるのも早かったかなー……うん、早かったと思うぜ。」

ダナエ > 待たせても笑顔を向けてくれる相手に、少し癒されながら。

「快適か、何よりだな。
 特殊な島が快適と言うおまえも、特殊な人間なのだろうか。

 この島には大きな学校があると聞いたが……
 そこに通っているのか?」

話しながら、焼きそばを開ける。
兜のガードも開ける。顔面フルオープン。

「これがヤキソヴァ……!」

割り箸は割らずにそのまま、握り箸で頂く。
恐る恐るのひと口目、熱さに一時停止。

(あ、熱い……!!

 だが飲み込め、飲み込むんだダナエよ……
 例え上顎を火傷するとしても騎士たる者、
 一度口に入れたものを無様に吐き出すわけにはいかん……!!)

涙目で凛々しく食べ進めて、ふと箸を止める。

「……少年よ、食べるか?」