2015/09/14 のログ
ご案内:「浜辺」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「もうすっかり涼しくなって、秋って感じ。」

──日没後の浜辺。
東雲七生は防波堤の上に腰掛けて海を眺めていた。
夏場あれほど盛況だった海水浴場も、9月が半分も過ぎれば精々夕方に散歩しに訪れる人が居る程度で。
日が沈んでしまえば、人っ子ひとり居やしなかった。

「……やーっぱもうちょい暑い内に来ときゃあ良かった!」

そんな後悔を口にしても、後の祭りである。

東雲七生 > 「別に今の時期でも泳いじゃいけないわけじゃねえけどさ。」

よほどの物好きか、鍛錬の一環でも無ければ時季外れの海水浴なんてそうそうしないだろう。
生憎、七生は物好きでも無ければ修行中でも無いので防波堤の上から月夜を映す水面をぼーっと眺めるだけである。

東雲七生 > 「……はぁー、波の音が心地良いなあ。」

静かだ。本当に静かだ。
時計塔の上や学校の屋上、研究区の路地裏、夜の常世神社。
色んな所に行ったけれど、シーズンオフの夜の海水浴場ほどぼーっとするのに適した静けさも無いと思う。

夜の常世神社も静かさではダントツだけど、あそこは何か出そうで怖い。
……海なら何も出ないという保証は無いけれど。

ご案内:「浜辺」にリヒットさんが現れました。
リヒット > ざばあっ。
……と、微かな水音を立てて、東雲さんの目の前の海面がにわかに盛り上がります。
隆起した水面はそのまま防波堤にぶち当たり、その丸っこい輪郭を保ったままコンクリートの垂直な壁を登ってきます。

暗い青の水塊が、防波堤を越えようとしています。なんたる怪異!
いやどうでしょう、その水塊を割るように、2本の白い腕が見え隠れしているのに気づくかもしれません。
『それ』は防波堤に登り切ると、なおも這いずるように身をよじり、東雲さんの方へ向かってくるではありませんか。
その様子はクラゲに見えなくもないですが、陸に登って這いずりまわるクラゲは少ないでしょう。

「……ぷ~…… ……ぅ……」

不気味な外見に似合わぬ、甲高くてどこか可愛らしい鳴き声を上げています。
近くで見れば、それが水塊でなく髪の毛であると気づけるかも。

東雲七生 > 「今度釣竿でも持って来て夜釣りでもしてみるかな……」

前以て居候先の家主に伝えておけば一晩釣りに勤しんでも良いだろう。
そんな考えが頭を過る。
釣果は持ち帰れば、夕飯の材料として喜んで貰えるだろうか。

「あー、でも魚好きかな?
 ……なんか、普通に肉の方が好きそうな感じするけど。」

結局、訊こう訊こうと思っていながら、好みを聞くのを忘れてしまう自分に気付いて。
小さく溜息なんかついたりもする。

──そんな矢先。

目の前に打ち上げられた漂流物が、何とこちらへと這い寄ってくるのを見つけて。

「……んなっ!? え?何!?……なに?」

若干パニックを起こしながら後ずさり。
その正体を見極めようと、じーっと観察して、それが小さな人影である事に気が付いて。

「……お、おーい? えっと、 人……かなあ?」

と、声を掛けてみる。

リヒット > 「ぷぃ………」

声を掛けられると、そのクラゲめいた軟体生物は頭をもたげます。
青い青い水の塊の下には、肌色の顔が隠されていました。そうです、人……少なくとも人型生物ではあります。
長い髪がしとどに濡れて海水を含み、クラゲや水塊に見えていただけでした。

とはいえ、人と分かったとしても、登場の仕方とかこれはこれで不気味かも。
身長は70cmを下回る程度で、人間の子供にしても随分と小さいです。その全身を覆い隠さんばかりの長髪はまるで女の子。
声も甲高く、性徴が感じられないので性別の判別は難しいかもしれません。まぁ、東雲さんの声と似たようなものでしょうか。

「………うー……リヒットは、人じゃないよ、シャボン玉……」

……甲高い声ではありますが、力がこもっていません。今にも寝てしまいそうな弱々しい鳴き声。
精一杯顔をあげようとして上体を反らしますが、立つほどの力はない模様。

「……おにーさんは、にんげん……?」

東雲七生 > 「シャボン……玉?」

今まで色んな自己紹介を聞いて来たけれど、シャボン玉というのは初耳だった。
恐る恐るといった様子でリヒットと名乗ったその姿を眺めて、
その“シャボン玉”と言った真意を探ろうとする。

「俺は……うん、多分、人間。そのつもりで生活してる。」

弱弱しく上体を起こした姿を見れば、少しだけ心配そうに眉を寄せて。
まだ少し警戒しながらもリヒットへと近付いていく。

「どうした?どっか、具合でも悪いのか……?」

長時間波間を漂っていたりしたのなら、体力もだいぶ削られてるだろうと予想して。

リヒット > 「よいしょ……」
弱々しい気合の一言とともに、シャボン玉を名乗った小人はぐっと力を入れて身体を起こし、楽な姿勢で防波堤の上に座り込みました。
服装はスモック一丁。それもまた濡れに濡れて身体にペッタリと張り付いています。胸には常世学園の校章のアップリケが縫い付けられていて、月光に金糸がキラリと光ります。。
スモックの裾からは真っ白な脚が伸びていますが、ところどころに海藻の切れ端とかがくっついてるようです。

「……うん、リヒットはシャボン玉。こうやって……」

と、リヒットは目の前の赤髪の少年を見上げながら、手をかざします。すると、指の間からひとつのシャボン玉が生まれ……。
……ましたが、球形になって指を離れはしたものの、1秒も生存せずに散ってしまいました。

「……塩水、きらい。リヒットの石鹸ぱわーがなくなっちゃう……ぱさぱさ……。少し休まなくちゃ……。
 おにーさんはぁ、ここでなにをしてたの……?」

眠たげにうっとりと目を細めながら、リヒットは蚊の泣くような声で尋ねてきます。

東雲七生 > ああ、あああ、とリヒットの挙動にいちいち狼狽えたりしつつも無事にその場に座り込んだのを見ればほっと安堵の溜息を。
そして目の前で生まれ、すぐに散ったシャボン玉を確認し。
とりあえず、頷いてみたり。

「……あー、うん。シャボン玉だな。
 シャボン玉を生み出せる異能、ってことなのか?」

こんなちっちゃいのになあ、と感心する様にその姿を見つめて。
石鹸ぱわーって何だろうとか、塩水で弱まる物なのかとか色々疑問は沸いて出るものの、
それらを続けざまに訊ねるには、少し元気の無い様子に気が引けて。

「あー、別に何もしてねーよ。
 良い天気だったから、海と空を眺めてただけ。」

にっ、と笑みを浮かべて答えると、
取り敢えず濡れた体を拭いた方が良いんじゃないか、とハンカチを取り出して差し出した。

リヒット > 厳密には塩水というよりも、ミネラル分が界面活性剤の働きを弱めてしまうのです。
井戸水や山の湧き水(硬水)で身体や手を洗おうとしても、石鹸の泡立ちが悪くなるのはそのため。以上豆知識でした。

さて、そんなわけで全身びしょびしょでヘトヘトな様子の小人。
ハンカチを渡されれば素直に受け取るも、『それで身体を拭け』という意図はすぐには汲み取れなかった様子で、首をかしげています。
そして、

「……使って、いいの?」

少年の赤い瞳と、綺麗なハンカチとを交互に見比べながら、確認してきます。濡れていること自体はあまり気にしてないようです。

そして、海と空を眺めていたという少年の言葉には、リヒットも首を巡らせ、うっすら輪郭を保った水平線と、星の少ない夜空を見上げます。

「……よるの海、楽しい?」

東雲七生 > なるほどー。なるほどー。と非常に為になる電波を受信して感心しきり。
まあそれもすぐに受信を終えて我に返って。

「ああ、使って良いぜ?
 今日はトイレにも行ってないし、まだ使ってないからさ。綺麗そのもの。」

ふんわりと洗剤の香りが漂うハンカチを見て頷く。
使っても使わなくても帰ったら洗うんだから、と。

「楽しいか楽しくないかで言うと、んー、楽しくはないけどなー。
 まあ楽しもうと思ってるわけでも無いし、これはこれで面白いっつーか。」

難しいな、と苦笑を溢して。