2016/08/16 のログ
詩春 > シーズンだというのにほぼ閑散として一人きりになっている少女。
自身の持つ自慢の黒髪に合わせるようにチョイスした、全身に吸い付くような黒い競泳タイプの水着。
人が居れば結構な視線を集めていたであろう彼女は、人が居たら確実に逃げられるような魔術を海の上でぶっ放していた。

「『光よ喰らえ、真を閉ざせ。深淵より出ずる闇に飲み込まれよ。全てを砕き呑み込みたまえ。』プルート・パニッシュメント!」

海の上に現れる巨大な顎。
ほぼ召喚と同時に海水ごと、思いっきり口を閉じる。
また一つ、海の上で小さい魚の命が散った。
そろそろ一人では食べきれない量になる。

雲ひとつ無い快晴。
照り付けられる青色の海に見慣れぬ異物。
この少女が今呼び出したものだ。
長い黒の髪を頭の高頭部で束ね、動きやすいように。
鋭い切れ目の中で光る赤い瞳は、自分が召喚した異物を訝しげに眺めていた。

「………。この世界の魔力だと、どうも召喚して攻撃するタイプは威力が減少しますね。」

誰に言うでもない独り言。
魔力を固めて形を変えて使う魔術を多様する彼女は、その攻撃力に反して手札は少ない。
「こちらの世界」でも戦えるように手札を少しでも増やしておきたい―――
そう思い練習しているのだが、中々旨く行かない様子。

ご案内:「浜辺」にデーダインさんが現れました。
デーダイン > 「ふふふふふ…!」

跳ね踊る様な高笑いが何処からともなく響く。
人の少ない岩陰の海岸、そこには夏真っ盛りだというのに、
水着どころか全身衣装に身を包んだ如何にも怪しい人物が影から浮かび上がって出てきた。

「可愛らしいお嬢さん…お困りの―――ようだなっ!?」

100人いたら100人はナンパであると言いかねない声の高揚っぷり。
その謎の仮面の人物は、悩み事を溢す様をどうにかして聞いていたのやら、
怪物を眺める少女の後ろ姿を更に眺める。目なんて表には見えないが多分、
その水着の健康的な背中をじろじろと見まわしているんではなかろうか。
自信たっぷりに腕組みして構えたその不審者は、砂浜に足を取られるでもなく、
まるで宙を歩くかのように足音も立てずに接近する。
して、その不審者の正体は、変態黒魔術教師のデーダイン、その人である。
魔術関連の授業を取っているなら知っているかも知れないし、
あるいは、それ以外の心当たりがあるかもしれない。
まだお互い向き合ってもないので良く分からないが…

詩春 > じろじろ、と擬音がまさに正しいだろうか。
まるで水槽で鑑賞している魚を見るような目線と、その聞いているだけで気が抜けるような声。
隠れるつもりはないのだろう。
少なくとも紛れようとするならこのふざけた衣装をするはずがないか。

「えっと…えーっと…?」

何処かで見たような。
この島に居るという事は関係者であることは確かだろうけど。
だがしかしまるで思い出せない。
まあいいや、と一旦思考を打ち切りにする。
どうやら彼女も新手の軽いお遊びの誘いかと巡らせて。

そこからはそれはもう早かった。
弱体化したとは言え魚どころかそこらへんの生き物であれば命を刈り取るであろう牙を平然と向ける程度には早かった。

海から跳ね上がり作り出したご主人に向かい飛び跳ねかかる巨大な顎。
それはそのまま頭上を超える。
ご主人の背中に不躾な視線を投げる男を制裁するために、その上顎と下顎で粉砕―――――

「………。なんでしょうか? 警察呼びますよ。…この世界で居るかどうかわかりませんけれど。」

しなかった。
その仮面の目の前でガチンと大きな音を立てたそれは瞬く間に霧散した。
その奥から見えるのは赤い目に反して冷たい目を向ける黒髪少女。
魔術の練習をしていたら変な男…?が変な目線を向けて変な事いってきた。
いや、喋った文面だけで見ればただ困っている人を助けようとしているだけではあるが。
如何せん格好に吊られてどうも怪しく聞こえる。
警戒してますという視線目線を隠そうともせず、その不審者をにらみつける。

デーダイン > 「―――デーダインです。ダイン様と呼んぶが良いっ!」

平仮名で表すなら「ふ」と「ん」の間にある感じの言葉で笑い声を出しながら、
真っ白仮面の鼻の部分に手袋で覆われた指先を当てる。
その後はそれはそれは綺麗に腕を上げて下ろして、一礼。この格好でやると気色悪い動きにしか見えないけど。

「この学園で教師を―――やめないかっ!マントに傷が付いたら―――」

そして自己紹介してるとざばんと飛びかかってくる召喚された謎の生き物。
ワンテンポ程反応が遅れて両手を仰々しく上げた。

「フェイクかい。」

肩透かし喰らったー、みたいな。
陽気な声が一気に白け返った。
しかしながら、次ぐ言葉を聞くと、不審者は面白いくらい飛び上がって、

「待て。待ちたまえ。待つんだ。早まってはいかんぞ!
確かに私は結構女の子好きだが別にそういう意図があったわけではないんだ。
まぁまぁ、そういうのはよしてくれ。ほら、私もこう、彼女募集中の非リア充という人種であるからして、
可愛らしい女の子の背中がぽつーんとこんな物静かな海に突っ立ってて、
それもさっきみたいになんか困ってるーって感じの雰囲気醸し出してたらホラ声をかけたくなるじゃないか!
つまるところ私にそういった意図は全く待ってないというかセクハラとかそういうので減給とかマジ勘弁っていうか
私が何を言いたいのかといえばそんなちょっとやそっと一言二言男に声をかけられた程度で警察沙汰だなんてそりゃあ時期尚早じゃあありませんかっていうか。」

ここまで息継ぎ一切ナシ。
怪物に襲われた時より遥かに驚いてるその不審者は、まるで空間を抉り去ったかのようなフットワークで彼女に迫って必死に訴えるのである。
因みに言ってる事はほぼ無意味なので聞かなくて良い。
一人で海岸で魔法の練習してたら仮面付けた男に声をかけられた、これで警察呼ばない方がどうかしている。
疚しい心がなかったか、と問われればノーとは言えないのがこの不審者の負い目である。
自称暗黒神とは言え教師。こんなところで捕まるわけにはいかない。

「害意はない、ないんだ。だからその捨てられた不審者を見るみたいな目をやめたまえ。」

どの口が言うのだろう。
口は仮面で見えないけれど。

「私はそう、可愛いお嬢さん…あなたとちょーっと仲良くなりたいだけだとも!」

ぐっと拳を握って力む仕草をする。
駄目だコイツ。

「コホン…失礼。その…どこかで会ったかね?」

だというのに、
この不審者はこんな時にナンパの常套句を使ってしまった。
不審者の側にも、彼女の見覚えはあるようだ…がしかし、流れ的にどう考えてもこれ即ちナンパであった。

詩春 > 「記憶に無いです。会っていたとしても記憶に残らないくらいどうでもいい人ってことですね。」

いや、こんな濃いキャラは向こうの世界にも中々居なかった。
あっちではあまり外出なかったけれど、右を見れど左を見れどこんなハイテンションがいるんだったら、世の中はもっと平和だっただろう。

「うるさいです知らないです。私みたいな黒髪美人と変な仮面つけた不審者ならサツの人だって私のほうを信じます。
大体貴方の声のトーンは道端のお年寄りを労わるような声じゃなくて下心透け透けの声なんですよわかりますか?
そんなこと魔術で使って看破するまでもないですはい。そういえば相手の視界を除くような魔術ってこっちにあるんでしょうかね。」

まるで対抗するように流暢に言葉を紡ぐ少女。

「大体こんな人気の無いところに一人で居る女の子を狙う時点で不可解ですし不快なんですよええ。
私そんなチョロくないですしチョロいと思って声をかけたのであればそれはもう怒っても仕方ないですよねそうですよね。
ああもうさっきのパニッシュメント解除しなければよかった。威嚇じゃなくってそのまま仮面どころか上半身ごと丸呑みしてぺってすれば。
ああでもこんなの食べたら胃がおかしくなりそうなのでやっぱいいですごめんなさい。」

口を回しながら指で顔を指したり親指を下に向けたり。
表情もげんなりとした顔やいかにも怒ってますと歪んだ表情を見せる。
クール系の見た目に反して存外豊かで愉快である。

「だ・か・ら。会ってないですって。本当に上から下まであんぐりいかれたいんです?」

もともとは魔術の練習に来たのだ。
サンドバッグが変わるだけだと冷ややかな目線。
魔術を唱えようと不審者方向に手を伸ばし、指先に魔力を集める。

デーダイン > 「ふぅむ。………地味に傷ついたぞ。
あっちの業界じゃインパクト強すぎて一度あったら二度と忘れない呪いみたいなヤツだとよく褒められるんだが。」

流石にお調子者の不審者も意気消沈しているようだ。
やれやれェと左右に首振って落胆をポーズで示す。やたらと高貴な動きで気色が悪い。

「分かった、分かった、分かったから。一先ず落ち着いて話をしようか。
別になにもしないから。だから教師だから。変なことしたらマズいからしたくても出来ないわ畜生め!」

変なことはしたいらしい。

「まぁまぁ、落ち付きたまえ。怒っては可愛い顔が台無しだゾ!」

なんの自信やら、魔力の籠った指先を突き付けられても、おっちゃらけて動じない。

「ふっ、貴様らに悪の心がある限り、私は何度でも舞い戻ろう!
やれるものならやってみるがいい、あんぐりとでも、ばっさりとでもな!」

バサァッ!
風も吹いていないのにはためく赤マント。
実は風の魔法で局地的に動かしただけだ。

「黒髪美人って、まぁ可愛いとは思うけど自分でいうんだな。
それはそうと、だ。お嬢さん。さっきも言った様だが私は教師をしていてね。
何やらこの世界に~とか言うあたり、こっちに来て間もないのだろうっ!そして、何より、だ。
魔術の練習をしているが中々うまくいっていなかったようじゃあないか!」

「だからといって私を練習の的にするのはどうかと思うが。
この優しいデーダイン先生が!テトリアシトリ可愛いあなたにアレコレ教示してあげようと、
そう!親切に声をかけた!それを君は、仇で返そうと言うのかッ!?」

喚く声は何だか夏の日差しの様に暑苦しい。
息継ぎはない。大きな声をなっさけなく張り上げているのである。

「そうかね?何だか見覚えが…ふはは、もっと水着姿を見せたまえ!思いだせるかもしれんッ!」

で、彼は自ら恰好の的になりにいきましたとさ。

ご案内:「浜辺」からデーダインさんが去りました。
ご案内:「浜辺」から詩春さんが去りました。