2016/08/08 のログ
ご案内:「常世神社」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 夜の常世神社。
今日も今日とて海水浴を終えた七生は、Tシャツにハーフパンツタイプの海水パンツ姿で石段を上っていた。

「はあ、せっかくの休みなんだしさ、全日で遊びたいよなあ。」

夏休みの課題、自分の異能をより高度に扱えるようになること。
遊びほうけて忘れかけていたそれを思い出したのは、担当講師から釘を刺す旨のメールが届いたからだった。
それでも昼間は遊んでいるのだから、案外性根は図太いのかもしれない。

「さてと、誰か居るかな。……誰もいねえよな、そんな時間でもないし。」

実に好都合だった。
未だに自分が異能を使う姿を誰かに見られるのは気が引ける。

東雲七生 > そろり、そろりと人目を気にする様に境内を歩く。
もし死角に誰かが居て、急に鉢合わせてしまっては申し訳ない。
そんな気持ちが一周回って七生を挙動不審にしていた。

「……いや、でも、やっぱ驚かせたり嫌な気分にさせるのは良くないと思うんだ。」

自分の挙動不審っぷりに懸命に言い訳しつつ玉砂利の上を極力足音と気配を殺して進む。
転移荒野で魔物を相手に立ち回ってた経験からか、少しだけ自信のあるスキルだった。

「……誰も居ない……かな?」

きょろきょろ。
小さな体躯をもう一回り縮ませながら辺りを見回し、怪しい人影が自分以外無い事を確認中。
さながら餌を運ぶ小動物。

東雲七生 > 安全の確保、もとい他人の目が無い事を確認するとはふ、と欠伸を噛み殺しながら身体を伸ばす。
陽も落ちたというのにまだまだ昼間の熱気を残した風が少し気持ち悪い。

「ま、これくらい暖かい方が好都合か」

お陰で少し体温も高い。
体温が高いと言う事は、少しは血の巡りも良くなっているはず、だ。
大きく伸びをしてから肩をぐるぐる回して筋肉を解す。
あとは気分で首を一回大きく回すと、よし、とゆるーく気合を入れた。

「やります、か。」

懐からナイフを取り出し、最後にもう一度、と辺りを見回す。

東雲七生 > 手にしたナイフで掌に傷をつける。
すぐに傷口からは血が滲み、独りでに渦を巻き始めた。
七生にとっては見慣れた自分の異能の発現であり、今は待機状態と言ったところである。
ここから様々な形状へと変化させることが出来るのだが、

「形……だけなのかな。」

操る、とはいうものの、それは本当に形状を変えるだけなのか。
自身の異能の使い道を考えてる途中に、ふと頭を過った疑問。
今まで何かを形作る事しか頭に無かったのだが、あるいはもっと異なる用途があるのでは?

「とはいえ……具体的にどうしたもんか思いつかないんだよなあ。」

ぐるぐる、掌で動き続ける赤い渦を見つめながら、七生は思案していた。

東雲七生 > 七生が自分の力について分かっている事は。
この能力は血液に特異性があるわけではないらしい、ということ。
自分の血液でのみ発言が可能であるということ。
自分の意のままに血液に変化を齎す異能であるらしい、ということ。

それくらいしか理解できていない。
しかし、現状この能力を使い積極的に戦闘を行うつもりが無かったので、特別不便なことは無かった。

「俺の思う通りに……かあ。」

それは今まで血液を粘土のように使って作り上げる物を想像する、という意味で捉えていたのだが。
……もしかしたら。

「うーん、何か閃きそうなんだけど、いまいちピーンとこねえな……」

どうやら暗礁に乗り上げてしまったらしい。
ぐるぐると渦を巻く自分の血をそのままに、七生は夜が更けるまで悩みに悩んで──

──結局、この夜は何も見出すことが出来ずに帰る事になったのだった。

ご案内:「常世神社」から東雲七生さんが去りました。