2016/07/01 のログ
ご案内:「浜辺」に霧依さんが現れました。
■霧依 > 日が沈む。
ゆるゆると流れる風を受け止めながら、それをじっと見つめる女が一人。
今日は釣りでもなく、泳ぐでもなく、ただただ浜辺で風を受け止めてのんびりと。
日が出ている間は、冷たい海の水に足を浸して遊んでいたりもしたのだけれど。
夕暮れの、暗くなり始めた浜辺に一人、腰を下ろして夕日を眺める。
■霧依 > 「夕日だけはどこで見ても変わらないね。」
呟く声も漣に飲まれ、声にならぬ声として消えていく。
誰かに聴かせるつもりもない独り言。
彼女はこうして、物思いに耽ることが好きだった。
……正確には、物思いに耽るような仕草で、風やその場所の匂いを感じることが好きだった。
ご案内:「浜辺」に東雲七生さんが現れました。
■霧依 > 「………」
瞳を閉じる。
生命反応のない物をすり抜けることのできる自分。ここで願えば、彼女の身体をすりぬけて、水着は砂浜へ落ちるだろう。
でも、それだけで済むだろうか。
この地面は、この砂は生きていると言えるのか。
一瞬の気の緩みで、自分の身体が地球の奥底へ落ちていってしまわないだろうか。
不安、と言うには少し違う、ゆらゆらとした感覚。
ふわふわとしながらも、地面を踏んで歩き続ける彼女からすると、どうにも収まりが悪い感覚でもあった。
■東雲七生 > 梅雨の合間の晴れ。時刻は夕暮、水平線には真っ赤な夕陽。
そんな太陽と同じ色の髪をした少年は、やつれた顔で歩いていた。
突然、頭の中に誰かが居座った様に声がし続けて半日。
寝ても覚めても知らない誰かが頭の中に居る感覚が続き、碌に気の休まる瞬間すらなく。
「あー……頼むからどっか行ってくんねえ?」
『無理だナ……ぶっちゃけお前次第だ。』
丸々半日気を張っていた所為か、七生の神経はかなり疲弊していた。
最初の内は周囲の目が気になって出来なかった“頭の中の声との会話”も人目を気にせず行うくらいには。
傍目から見ればぶつぶつと呟き続けながら歩く七生の視界の端に、見覚えのある姿が映る。
『オッ、知り合いじゃねえか。』
「……霧依だ。何してるんだろ、あんなとこで。」
人違いかも、と一瞬思ってくまの出来た目をこする。
そうして改めて見てみれば、やっぱり見知った姿で。
■霧依 > 「考えても詮なきことか。
空が落ちることを憂い、地に溺れることを憂う。
溺れるなら白いベッドがいいんだけどな。」
呟きながら、パーカー姿の女は足を投げ出して寝転がる。
さらりさらりと流れる風が心地よい。
人もいない砂浜で、水着姿のままに横になる。
そこでやっと目を開けば、僅かに星空が見え始めて。
そういう光景が、彼女は好きだった。
■東雲七生 > 『寝てんナ。』
「寝てる……ってだからお前うるさい、黙ってて。」
頭の中に響く声を追い払う様に首を振ると、七生は堤防を飛び越えて砂浜に降り立つ。
そのままざりざりと、時折足を砂に取られてよろめきながらも横たわっている霧依へと近付いて行き、
「おねーさんおねーさん、そんなとこで寝てるとお腹冷やすよ?」
『日に焼きてえってワケでもねーんだろうしな。』
軽い調子で声を掛ける。
海風に赤い髪が揺れて、七生は少しだけ目を眇めた。
■霧依 > 「…………」
声がかけられれば、横になったままに視線を送って、くすりと笑う。
そのまま少しだけ目を閉じて。
「そうだね、確かにすこしずつ寒くなってきていたところ。
日が沈んでも暑く感じていたけれど、こうして風に吹かれていると違うものだね。」
肩にひっかけているだけのパーカーははらりと開いていて、水着姿のままに身を投げ出していて。
「………まだ大丈夫ではあるけどね。少し蒸し暑さを感じる季節さ。東雲先輩。」
■東雲七生 > 「うー……」
またそんな格好して、と言いかけて口を噤む。
ここは浜辺だし、浜辺で水着姿で居ることになんらおかしいところはない。
落ち着きなく視線を泳がせながら、その場にぼすんと腰を下ろして。
「梅雨が明ければ、本格的に暑くなってくるだろうしな。
俺としては早いとこ湿っぽい時期は抜けて欲しいんだけど。」
『そうすりゃ水着見放題だもんナ。』
違うわ、と叫びかけて両手で口を押える。
代わりにもがもが、と言語にならない声を上げて、がっくりと肩を落とした。
「……今日は釣りじゃなくて、泳ぎに来たの?」
気を紛らわせようと、更に霧依へと言葉を投げる。
■霧依 > 少しだけ日に焼けたお腹をそのまま晒しつつ、相手が横に座れば、ようやく身体を起こして。
「湿っぽい季節はそれはそれで好きさ。
そういう季節を感じられること自体が、ここに住んでいる特権のようなものだしね。
とはいえ、鮮やかな日差しを受けてむせ返るような空気を感じるのも素敵だよね。
素敵な子の水着も見放題だしね。」
しらっと当然のように言葉を漏らす。
相手がモゴモゴしているのを見て、刺激が強かったかな、なんて口にしつつ。
「泳ごうと思ったことは思ったんだけど、特に決めていないんだ。
だから、ずうっとこうして眺めていたよ。
日が沈むのを眺めることが好きなんだ。」
■東雲七生 > 俺も水着で来ればよかったかな、とぼんやり考えて。
身を起こすのを見ながら、「別にまだ寝てて良かったのに」と軽く笑みを浮かべる。
『そーそー、襲ったりなんか出来ねーしナ』
「……。
雨の日は、あんまり外で体動かせないからさー。
夕立とかなら、開き直って思いっ切り駆け回ったりできるんだけど。」
頭の中の声を無視しようとしてしきれずに、ひくひくと頬が引き攣った様な笑みを浮かべる。
そして頭の中と同じ様な事を言う霧依に、小さく溜息を吐いた。
「日が沈むの、かあ。
俺もこの時間帯は好きだよ、黄昏時、だっけ。
昼と夜の境目、なんだか世界と世界の合間に居るみたいでさ。」
あと朝も、と笑いながら。
■霧依 > 「……人の心配をする人が、そんなことを言っちゃあいけないな。
如何に身体が強かろうと、結局はその人の心持ち一つだからね。」
くすくすと笑いながら、頬をつん、と指でつついて。
「そうだね。
境目を感じようとしても結局はできないから。
どちらも同じ空なのに、こんなに色も温度も、何もかも違う。
朝は、僕はベッドのシーツの中にいることが多いから。」
くすくすと笑う。野宿が多いのだけれども、こういう時は堂々と嘘だってつく。
「………東雲先輩は、こんな場所に何をしに?
僕と同じく、散歩かな。
それとも、添い寝をして欲しくてこんな場所まで?」
■東雲七生 > 「でもさー、土砂降りの雨の中って何だかわくわくしてくるじゃん。ぷ。」
ぷに、と大福の様な手触りの頬をつつかれて小さく声が漏れる。
「霧依はお寝坊さんなのか?
……朝早い、誰もまだ起きてないような時間の神社とか青垣山は凄く神秘的って言うか、
何だか別の世界に居るみたいだよ。あと時計塔のてっぺんとか。だんだん明るくなってくる常世島を見るのが好きなんだ。」
彼女のつく嘘を疑う事もせず、その上でにこにこと笑いながら続ける。
その情景を思い出しながら話していると、自然と横やりを入れてくる声も鳴りを潜めて。
「う、うーん、散歩かな。考え事しながらね。
添い寝がして欲しかったら、こんなとこじゃなくて家に行くと思うけど。」
なんてね、と軽く肩を竦めて。
普段の七生に比べ弱弱しいとも言えそうな微笑を浮かべる。
■霧依 > 「土砂降りはわくわくするけれど、外を歩いているとなかなか着替える機会が無いから。
……僕はどうにも、起きたい時に起きる癖が抜けなくてね。
でも、そういう景色は見てみたいな。
明け方から歩いてみようか。明日の朝にでも。」
思い立ったら吉日だ。
さらりと強行軍なスケジュールを立てて、相手をちらと見やり。
「なるほどね。
考え事か、どんなことを考えていたのかな。
僕は、空が落ちてきそうだな、って考えていたところさ。」
嘘は言っていない。
■東雲七生 > 「あっ、うん、そっか。
……着替えなきゃだもんな、そりゃそうか。
日の出も、綺麗なんだよ。夕陽よりも、見てる人が少ないだろうから、何だか朝に一番乗りした気分になれる。
……それに、俺が朝嫌いだったら、苗字変えなきゃいけなくなっちゃう。」
国語の先生に聞いたんだ、と笑いながらそんな事を言う。
吹けば飛びそうな笑顔を何とか留めていると言った風で、
「んーと……寝不足対策、かな。
昨夜っからまともに寝れなくなっちゃってさ。
……空が落ちてくる?
んー…確かに、この辺は見上げればぐるっと遮るもの無く満天だけど。」
落ちては来ないんじゃない?と首を傾げて
■霧依 > 「朝日を見るためには、ゆっくり休まなきゃいけない。
僕は幸い、寝ようと思えば眠れるし。
鮮やかな物を目にする時に、目が霞んでいたら悲しいものね。」
茫洋とした様子ながら、しっとりとした声が相手に届く。
そのまま、そうっと手を伸ばして頭を撫でて。
「眠れない?」
相手の頭に触れながら、言葉を耳元に零して。
囁く声はぽたんと落ちる水滴のよう。
どうして? と、言外に相手に問うように。
「ありえないはずのことが起こるのがこの島さ。
それを受け入れるのに、時間はかかる。
当たり前を疑うことは、とっても難しいけれど、とっても日々が新鮮になるものだよ。」
■東雲七生 > 「そうそう、あんまり夜更かししないようにね。
寝れるなら寝るに越したことは無いんだから……
まあ、夜は夜で楽しい事いっぱいあるのも否定しないし。」
星空は普通は夜しか見えないから、と肩を竦める。
耳触りのいい声に目を細めて、そのままされるがままに頭を撫でられる様はさながら猫のよう。
「うん、寝れないんだ。
……えっと、んーと……色々と、気になる事が。」
『別に隠すこたネーだろ。正直に言ってみろって、笑われっから。』
むむ、と眉根を寄せて困り顔で霧依を見上げる。
果たして話すに値する相手なのか、と悩みながらじいっと。
「そう、だね。
俺もそう思う、有りえない筈の事が起こるね。
それも、いつ、どんな時に起こるか分かんない。
……ねえ霧依、人から突然頭の中で声がするようになったって言われたら、どう思う?」
■霧依 > 「……眠れるなら眠れるに越したことは無い。
そうだね、僕もそう思うよ。
安全に目を閉じて休むことができるんだから、自分の部屋というのも悪くない。
……それに、歩きたくなったら昼でも夜でも明け方でも、我慢ができなくなるのが僕の悪い癖だから。」
言いながら、頭をそっと撫でる。
相手の言葉に、少しだけ押し黙り。
「………気になること。
そうだね。突拍子もないことだけれど、僕は何も知らないから、起こらないとも起こるとも言えない。
意思だけを外に飛ばせる能力やらがあっても、おかしくないからね。」
穏やかな顔で頭を撫でながら、きっぱりと口にはせずに。
ゆうるりゆるり、普段の調子のままで口にする。
「どう思うって言われたら、心配するかな。
人は一人でいたいものさ。
少なくとも、一人でいるから、他の人を大切に思える。
ずうっと二人は、よっぽどの相手でもなきゃ、僕は辛いもの。」
■東雲七生 > 「俺も、動きたい時は自分でもたまに抑えが利かなくなるよ。」
くすっと笑いながら、心地良さそうに目を細める。
少しでも様々な不安を押し流そうとするかのように。
「うん、まあ……そう、だよね。
俺もそう思うし、誰だって知らない奴がしょっちゅう話し掛けて来たら落ち着かないよ。」
けど、と一度言葉を切って小さく深呼吸。
不気味なくらい話し掛けていた声も、今は聞こえない。
しかし、何か居る、という感覚は常に頭の片隅にある。
「けど、……今、それが俺に起こってる。
昨夜からずぅっと、誰かが話し掛けて来るんだ。」
■霧依 > 「………………この島は、いろんなことが起きるね。」
一息つかせるかのように、沈んでしまった夕日を見送りながら、そんな言葉を口にする。
緩やかに流れるようなその言葉を海に向かって放り投げて。
「………僕はなんにも分からない普通の女であるけれど、
そんな僕で良いのなら。」
芝居がかった口調はいつものこと。引き寄せるようにして相手を抱けば、そっと胸元へ。
ぽんぽん、と背中を撫でながら、包み込む。
「そんな僕で良いのなら。
自分の部屋に、知らない人がいたらどうする?
僕ならまず、相手が誰で、何故ここにいるかを尋ねてみるよ。」
穏やかな、当然誰でも思いつくようなアドバイス。
ただ、染み渡らせるように、ゆっくりと声をかけて。
■東雲七生 > 「………信じるの?」
自分の頭の中で声がする、なんて。
僕には幽霊が見えるんだ、くらいに信じがたい事の様に思える。少なくとも、七生には。
もしかしたら、彼女も半信半疑であるかもしれない、とそんな風に考えていたら。
ぽふり、と柔らかく抱きとめられてしまう。
一瞬何が起きたのか理解に遅れ、そしてすぐさま顔が赤くなった。
「あ、相手が誰で、何故此処に居るのか。
……き、聞いたんだよ。何度も。それでも、どうも要領を得ないって言うか、その、」
『落ち着けよ、ドーテーくん。』
「……知らない、んだって。
名前は。そんなものは無い、って。
どうして此処に居るのか、は……元々俺が居たんだ、って言って、た。」
ゆっくりとしたアドバイスに、一つ一つ、昨夜の、しかしどこか遠くの記憶を思い出して告げる。
その中身は曖昧として手がかりになりそうな物は無さそうだ、が。
■霧依 > 「僕はこう見えて、合理的なんだ。
1つ。言葉は嘘をつけても、顔色は嘘をつけない。
顔色を誤魔化すほどに手の込んだ嘘をつくなら、もうちょっと上手い嘘をつくさ。
1つ。いきなり僕も壁をすり抜けた時は、驚いたものだから。
誰に言っても信じてもらえないしね。
1つ。もしも嘘だとして、疑うなら騙されるさ。
人への愛情って、そういうものだろう?」
合理的でもなんでもない言葉を囁きながら、胸元に抱きしめて。
抱いたままに、相手の言葉を断片的に撚り合わせる。
「………もっともっと、ゆっくりと聞いていこう。
理解できるように伝える方が、お互いにとって良いはずだから。
■東雲七生 > 「合理的なのに、根拠に愛情って。
……でも、ちょっとだけ嬉しい、かな。」
くすくすと笑っていたらさらに抱き締められて。
そんな余裕のあった仕草も一緒に埋められてしまう。
真っ赤になった顔を、何処へ向けて良いのか分からずに僅かに、肯いて。
「う、うん。
で、でもあんまり時間を掛けてたらお爺ちゃんになっちゃうかも。
それはちょっと……困る、かな。」
あはは、と苦笑気味に笑って無理やり余裕を作ってみたり。
ご案内:「浜辺」から霧依さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から東雲七生さんが去りました。