2015/07/17 のログ
ご案内:「常世神社」にヘルベチカさんが現れました。
■ヘルベチカ > ィィイ―――――――――ン。
蝉の声が、響く。
空の色が暮れの赤に染まる少し前の時間。
肌に触れる、ぬるく湿った空気。
気温はそう変わらないはずなのに、
朝よりも少し涼しく感じられるのは何故なのだろうか。
緩い風が吹けば、右の手、下げたビニル袋がカサカサと音を立てた。
袋の中身が重いためだろう。風にゆっくりと揺れて、元の位置へ戻る。
息を吐いても、外気とそう温度が変わるように感じない。
吸う息と吐いた息の区別がつかなくなる。
まるで、ぬるま湯の中を進むよう。
■ヘルベチカ > 急ぐでもなく歩いて。
目的の場所まで辿り着けば、腰を下ろした。
境内の中。社殿の基礎である石段。
その上へ昇るための階段からは、少し離れた場所。
ビニル袋を己の隣においてから、
賽銭箱の向こう側、社殿に身体だけ向けて、二礼二拍手一礼。
拍するために両手を大きく広げるような、かっちりしたものではない。
通学路の地蔵にでも手を合わせるような礼。合図のような拍。
さくっとした仕草。
お邪魔します、と小さく告げて。
境内へ身を向けて、腰かけ直した。
■ヘルベチカ > 季節、時間帯によっては学生たちで賑わうこの場所。
暑く、ともすれば雨の降るこの季節のこの時間帯。
人気はそう多くなく、社殿に参る学生も居ない。
ビニル袋の中から取り出した、透明な袋。
輪ゴムで閉じられた口を開けば、透明な袋を取っ手にしたまま、
中に入っていた焼きとうもろこしを半分だけ、外へ出す。
学生街の商店街からぶら下げてきたのだろう。
まだほんのりと温かいそれに、かぶりついた。
少し早い夏の祭りの気分なのだろうか。
口の中、じわりと広がった醤油の味。
そしてとうもろこしの甘み。
一粒一粒を、歯がこそげ取って、口の中へと落としこむ。
一瞬で行われたそれが立てる、じゃくり、という音と共に、歯と歯が触れて。
ちょうど一口分だけ、色を黄色から白へと変えたとうもろこしを見ながら、
咀嚼し、飲み込んだ。
■ヘルベチカ > 風が吹く。ざぁ、と重なる葉が擦れ合う。
一瞬だけ止まった蝉の声。
落ちた幾枚かの葉が、地を擦れる音がして。
そうして止まった風と、また聞こえ始める、蝉の鳴き声。
鼓膜の中、滑り込む。
とうもろこしを再度透明な袋の中に収めて、
己に立てかけるように、石段の上において。
ビニル袋に手を突っ込めば、取り出したのはラムネの瓶。
口のビニル包装をはがし、キャップのスペーサーを外して。
ゴミはビニル袋の中に放り込んだ。
風で飛ばぬよう、尻の下へ挟む。
石段の上、座った己の身から離すように、手を前へ、ぐっ、と伸ばして。
凸型のプラスチックを使って、ビー玉を中へと、押し込んだ。
そのまま掌で覆うように、ぎゅっと瓶の口を押さえる。
プラスチックと掌から、溢れ出ようとする炭酸の力。
少しだけ、こぼれ出る感触が在る。
そのまま十秒ほど、抑えたままにして居た手。
ゆっくりと離して、凸型のプラスチックをビニル袋の中へ放り込んで。
抑えていた掌を舐めた。
あまいあじがする。
ご案内:「常世神社」に神宮司ちはやさんが現れました。
■神宮司ちはや > (とんとんと石畳の階段を上がる。
今日も神社で舞の練習でもしようかとスポーツバッグを抱えてやってきた。
普段は時間を考えて訪れれば人が誰もいないから自分のみっともない所を見られたりすることはないのだ。
だが今日は先客が居たようだ。
境内に腰掛けた相手を見つけるとその頭の上にある猫耳に釘付けになった。
ねこだ。ねこだ!
神宮司ちはやはねこが大好きである。ただし猫アレルギーで触ることは出来ない。)
■ヘルベチカ > 手の中でビンをくるくると回して、窪みの位置を見る。
人差し指と中指が、丁度収まりそうな、並んだ二つ。
それが、下になるように。ビンに口をつけた。
つるりとした、滑らかな感触が。唇に。
傾ける。ビンの中で転がるビー玉。
出っ張りに引っかかって、止まる。
ビンの口が小さければ、ラムネが出る勢いも弱い。
幼いころは、これでも沢山に感じたのに。
口の中に広がる、炭酸の感触。
けれど、先ほど掌を舐めた時の方が、甘かったように思えた。
ビンの中のビー玉を、眺めて。
不意にちらりと外した視線。
神宮寺と目が合った。
こちらを凝視してくる少年。制服姿だ。きっと、権禰宜ではない、だろう。
ビンを口から離した。からん、と一瞬軽い音がして。
ビー玉はラムネの中に沈む。
「……何か用?」
緩く、首をかしげながら。静かな声で問いかけた。
■神宮司ちはや > (ラムネ瓶を傾けるヘルベチカと視線が合って慌てて目をそらす。
あまりじろじろ見ては失礼になるだろう。
顔を赤く染めてそそくさと頭を下げた。)
い、いえ…ごめんなさい。猫の耳が素敵だったからつい見ちゃって……。
(小さく呟くと、足早に境内へ近づき賽銭箱に小銭を入れる。
二礼二拍手一礼、作法に手慣れた完璧なお参り。
それが済むと、やっぱり気になるのか再び猫耳を横目でちらちらと見てしまう。)
■ヘルベチカ > 不思議そうにしていた顔が、神宮寺の返答を受けて、
納得の色に変わる。ゆるゆると頷いて。
「あぁ、これ」
ラムネのビンを持つのと逆の手で、己の猫耳の先端をつまむ。
茶虎の猫耳が、少年の手の動きに合わせて、動く。
「別に見たけりゃ見てていいよ。謝らなくても」
自前だからあげられないけど、と笑いながら言って、
少年は再度、ラムネの瓶を口に寄せて、傾けた。
近くから聞こえてくる、拍の鳴らされる音。
視線を神宮寺へやる。先ほどの己とは異なり、
随分と堂に入った仕草。
それから、再度こちらへ飛ばされる視線に、少年は苦笑して。
「そんな珍しい?触るか?」
■神宮司ちはや > (触るか?と言われるとあからさまに喜色満面の顔。ぱっと表情が明るくなる。
が、一瞬ではっと正気に戻ると慌てて両手を振った。)
い、いえいきなり初対面の人の耳に触るなんて失礼かなって……!
ごめんなさい、じろじろ見たりして……。
ぼく、ここに来るまで猫の耳とか、狐の尻尾が生えた人を見たことなかったんです。
だから珍しいっていうか……どんな感じかなって気になっているっていうか……
(そろそろとヘルベチカの横に隙間を開けて体育座りする。
口では断ったけれどもやっぱり未練はあるのか時々耳を見上げては指をもじもじと動かしていたり)
■ヘルベチカ > 相手の反応の落差を見れば、少年は笑って。
ラムネの瓶を石段の上において、焼きとうもろこしを持った。
「別にいいよ。遠慮するだけマシだし」
かぶりつく。目を閉じて咀嚼する。
頭の上、猫の耳が少し弛緩したように見えて。
飲み込んでから、一呼吸。
「飯食ってたら突然、知らん奴に後ろから掴まれたりするのよりはいい」
己の頭の上、見えぬ猫耳を見ようとするように、視線を上にやった。
「あぁ、なるほど。そりゃ珍しい。よくわかる」
隣に腰掛けた神宮寺へと、視線を移して。
「そんなに未練がましくするなら、別に触っていいって。ちゃんと本物の猫の耳だけど、ノミは居ないから」
■神宮司ちはや > (ヘルベチカの動きに合わせて揺れる猫耳を目で追う。
猫が動くものに興味を示すような表情。反応。
再度触っていいと言われると、少々悩んだように口元に手を当てていたが、とうとう折れたのかその場で立ち上がる。)
そ、それじゃあ失礼します。お食事中ごめんなさい。
(ヘルベチカの前に回りこむと、そっと頭の上の猫耳をつまむ。
優しく、丁寧に壊れ物に触れるかのような慎重な指。
それが本物である体温が伝わると、慌てて手を引っ込めた。
両手をまじまじと見つめる。柔らかくて温かい。
ほうっとうっとりするようにため息を吐いた。本物の猫と変わらない手触りだ。)
ねこだ……。
(感動したような輝ける笑顔。猫に触れたという事実。アレルギーのような反応も出ない。)
■ヘルベチカ > 「ん」
立ち上がった相手を見れば、頷いた。
相手が触れやすいように、頭を少し下げるようにして。
そのままの姿勢で、焼きとうもろこしをもぐもぐと食べている。
「あいよ。食ってるから適当に触っていいぞ」
流石にこの姿勢ではラムネは飲めないが、俯いたままに焼きとうもろこしを食べるシュールな図。
そして、一瞬触れて、引っ込めるまでの間。
神宮寺の手に伝わったのは、確かに血の通った体温。
触れられた瞬間に、ぴくりと動いたのは、きっと反射だろう。
俯いたままの少年、神宮寺の顔に浮かんだ笑みは見えないが。
「とりあえず、満足したら教えてくれ。もしくは後ろから触ってくれ」
この姿勢ずっとはきついから、と。焼きとうもろこしを顔の横で振りながら。
■神宮司ちはや > あ、ごめんなさい……そのままじゃ食べにくいですよね。
(背後に回ると再度そっと指先で触る。
ふわっとした毛並みの感触。ほわほわした体温。
紛れも無い猫の耳だ。すごい!ねこのみみすごい!
人差し指でそーっと外側をなぞってみたり、先っぽを摘んでみたりする。
そのたびにぴくりと動く耳にわぁっと感嘆するように声を上げた。
しばらく飽きもせず猫耳を撫でて愛で続ける。ようやく終わった時には実に堪能したという満足な笑顔で相手の前に戻ってきた。)
あの、お兄さんありがとうございました……。とても素敵なお耳でした。
(ふわふわと幸せな顔で頭を下げる。ねこはよいものだ。)
■ヘルベチカ > 相手が後ろへ回れば、元の通り首の位置を戻して。
焼きとうもろこしを置いて、ラムネを手にとって、口に寄せる。
興奮した様子の神宮寺に比べて、完全に落ち着ききった状態。
傍から見れば、おそらく異様な光景である。
猫耳は、神宮寺の触れる手つきに反応するように時折震えるが、
強く力を入れられないためか、少年が頭を振って手を払う様子はない。
黙々と焼きとうもろこしを食べ、ラムネを飲み、耳を触られる。
謎の時間は暫く経過し、そして。
「ん。満足したか」
戻ってきた相手の空気がふわっふわに幸福に覆われていれば、うむ、と頷いた。
「何。猫普段触らないの?」
■神宮司ちはや > (もう一度さっき座った位置に体育座り。だけどさっきよりかは少しヘルベチカへ距離が縮まった気がする。
まだ触ったことが信じられないのか自分の両の手を握ったり開いたりして見つめたまま)
うーん、野良の子とか見かけますけど臆病な子は逃げちゃうし、
前に触らせてくれた子もいたけどぼく、なんか目が痒くなったり咳が止まらなくなっちゃったりして……。
猫アレルギー?なんだとおもいます。
だから、触ったのは久しぶりですね。
(そうして横にいるヘルベチカに顔を向けるとふふ、とまた笑顔になる。)
とうもろこしとラムネ、お好きなんですか?
■ヘルベチカ > 「あー、アレルギーか。そりゃ触れないわな。
俺触ってアレルギーでなかったなら、良かったよ。
突然隣で苦しみ始めたら、俺が困る」
からからと笑いながら、ラムネの瓶を振る。
からん、からん、と瓶の中。ビー玉が踊る音。
既に容器の半分以下までラムネを飲み終えていれば、
ガラスとガラスが触れるのを邪魔するものもなく、音が響く。
「ん?」
問いかけられて、ラムネの瓶を見て、焼きとうもろこしを見た。
「いや、別に好物とかじゃないんだけどさ」
そして視線を向けるのは、先ほど蝉の声が聞こえてきた方向。
「なんか、夏の気分になって、買ってきた。
こういうのって、そのものの味もあるけど、気分で味変わる気がしないか?」
神宮寺を見て、首を傾げながら笑って。
「で、まぁ、なんか夏っぽいとこにきたんだけど。そっちはなんでこんな暑い中、神社に来たんだ?」
■神宮司ちはや > なんでアレルギーでなかったのかなぁ……。
やっぱり猫の耳だけだからかなぁ?
(独り事のようにそう言いながら相手の笑いにつられて笑う。
ビー玉がラムネ瓶にぶつかる音を涼しげに聞きながら)
そうですね、瓶に入っているラムネって夏にしかお店にでないしわかる気がします。
夏の味、ですよね。ビー玉をえいって押すのも含めて。
(うんうんと同意するように頷いてから相手の問いかけに少し躊躇った。
視線を足元の地面に移すと、もじもじとした様子で小さく答える。)
……えっと、舞の、練習しようと思ったんです。
ここあまり人が来ないから見られないかなって思って時々使っていたんです。
(今日は先にお兄さんがいたんだけれど、と口には言わず。)
■ヘルベチカ > ついっ、と。焼きとうもろこしを、指揮棒のように顔の横で回して。
「一説じゃ、猫アレルギーは、首やら顎やらからメインで出る物質のアレルギーな場合が多いそうだ。
耳だけだから、それがなかったのか、許容量以下だったか、なのかもな」
ここは猫じゃないだろ、と。首を逸らして、己の肌を指さした。
確かに、人間の肌。猫の毛などは、生えていない。
頭の上、猫の耳がぴくぴくと震える。
「ラムネはやっぱり、缶じゃダメだよな。なんか、こう……
うん、理由は説明できないけど、ビンがいい」
自分の中でもうまく言葉にならなかったのだろう。
苦笑しながらそう言って、薄青い、瓶の口、プラスチックを指で触る。
「あぁ、別に言いづらかったら言わなくても―――ははぁ、舞の練習」
ほぉ、と声を上げて、珍しいものを見たような表情。
舞、舞、と何度か小さく呟いて、社殿を見て。
「何。奉納舞とかそういうやつ?一子相伝で見られるとヤバイとかそういう?」