2016/10/29 のログ
ご案内:「浜辺」に足ル歯 繰朗さんが現れました。
足ル歯 繰朗 > よく晴れた夕方の砂浜に、転々と窪みが散らばっている。
よく見ると、一定間隔をおいて列をなしているそれは、何者かの足跡のようでもあった。
少し離れたところには白い大きな袋が3つ。そこから少し間を置いて、流木が雑然と積み上がっている。
さらにそこから視線を海へ向ければ、波打ち際でかがみこみ、砂をつついている青い影を見つけることができるだろう。

「まったく、いつになってもここはごみの多い……」

夕焼けに照らされ、厳つい頭が朱く染まる。
生活委員会所属、足ル歯 繰朗。
その手には、大きな火バサミが握られていた。

足ル歯 繰朗 > 真っ赤な瞳で砂の上を睨み、異物を発見すると火バサミでつまみ上げる。
空いた手には紙くずが入っている袋。つまんだものが可燃ごみであればそこへ入れるのだ。
ごみは花火の残骸が一番多い、だが時々ボトルや缶が見つかることもある。
そういうときは中身入りでないかを確認した後、黒い爪でくしゃっと握りつぶし、後方に少し離れた資源ごみ袋へ放り投げるのだ。──命中率?もちろん9割越えである。

「ふー、ここら辺で良かろう」

やがて夕日が完全にその姿を消し、暗闇が迫りつつあるなか。
腰をとんとんと叩きながら、ようやく引き上げてきた繰朗は、的を外れ辺りに散らばった数個のごみを袋に詰め込むと、
口を縛り、可燃ごみだけをもってくる。
流木が山積みになっているところへ行き、その下方へ燃えるごみを押し込むと、
何処からかマッチを取り出し、火をつけた。

「フーン フフフフフ フーンフー♪」

自然と、大昔のメロディが鼻歌となる。
ひときわ頑丈な金属の棒、その片端に布を巻きつけ、握り柄とする。
それでもって時々、突き出た薪をつつきながら、焚火をはじめた。
なお前もって委員会に申請済みなので、あとで始末書を書いたりする必要はない。

足ル歯 繰朗 > 切ったスイカのように真っ赤な目。
それに比べると低く、あまり目立たない鼻。
尖った歯がずらりとならんだ顎。

赤々と燃え上がる火に照らされ、傷だらけで凶悪そうな顔が夕闇にぼうっと浮かび上がる。
不規則に伸びる影が、怪獣のように砂浜の上に映り、踊った。

「──さて、頃合か」

繰朗は屈んでしばらく眺めていたが、急に棒を火の中に突っ込み、砂に埋まっていた銀色の包みを掘り出した。
火バサミの先で慎重に、覆っているものを切り開き、中から現れたのは、ホカホカと湯気立つサツマイモであった。

足ル歯 繰朗 > 火傷に注意しながら一本を半分に割ってみれば、ちょうどいい具合であったようで、黄色い中身がほっくり香ばしい。

「フム、こちらは上々。
せっかくだ、他のモノも焼いてしまうか」

そういうとザックから金串を数本と、何か食材がいろいろ入った袋を取り出した。
まずは鮎。残念ながら今回は買ったものだが、内臓を取り除いたそれを串にさし、軽く塩をふりかける。
ホクホクしていて甘い芋を齧りながら時々様子を見、片面が焼けてきたらひっくり返す。
食材の袋には他にも切った野菜や肉のパック、それに──なぜかマシュマロとクラッカーの袋があった。

足ル歯 繰朗 > どうやら初めから、ゴミ掃除と焚火の名目で軽食を済ませる気満々であったらしい。
良い感じに焦げ目がついた鮎焼きの腹からかぶりつき、むしゃりむしゃりと食べ始める。
既に辺りはすっかり夜になっていた。

しばらくして鮎を食べ終わり、次に何を焼こうかと袋を開け、……はたと動きを止める。

「魚、肉、野菜。……抜かったな、餅かパンでも持ってくるべきだったわ」

ふぅ、と残念そうにため息を吐く。
いくらなんでも、クラッカーでは代わりになるまい。

「まあ、芋でいいか……」

足ル歯 繰朗 > いや、イモは美味いのだが。それだけではこの巨体が満足できるはずもなかった。
元々軽食のつもりだったのだ、そこまで量はない。
半月の眼が、三日月のように細められる。

「まだこの時間ならば間に合うだろう。
帰りにどこぞへ寄って、握り飯でも腹に入れねば。
あとは、……酒か……」

野菜や肉を焼きつつ、一人焚火の夜は更けていく。
勿論、後始末はきちんとやりましたとも。

ご案内:「浜辺」から足ル歯 繰朗さんが去りました。