2016/06/10 のログ
■寄月 秋輝 >
「ええ、もちろん。
約束は守りますよ」
小指を絡めた。
子供がするような『ゆびきり』。
「だからそれだけは忘れないでください。
楽しいという気持ち、自分の心にある空の原風景。
僕が落ちたときは、必ずそれすら見失っていたときだった。
あなたに同じ思いをさせたくはない」
するりと離れ、腕を組んだ。
「……ではもう一度。
今度は楽しく飛んでみてください」
そう要望を出した。
■八雲咲雪 > するりと小指が離れる。
今度は、楽しく。
一人、楽しそうに飛ぶ女性の姿を思い出した。
自分が初心者の頃を思い出させるはしゃぎっぷりで、楽しそうに飛ぶ、あの姿を。
「――いきます」
前傾姿勢になり、再び空へ飛び出す。
既に周りは暗い。
まるで黒く塗られたキャンパスのように。
そのなかに、白い絵の具をつけて線を引くように、白い飛行機雲を引いていく。
私はここに居る、と。自己主張するように。
笑顔を浮かべ、飛び続ける。
■寄月 秋輝 >
ゆっくり目を閉じ、今度は魔力と光の流れを追う。
あぁ、大丈夫だ。
そう感じた。
もう彼女は失敗しないだろう。
帰ってきたら、最大級の賛辞を贈ろう。
そして、次からは自分の与えられる最高の飛び方を教えよう。
彼女を、最速にする。
秋輝の小さな望みが生まれた。
■八雲咲雪 > 技の途中で、背面飛行になる。
満天の星。
さっきみた星とちがって、小さく、光も弱く見える。
けれど、何も変わらない。
そこにあった世界は、何も変わっていない。
「――っああ」
まだ拙い飛び。
それは彼女が独学で鍛え上げた故に。
だが、それでも
「――あああああ!!」
今できることを選び。
自分が選んだ道を信じ。
最高速で泳ぐ。
その少女は空を目指した。どこまでも遠く、誰よりも速く。ただ、自らの翼を信じて。
数分後、彼の元へ帰ってくる。
へとへとになったのか、呼吸を荒げながらも、笑顔で。
■寄月 秋輝 >
柔らかい笑みのまま、ぱちぱちと拍手する。
惜しみない賛辞、その笑顔に対する返礼。
「……明日から、あなたを『最速』にします。
誰よりも速く飛べる競技者にします。
僕の『光速』の技術、全て託して。
エアースイム界で一番の泳ぎ手に……なってみませんか?」
速さも高さも見せ、応用性も全て見せた。
あとは、彼女が聞いてくれるならば、そこまで運んで見せよう。
「僕の名は寄月 秋輝。
夢を、見させてくれませんか」
■八雲咲雪 > 全国大会に出場はできるレベルにいる。
けれども、そこで伸び悩んでいた。
世界には様々な強豪が居て、今自分だけでは、もう伸びることはできなくなっていた。
だから
「――これから、よろしくおねがいします。
寄月コーチ」
手を差し出し、笑顔を向ける。
自分も既にコーチとしての立場に居るが、それはそれだろう。
もしかしたら、彼――寄月がコーチのコーチ……大コーチ?になるかもしれない。
それはそれでたのしみだ、と思いながら。
■寄月 秋輝 >
「えぇ、よろしくお願いします。
……咲雪」
誰かを呼び捨てにするのはどれくらいぶりだろうか。
でもそう呼んでみたいと思う人が出来たのはいつ以来だろうか。
彼女をもっと上に押し上げる。
それが新しい、自分の生きた価値になるだろうから。
「……では、今日はここまでですね。
明日以降、楽しみにしていてください」
そう囁き、ふわりと飛翔して砂浜を越えて。
一足先に、その場を立ち去るだろう。
■八雲咲雪 > 「明日から、宜しくお願いしますっ」
ぺこり、と大きくお辞儀をする。
これから私は、選手を育て、選手として育つ。
それはもう、これ以上望むべきもない最高の環境。
体が歓喜に満ち、震える。
明日からが楽しみだと、そういわんばかりに。
ご案内:「浜辺」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から八雲咲雪さんが去りました。
ご案内:「浜辺」にサヤさんが現れました。
■サヤ > 海開き前、浜辺近くの桟橋で、水色のビキニに長いパレオを着たサヤは静かに瞑想していた。
顔はかすかに俯き半目、足は蓮華座に組み、膝の上に自然体に開かれた手のひらが天を向いて置かれている。
何をしているかというと、魚採りに来ているのだ。だが、我欲と殺気にまみれて海に入れば、忽ち魚は逃げ出すこととなる。
前準備として、無我の境地へと至る必要があるのだ。
■サヤ > 幾ばくかの時間が経って、サヤは無我へと至る。もうそれと意識すること無くゆるりと立ち上がる。
長い長い紐で手首と結ばれた磯桶、着替えの入った防水バッグと刀を携えて、海へと入っていく。
■サヤ > 漁は快調であった、サヤは流れる海水とほぼ同化している、それを魚が察知できる道理はない。
手づかみで魚を数匹、海底をさらって、岩に張り付いた貝類もいただく。
何度か潜水と浮上を繰り返すと、磯桶につけた網は海産物でいっぱいになった。
食料の確保は急務であった。ここ数ヶ月ほど石蒜に体を任せていて、先日久々に冷蔵庫を開けたら絶句した。
貯蔵しておいた生鮮食品は根こそぎ消え、代わりに石蒜のものらしいおやつやジュースに占領されていたのだ。
どうやら料理が面倒で出来合いのものを買ってきて食べていたらしい。
そんなことではいけない、だが懐が寂しいのは事実、そこで自分で取ることにしたのだ。
だが取り過ぎては腐らせるだけだし、そうなれば命を無為に奪うことになる。
人格としてはサヤ、石蒜、畝傍、千代田の四人がいるので間違えそうになるが、肉体としては二人だから、二人分しか食べないのだ、あまり量は要らないだろう。
■サヤ > 桟橋にあがって、桶はまだ水中に入れたまましばらく休む。
濡れた肌に風が冷たい。
「っくしゅ!」
鼻をすすってから、防水バッグに入れていたタオルを取り出して体に巻いた。
「……あ。」
そうしてから気付いた、道着の下に水着を着て来たから、脱ぐ時は良かったが、着替えをする場所がない。
流石にタオルを巻いた下で水着を脱ぐのははばかられた。
「あちゃー………。」
■サヤ > 結局、乾くまで水着姿で待つはめになり、見事風邪をひいたという。
ご案内:「浜辺」からサヤさんが去りました。