2018/09/21 のログ
ご案内:「浜辺」に東雲 七生さんが現れました。
東雲 七生 > ──日も沈んでだいぶ経った頃、東雲七生は常世島の海岸に打ち上げられた。

海水浴シーズンもとうに終え、夜間の浜辺なんぞ余程の物好きが訪れるくらいだろう。
そんな中で、頭の先からつま先まで海水でびしょびしょになった状態で、東雲七生は打ち上げられていた。

一目見て水死体のようだが、幸いまだ息はある。
しかし、昨今の夜間の冷え込みから見て、このまま放っておかれれば風邪を引くのはまず避けられなさそうだ。

東雲 七生 > 未だ波間に漂っている様な、おぼろげな意識の底で、七生はこの一年とちょっとの離島期間を振り返っていた。
とある事情から本土の辺境まで行くことになり、その地で1年過ごした後は、自らの体一つで常世島まで帰る──
──そんな無茶を思いついてしまったのが数ヶ月前。
そして数ヶ月経った今、ようやくこうして常世島の海岸に流れ着いたは良いものの。

既に体力は底をつき、指一本動かすどころか意識を引き揚げる事すらままならない。

(まいったな……)

どうにか起き上がって、異邦人街の、いつもの家まで辿りつかなければならないのに。
このまま波打ち際でクラゲの如く打ち上げられていれば、そのうち救急車辺りを呼ばれて病院直行コース待ったなしだ。

東雲 七生 > ───

───

指先が、僅かに動く。
鉛の様に重たい身体を無理やりに起こして、七生は血潮のように赤い瞳を開いた。

「……生き、てる。
 あたりまえか……」

喉から絞り出す様に発した擦れた自分の声に、思わず失笑しつつ。
帰巣本能に従うかのように、よろよろと歩き出して向かう先は異邦人街。
酷く懐かしく感じるのは何故だろうか、などとぼんやり考えながら七生は帰路の、最後の道程をゆっくりと進み始めるのだった。

ご案内:「浜辺」から東雲 七生さんが去りました。