2016/07/23 のログ
ご案内:「常世神社」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「いやー、今日も泳いだ泳いだ!」

満足げに石段を上がって来たのは、海水浴帰りの七生だった。
手には海の家で買って来た焼きそばとイカ焼きとあとコーラとかき氷。
夏休み前から夏休み満喫してしまって、これからひと月ちょい、ずっとこの調子を保てるのか心配になるほどだった。

少しだけひりつく肌に時折眉を顰めながら鳥居をくぐると、一直線にベンチへと向かう。
買い込んできた食料をさっさと食べて泳いで消費した体力を取り戻さなければ。
さっきから七生の腹はひっきりなしに音を立てて空腹を報せていた。

東雲七生 > 「どれどれ、バイトしてた時散々売ったけど、そういや今年は食うの初めてだなー。」

よいしょっ、とベンチに腰を下ろして。
プラスチック容器に入れて輪ゴムで止めたおなじみの状態のイカ焼きを持ち直す。
流石に海の家から此処まで来る間に冷めてはしまっているが、それで味が落ちたりしたらそもそも売り物のにならないだろう。

「あー、も一つ何か買ってくれば良かった。」

すっかり日も傾いて今にも海の向こうへ沈みそうな夕暮時。
七生は赤くなった鼻の頭を掻きながら、少しだけ後悔した。
全部食べても食べ足りる自信が無い。

東雲七生 > 「あんむ。……むぐむぐ。」

ぬるくなっていても、思った通りイカ焼きは不味くは無かった。
だけど、やっぱり出来立ての少し熱いくらいの物が一番おいしいのだろう。
そんな事を考えながら、もぐもぐとイカ焼きを頬張る。

早く食べないと、かき氷が溶けてしまう。
夕陽を眺めながら食べるかき氷は、一際美味しいだろう。そう考えながら、今はイカ焼き。

東雲七生 > やっぱり誰か誘えばよかったかなあ、なんて思いながらイカ焼きを食べ終える。
一人で食べるより、二人で食べた方がきっともっと美味しい。
そんな気がするのは、やっぱり一人で居るのが嫌だからだろうか。

「……ん、く。 美味かったー。」

イカ焼きを食べ終え、満足げに笑みを浮かべる。
そして今度は焼きそばの容器を開いた。
割り箸を割りながら、香ばしいソースの匂いを嗅げば、きゅる、とイカ焼きを入れたばかりの胃が小さく物足りなさを主張する。
やっぱり、全然足りないかもしれない。

東雲七生 > 最近妙に空腹である時間が増えた気がする。
というか、胃の容量が増した気がする。
食べても食べても食べ足りない気がするのは、成長期だからだろうか。
……だったら良いなあ、と七生は橙に染まった空を見上げる。

「ちっとでも良いから背ぇ伸びないかな……」

梅雨入り前の身体測定で叩きだされた結果は155cm
まさか高2にもなって身長が縮む現象に遭遇するとは夢にも思わなかった。
1年の頃はもうちょっとあった気がする。まあどのみち160には届かなかったけど!

「体重は順調に増えてんだよなあ。筋肉量が増えてんだろうな」

体脂肪率はめちゃくちゃ低い。
意識せず水に入ったらまず沈むくらいには七生の身体に脂肪らしい脂肪はついてなかった。

東雲七生 > 焼きそばも食べ終え、コーラで喉を潤す。
やっぱりまだまだ食べ足りないのは我慢しつつ、かき氷を手にベンチから腰を上げた。
あとは帰りながら食べるつもり、である。

「あ、お土産に何か買ってくれば良かったな。」

家に居るだろう、家主の少女の事を思い出しながら独りごちる。
いや、折角だから一緒に海の家に行かないか誘ってみよう、と考えを切り替えつつ鳥居へと向かいながらかき氷を一口。
半分ほど溶けてしまっていたが、それでも心地良い冷たさが口の中に広がった。

「んん~……やっぱ夏はこうだよなあ!」

ふっふっふ、と蕩けそうな笑みを浮かべながら七生は帰路へとついたのだった。

ご案内:「常世神社」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「常世神社」にリヒットさんが現れました。
リヒット > 蒸し暑い、カンカン照りの昼下がり。
長袖のスモックを身にまとい――下には何も着ていないようです――滝のように真っ青な長髪をなびかせながら、小人が常世神社の境内へと続く石段を登っていきます。
ふわふわと、まるで空中を泳ぐクラゲのように。そう、この小人は浮遊しているのです。

「ぷー、ぷー」

海に面した立地の常世神社。
リヒットは一心不乱に石段の頂上を目指してますが、その背後に視線をやれば、白い砂浜にはいくつものカラフルな点が踊っています。
海水浴客です。常世学園はもう夏休み。多くの学生が海水浴にいそしんでいるようです。
リヒットも水の精、こんな辺鄙で泳げるような川も池もなさそうな場所に来ずに、子供らしく海に行けばいい、と思う人も多いでしょう。
ですが、残念なことにリヒットは海が苦手でした。

「ぷー、ついた」

そして、居住区にありながら静かで自然豊かな神社の境内がお気に入りスポットでもあるのでした。
正面には大きな建物、手前には水がこんこんと湧き出す東屋。手水舎というらしいですね。
以前、ここで水浴びをしてしまい、神社の人に怒られたこともあります。なので、お行儀よく手を洗うだけ。

リヒット > リヒットは異邦人です。シャボン玉の精(というか「シャボン玉そのもの」)と自称してます。

……彼は、この「神社」と呼ばれる建物がどういう用途で用いられて、何が祀られているのかに今のところ興味はありません。
八百万の神、仏、あるいは妖怪の類についても、その存在自体が認識の外。
というより、リヒット自体がこの世界においては一種の妖怪とでもいえましょうか。

よって、手水舎で白く綺麗な両手をさらに洗い清めても、そのまま本殿へと向かうことはしません。
そのかわり、参道を囲うように立ち並ぶ木々の陰……そこに据え付けられた、古ぼけた木のベンチへと向かっていきます。

「ぷー」

音もなくふわりとベンチの上にお尻を落とし、白い裸足をぶらぶらと投げ出すリヒット。
鬱蒼と茂る常緑樹によって日差しは和らぎましたが、依然として神社を包む風は生暖かく、常人であれば汗が止まらなくなる温度。
ましてや、海から吹き上げる湿った風により、不快指数は決して低いとはいえないでしょう。
しかしリヒットにとってはこの湿気こそが恵みです。雨が降ればさらに言うことなしです。

ベンチでひとり寛ぎながら、視線をあちこちに移し、古い日本建築の佇まいや緑の木々、そして遠く海岸に見える人だかりなどを見つめています。

リヒット > 「ぷー……ひま。あそぼう」

10分ほど単にボケッとしていた後。セミの合唱にかき消されそうな小さな声で、リヒットは唐突にそう呟きます。
そして、けだるげにスモックの袖を振り上げると、全く日に焼けていない白い手指から、ひとつぶのシャボン玉が生まれました。
直径10cm程度の見事な真球は、ゆらゆらと風に煽られながらリヒットの後方へと流れていき、茂みへと潜り込んで行きます。
リヒットはそのシャボン玉の行方を目で追おうともしません。これが彼の「あそび」でしょうか? ……いいえ、違います。

「ぷー」

ガサリと音を立て、茂みの中から現れる人影ひとつ。なんと……もう一人のリヒットではありませんか。
感情の変化に乏しいボケッとした表情、青い瞳と髪、スモックに縫い込まれた『カラタチ』の意匠に至るまで、寸分違わず、ベンチに座ったリヒットの映し身。
茂みから現れたリヒット2号は、宙に身を舞わせ参道へと飛び出すと、1号の座るベンチへと同様にお尻を下ろしました。

「こんにちわ、リヒット」「こんにちわ、リヒット」

首だけを互いに向け合い、二人の唇が同時に挨拶の言葉を発します。なんとも気味の悪い光景です。