2018/08/05 のログ
暁 名無 > 「いやぁ、やっぱ夏ってのは良いもんだな。」

うんうん、と一人で満足げに頷いたところで同意もツッコミも得られそうにない。
ともかく上も下も暑いので近くの海の家にシートとパラソルを借りに行こう。

「あとついでに何か腹の足しになりそうな物を……」

きゅるる、と腹の虫が主張する。
そういや朝は何も食ってなかったなと。

暁 名無 > 無事にシートとパラソルを手に入れ、それらをセットして避暑スペースを創る。
とはいえ直接的な熱を避けただけで、完全に暑さから逃れられるわけじゃあない。
そこは上手く魔術でいなしながら、買って来たカキ氷を食べ始める。

「うーん、だいぶそれらしくなってきたな。」

夏休みの一コマ。
しかし限りなく子供が過ごす様な一コマを俺は謳歌している。
……そもそも、何をしに来たんだったっけ?

ご案内:「浜辺」にラフェニエレさんが現れました。
ラフェニエレ > それは突如として現れた。
海辺のはるか上空で一瞬光が走り
そこから猛烈な速度で黒い物体が海面へと落ちていく。
陽光の元、人と言うには歪なシルエットのそれは
着水すると派手な水柱を上げて水中に没した。

「!?」

――強烈な衝撃と全身を包む冷たい感触。
そして腹部に感じる熱で目を開く。
目に入ったのは沢山の気泡と乱れた水面によって乱反射し煌めく光。

「---!?」

驚きでごぼりと空気を吐き出す。
くるりと回転し、慣性と重力に従って進む先を見ると……結構な深さ。
衝撃で驚いたのか散る様に逃げていく変な生き物の群れに
白地の砂に生える植物のような物。
それらの鮮やかさに一瞬見とれる。
随分と色の多い場所のようだが全く心当たりがない。
そして喫緊の問題として……

「(あ、やばい)」

見た目以上に重いためこの体は水に浮かない。
疲弊しきった体では水面に直接上がるだけの体力はない。

暁 名無 > 「お?」

何だかよく分からないが空から何か降って来た。
たまたま沖合の方を眺めていたから一部始終を見ることが出来たが、周囲では突然上がった水柱にざわめき立っている。
空が光った事から、すわ雷か隕石か、と不安の色が広がる中俺は食べかけのカキ氷をシートに置いて立ち上がった。

完全に捉えられた訳じゃない。
訳じゃないが……どうにも人型のように見えた落下物に一抹の不安を覚えたから、羽織っていたアロハシャツと新品のビーサンを脱ぎ捨てて海へと飛び込む。

今のが何であれ、この辺りの海の生態系に影響を与えるものであっても困るというのもある。
出来れば大したこと無い物であってほしい、と思いつつ滑る様に海中を進んで、

「………。」

なんだ、あれ。
視認した先は、やっぱり人型の……人型にしては妙に歪な……人……か?

ラフェニエレ >   
ひと先ず水面に出る事が大事。
そう考えて両手に力を入れる。

「――!?」

体がみしりと嫌な音を立て、腹部に鋭い痛みが走った。
半分それに意識を持って行かれそうになりながら
痛みの元……腹部を見ると結構な大きさの傷が開いており、
赤黒いものが周りの水と混ざり消えていく。

「……」

これでは継続的に深度を維持するのは無理そうだ。
これはかなり危ない状況なのではと思いつつ
再び水面を確かめるため体ごと半回転すると……

「?」

何やら此方に向かってくる人族のような影が見える。
逆光になって良くは見えないが珍しい髪色をしている。
……山岳地帯に住む人族に赤髪の種族がいたはずだが
どうしてこんな水中に居るのだろう。と
危機に反して状況に合わない不思議そうな表情を浮かべる。
勿論自分を助けにきたのではという発想はない。
人族が自分を助けようとするはずがないから。

暁 名無 > ──動いた。
その動き方を見るに、どうやら人間と遜色ないと思って良さそうだ。
果たしてアレが人の形を模した機械なのかそうでないのか、という問題こそ残ってはいるものの。
もう少し息も続くし、近づいて様子を見てみるか、と俺は更に泳ぎ続ける。

……。

ふーむ、なるほど。
だいぶ異質ではあるけれど、ヒト、だ。
そして僅かに周囲の水が濁っているのを見るに、傷を負っているらしい。
まあ何にせよこのまま放っておけば鮫を呼ぶことになるだろうし、捨て置く事も出来ない、か。すぐ近くは海水浴場なわけだしね!

「………」

おい、大丈夫か、と声を出せるわけでも無く。
ただ近づいて手を差し伸べてみる。
意思の疎通に難があるようなら、一度呼吸しに水面に上がらなければなあと、考える余裕がまだあるのでこちらは問題ないが。
傷を負っているあちらさんはどうか分からない。一刻を争う様な状況じゃないと良いが。

ラフェニエレ > そもそもここは何処で、何故水中なのか。
意識を失うまでの自分は白の連中に付きまとわれて
迎撃しやすいヌエズ盆地で人族の騎士団と魔動機兵を迎撃していたはずだ。
流石に帝国騎士団相手には分が悪く
随分と痛めつけられて膝をついたことだけは覚えている。
味方ごと吹き飛ばす遠距離攻撃連発なんてずるい。
今度会ったら纏めて迎撃してやろうと思う。

「……?」

いや今はそんな事を考えている暇はない。
とりあえず此方に近づく人族に武器は……ない。
追撃にきた人族かも?手を伸ばしてきたが接死系術技の持ち主か…?
いやその割には殺意がない。
それどころか此方を見て戸惑ったような表情を浮かべている。
その手を取るべきか否か……そんな事をコンマ数秒で考えて……

「……」

とりあえず握りつぶさないようにそっと手を伸ばす。
人族は柔らかい。もし助けるつもりなら手を潰すのはかわいそう。
そうでなければ握りつぶせばいい。間に合うかはわからないけれど。
あまり余裕も選択肢もあるわけではないし
どうせあのままだと浄化(不本意な言い方だけれど)されていたのだから
駄目で元々という気持ちもあった。

暁 名無 > どうやらボディランゲージ程度ならどうにか伝わるっぽい。
掌に触れる異質な感触に、謎と戸惑いは深まるばかりだがこの際それは置いといてだ。

よし、取り敢えず引き揚げ───

……重ッ。
思わず口から息を吐き出しかけて歯を食いしばる。
何だろうこの重量は。殆ど甲冑や全身鎧のソレに等しいと言って良さそうだ。

しかしこんなもん一体どうやって……って考える時間も惜しい。
幸いここは海中で、人目もほとんどない。であれば、魔術の行使にそこまで抵抗がある訳でも無い。魔力も周囲にふんだんにあるわけだし。

俺は相手の手をしっかりと握り、魔力を練り上げる。
詠唱も水中では難しいが、そもそも詠唱を用いない方が得意でもある。然したる問題ではない。

………

……

よし、行くか。
周囲の魔力をそのまま水流という形に移し替え、押し出す様に一気に浜へと運んでしまおうと試みる。
そろそろ俺の息も限界が見え隠れし始めてるし、上手くいってくれりゃ万々歳だが。

ラフェニエレ >   
自分ではそうと思っていないが
この世界基準では彼女は割と重い。それはもう吃驚するほど。
此方の手を引き引き上げようとした人族ごと
ゆっくりと沈んでいくのを見て次の手段を考える。

「……」

――とりあえず爆発起こして自分ごと水上に吹き飛ばせばいいか。
そんな雑な結論に至った。
体の少し下に赤黒い魔術式……それはもう分りやすい爆破術式が煌々と輝き始める。
水中なので衝撃はすさまじいものになるが、どうせかこのままだと溺れて苦しい思いをする。空気の余裕ないし。

……因みに彼女の住む世界には発破漁を規制する法律はない。
勢力ごとにそれぞれ規則やセオリーはあるものの
それらに共通する法令やルールと言うものは存在しない。

「……♪」

つまりちょっと爆破起こしても問題ないよね?
大丈夫近くに居る音響耐性の無い生物(人も含む)が
ぷかーっとなるだけだから!

などと考えていると急に周囲の水流が上昇し始める。
これなら頑張れば水面近くまでは上がれそう。
邪魔になる甲冑とバイザーをむしり取り、空いた方の手を広げ

「――!」

大きく水を掻くと同時に助けにきた人族を水面に向かってぶん投げる。
……少なくとも助けにきたっぽい人間を窒息させるのは忍びない。
上昇水流の中ならば若干楽に跳ね上げられるため
脇腹の痛みもなんとか我慢できる。

暁 名無 > ──うぇっ?

このまま流れのままに浜に打ち上げられれば上々と考えていたところで、投げられた。
え、嘘だろマジかよ。ぶん投げられたぞ、俺。え?何で?
と、軽い混乱に陥ってる合間に水面上へと放り出され、これ幸いと息を継ぐ。
そして息を継いだ後は再び水中へと目を向ける。

「っはぁ。……はあ、……さっきのは、大丈夫か?また沈んでねえよな?」

流石に水流に圧し勝つほどの重量は無かったはずだ。精々100キロと言ったとこだろう。
それでもまあ、俺の腕力はもやしなんでね!てんで動かせなかった訳ですけどね!
ひとまず浜に打ち上げられてる事を、百歩譲っても浅瀬で座礁してることを願って水面を泳ぎ始める。

アレは一体何者で、どうして急に現れたのか、と色々確認したい事はあるがまずは怪我の手当てが最優先だろう。
異邦人が突然現れるのは珍しくも何でもないことになりつつあるし。

ラフェニエレ > 人族を投げ上げた慣性でくるりと回転し
今度は両手でベアハグするように腕を振る。
後はさっきの人族が作った水流に乗れば……

「……!!」

ひと先ず海底を蹴れば水面までたどり着ける程度の深さの場所まで流れ着き
跳ねる事でやっと水上に顔を出す。
一瞬でまた沈むが一度空気さえ補充してしまえば……空気薄!
戸惑いつつも何度も跳ね、少しずつ海岸へと近づき足が届く辺りまでたどり着く。

「―――」

ゆっくりと立ち上がるとうるるるると獣の鳴き声に近い声がその喉から漏れる。
海水に濡れて耳はペタンとなっているしびしゃびしゃだし
溺れかけたせいで沈まないよう装備を脱ぎ捨てたので
身に着けているものが心許ないしで気分は最悪だが……

「(さっきのは大丈夫だったかな)」

きょろきょろと辺りを見渡して先ほどの赤毛の人族を探す。
……勢い余って岩場とかに叩き付けてないと良いけど。
咄嗟の事で勢いをつけすぎた感が正直ある。

暁 名無 > 「おぉ、良かった良かった。
 また沈んでたら骨だなあって思ってたとこだ。」

どうやら無事に浅瀬まで辿りついたらしい。
久々に真面目に魔術を扱ったんだから、無駄にならずに済んで良かった。本当に良かった。

こちらもどうにか立てるとこまで辿りつくと、改めて呼吸を整える。
ふう、日ごろの運動不足が祟ったのか、あちこち筋が突っ張ってる気がするな……
それはまあ、おいといて。

改めて元落下物の方を見れば。海中で見るよりはずっと人間らしい姿をしていた。
異形に見えたのはやっぱり身に着けていた装備の所為か……いや、あの腕は装備か?

「まあ、何にせよ無事で何よりだ。
 変に大きな被害も出てないみたいだしな……って、そうだ。傷の具合は大丈夫か?」

ざぶざぶと水を掻き分け近づいていく。
なんか、重さの割にずいぶん小型……小柄なんだと近付くにつれ判明した。

ラフェニエレ >   
「――――――」

……この場所は何だか変な物がまとわりついてくる。
いったんそれを排除しつつきょろきょろしていたところに
さっきの赤毛の人族が水をかき分けやってきた。
しかも何やら声をかけられている。
……ついでに言うと何だか思ってたより身長高い。

「……?」

成程、つまり…
これはあれだ。たぶんこういうことだ。

「(さっぱりわからん)」

うるるると困惑した獣のような声が喉元から漏れる。
言語体系が違う場所で意思疎通は難しい。

『此処は何処?』

脇腹を抑えつつとりあえず公用語でしゃべってみる。
通じない気しかしない。だって相手が喋っている言葉が一切聞きなれない言葉だし。
勢力の違う地域では言葉が通じない事の方が多いので初めての経験ではないが
とりあえずここはどの勢力の支配下にある地域なのか割り出さなくては。

暁 名無 > ───ふーむ。
なるほど、これはちょっと面倒だな。
相手が何か言っている─ように見える。
そしてこっちの言ってる事も通じていそうな気配ではない。

「……さて、どうしたもんか。」

言葉が通じない異邦人と言うのも珍しくは無い。
そもそも言語を持たない異邦人だってごまんと居る訳で、それ以前に言語を持たない生物なんてこの世界でもわんさか居る。
だから言語が通じないということ自体はさほど面倒ではない。

じゃあ、何が面倒か。

(──あーあー、マイクテスマイクテス。本日ハ晴天也……
 大丈夫かな。君、聞こえてる?ここは常世島っていうんだけど……まあそれより、怪我大丈夫?)

またしても魔術を行使しなきゃいけないこと。
精神感応──要するに『頭の中に直接こっちの意思を伝える』ことを試みる。
俺たち……まあ人間と同じ精神構造をしていれば通じる筈だし、何より俺のは人間以外に特化させてるから余計に通じやすいと思う。
耳や仕草から、どちらかと言えば獣に近いと踏んでの試みだけれど、これがまた消費魔力が大きくてあんまやりたくねえんだ。割に合わない。

ラフェニエレ >   

「(どうしよこれ)」

発音を聞いている限り母音は5つの言語体系……のように聞こえる。
ボディランゲージをあまり伴わない言語となると単語数が多いかもしれない。
これは覚えるのに少し骨が折れそう。
……別に覚える必要はないのだけれ……

(!?)

突然頭に鳴り響いた声に驚き耳がピンと立つ。
精神感応を試みてくる人族と言うのは
正直ちょっとレアケース過ぎて想定していなかった。
どうもこの場所に来て漂う魔術と似たような物のよう。
……ってことはこれ翻訳術式か?

(おなかすいた。)

ぽつんと一言返す。
怪我は死ななきゃ問題ないというか
とりあえず治すにしてもお腹がすいたままではどうしようもない。

(けが……いたい。
 なかみちょっと、とどいた)

じーっとそちらを見ながらゆっくりと波打ち際へと移動しかけ、
ぴたりととまる。

(……あっちむいて。あと、ながいやつ。ぬのとかほしい。)

なんと言うかその、
この格好で身を晒すのはいくらなんでもちょっと恥ずかしい。

暁 名無 > お、良かった~通じた~……
しかしここで気を緩めると余計な事まで垂れ流しになるので油断は禁物。
まだ向こうが敵性を持たないとも言い切れないからだ。
ひとまず、この方法で意思の疎通が出来ると分かった事は大きな収穫だ。

(分かった、食べ物だな。
 それと布って言うのは包帯のことか?
 だったら浜に上がってからでも──)

対話を続けようと試みながら近づいて、ある程度のところではたと気づいて足を止める。
異形といえる両腕にばかり気を取られていたが、それ以外は普通の人間と遜色ない。
そして性別は女の子だ。何故分かったか。一目見てそれと分かるなかなか立派な物がついていたので。

……この言い方だと男でも通じそうだな。

(ああ、ああ。分かった。
 委細承知した。先に布を持って来るからちょっと待っててくれ。)

いやあ良いものを見た……じゃなく、体を隠すのであればさっき俺が脱ぎ捨てたアロハシャツで良いだろう。
あの腕が袖を通るとも思えないが、割いて巻けばサラシ代わりにはなるはずだ……割と気に入ってたんだけどこのアロハ…。
アロハシャツを献上した後は海の家へと引き返して食料を調達する。
カキ氷は甘い色水と化していたので、イカ焼きと焼きそばを買って戻る頃には、多分あの子も浜に上がっている事だろう。

ラフェニエレ >   
「……」

なんだかこう、目線がアレだった気もするけれどまぁ雄なら仕方ない。
とりあえず目を逸らしながら渡された服を……
……これ服?多分服。サイズがやたら大きいしはでっはでだけど。
とにかくすごく派手な色彩のそれの
両サイドを爪でざっと切り裂くと頭から被り裾を結ぶ。
出来ればもう一か所結びたいけれどそこはこう我慢する事にする。
こう見えて意外と器用だったりする。細かい事はどうしても苦手だけれど。

「……ぁー」

とりあえず一安心な格好になった。
(傍からと言うか横から見れば
 色々見える彼シャツの危ないバージョンだが)
なので両手を海底に引きずりつつ砂浜へと上がる。
張り付いた服と髪の毛、ぽたぽたと落ちる雫が煩わしいけれど……

「ぅ……」

とりあえず波の来ないところまであがって
髪の毛の毛づくろいから始める。
半分ほど整ったあたりでさっきの人族が
何やらいい匂いのするものを持って帰ってきた。
……あれは食べ物だろうか。

暁 名無 > (はい、お待ちどうさん。これ食べていい奴だから。
 ……な、ほら。ひとまず食べて怪我の手当しねーとな。)

焼きイカと焼きそば、それぞれ一口ずつ齧って毒が無い事を示してからそっと差し出す。
着替えの方は……何だか思ってたよりだいぶ危ういけどどうにかなったみたいだし、命に別状はなさそうだから手当を急ぐ必要も無さそうだ。
一方俺の方は水泳に続けざまの魔術行使にと疲労が順調に蓄積されてへろへろです。

「っ、あー……とりあえず食い終わるまで休憩ー」

近くに居られては遣り辛い事もあるだろうと、ひとまずパラソルの下へと避難する。
まあ、そんなに離れた訳じゃないのだけど。
それにしても……アロハシャツ……高かったのに……

ラフェニエレ >   
(あいと)

短く返すととりあえず毛づくろいをいったん中止する。
落ち着かないときに毛づくろいを始めるのは癖だが本人は気が付いていない。
毛づくろいが終わった耳辺りでバチバチ音が鳴っているが
それはこの場所に漂っている翻訳術式をダウンロードしているから。
言葉が通じるようになるにはもう少しかかる。
  
「ぁー……」

毒見をした?と思われるものをよたよたと受け取る。
何やらもじゃっとしたものと白い肉っぽい物を渡されたが
もじゃっとした方はいい匂いながらまだちょっと熱い。食べたらやけどしそう。
なので恐る恐る肉っぽい方をかじってみる。

「!?」

なんだこれ美味しい。思わず耳がピンとした。
初めて食べたけどいける。
ペロっと食べきるともじゃっとした方に目を向け……

「……」

食べ方がわからなかった。
さっきなんだか赤毛さん(赤毛の人族から昇格した)が齧っていたが
なんかこう違う気がする。
なので……

「ぅー…?」

容器ごと持って片手でずるずると地面を削りつつ
傘の下に居る赤毛さんの元へ。
ずいっと差し出してみる。

暁 名無 > 少し離れた場所から様子を見守る。
それは普段転移荒野などで異世界の生物を相手にする時によくやっている事で、相手に敵意や害意が見られないため少し気分も落ち着いてくる。
うんうん、いつも通りの事をすると落ち着いて来るよね。

さて、どうやら無事にイカ焼きは食べてくれた様子。
ついで焼きそばの方はと言えば……あ、そうか。箸、使えないんだろうか。使えないな。
此方へと向かって来る姿を見て、説明しても伝わらない気がひしひしとしてくる。
そもそもあの手で箸持てるのか?持てねえよなあ。

(あー、食べ方解らないんだな?
 すまんね、そこまで頭回らなかったわ。)

さて一番手っ取り早い方法はといえば、目の前で実践してやる事だと思うのだが。
流石に俺が食うわけにはいかんしな……あー、うー……。

(ええと、まあ、とりあえず日陰に座ってくれ。)

突然の襲来者に一時避難していた海水浴客も戻ってきて、人目も気になるのでパラソルの下へと促しつつ、俺は割り箸を割った。

ラフェニエレ >   
「わーかー……ら……ん」

少したどたどしい口調で告げると
パラソルの下にぺたんと座る。
適応性……特に魔術に対する物には自信があるが
ちゃんと喋れるようになるにはもう少し時間がかかりそう。
そして食べ方となると話は別。技術が必要になるものも多いし。

「ぅー……」

動く度に感じる鈍い痛みに少々苛立ち
片手で脇腹を抑えると小さく呟く。
胸元と抑えた側の片手にはまっている宝珠が淡い光を帯び
ゆっくりと傷を塞いでいく。
……今の所この程度が限界。おなかすき過ぎて。

(あぃと。かいわ、がんばる
 つかれる、ことば、つかわなくていい)

座り込んだ状態から少し顔を上げて自分の喉をトントン突つく。
傍目から見ても感応での会話は疲れそうだし、
そもそも人族は余り魔法使うのが得意ではない。

暁 名無 > 「お、おう。そうか。
 つかれる……って、気付かれてたか。それとも知ってたのか?」

まあ、どちらでもいいか。
使わなくて良いと言うのだからその言葉に甘えて使わないでおこう。
ほぼ常に術式を編んでいるというのはなかなかどうして神経を使うもんだし。

「まあまずは焼きそば、だよな。」

傷が見る間に塞いでいくのは流石に驚いたが、今は問い質してる余裕もないだろう。
何より空腹が顔からありありと窺える。ならば食べさせるのが先だ。まだこっちの言葉への適応も十全ではないらしいし。

俺は割り箸で焼きそばを掬い取ると、そっと口元へと運んでやる。
腹もちを考えたら焼うどんの方が良かっただろうか、なんて、精神感応を切った事で余裕の出来た頭でどうでも良い事を考えつつ。

ラフェニエレ >   
「ぅ」

肯定とも否定とも取れるような一言を返すも
視線は一点を見つめ続けている。
何だか棒を二つに割ってそれで掬い上げている。器用か。
そのまま此方に差し出し、様子をうかがっている。

「ぉー…?」

口元に運ばれると一瞬戸惑った。。
多分食べさせてくれているのだろう。
先程までの行動で赤毛さんに悪意や敵意が無い事は理解できる。
それにこれに関しては勘が囁くのだ。
……あれめっちゃ良い匂いしたでしょ?絶対美味しいやつ。と。
ならば、多少恥ずかしいものがあるけれど

「ぁー」

もうそれは割り切って差し出されたものにぱくっと食いつくことにする。
何やら増えてきた人族の群れの中から
近くにやってきた薄着の人族二人組が
にやにやしながら此方を眺めているのが気になるけれど
とりあえずは腹ごしらえが優先です。

暁 名無 > お、食べた食べた。
なんかとても微笑ましい感じがするな、雛鳥に餌付けしてるみたいで。

「どうだ、美味いか?ゆっくり食べていいからな。」

何度か繰り返し焼きそばを口元へと運びながら、改めてこの不思議な少女を観察する。
耳と腕以外はやっぱり普通の人間とあまり差は無い。
食事も普通に口からということは、内臓も同様なのだろう。もしかしたら喉過ぎたら即分解されエネルギーになっているのかもしれない。
が、“お腹が空いた”と言えるのはどこかに食べたものを一定時間貯蔵する機能があるわけで。

目立った違いと言えば、さきほど光って傷を癒した宝玉のようなものだろう。
コレが一体何なのか、どの様な働きを有するのかは詳しく分からないが、少なくとも肉体の修復を行える代物、らしい。
幸か不幸かアロハシャツの着こなしがエr……ワイルドなお陰で観察はしやすい。
が、同時にあまりまじまじと見るのは気が引けるし、ちょっと危う過ぎるか。

なのでほどほどにして腕の方へと目を向けよう。
明らかに人間の物とは違う巨大なそれ。武具の類でも無さそうだが、引きずった跡から見て、相当な重量がありそうだ。

……ふむ、何だか興味が湧いてきた。

ラフェニエレ >   
「んー」

もぐもぐしつつ小さく頷く。
やはり勘が言う事は間違っていなかった。これは美味しい。
人族と言うのはどうしてこうもおいしい物を作るのが得意なのだろう。
そういう点では仲良くしてもいい種族だと思っている。あちらはともかく。
それにしてもここに居る人族は
揃いも揃って何故こうもこちらを見てにやにやしているのだろう。解せぬ。

「あぃと」

この地域では”ありがとう”というのが礼を述べる言葉らしい。
聞きなれない表現のため上手く発言できないけれど伝わっていると嬉しい。
外見上は冷静で冷たそうなイメージがあるためあまり知られていないが
この少女、実情はかなりおしゃべり好きだったりする。

「きー、なる?」

口の中にある物をモキュッと飲み込むと
視線を追って自分の腕を持ち上げる。
見るからに重量物のそれは実際体重の半分位の重さがある。
質量自体はもっとあるのだけれど半重力術式が常に発動してるため
放っておけば石の表面を削る程度に落ち着く程度には軽い。
最も、そうなるまでに長い年月を要したけれど。

「さわぅ?」

救出と食べ物のお礼と言っては何だが
恩義があるわけだし何かお返しも必要かと考えていた最中
興味深そうに眺めている視線に気が付き
触ってみる?とずいっと片手を差し出す。
普段は触られるのは苦手だが
少し空腹が落ち着いたため少し気持ちに余裕もある。

暁 名無 > うんうん、と頷きながら焼きそばを食べさせる。
何だろう、自分が食べるよりも満たされる感じがするなこれ。

「うん、いいってことよ。」

何だかお礼を言われた……気がする。合ってるよな?今の、ありがとう、だよな。
まあそこはかとなく感謝の気持ちは伝わって来たからにぃっと笑って頷いておこう。
いや、こちらこそ色々と見せて貰って有り難い限りなんだけども。

「ぇ、あ、良いのか?……じゃなくて、いや、遠慮しとこう。
 多分ここで触ったらあともう気が済むまで調べたくなるだろうしな。」

初対面の、さっきまで負傷しててた少女にそんな事が出来る訳がない。
いや、して良いって言うならするけども。本人の意思を尊重したうえでね、嫌でないのならそれこそ隅から隅まで……いやいやいや。

「触るのはまたの機会にして、それよりもう腹いっぱいになったか?
 まだもう少しくらいなら持って来れるぞ?」

ラフェニエレ >   
「うまぃ」

それにしてもここに居る人族はみな特に派閥や種族を意識していないように見える。
もしかして”常世島”なる場所は噂に聞く所属勢力が問われない場所なのだろうか。
そうだとすると良い所に流れ着いたかもしれない。

「ぅ」

お礼の言葉は何とか伝わったようだ。
ぱちぱちと耳元でなる光も赤色から白い光に変わりつつある。
大体相手が言っている事の雰囲気は理解できるようになってきた。
残念ながらあくまで雰囲気なのだけれど。

「ん」

調べるのは遠慮するらしい。
と言う事は触りたい気持ちはあるという事。
やっぱり珍しい事は間違いないし、黒の勢力は独自個体が多いことから
学術的興味を惹かれたのだろうと一人納得する。
たまに雑念が入り混じった表情をするのは気のせいだろう多分。だって人族だし。

「……んー?」

もっと食べられるのかと聞かれている気がする。
いーちにーさーんと片手を開きずいっと突き出す。
食べるだけならあと5倍くらいは行けると思う。よゆー。
……という気持ちを込めて。
なんて言えばいいのかわからないのだからとりあえずボディランゲージで何とかしてみる。

暁 名無 > 「そうかそうか、そりゃ良かったな。
 じゃあもうちょい持って来るかね。流石に5は無理だけど、2か3なら行けるだろ、多分。」

そうして俺は再びいや、三度目の海の家へ。
ついでに最初に食って驚いてたイカ焼きも二串ほど買っていく。
満腹までには遠そうだけども、まあ満腹には後々なって貰うとしてだ。
……その前にあの子の処遇をどうするか、だよなあ。

「学校に連れてくのが一番手っ取り早いか……
 あー、でも今夏休みだしな。正式な手続きとなるともっと後になるだろうし……」

さて困ったぞ、と頭を抱える。
焼きそばとイカ焼き、それとラムネ瓶を二本抱えて戻って来てみれば、突如現れた異邦人の風貌の珍しさからかそれなりに人だかりが出来ていた。
しかしやっぱりあの腕の威圧感の所為か、微妙に離れて円になっているのが何とも笑える。

「はいはいちょっと退いてくれよっと。
 よう、お待ちどうさん。いっぱい持って来たからどんどん食えよ。
 それが落ち着いたら、色々と質問するからさ。」

ラフェニエレ > 「ん」

ちょっと待っておけ的なニュアンスだと思うので曖昧に頷き
歩いていく背中を見送るとボーっと空を見上げる。
”常世島”とやらは随分と暑い地方にあるらしい。
照り付ける太陽が殺人的。傘の下で良かった。
そんな日差しの下、呑気な様子で人族の群れが騒いでいる。
何だか水浴びまでしている者も多く、その何れも布面積が狭い。

「んぁ―……」

暑い。何だかすっごい暑い。
戦闘の消耗や怪我、溺れかけたことに加え
軽い食事まで取ったことで気が緩んでいたのか
意識がぼーっとしてきて……

「……」

うつらうつらと微睡み始める。
潮騒の音が耳に心地よく、群衆特有のざわめきも波に似て……

「ぅ?」

近い。ざわめきが妙に近い。
そう思って目を開けると……何故か包囲されている。
これはあれか?油断したな棒で囲んでフルボッコだ的な?
遠巻きに此方を伺う様子には敵意は感じられないが……
白所属の人族なら理由も聞かずに襲ってきてもおかしくない。
人族の殆どが白に居るわけだし。

「――」

低い唸り声を発しながら目を細め、
最も突破しやすい場所を見極める。
あああの、油断してそうな男女二人組の所が良いか?

「…?」

なんて考えていたら赤毛さんがそれをかき分けて戻ってきた。
わざわざ二人組の間を通る辺りに他意を感じる気がするけれど
友好的な赤毛さんを普通に通している所を見ると本当に敵意はない?
ならなんで囲んでるのか……困惑しつつも両腕の力を抜く。

……けっして食べ物に懐柔されたとかそんな訳じゃない。多分。

暁 名無 > 人垣の向こうからチラリと見えただけだが、傷を負っていたことも相俟ってどうやらだいぶ疲弊しているようだ。
しかもこの暑さ。早いうちに移動した方が良いだろうか。
そんな事を考えていたらカップルの間を割る様に通ってしまった。他意は無いヨ!

「しっかり食ってしっかり飲んで、そしたらもうちょい涼しいとこに行くか。」

ほらよ、とイカ焼きを差し出しつつ、ついでにラムネを開けておく。
この子が何処から来たのかとか、行く宛てはあるのかとか、知っておかなきゃいけない事は山ほどある。
まったく、トンだ拾い物をしてしまった。まあ、楽しいから良いけども。

「そういや、名前は?
 俺はナナシって言うんだが、自分の名前、分かるか?そもそも名前って言葉を知ってるか。」

食事を再開するだろう少女の隣に腰掛けて、気が散らない程度に訊ねていく。
……ううん、隣に座ったのはちょっと目のやり場に困るから止めた方が良かったかもしれない。などと思っても無い反省をしつつ。

ラフェニエレ >   
「ぅ」

だいぶ言葉が分かるようにはなってきた。
とりあえずギャラリーが気になるが飲んだり食べたりすることにする。
何でこんなに見学されてるんだろうと思いつつさっきの白い肉にかぶりつく。
「キャーミテタベター」とかよくわからない言語で周りが騒めいているが
大事なことはおなか一杯になる事。たぶん。

「……ぅ、ぴりぴり、しゅわしゅわ」

ついでに自棄気味に瓶(これはわかる)に詰められた飲み物を口にする。
途端にばっと口を放して目を白黒させた。
再びざわめきが起きるがそんな事より……何だこの飲み物。
フルフルと頭を振って再度そっと舐めてみる。
うわっこれ凄いしゅわしゅわする。おいしいけど。

「ぅ、なまぇ……?
 ら、ふぇ、にえーぇ?」

名前は勿論ある。あるのだがしかし。
此方のこの言葉では発音が難しい。母音がちょっと足りないから。

暁 名無 > 「ほらほらー、見せもんじゃないぞ。散った散ったー」

周囲に集ったギャラリーをしっしっと追い払う
まったく、俺が落ち着かないっての。
まあ、注目したくなる心理が分からなくもないから強硬な態度には出ないけども。

「……ああ、炭酸は初めてだったか?
 少し置いとけばぴりぴりしなくなるからよ、時々ちょっとずつ飲めばいいさ。」

まあ、ギャラリーが見物したくなる気持ちもよく分かる。
とはいえあまり注目を集め過ぎても動きづらい。難しい所だ。

「らふぇにえー?
 ふむ、発音自体がこっちの言葉より独特なんだな。まあ、そんなもんか。
 元居た世界の名前とかは、言えるか?分からないなら分からないで良いんだけどさ。」

少しでもこの子の素性が知れれば思うがどうも難航しそうだった。
つーか暑い。アロハは貸し与えてしまったので水着一枚なんだが、パラソルから出ると日差しが肌にモロでつらい。
何か予備の服、持ってくりゃ良かったなあ。

ラフェニエレ >   
「これ、いい」

はじめは驚いたけれどしゅわしゅわとはじける感覚が
暑い気候と相まって非常にすっきりする。
白い肉の味ともよく合うのでこれを考えたのはたぶん天才。
瞬く間に白い肉を食べきるともじゃっとしたのに手を伸ばし

「ん」

差し出す。
自分で食べられないのだから仕方がない。
ギャラリーがわくわくした目でこっちを見ている。
そんなに食べるのが珍しいなら自分で食べればいいのに。
もしかしてこれは普通の人族には食べられない珍しい物で
赤毛さんは人族でも珍しい人物なのだろうか。
……それこんなに食べちゃっていいのかしら。

「なな、ぃ、らふぃ、なにかすうこと、あぅ?」

これは思ったよりも好待遇だったのではと恐る恐る上目遣い。
さっきまで空腹にかまけていたけれどこれ後で莫大な費用を請求されるやつでは。
とりあえず真摯に質問には答えようと思う。

「ん」

また肯定か否定かわからないような返事を返し小さく首をかしげる。
……元居た世界?どういうこと?

「とーらす」

永く暮らしたのはのエ・シエレ・ファータ……黒の民が多く集う魔都と呼ばれる場所だが
別名魔王城とかいう名前がついている場所の為大変覚えが良くない。
無難な所でとりあえず故郷の名前を挙げてみる。

「……ぁつい」

強い日差しと言うのはあまり得意ではない。
基本的に水が氷る気温が平均的な地域を中心に在った為
人族の体温に近い環境と言うのは思ったよりも体力を使う。
それにこんなにじっと見られているのは居心地が悪い。

暁 名無 > 「とーらす。……トーラスねえ。
 ……やっぱこっちの世界のどっかじゃねえわな。」

はい、あーん。と焼きそばを食べさせながら考える。
まあえてして異邦人というのは縁もゆかりもない世界から単身転移してくるわけで、
もしかしたらこの子を知ってる異邦人も居るかもしれないなーと考えた俺が馬鹿でした。
多分学校のDB使っても分かんねえだろうなあ。

「らふぃ……ラフィ。ふむ、そうだなラフィだと呼びやすいな。
 ああ、いや。後で幾つか質問に答えてくれれば良い。
 それにしても、どうしたもんかねえ。その様子じゃこっちに知り合いなんかも居なさそうだし。」

問題はこれから生活していく場所だ。
あの腕と見掛けに寄らない体重は普通の建物だとちょっとつらいだろうし。

「いっそ俺について来るか?……なんてな。」

借りてるアパートは無理だが、学校の研究室なら広さも耐久性もそれなりにある。
何しろ様々な幻想生物を飼養しているからだ。
暑さに音を上げ始めたラフィにラムネを差し出しつつ、どうしたもんかねえと考え続ける

ラフェニエレ >   
「ぁー。……ぅ?」

こっちの世界じゃない?
何だかそんなニュアンスの御言葉に
もじゃもじゃを食べるため口を開きながらながら首をかしげる。
簡単に異世界とかいう言葉が出てくる環境なのだろうか。
それとも別地域の事を世界と言うだけなのだろうか。
翻訳術式によってある程度相当する言葉にあてはめられているが
細かいニュアンスなどはどうにも伝わりにくい。
やはりこれは歴史や言語を紐解く必要があるかもしれない。大変。

「ぅ。らふぃ、こたえぅ」

とは言え正直それほど悲観もしていない。
元々流浪の身の上で、定住する事もほとんどない。
知らない場所に一人と言うのは色んな意味で慣れている。
それに知り合いなんかいない方が多分楽。
基本あまり良い評判があるわけでもなし。
ひと先ず友好的な人族もできたことだし……

「ん、そう、すぅ」

ついてくるかとのお達しなので素直に頷くことにする。
赤毛さんはご飯をくれる人なのできっと悪い人じゃないと思う。
それに赤毛さんもちょっと暑そう。つまり…

「(赤毛さんの住んでいる所はきっともっと涼しい)」

少しは過ごしやすいはず。

暁 名無 > 「え、ホントに来る?」

冗談のつもりだった、とまでは言わないけれど。
あっさり肯かれてもそれはそれで戸惑ってしまう。
一応ちゃんと異邦人の身柄を引き受ける機関もあるわけで、本来ならそういうところに送るのが面倒も少ないんだけれども。

……そしたらこの腕とか宝玉とか、調べる権利向こうにいっちゃうしなー、とかそう言う気持ちが働いたのは否定もしない。
まあ、アパートに連れ込むわけじゃないから良いか。良いのか?

「そしたら……ああ、もうちょっとまともな服とか探さねえとなお互い。」

俺の方は海パン一丁だし、ラフィは水着も同然なアロハシャツ一枚だし。
これで学校まで行こうものなら通報待ったなしだ。
とはいえ、普通の服屋でラフィの腕が通る様な服は……ふむ。

焼きそばをせっせと運びながら、ちょっと真面目にそんな子を考えてみる。

ラフェニエレ >   
「……ぅ?」

冗談のつもりだったのか戸惑った様子に首をかしげる。
旅の経験上、悪い人じゃない相手の所に泊まるのが一番安全だと思っている。
何度か見極めを誤り危ない目にもあったがとりあえず逃げ出せばよい的な楽観視もある。
こうしてみる限り周囲の建造物はそれほど頑丈ではなさそうだし。
そう思って頷いたのだけれど迷惑だったかもしれない。
少々しゅんとしながら駄目だったかーと思う。
基本あまり表情に出ないとは言え耳がぺたんと寝た辺り内心を慮るのは容易かもしれない。

「ぃい、の?」

と思ったら何やら前向きに検討する旨の発言に耳がまたぴょこりと立つ。。
正直混乱気味だがこれから寝る場所を探すのはちょっと嫌なので
嬉しくないと言えば嘘になる。
……何故なら野宿は暑いですしギャラリー散ってないですし。

「まともー、な、ふくぅ?」

適当に布一枚で良くないですか。
最低限隠れてれば平気と他の黒が言ってた。
……あの露出満点の格好で言い切ってたのはどうかと思うけど。紐じゃん。

暁 名無 > 「いや、良いんだ良いんだ。
 よーし、じゃあ今夜は新入り歓迎会でごちそうだぞー!」

まあ、いずれ学校に行く事になるのであれば、変な研究所とか中継しないでストレートに学校に居た方が良いように思う。
それにラフィは見た目以上に危なっかしい匂いがする。匂いがするも何も両手見りゃ分かるんだけどもね!
寝たり立ったり忙しい耳を見て、なるべく耳に触れない様に気を払いながら頭をぽふぽふ撫でてやろう。

「そ、まともな服。
 とは言っても精々チューブトップとかそういうのだよなあ……。」

街中を歩くのに最低限必要な装備というものがあるのだ。
それを今説明してもきっと理解を得られるとは思えないので、ならば無理やり着させてしまう方が良いだろう。
現状の変に動けば見える零れるなボロアロハよりはずっとマシだろうし。

ラフェニエレ >   
「ぉー……」

御馳走。これはもう大変素敵ニュアンス。
つまり沢山美味しいものが食べられるやつである。
やっぱり赤毛さんはいい人だと思う。食べ物で釣られている?
そんな事はないたぶん。

「きぅ。ななぃ、そういぅ、なら」

撫でられると眩しそうに目を瞑り、服を着る事を了承する。
昔誰かもこうやってよくなでてくれていた気がする。もう忘れたけど。

「わゃー……」

ちょっと変な声が出た。撫でるの上手い。
それはともかく、人族の服はそう嫌いではない。
戦闘用の服も元は人族がデザインしたものを気に入って作ってもらった。
腕が通らないのですっぽりかぶるものを選びがちだがあれは例外。
……胸に贅肉が付いたせいでデザインし直す必要があったけれど。
それを言ったら何故か仕立て屋さんに殴られた。怖かった。
何故かよく食べよく眠ることを詰られた。怖かった。

「ぅ―……」

周りを見ると軽装の人の方が多いのに
どうも別の服が必要な場所もあるらしい。
実は服で階級が分かるとかそんなシステムなのかも。
そういうところは妙に白の派閥っぽい。

暁 名無 > 「とはいえ俺が用意できるものにも限度がある、過度な期待はするなよ?」

撫でる事に関しては島内でも10の指に入る自信がある。
なんせ人に限らずあらゆる生物の触診やトリミング、ついでにマッサージなんかもこなせる手だ。
見たところどうやらラフィにもお気に召して貰えたらしい。良かったよかった。

「さて、目下のところクリアしなきゃならない事柄は大体解決に持ってけるな。
 あとはもっとよく調べて、ラフィの同郷がこっちに居ないかとか探せれば御の字か。」

ううん、夏休みだってのに暇にはならなそうだ。
まあ、一人でドローン飛ばして遊ぶよりはよっぽど有意義な気もするし、良いか。
たまには海にも来てみるもんだ、と思いつつ俺は犠牲になったアロハをそっと忘れることにした。
まあ最期にふくよかな双丘を支える仕事が出来てあいつも悔いは無いだろう。絶対捨てよう。

ラフェニエレ >   
「ぅ」

小さく頷くがこれは絶対期待している目だった。
それはもう頭の中にはご馳走の数々……
焼き立てのパンやら作って一か月以内の干し肉やら
温かいスープやら蒸した芋やら
贅沢の限りが浮かんでは消え浮かんでは消え……
哀しいかな、普段の食生活がほぼ野草や鉱物の為
自分の思う贅沢が普通の家庭料理程度だという事を知る由もなかった。

「ぅ―……」

ニュアンスが分かりにくいが若干同郷の相手に関しては嫌がっていた。
此処まで嫌がるのも珍しいが自由奔放と謳われる黒においても異端であることから
討伐対象であったり変な噂や尾ひれ処か翼まで生えたような逸話が流布しているせいで
出会ったらたいていその説明もしくは一戦から入る羽目になるからだ。
……戦争ごっこは好きだけど、何時でも何処でもいきなり来るのは疲れる。

「ぁづぃ」

そんな事を考えていたら余計暑い気がしてきた。
眉を寄せると両手からミシミシと言う音が聞こえ始める。
そちらを見たなら急速に両腕が氷に包まれていくのが目に入る。
……どうやらあまりの暑さに物理的に軽減する手段に出たらしい。

暁 名無 > 「さて、好き嫌いがそんなに無ければいいんだけどな……
 野菜は食えるか?見た感じ肉食オンリーの線も十分あり得るし……まあでも焼きそば食えてるし大丈夫か。」

御馳走と言っても出前ピザや出前寿司といったそういうものなんだが。
果たしてそれで満足してくれるかどうか……。
生憎と読心術まで使える訳じゃないのでラフィがどんな期待をしているのか分からない。

「お、何か渋い反応だな。
 故郷に良い思い出が無いとかか?だったら無理して調べる事も無いか……

 ……って、何の音だ?それに冷気も……」

って、おおうっ!?
腕が凍り始めている……いや、氷を纏っているのか?
空気中の水分を集めて凍らせてるのか、それとも内側から氷が出てくるのか。
いずれにせよこの腕の機能の一つとみても良いのだろうか。それとも腕についてる宝玉の力……?

「ふふ、ふ。ふーむ、やっぱ興味深いな。
 あー、疼く、疼くけど我慢だ……がまんがまん。
 ……それより、これ以上暑いとこに居るのも限界みたいだな。よし、移動しよう。服、買わないとな。」

裂かれて脆くなったシャツの生地が氷の巻き添えでいよいよ危険域に達しそうだ。
ほんと、高かったんだよそのシャツ……

ラフェニエレ >   
「にく、やさぃ、おさかな、こーぶつ」

最後が判断しにくいアクセントで好きな物を挙げていく。
ただし砂は好きではない。岩も微妙。
一定以上の等級の宝石や魔石なら好物。
……要は食べようと思えば何でも食べられる。文字通り。

元々の見た目以上にまがまがしい造形の氷の腕になりながら
ぴょこんと立ち上がる。見た目は完全にミスマッチ。
少しふらつくがそれは体力不足と暑さのせい。

「……ぅ」

……傷口はついでに凍らせてしまおう。
そうすればもっと早く内側まで治るし。
そっと腕をあて、強烈な冷気で体ごと凍らせる。
傍から見れば暴挙だがこれはそれなりに合理的。
彼女の体質と世界では。

「ななぃ、いこ?」

そうして赤毛さんの腕をつんつんつつく。
一応凍り付かないよう細心の注意は払っている、が……

「…?」

赤毛さんがちょっと怖い雰囲気になった。
なんと言うか好物を目の前に出されて我慢できない感じの。
……赤毛さんはきっと氷を齧るのが好きなんだね。

暁 名無 > 「こーぶつ?……まあ、何でも食うってのは分かった。」

だったら何を注文しても問題無さそうだな。
こーぶつっていう言い方だけが気になるが、まあ、相手は異邦人。気にしちゃ負けよ。

「なんか……何かカッコいいなそれ……。」

黒地に氷を纏った腕とか厨二感全開でアリアリのアリじゃないっすかもーやだー。
とまあ、催促もされたところで我に返って立ち上がる。
こうしてみるとだいぶ身長差があるなあ……ふむ。

「じゃあ、しっかりついて来いよ。
 先ずはシャワーで潮のべたべたを落してからだけどな。」

こっちだぞ、とサンダルを履き直して歩き出す。
これから街に行こうってのに海水浴びたまんまだと正直臭う。
それに高鳴る好奇心を抑えるには水でも被るのが一番だし。一石二鳥って奴だな。

ラフェニエレ > 「ぁ……」

何かを察し、腑に落ちたような目になる。
そういえば昔同じような目になったのがいた。
眼帯を付けて腕に十字の入れ墨をしながら包帯でぐるぐる巻きにしたあと
たまに正体不明な発作に苦しめられているという彼は今頃元気だろうか。

「ん―……」

背伸びをして頭を撫でるまねごとをする。少し腕のビジュアルが歪だけれど。
聖魔龍という存在を封印している悪魔の生まれ変わりだそうだけれど
スキャンをしてもそのような魔力残滓が見つからず首をかしげてしまい
それ以降頑なにスキャンを拒まれていたことから
彼の病状がどう推移していたのかはわからない。
ヴァと言う言葉をやたら使いたがっていて随分聞きづらかった思い出がある。
そんな彼にこうやってあげると何故か落ち着いた。
……結局最後まで彼の病魔を見つけてあげられなかった事には悔いが残る。

「……しゃわぁ?」

聞きなれない単語が出てきた。
未知の単語だが多分そんなに悪い物ではないはず。たぶん。
きっと何かのポーションか何かだろう。
小さく頷くとそっとつま先で赤毛さんの服をつまむ。
と言っても一枚しか着てないのでその端っこである。

暁 名無 > 「………?」

何やら遠い目で過去を思い返す様な顔をしているラフィに首を傾げる。
一体何をしているかと思いきや、頭を撫でるような仕草をして。
こちらが訳が分からないでいる間に妙に納得されてしまった。どうやら昔何かあったようだけども。

「そ、そう。シャワー。
 あとそこは出来ればつままないで欲しいな。万が一があったら俺の全てが失われるから。」

社会的立場とかが。
なんせ海パン一丁なもんでね。他に掴むところが無いよって言うのも、まあ分かるけど。
と、そんな他愛無いやりとりをしている間に掘っ建てシャワー室の前に着く。
流石にここからはラフィ一人で入って貰わないとならない……んだけどもー、だ。

「シャワーの使い方、知らないよな多分。」

少し考えて、シャワーの個室のドアを開けてラフィに入るよう促す。
この際だ、服着たまま流させてしまえ。どうせ捨てるんだし。

ラフェニエレ >   
「ぅ……」

くるくると喉を鳴らしつつ不満げに手を放す。
摘まめる裾が一つしかなかったのでそこをつまんだのだが
何やら切実な口調で放してと言われた。

「ぃら、なぃ」

ポーションのような物は特には見当たらない。
ぬめりを取るもの……ブラシのような何かだろうか。
とりあえず言われるがままに個室に入り小首を傾げながら
赤毛さんがポーションのような物を取り出すのを待つ。

暁 名無 > 「ま、また後でな?な?」

凄い渋々離されたから妙に罪悪感が沸く。
何がまた後で、なのか分からないがそうでも言っておかないといけない気がしたんだ……。

「だよなあ。
 ええと、このところを捻ると、水が……」

一応説明しながらのつもりでカランを捻る。
簡単なパイプを弄っただけのシャワーから水が噴出し、狭いシャワールームの中俺たちは二人揃って頭から水を被る事になってしまう。

「とまあ、こんな風に海水を真水で洗い流すんだ。」

ラフェニエレ >   
「ん」

渋々ながら了承しましたといった調子で頷くと
部屋についていた小さな装置に手を伸ばすのを見守る。
変なつまみをひねった瞬間

「わひゃぁ!?」

水がすごい勢いで降ってきた。
それはもう滝かと言わんばかりの勢いで。
そして幸か不幸か彼女が嫌いな事のいくつかのうち
……水浴びは嫌いな物だった。

「わーぅー……ぃーぁーーー!」

両手で頭を抑え、へたりこんだかと思うと部屋の外へと逃げていこうとする。
その姿はまさにお風呂を嫌がる猫のごとく。

暁 名無 > 「あー、ごめんごめんビックリさせちまったな。」

海の中に落ちても割と平気そうだったから、まさか水浴びがダメだとは思わなかった。
獣耳といい性質はネコに近いんだなあ、なんて場違いな感心をしつつ外へと飛び出したラフィを追う。

「ほら、もう終わったから髪とかの水気払おう!ラフィ!」

さながらシャワー中に逃げ出した飼い猫を追う飼い主のようだ。
というか、これは後々苦労すんじゃねえかあ……?

──その後どうにかラフィを宥めすかして当初の目的である服屋に連れて行ったのは、また別のお話し。

ラフェニエレ >   
「ゃー……」

耳を抑えて部屋の隅っこで涙目でプルプル震える様は
まるでひどい事でもされたかのよう。

……実際心象的には大変酷い事をされた気持ち。
そんなつもりはないという事も、我がままに過ぎない事も
理性では理解しているのだけれど水浴び……
正確には耳が濡れる事は極端に嫌な事の一つ。
ペッたり張り付くし音が聞こえなくなるし気持ちが悪い。

「ぅー……」

とりあえず大きな布を持って此方に迫るのは躱して耳が立つまで逃げ回っておいた。
因みに大きな布はふわふわでお気に入りになりました。意外。

その後自分で毛づくろいをしたがる上にそれが終わるまで服を着直そうとしなかったり
洋服選びにご満悦となりさんざん部屋に帰るのに手間取った教諭がいたとかいないとか……

ご案内:「浜辺」からラフェニエレさんが去りました。
ご案内:「浜辺」から暁 名無さんが去りました。