2015/07/13 のログ
ご案内:「常世神社」に狛江 蒼狗さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > 参拝客も疎らになり人の気配がだんだんと消えてゆく、夕刻の常世神社である。
湿った大気が常世島全土を覆っていて、蒸し暑く汗ばむ日和である。
さて、常世神社の社務所裏手あたりの木樹が立ち並ぶところに狛江蒼狗は居た。
一際大きな樹の枝に、巨大で丈夫な災害用ウォーターバッグをぶら下げた前で佇んでいる。
「………………」
制服姿。勿論使用許可はとってある。社務所も既に平常業務を終了して既に誰もそこには居ない筈だ。
狛江蒼狗は目を瞑り、呼吸を整える。
■狛江 蒼狗 > 「ふぅー……………」
調息する。
微風が葉擦れを引き起こす音もよく聞こえる。
自らの心音が狂わぬリズムを刻むのも。
呼吸で取り入れた空気が肺の内で渦巻くのも。
血球が細い血管を通り抜ける音も。
ここは、静寂としていて、良い気が満ちている。
抜筋骨を始める。
全身の関節を緩め、筋を伸ばし、筋肉を柔らかくして、躰の流れを良くするのだ。
両足を肩幅に開いて立ち、両手を大きく円を描くように広げ頭上で手を組み、そのまま左右に背骨を揺らすようにしてゆっくりと伸びをする。
あまり強くはしない。力任せにせず、自然に伸びるように。
巡る血流が神経に伝わる。
ざあ、という音が聞こえるような気がした。
■狛江 蒼狗 > 「んー……」
別に、声を上げようが表情を緩めようが効果に違いはない。
必須なのは精神の錬磨ではなく身体の柔軟である。
両手を組んだまま手を返して、一度胸の前まで下ろし、腰を曲げて組んだ手を下ろし前屈する。
両の脚はぴんと伸びて地へ降ろされていて、腰は百幾十度屈曲し掌は地面にぴたりとついた。
体勢を戻し、両手をほどく。ぴらぴらと空中で手を振った。
■狛江 蒼狗 > ウォーターバッグと向き合う。
内容量は120リットル、青く分厚いポリエチレン製、内側には海水が満タンまで入っており、ここまでは猫車でえっちらおっちら運んできた。
■狛江 蒼狗 > 「…………」
膝を抜く。ひかがみに鉄の棒を当てられるのをイメージする。足の裏全体にかかる体重が一瞬ゼロになった。
前方に出した脚を軽く浮かせ、後ろ脚へ体重を乗せる。
掌は軽く開く。細いペンを優しく握っているような。
肩の力、腹部の力、背の力を抜く。脱力する。
ぺたん。
掌打をウォーターバッグへ打ち付けた。
筋力を殆ど使わずに、触れる程度の力でぺたりと打ち当てる。
ウォーターバッグの表面が震えて、掌には冷たい感触が帰ってきた。
■狛江 蒼狗 > 「すー…………」
寝息のリズムで呼吸をする。
無酸素運動、有酸素運動という区別ではなく、意識するのはあくまでも自然体である。
息をするたびに、海の表面に触れて砂を撫で鳥居に絡み葉をなぞり幹を取り巻いてきた風を意識する。
遠くの潮騒が常世島周囲を取り囲み巡り流れた結果であることを意識する。
頬や腹に感じる血や生気の巡りもまたそれと同じものであることを意識する。
ぺたん。ぺたん。
打つ直前に指先の握りを篭めてスナップを効かせる。
腰を回転させた重めの一撃を加えてみる。
両掌でウォーターバッグの重量を押すような“按”の打撃を試みる。
何度も、何度も、軽い打ち付けは続く。
■狛江 蒼狗 > 含胸抜背。
やや前屈み、肩はいからせず落とし、背筋力を身体から除外する。
左脚を踵より踏み出し、左掌打を放つ。ぺたり、とウォーターバッグに触れた。
このときに肘や靠での打撃への移行することも神経へ刻み込む。相手の踏み込みを迎え撃つのだ。
これは実戦ではなく鍛錬であり、相手は人ではなくただの水袋であるため踏み込んでくることもないだろうが。
拗歩、すなわち右足が出れば左手が出る、動歩行の歩みと同様のかたちで歩を進める。
ウォーターバッグの右側面に回りこみ、短距離での掌打を打ち込む。べた、と少し大きくウォーターバッグが振動した。
■狛江 蒼狗 > 敵に対して侵入すべき角度は、視界の届かない場所。側面背面を取り、何度も打ち込んでいく。
ぺたん、ぺたん。
軽い振動がウォーターバッグの表面を揺らす。その響きは長く続いている。内側の水が波打ち、脈打つのだった。
蒼狗はウォーターバッグにとても近い場所で何度も打ち込んでいる。
ボクシングで言えばジャブも十全な威力を発揮しない距離だ。
距離が近すぎて手を伸ばせないし、手を引いても距離がなくて反動がつけられない。
腰、丹田──否、命門。丹田の裏側の、背の部分だ。
全身の筋肉の駆動を命門から後押しして打ち付ける。
水が振動する。ぺたん、ぺたん。
「…………………」
ぞわぞわするような水の響きの刺激が掌に伝わってきた。
■狛江 蒼狗 > 「………………うむ。大体、把握できたか。このバッグも」
蒼狗はウォーターバッグから一歩離れた。
腕部と肩と、背と、脚の筋肉が熱を持っている。汗を出し発散するような熱いものではなく、静かに皮下を通る熱だ。
■狛江 蒼狗 > 「……………………」
脚を肩幅に拡げて立つ。先程と同様の手順で膝を抜き腰を落とし、重心を躰の中央で固定する。
膝頭と爪先の位置をあわせ、顎を引き、脊柱に対して頭をまっすぐ保つ。
両手は広げ、緊張を解く。その体勢のまま、数分。
調息、調身し、調心する。
風、海、大地、正気、生命の巡りが額あたりから腰の奥へ流入する。
■狛江 蒼狗 > 心身の調律が終わると両掌を胸の高さまで上げて腕で円を作る。
ちょうど、ウォーターバッグがぶら下がっている大樹の幹を抱き締める格好である。
肘は張らない。抱く空気に実体があるかのように考え、余計な力を抜く。
両手を胸の前に真っ直ぐ並行に伸ばし、掌を下へ向ける。肘は内側にやや絞り、外側には向かせない。
脇下に緊張が乗らないよう、手は前方へぶら下げるような感覚を持ってその体勢を維持する。
■狛江 蒼狗 > 両掌を返し、徐々に上げる。
一秒に数ミリのペースで、空気より軽い気体の詰まったものが浮力で持ち上がるかのように。
空気が脈動する。肌の表面の血管の動きが僅かな空気のうねりと同調する。
腰を落とした。脚を前方へ踵から出す。ざ、ざと地面を足裏が擦った。
掌を開く。
蒼狗の青い瞳が一瞬輝きを増した。
────。
空気に乱れを生じさせない、流れるような打撃がウォーターバッグを打つ。
烈しさはない。ただ一歩踏み込み、命門と丹田を駆動させて背から肩、肘から先に気を徹した一撃を放ったのみ。
打つ瞬間の握りは日字拳。単純な4つの指を揃えた握りである。
瞬間。
体重をかけた後方の脚の接地点が踏み砕かれた。
土の地面が凹み、ひび割れが走る。
ウォーターバッグからごす、という巨大な鳴動が起こる。
遅れて破裂音が響き、巨体は宙に煽られながら内側の水を、蒼狗の拳で撃たれた反対側から爆けさせた。
■狛江 蒼狗 > 「…………秘拳・纏衝」
飛沫が制服のワイシャツにかかり濡らし、冷え冷えとした感覚を身に伝えた。
内側の液体を全て絞り出されたウォーターバッグは、厚いポリエチレンの躰をぶらぶらと樹の幹で揺らしている。
蒼狗は少々、苦い顔をしている。
「こうして。……ウォーターバッグのように、何度も打って気の浸透を確かめてからやるのであれば、苦労はないのだけれど」
打った右掌を開き、閉じて、眺めている。
夕方の光がそれを暖かに照らしている。
「……人体で練習できれば一番、なんて言い出すわけにはいかんしな」
苦笑しながら、大振りの枝に結ばれたウォーターバッグの残骸を取り外し、片付けていく。
「それに」
目を細める。
「最後、“シリウス”を使ってたな、俺……」
口元を歪める。
「変な癖がついてしまった。……直さねばな」
■狛江 蒼狗 > 【異能】効果の発現を示す右目の疼きを感じ、指で軽くまぶたを押さえた。
「猟犬、猟犬か……」
指先で自らの目を瞑らせる。
「未だ、早太郎さんの遺志が宿っているのかもしれない」
オカルト的な思考。しかし、常世島ではそれが事実となることも往々にしてある。
ともあれ思考をやめて背伸びをする。
無道双牙流にあるものではない、単なる伸びだ。
「うん。……もう少し。もう少し強くなろう」
ふと。
目を落とすと水に浸された地面が夕日を反射して燦めいている。
ウォーターバッグの内容量は120リットルであったため、つごうペットボトルの大サイズが103本程度ぶちまけられた計算になる。
蒼狗は暫し黙ってそれを見詰める。
「掃除、どうしよう……」
■狛江 蒼狗 > 常世神社は正気に満ちている。
パワースポットとか、龍脈とか、弥盛地とか。言葉で表現すればきりがない。
神社の裏手の鎮守の森は“常世”の名において清明に保たれているし(ここは社務所の裏手)、宮司の腕が良いのか神社の気も正しく満ち満ちている。
“気”だのと曖昧な言葉を用いるのは実はあまり好きではないが、兎角手入れの行き届いた自然と連結した場所なのである。
だから、気の鍛錬はここで行っている。無道双牙流の修行もまた、この神社に近い砂浜で行う事が多い。
……が。目の前に広がる水浸しの光景。これが実習区なら自動的に清掃されるシステムが用意されているというのに。
「……………………」
首を捻る。首を捻る。
「乾く……」
一瞬、なにもかも打棄って帰れば明日には綺麗になっているという都合のいい独自解釈に身を委ねかけた。
「か、乾くにしても。とりあえずむらの残らないように水を拡げておくか……」
■狛江 蒼狗 > そして、しばらく竹箒でひたすらに掃き掃除。
社務所の裏手の落ち葉も一応、掃き集めておいて。
結局参道の周辺なども掃くことになって。
終わった時にはとっぷりと日は暮れていた。
「……常世島の夜は、さっぱりとしていて良いな」
ビルの合間に消えるのではなく、山の向こうに消えるのではなく、海の向こうへ太陽が消えていく。
しっかり夜が来た感じがして、心地が良い。
気温も少しだけ下がったようだ。
蒼狗はビニールバッグの残骸を持ち、そのまま帰路へついたのであった。
ご案内:「常世神社」から狛江 蒼狗さんが去りました。
ご案内:「常世神社」にサリナさんが現れました。
■サリナ > 常世神社とは、学生居住区の南にある。駅から少し離れていて、いくらか歩く必要があるせいか、中々行く機会がなかった。
今日は羽を伸ばすついでに前々から気になっていたこの神社にやってきていたのだ。
「…暑い」
それにしても暑い。この前まで雨が降ってて寒いくらいだったというのに…
■サリナ > 赤い門のようなものの前に来て、髪に張り付いた汗を拭いつつ、その先を眺めた。
神社、というのは神を祭る場所、祭祀場というものらしかった。
私の世界でもそういう場所はあったが、この神社というのは私の知らない趣があるように感じる。
この赤い門のようなものも、何か不思議な印象を受けた。
「…これが鳥居?」
事前に調べておいたが、鳥居というらしい。何やら結界だの、そういう意味合いがあるとかなんとか…
触ってみれば、特に何かを感じたりはしない。象徴的なものなのだろうか…
■サリナ > しばらく鳥居と睨めっこをしていたが、辺りを見回せば門を通る人間がちらほら居て、特に問題ないだろうと思って私も門を通った。
…特に私の身に何かが起きた、とかはないはず。
そのまま進んでいると、掲示板が目に入った。
「毎月15日は月次祭……?」
その掲示物の通りに何か催されるのだろうか、日付を見れば二日後の事らしかった。
よくわからないがタイミングが悪かったかもしれない…。なんだろうか月次祭とは
■サリナ > といっても来てしまったのは仕方ない。15日に時間があるようなら行けばいいだろう。
そう思って掲示板を見るのをやめて歩き出した。そうしたら何かこじんまりと屋根が立っているのを発見する。
近づいて見てみれば屋根の中には何やら水が出る仕掛けがあって、下にある石の水盤がそれを受けている。
なんだろうかこれは…柄杓もいくらか置いてある。
とりあえずは汗を拭った手がべとべとするので柄杓の中を水で満たして手を洗う事にした。
「冷たい…」
冷たくて気持ちがいい。それにしても水を見ていると喉が渇いてる事に気付いた。
…もしかして、この水は飲めるのだろうか。
■サリナ > この世界は蛇口を捻れば飲める水が出るくらいだし、恐らく飲めるに違いない。
と思ったが、そんな考えに至る人間は恐らく私以外にも居るだろう。
つまりこの柄杓はもう誰かが口をつけている可能性がある……なんだか不衛生のようなものに見えてきた。
私は水を飲むのを諦めて柄杓を戻した。そこら辺を歩き回って自販機でも探すとしよう。
■サリナ > 辺りを見回せば、自販機はすぐに見つかった。すぐにスポーツドリンクを購入して飲み始める。
「ふう…」
と、一息つけば、先程の場所に団体が居たのでよく観察してみる。
柄杓を使って両手を洗い、そして手に水を溜めてそれを飲む…のかと思ったら口をすすいでいただけだった。
団体客の他の人も同じようにやっている。…もしや飲み水という訳じゃなかったのか。
この世界の住人から見て異世界人である所の私は時たま無作法をしてしまう事がある。
もしあの時水を飲んでいたらどうなっていたのだろうか、と思うと冷汗が出てくる。
なんだか疲れてきたので汗を拭きつつ飲み終わるまで休憩しようと日陰に身を寄せた。
ご案内:「常世神社」に阿僧祇 宿禰さんが現れました。
■阿僧祇 宿禰 > とても満足げな表情で鳥居の中心をくぐり神社へとやって来る男。
まっすぐに掲示板を通り過ぎ、手水場へと差し掛かる。
そこで日陰の人影に視線が止まった。
「む、障りかの?」
首を傾げてそちらへと足を向ける。
■サリナ > 「…はい?」
何か、物々しい人物に声をかけられた。見れば制服を着ているので学園の生徒というのはわかる。
腰に変な水筒のようなものを括りつけていて、麻袋を担いでいる。
なんというか生徒というのを抜きにして一言で言ってしまえば荒事をよくやってそうな風貌だったのだ。
いきなり言われた言葉をなんとか思い出す。確か、"さわり"と言った。どういう意味か考えて沈黙する。
■阿僧祇 宿禰 > 「む…?えーっとナントいうんだっけ。し、しっく?」
あまり伝わっていない様子にこちらも少し考える。
そうだ、今風の言葉に言いなおせばいいから最近習った言葉を言いたいにシフトした結果、日本語読みの英語…英単語が飛び出した。
なお、麻袋は少し蠢いている。
■サリナ > しっく、シック、疾病の事を指す。つまり彼は私の事が体調悪そうに見えたのだろう…
「いえ、特に体調が悪いという訳では…日陰で休憩してるだけな…」
一応彼に説明をしていたら何か、彼の持ってる麻袋が動いた気がする。
「…ので」
途中で途切れたが、なんとか言葉を出し切る。
…動いたというのは揺れ動いたという感じではなく、その中身が動いたという意味だ。
何か、生物が入っているような。見れば子供の一人や二人ぐらいは入ってしまいそうだった。
■阿僧祇 宿禰 > 「おお、そうかそうか。こう蒸す中陽を浴びすぎれば体に障るでな、注意するのだぞ。」
うむうむと、頷く。
「そうそう、めまいなどが出る場合は濡らしたタオルや氷などで左の脇の下を…人と同じ構造ならば冷やすとよいぞ。」
ちょっとした夏の過ごし方を伝えながら、先ほどの言葉が通じなかったことより知識が使えないんじゃないかと思うと少し言葉から自信が消える。
麻袋を足元に置けば、何となく中身は一つながりな感じがした。
■サリナ > 私の世界では"人攫い"というものが横行する地域があったりした。
若い人間を攫って奴隷やらなにやらにするものだ。子供やそこまで大きくない人間は麻袋に詰めて持っていったりとかもするらしい…
もしや、弱ってそうな人間をとっつかまえて攫っていく人なのでは?と、頭の片隅で考えていたが、
何やら目の前の人は生活の知恵のようなものを口にしている。
が、得体の知れない彼と、その麻袋の中身が怖いので恐る恐る聞いてみる事にした。
「な、なるほど……ところで、あの…その麻袋はなんですか?」
■阿僧祇 宿禰 > 「ん?ああ、これはな、落第街の方で悪さをしてる奴がおったんでのう、少し揉んでやろうと思ってな。攫ってきた。」
がっはっはっと豪快に笑うが、相手の危惧したそのままの行為であることには間違いはない。
少し見てみるかの?と麻袋の口の方を手にしている。
■サリナ > ……は?攫ってきた?今、攫ってきたと言った。確かに聞いた。聞き間違いはない。
「……………………」
絶句。
私が想像していた事がぴったりと当たってしまった。訳がわからない。もしかしてそれは冗談で言っているのではないのか?
目の前の男はなんてことないように豪快に笑っている。ここで叫んで人を呼ぶか、これ以上何か起こらないうちに逃げるか、いっその事この場で打ち倒してしまおうか。
…いやいや待て待てマテ茶、慌てるべきじゃない。冷静に判断しよう。
彼は落第街で悪さしている人間が居るから攫ってきたと言った。そんな事を見ず知らずの私に言うということは自分の立場に相当自信があるという表れだ。
そして今この場所、神社だ。曲がりも何も神聖な場所にそうやって人を連れてくるのには何か理由があるのではないのか…
彼が袋の口に手をかけたので私は黙って見ている事にした。
■阿僧祇 宿禰 > 相手の動揺、推論、思考の変遷、太陽っぷりすら対して気にした様子もなく、麻袋の口を開けて中身を取り出す。
スキンヘッドに入れ墨の70kgぐらいの男が口に布を詰め込まれ悶えている。それを片手で襟首つかんで猫のように持ち上げた。
「なんでも、一般生徒を脅して悪事に手を染めさせようとしておったらしいからのう。まぁ、2,3日精神修行させれば多少はまともになろうて。」
あくまで自然体でそんなことを言う。表情も仕草も、総てがそれが当たり前のことだと言わんばかりに。
■サリナ > 袋から出てきたそれは確かに人間だった。しかも悪さしてそうな感じはする。
そんな大人の人間を今まで背負ってきた上に今、片手で持ち上げてる。彼はオーガか何かか、と思った。
「そ、そうなんですか。ところで精神修行とは一体どのような事を…?」
なんだか彼はいつもこんな事をしているんじゃなかろうか、口ぶりからして当たり前のように言ってる。
というか精神修行とは何だ。精神という言葉から魔術師にでも仕立てる気なのか…とてもじゃないが彼は魔術を教える人間には見えない。
■阿僧祇 宿禰 > 猫のように持ち上げた男は完全に白目をむいている。それを麻袋の中に戻して、
「そうじゃのう、清水に三日間ほどつけておくとか、足に重り付けて水練とか、滝行を三日間のうちどれかかのう。」
限りなく魔女裁判に近いことを口にする。
錬金術ならぬ脳筋術を伝授する様子だ。
■サリナ > 聞きなれない単語が出てきたが、なんとかそれを理解できた…ような気がする。
今しがた再び袋に戻された男が、足に錘をつけて水牢に監禁され、時折水を増して息継ぎに労力を使わせ、たまに流水を外から勢いよく浴びせる様を想像した。
どこが精神修行なのだろう、精神的に弱くなったりはしないのだろうかそれは…
「それは拷問…に近いのでは?刑罰とかそういう類のものなのですか?」
と言ってもそれで済む程度なら軽い刑罰みたいなものなのだろうか…死なないだけまし、とかそんな