2015/09/10 のログ
薬師寺 瀬織 > 協力者の一人――嶋野陽子の声が聞こえれば、瀬織は顔を上げ。

「ええ。この腕のことと……それに」

瀬織はここを訪れる以前、陽子から送られてきたメールを確認していた。
その内容は、義手を狙う者の襲撃に備え、護衛を手配したとの知らせ。

「……いいえ、何でもないわ」

どうして貴方は、私なんかのために、そこまで――。
そのような言葉は、実際に瀬織の口から出ることはない。

嶋野陽子 > 「隣、いいですか?」と聞いて、
駄目でなければ薬師寺さんの隣に座る陽子。
陽子には、薬師寺さんに話さなければいけない事が
あるのだ。

「差し出がましいとは思いますが、メールした通り、
護衛の手配をしてあります。というのは、私がアガ
ートラームの名前を聞いた時に、その場にはアガー
トラームを追う賞金稼ぎの人もいたのです。つまり、
私は薬師寺さんを狙うであろう人の一人を知ってい
るのです」と語り始める陽子。

「その人とは、別なときに同じ人を守るために一緒に
戦ったので、私では勝てない手強い人だと判ってい
るのです。だから、転送の腕輪とか強力な護衛が必
要だと考えたのです」と、敵の手駒を知っている事が
今の行動の根拠となっている事を説明する陽子。

「でもそれだけではありません。私はその時に一つ
大きな間違いを起こしてしまったのです」と続ける
陽子。

ご案内:「常世神社」に嶋野陽子さんが現れました。
薬師寺 瀬織 > 「ええ、問題ないわ」

隣に座ってよいかと聞かれれば、そう答え、隣に座る彼女の顔をじっと見上げつつ、
陽子がここまでの手段を取るに至った事情を、頷きながら聞いて。

「……成程ね」

答える。
陽子がその身に秘めている戦闘能力について、瀬織は知らない部分の方が多い。
しかし、彼女が知る、瀬織を狙うであろう賞金稼ぎの一人――それが彼女でさえ勝てないというならば、
今の瀬織では到底敵うはずのない相手であることは容易に想像できる。
ならば、陽子がこのような対応をとるのも無理はないだろう、と納得し。

「大きな、間違い……?」

どこか引っかかるものがあったのか、その言葉の意味を彼女に問うてみる。

嶋野陽子 > 薬師寺さんに続きを促されると、
「義手自体がそんなに珍しいものではないという例と
して、知らなかったとは言え薬師寺さんの例を持ち出
してしまったのです。だから学園に義手の保健委員が
いる事は、敵にも知られてしまったのです。保健室で
薬師寺さんを初めて見た時、薬師寺さんがアガートラ
ームその人だと知った時には驚いたと同時に、これは
何としても薬師寺さんを守り切らないと、と決心した
のです」と、落第街での失敗を告白する陽子。

薬師寺 瀬織 > 「そう…………だったの」

普段は表情の変化に乏しい瀬織だが、この時はほんの少しばかり口を開け、しばし驚いたような表情を見せる。
陽子がその賞金稼ぎとやらに知らずに漏らしてしまった情報から、
瀬織の所在が明らかになってしまったことは事実なのであろう。
しかし、陽子の過失を糾弾しようという考えは、瀬織にはない。

「嶋野さんは……悪くないわ。その人が私の義手を狙っていることだって、その時は知らなかったのでしょう。なら、仕方のないことだわ」

再びいつものように感情の表れない顔に戻れば、
陽子は悪くないと、ただその言葉を伝え。

「それに、最終的に私の身を守るべきなのは、私だから。人の手を借りるだけでは、駄目だと思っているの」

――そう、付け加えた。

嶋野陽子 > 『仕方のないことだわ』と薬師寺
さんが言ってくれたので、陽子の気持ちはかなり楽に
なる。しかし、

『人の手を借りるだけでは、駄目だと思うの』と薬
師寺さんが続けるのを聞くと、陽子は、

「身を守るためなら、《逃げる》事も《隠れる》事も
立派なアクションよ。襲われたときに咄嗟に腕輪を
叩けるかどうかは、薬師寺さんにかかっている訳で
すから」と反論し、さらに、

「所で、『マガツヒ・ドライブ』の方はどうするか決
められましたか?」と尋ねる。

薬師寺 瀬織 > 「……そうね」

つい先程まで、瀬織がベンチ上で思案していたのは、まさにその事である。
『マガツヒ・ドライブ』が設計図から復元される前に設計図を廃棄するにしても、義手がなくては生活を送るのは困難になる。
自らの意思で義手を捨て去る決断までは、瀬織にはできなかった。
いっそのこと、他者によって復元される前に設計図とモノ自体をこちらで復元してしまうというのも、
手段としてはあり得るが、その場合は再びミウの協力が不可欠になる。

「まだ、決まってはいないのだけれど。……事が落ち着くまで、こちらから動きを起こすのは避けたほうがいいと思っているわ」

事態が沈静化するまで不用意な動きを避け、沈黙を保つ。
下手に動くよりも、現状はそれが最も安全だろう、と判断していた。

「もし、賞金稼ぎの狙いが義手そのものじゃなく、設計図なら……ミウさんに設計図を作り出してもらって、それを何らかの手段でコピーして増やしたりするほうがいいのかもしれないけれど。設計図の価値を減らしてしまえば、相手の本当の狙いがわかるのではないかしら」

と、念のため、瀬織に考えうるもう一つの選択肢も提示しておく。

嶋野陽子 > 設計図をコピーしてしまえば、
価値が減るのではないかという提案は、まさに陽子が
考えた方策と同じ発想だ。
「たぶん、私達が実際にコピーを作らなくても、
『マガツヒ・ドライブ』の名前を出したり、『マガ
ツヒ・ドライブの秘密は露見した!』と相手に告げ
れば、独占出来ないと知って、一旦は諦める事が期
待できるかも知れないと思いました」と話す陽子。

薬師寺 瀬織 > 「……なるほど、ブラフね。その手はいいと思うわ。コピーを作らない分、ミウさんの手を煩わせずに済むし」

瀬織の銀色の右手、その甲を下顎に軽く当てながら頷き、納得する。
もし相手が『マガツヒ・ドライブ』そのもの、もしくはその技術の独占のみを目的としているならば、
実際にコピーを作らずとも、そうしたブラフをかけるのは手段として有効であろう。
何より、実際にコピーを作ることがなければ、ミウに負担をかけずに済む。
いくら相手が創造神を名乗り、千里眼の力を持つ少女とはいえ、
できる限りその力に頼らずして問題を解決できれば、双方にとってよい結果になるだろうと、瀬織は考えている。

嶋野陽子 > 薬師寺さんも陽子のブラフ作戦に賛成
のようなので、当面はこの手で行けそうだ。
「ならば今週一杯は、ブラフで行けそうですね。薬師寺
さんが腕輪で転送した後で、マガツヒ・ドライブの名
前を出されたら、全ては露見したと思い込ませる事も
できそうですね」と提案する陽子。

気が付くと、すっかり暗くなっている。
「薬師寺さんは、夕食まだではありませんか?そろそろ
寮に戻って、夕食にしましょうか。何でしたらこの間
お誘いしたように、ワタシの部屋で一緒にどうです?」
と、寮に戻って夕食を食べる提案をする陽子。

薬師寺 瀬織 > 「そうね。頂こうかしら」

この日、瀬織はまだ夕食を摂っていない。陽子からは以前誘われていたこともあり、
ここは提案に乗って、夕食を彼女の部屋でご馳走してもらうことにする。
瀬織は口角を上げ、陽子に向けて微笑みを見せた。

嶋野陽子 > 薬師寺さんが誘いを受けてくれたので、
「では一緒に帰りましょう」と言って席を立つと、一瞬
考えてから薬師寺さんの右手に向けて自分の左手を差
し出す陽子。陽子の大きな手を握るなら、ヒュギエイ
アの方が楽だろうという発想だ。
「夕食に何かリクエストはありますか?」などと尋ねな
がら、女子寮への帰途に就こうとする陽子。

薬師寺 瀬織 > 「ええ」

陽子に続いて席を立った瀬織。
その大きな銀色の右手が、差し出された陽子の左手をしっかりと握る。

「そうね……」

陽子から尋ねられ夕食のリクエストについて考えるも、
今の瀬織には特にこれが食べたいというものはなく、あったとして陽子がそれを作れる保証もない。故に。

「嶋野さんの得意な料理がいいわね」

そう答えた。

嶋野陽子 > 『嶋野さんの得意な料理がいいわ』
陽子の得意料理と言えば、カレーである。
「私の得意料理と言えばカレーですけど、薬師寺さんは
辛いの、苦手ですか?それともお好きですか?」と
尋ねる陽子。返答次第で超マイルドから辛口まで、
多彩な選択肢がある。
デザートもあるし、薬師寺さんの質問には何でも答え
るつもりなので、今夜は話の種に困ることは無いだろ
う。
境内を出て、最寄り駅の方に歩き始める陽子。

薬師寺 瀬織 > 陽子の手を握ったまま、瀬織もまた彼女と同じ方向へ歩きつつ。

「私は……辛いものはあまり得意なほうではないわ」

彼女の得意料理――カレーについての質問に答える。
一般的なカレーライス程度の辛さであれば瀬織の許容範囲ではあるが、
それを超えてあまりに辛いものとなると、瀬織には厳しくなってくる。

嶋野陽子 > 辛いのはあまり得意でないと聞くと、
「ならば今夜は夏野菜とチキンの欧風カレーにしま
しょうか。そろそろ夏野菜も食べ納めですし、これ
ならマイルドですから薬師寺さんでも大丈夫です」
と提案する陽子。
この夏、何回も作って、少なくとも3人から高い評
価をもらっている一品なので、気に入ってもらえる
だろう。
寮に戻る道すがらも、料理している間も、陽子は
薬師寺さんの質問にひたすら答え続けるのだった。

ご案内:「常世神社」から薬師寺 瀬織さんが去りました。
ご案内:「常世神社」から嶋野陽子さんが去りました。